TOP > イベント > 締切間近!集英社が未来のビジネスパートナーを発掘・育成。『マンガテック2020』説明会レポート
マンガビジネスのトップランナー・集英社が仕掛けるアクセラレータープログラム『マンガテック2020』。新たなビジネスを生み出すための共創プログラムの参加者を募集中です。
そんなプログラムの説明会が、8月20日にオンラインにて行われました。
応募を迷っている方のためにも、説明会で語られた
これらについてご紹介します!
このページの目次
プロフィール
古川 健介 / アル株式会社 代表取締役
プロフィール
細野 修平 / 株式会社集英社 第3編集部 少年ジャンプ+編集長
プロフィール
森 通治 / 株式会社集英社 新規事業開発部 新規事業開発第1課 主任
プロフィール
杉野 雄基 / 株式会社ツクリエ 経営企画グループ プログラム開発チーム マネージャー Startup Hub Tokyoイベントプログラムディレクター / コミュニティマネージャー AICHI STARTUP CAMP プログラムディレクター
説明会は、本プログラムのゼネラルプロデューサーである少年ジャンプ+編集長 細野氏による挨拶からスタート。多くのヒット作を生み出し順風満帆とも思える集英社が、なぜスタートアップと組みたいのか?熱い想いを語られました。
細野さん:
本日参加されている方の中にも、「何で集英社がアクセラレータープログラムをやるの?」と疑問を持つ方がいると思います。しかし、我々としては、必然的にやるべきことだと考えています。
実は集英社は、8年前から本格的にアプリ、デジタルサービスの開発に着手しています。そして、その中で開発に関して様々な企業のサポートを受けました。この経験から、独力でのデジタル領域開拓の難しさを感じると共に、ビジネスパートナーの重要性を強く認識しました。そして、まだまだマンガも出版業界も面白いことができるし、イノベーションが起こせるんじゃないかという期待感を持ったのです。
3年前からは、『アプリ開発コンテスト(現、ジャンプ・デジタルラボ)』というマンガを使ったビジネスを募集する企画を行ってきました。これは企画募集と同時に、新しいビジネスパートナーに出会うことも目的としています。
そして今回の『マンガテック2020』では、デジタルに留まらず、テクノロジーという形で募集領域を広げ、かつ面白いアイデアを求めています。
これが意味するところは、さらなるビジネスパートナーに出会うだけでなく、まだ見ぬ領域での未来のビジネスパートナーを育てることにチャレンジしたいという我々の想いです。新たなビジネスパートナーを発掘し、育てることで、集英社のみならず、出版業界が持つ課題を解決することを期待しています。
そもそも『マンガテック2020』とは何か。
これまで多くのマンガ作品を世に送り出してきた集英社が、従来のマンガビジネスにとらわれない斬新な事業アイデアを持つスタートアップと共に、新たなビジネスを生み出すための共創プログラムです。
自由な発想でこれまで思いつかなかったアイデア・テクノロジーとマンガを組み合わせ、新たな価値を生み出すアイデアを募集しています。
この他、募集ページからは読みきれないポイントを、マンガテックプランニングディレクターの杉野氏が詳しく解説されました。
杉野さん:
マンガと掛け合わせるテクノロジーの定義ですが、デジタル領域だけに留まらず、人間が修練によって手に入れるスキルなども含めた広義の意味でのテクノロジーとしています。募集ページにも建築、美容、農業…などいろいろ書いてますが、これらにこだわる必要はありません。自由な発想で応募してください。
アクセラレータープログラムに採択された時の1番の魅力は、何と言っても「集英社との協業、集英社からの出資の機会を得られる可能性」。集英社の皆さんは面白いアイデア・面白い起業家との出会いを期待しています。例え選考から落ちても、人としての魅力が感じられる場合は、集英社から何かしらのアプローチがあるかもしれません。ぜひ手を抜かずに応募フォームを仕上げてください!
