ベンチャー企業の経営者にとっての夢のひとつでもある「上場」。
しかし、上場とは一体何なのか。そして上場のメリットとデメリットが一体何なのかご存知ない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回はベンチャーの上場とは、そしてベンチャーにとっての上場のメリット・デメリットや近年の東証マザーズの傾向や上場トレンドについてもご紹介していきます。
また、2020年上半期に上場した注目のベンチャー企業もピックアップしました!
あなたの推しはどこですか?
このページの目次
上場とは証券取引所で株式を売買できるようにすることを指し、株式の売買が出来るようになった企業を上場企業と呼びます。
上場する際には証券取引所が定める条件をクリアしている必要があります。
条件は株式単位数や時価総額、利益額や事業継続年数、純資産額など、企業の力量や今の状況をあらゆる角度から判断されることになります。
この条件をクリアすることで上場することが出来るようになるのです。
現在日本には5つの証券取引所があります。本記事では東京証券取引所についてご紹介します。
東京証券取引所には5つの株式市場があります。
日本のほとんどの企業の株式が取り扱われている東証一部、東証一部よりやや基準の緩い東証二部、新興企業向けの東証マザーズ、そして機関投資家向けのTOKYO AIM取引所です。
この中でも多くのベンチャーが目指すことになる東証一部と東証マザーズについて説明していきます。
東証一部は上場に非常に厳しい条件があり、そのため大手企業の株式がメインで取引されます。
しかし東証一部の条件をクリア出来る企業は多くありません。そのため、東証一部の条件をクリア出来ないベンチャー向けに用意されている市場が東証マザーズです。
東証マザーズは利益や設立経過年数など、ベンチャーにとって厳しいハードルになりうる条件が大幅に緩和されています。また赤字でも上場可能という点は、成長投資が必要になるベンチャーにとっては非常に嬉しいポイントです。
上場について簡単に説明しましたが、ではベンチャーにとって上場で得られるメリットとデメリットにはどういうものがあるのでしょうか?
ベンチャーが上場する最大のメリットは会社を成長させるための資金収集が可能になるという点です。
会社を大きく飛躍させていくためには、当然ですが投資用の資金が必要になります。しかしこの資金をすべて銀行からの融資に頼るのは困難です。そこで有効になるのが株式の発行と売買なのです。
2000年に上場した株式会社サイバーエージェントは、上場当時売上高4億5,219万円、経常利益3,572万円でした。しかしその成長性や事業の魅力が着目され、上場後225億円もの資金を調達することに成功しています。
成長のための資金を得る方法としてはかなり強い手段と言えるでしょう。
しかし上場にも当然デメリットはあります。それは株主が経営に対する発言権を持つことです。
未上場の企業であれば経営に関する重要事項もスピード感を持って決めることが出来るでしょう。しかし上場すればそのスピード感は失われることになります。
また未上場企業であれば成長投資の為に赤字を出すことも出来ますが、上場企業ではそれは望ましくありません。
更に半年間の上場審査期間中、企業は東証に提出した事業計画の売上高と利益と実際の売上高、利益との間の誤差を5%〜10%以内に収めなければなりません。
ベンチャーは半年の間に一気に売上が上がることも多々ありますが、上場する為には逆に売上をセーブする必要が出てきてしまいます。
売上をあげる機会をみすみす潰さなければならないというのは、ベンチャーにとって痛手と言えるでしょう。
上場には大きなメリットもありますが、その分デメリットもあります。メリット・デメリットを踏まえた上で、自分の会社に今上場が必要なのかはしっかり考えた方が良いでしょう。
「どうして上場するのか」、「何のために上場するのか」といった動機がしっかりと経営者の中にあることが非常に大切です。
ここまで上場について、そしてベンチャーが上場することのメリットとデメリットについて解説してきました。
では次は東証マザーズの傾向とベンチャー上場のトレンドについて解説していきます。
株取引や上場は時勢や景気にも大きく影響され、その傾向やトレンドも大きく変わってきます。上場するためにはそのトレンドをしっかりと掴んでおくことも重要です。
ベンチャー向けに条件が緩く設定されている東証マザーズですが、近年ではそのハードルが上がってきていると言われています。