大企業によるアクセラレータープログラムの募集を見かけることが年々増えてきました。これは必然なのか、それともただの流行なのか。
マンガテックエバンジェリスト兼メンターであるけんすうこと古川氏は、大企業との共創こそ日本発スタートアップの勝ちパターンだと語られました。
けんすうさん:
いわゆるGAFAMをはじめとするアメリカ発スタートアップの強さの理由は、その投資量。
2018年アメリカのスタートアップへの投資額は14兆円、対して日本は3880億円。日米の投資額の差は明白です。特にシード期における、エンジェル投資家が優れた起業家に投資し、その起業家が成功したらエンジェル投資家になり、次の起業家にまた投資をする...というエコシステムがしっかり機能しているのも要因です。
中国発スタートアップもかなり成長していますが、これはテクノロジーに投資していこうという国家戦略が影響しています。2005~2015年でVCの数は5倍、投資額も10倍に伸びています。さらに、グローバル企業を国内から締め出すことで、国内スタートアップの盛り上げに成功しています。
さて、アメリカや中国と比べ、資本力や政府のバックアップが少ない日本のスタートアップはどうすればいいでしょうか?
僕は、大企業と共に創っていくスタイルが、アメリカ・中国に対抗できる有効な手段だと思っています。
大企業には、自分たちの子会社をバックアップして、自分たちを超えるような会社を作るという文化があります。大企業が持つ資本力・知名度・人脈・リスク管理手法などスタートアップが弱いところを支援することで、成長させた事例がいくつもあります。
一方で、大企業との提携やアクセラレータープログラムのうまくいかない事例として、スタートアップ側が大企業に過度な期待をしてしまうケースをよく見かけます。大変そうなことを全部やってくれると思いがちですが、大企業だってそんなに余裕がある訳じゃない。
これは僕の持論ですが、大企業の中で予算を確保したり事業を進めるのに大事なのは、結局のところ社内政治と社内調整なんです。ビジネスは、利害関係を調整し続けて最大公約数を目指すのが基本ですから、そこを疎かにすれば、当然大企業とはうまくやっていけない。大企業の中の1社員として動くくらいの気持ちで取り組むのがめちゃくちゃ大事だと思います。
大企業とスタートアップ、お互いに協力することでシナジーが生まれ、もっと一緒にやりたいね!となってから、事業拡大や出資を受ける相談をするといいのではないでしょうか?
最後に、今回の「マンガテック2020」は、スタートアップにとってかなりチャンスだと思います。
世界的にも有名なコンテンツをたくさん持っている集英社ですが、想像以上にオープンというか、新しいものに躊躇しない文化があると思っていて。そんな集英社が 広くアイデアを募集しているというのは貴重な機会です。
ぜひチャレンジしてみてください!
ここからは集英社 新規事業開発部の森氏も加わり、本プログラムでどんなアイデアを求めているのか、具体的な例も交えつつパネルトークが繰り広げられました。
集英社の考え方、アイデアのヒントがギュッと詰まっています!
杉野さん:
さて、こんな質問を用意しました。
「実際マンガテックってどのくらいエッジの効いたアイデアが欲しいの?」
これに対していくつかアイデアも用意してみました。
例① 手軽にマンガのシーンを3Dプリンターでフィギュア化するサービス
例② 作品の次の展開を作者と一緒に考えてくれるAI
例③ マンガ紙面のヒートマップから売れるマンガ企画量産デジタルマーケティング
例④ 紙ページ送りで発生する摩擦エネルギーで行うマンガ発電
例⑤ おもしろいマンガを読ませておいしく育てるマンガ畜産
これらをきっかけに、これから応募しようとする皆さんに、「このアイデアはあり」「これはなし」といったヒントになればいいなと。
まずは細野さん、いかがでしょうか?
細野さん:
②と③はマンガの現場では要らないですね。マンガを面白くする、作るノウハウについては僕らがすでに持っているので、そこではないアイデアが欲しいです。
④とか⑤は…、実現する可能性があるなら全然ありだと思いますよ。
①は面白いと思います。3Dプリンターって結構手軽に手に入るようになってますし。マンガは2Dですけど、それこそAIなど使って3D空間に置き換えられそうなので、何かできそうだなと感じました。
森さん:
②と③はマンガ業界に限られてしまうのがもったいないですよね。少し話ズレますが、特定の作品でしか実現しない応用力の低いアイデアだとどうしても優先順位下がってしまうと思います。
①については、グッズ市場は大きいので面白いなと思います。フィギュアのクオリティをどこまで上げられるかは問題ですが、最初は荒くても後からどんどん上げていけるので、チャレンジとしては面白いと思います。
④⑤は全然分からないので、逆にけんすうさんに聞いてみたいです!
けんすうさん:
④⑤ができるなら、もっと賢いお金稼ぎができそうだなと思いました(笑)
点のアイデアよりも、線で考えるアイデアがあるといいですね。世の中の流れから、このタイミングだからこそこのアイデアがある、みたいな。アイデアに「Why now=なぜ今それをやるのか」があるとベストです。
杉野さん:
私が出した5案はまさにそのWhy nowが無い訳ですが(笑)応募する皆さんにはそこもしっかり考えていただきたいですね。
杉野さん:
それでは次の質問に移ります。
「集英社ができることって何?」
細野さん:
アイデア次第で、出資するところまでやらせていただきたいと思っています。その前段としても、アクセラレータープログラムを通して、ジャンプ+を含めいろいろなデジタルサービスをやってきた経験を共有しながらサポートすることが可能です。
森さん:
出版、キャラクター、ライセンス業界って独特のカルチャーがあるんですよね。将来的にエンタメ業界で何かやりたい、エンタメ業界を知りたい方には、その辺りのノウハウを共有できると思います。アニメ業界やゲーム業界など、マンガ業界以外のコネクションもあるので、それを含めた視野でビジネスをサポートできるんじゃないかと。場合によっては他業界の方も含めて一緒にやっていくこともあり得るので、幅広い視点でアイデアを応募してほしいです。
杉野さん:
けんすうさん、外部の方から見た集英社の印象っていかがですか?
けんすうさん:
今、ジャンプ+で『推しジャン』というサービスをやらせていただいてまして。こちらから提案して、やりましょうとなって、一ヵ月後にはリリースしているというスピード感と、サービスに組み込めますよという懐の広さがあるので、提案をしやすい雰囲気の会社だなと感じています。
一方、スタートアップが気を付けないといけないのは、作品の人気に乗っかるだけのアイデアにならないようにすることですね。例えば、『ONE PIECE』と組んで○○をやったらヒットするっていうのは当たり前で、それは99.9%が作品の力になってしまいます。
杉野さん:
次の質問は細野さんにお聞きします。
「集英社として抱えている課題はある?」
細野さん:
いろいろありますが、例えば子どもや若い読者がどんどん減ってきているので、そこを掴みにいきたいと思っています。集英社の出版ラインナップ見てもらうと分かると思いますが、児童向けはそんなに多くないんですよね。昔はジャンプがそこを担っていたんですが、今は昔ほど子どもに浸透していないという課題があります。こういった課題を解決する方向のアイデアも非常にありですね。
杉野さん:
続いての質問はけんすうさんにお聞きします。
「メンターはどんなことをしてくれる?」
けんすうさん:
例えば僕なら、IT系ビジネスの事業化支援や、ハードを開発する際にアタックするべき企業の紹介とか。メンターの得意分野を活かしたサポートができると思います。一方で、研究開発についてのノウハウなどは持っていないので、そこはあまり期待されると困ってしまうかも…。
杉野さん:
最後の質問です。
「マンガの未来はどうなってほしい?」
細野さん:
マンガ(読書)の同時体験など、体験の仕方にまだ可能性がたくさん残っているなと思っていて。今僕らがやっているマンガを読むということ以上の新しい体験があるんじゃないかと思っています。それが実現して、今以上にマンガがもっと面白いものとしてみんなに認識されて広まったらいいなと思います。
森さん:
マンガに限らず、僕はクリエイターにとってより良い世界になってほしいです。集英社ではマンガを中心に才能の発掘をしていますが、例えばマンガの表現やマンガビジネスの幅が広がっていくと、いろんな業界の人がマンガ業界に参入してお金を稼いで、それを見てチャレンジする人が増えるという循環ができる。そうなるとこの業界がもっと面白くなると思っています。今回応募いただくアイデアによって、面白いものを生む土壌を広げられたらいいなと思っています。
けんすうさん:
僕は世界中の国が日本くらいマンガを読むようになって、グローバルのマンガ市場が5~6兆円規模になるといいなと思っています。そうなると日本の漫画家がもっと活躍できたり、収入が増えたり、チャレンジする人が増えると思うので。
自分としては、出版業界に対する危機感が強くあります。
デジタル事業が調子良くなってきているので勘違いされがちですが、出版業界には流通・取次・配本など、僕が入社した約20年以上前から改善すべきといわれている問題がずっと残っています。
そのような相変わらず古いままの出版という業態に対して、テクノロジーで解決していくようなアイデアもたくさん欲しいと考えています。皆さんのご応募をお待ちしています!
「『マンガテック2020』は、スタートアップにとってかなりチャンスなプログラム」と感じた1時間半でした。
応募締切は9月30日。この機会を逃さないようチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
募集ページはこちらか下のボタンからご覧いただけます。
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