きっかけとなったのは2014年に起きた「gumiショック」です。
2014年12月にソーシャルゲーム大手のgumiが上場しましたが、gumiは上場後なんと2ヶ月で業績予想を下方修正し、結果として株価が大暴落しました。
gumiの株価は上場して5年が経っても未だに公開価格の3,300円を越えていません。
このgumiショックは多くの投資家に大打撃を与え、以後東証マザーズは業績予想の精度に強いプレッシャーを与えるようになりました。
またクラウドソーシングやポータルサイト系のような成功事例のある手堅いベンチャーを優先するようにもなりました。
以前の東証マザーズはベンチャー企業の成長性や期待値に投資する、ギャンブルに近い性質がありました。
だからこそ、その分先進的なアイディアを持つベンチャーが多く輩出されたとも言えます。しかし現在の東証マザーズは手堅い優等生的なベンチャーが好まれるように変わってしまいました。
前述した通り、2014年のgumiショック以降の東証マザーズでは事業計画の正確性に非常に重きを置いています。そのため、多くのベンチャーが2Q、3Qの売上高、経常利益が固まるのを待ってから期末に上場しています。
事業計画との誤差は厳しく見られるので、これから上場を考える場合はこれに倣うことをおすすめします。
最後に2020年上半期に上場した注目のベンチャー企業をご紹介します。まずは、BtoB(対企業のビジネス)編です!
データを活用したアナリティクスコンサルティングとマーケティングサービスを行う企業です。
成長が期待されるベンチャーを選出する「ベストベンチャー100」に2016年から2018年の間受賞し続けています。
AIアプリの企画開発やAIプラットフォームの運営、クラウドサービスの運営を行う企業です。
現在AI関連事業やクラウド関連事業は非常に注目度が高い事業であり、ヘッドウォータースはベンチャーながら日本航空や日産自動車などの大手企業と多数取引をしています。
ビジネス分野に特化したナレッジ共有のためのプラットフォームを運営する企業です。
情報サービス領域の中のBtoBプラットフォーム市場は2,900億円以上と言われています。ビジネス分野の情報サービスへのニーズは非常に高く、大きな飛躍が期待されています。
スタートアップ企業への人材派遣や起業支援を行う企業です。
近年、日本ではスタートアップ企業の数が大幅に増えました。2000年頃にはスタートアップ企業が調達した資金額は700億円程度と言われていましたが、2018年にはなんと4,000億まで膨れ上がっています。
スタートアップ企業への支援は非常にニーズが大きい市場と言えるでしょう。
AI技術を用いたサイバーセキュリティサービスを開発・提供している企業です。
前述した通りAI関連事業とクラウド関連事業は非常に注目度が高い事業ですが、ネットセキュリティ関連事業も注目度の高い事業の一つです。
ニーズが大きく注目度も非常に高い企業です。
続いては、対個人のビジネス、BtoC編です。
個人向けのオンライン資格講座や法人向けの社員教育クラウドサービスを提供する企業です。
新型コロナウイルスの影響で、現在オンラインでの講座や研修には非常に大きな注目が集まっています。
女性向けフィットネス施設「カーブス」を運営する企業です。都心にも多くの店舗があるので見たことがある人も多いのではないでしょうか。
従来のフィットネス施設の慣習とは全く異なった独自のビジネスモデルにより、多くの収益を生んでいる企業です。
東京、神奈川、愛知で認可保育所や認可施設を運営する企業です。
「教育を通じて社会に貢献する」をモットーに、独自の幼児教育プログラムの開発を行っています。
日本最大級のクラシファイドサイト「ジモティー」の企画や運営をしている企業です。
様々なカテゴリーの地元の情報を掲載することが出来、主婦を中心に100万人以上のユーザー数を持つサービスです。
今回はベンチャーにとっての上場について、2020年上半期上場のベンチャー企業についてご紹介しました。
ベンチャー経営者の夢でもある上場ですが、上場にはメリットやデメリットがあり、自分の会社に本当に必要なのかを見極めて決断する必要があります。
自社の現状や課題をしっかりと把握して、上場するか否か検討してみてくださいね。
画像出典元:写真AC
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