ジョブローテーションとは|目的から効果的な期間、成功事例まで解説

ジョブローテーションとは|目的から効果的な期間、成功事例まで解説

記事更新日: 2021/04/16

執筆: 編集部

ジョブローテーションは、社員の能力開発を主な目的として、定期的に職務や部署の変更を行うことを言います。ジェネラリスト育成のために、終身雇用を前提とする日本企業ではよく浸透してきたシステムです。

グローバリゼーションや各業務の高度化・複雑化によって、時代にふさわしくないという意見もある一方で、導入に成功し人材の育成に成功している例もあります。

本記事では、ジョブローテーションの目的やメリット・デメリットを解説し、実際に導入する流れや効果的な期間、成功事例などについても述べていきます。

ジョブローテーションとは?

ジョブローテーションとは、人材育成計画に基づいて、定期的に社員に職務・職場の変更を行う制度のことを言います。

戦略的人事異動とも計画的人事異動とも言われます。社内の多様な業務を経験させることで、能力開発のほか、社内の風通しをよくしたり組織の活性化にも役立ちます。

一度の配属期間は3ヶ月ほどの短いスパンから、3~5年での長い周期まで様々です。また、異動範囲も部署や勤務地の移動について言う場合もあれば、部署内の業務・職務変更のみを指す場合もあります。

1. ジョブローテーション導入の背景

海外では個人のスキルアップは転職によって自分で勝ち取るスタイルが主流ですが、終身雇用が前提となっていた日本企業では、その会社に詳しい優秀な人材が求められてきました。

担当職務に詳しいだけでなく、会社のあらゆる業務に精通し、運営者としての視点を持てる人材です。

ジョブローテーションでは、多様な業務を経験させることでそういったジェネラリストや幹部候補を育成できるため、日本では多くの大企業・中堅企業に導入されてきました。

2. ジョブローテーションの目的

ジョブローテーションは幹部候補生もしくは新入社員を対象に行われることが多いですが、全社員を対象に行う企業もあります。

新入社員を対象とした場合

新入社員には、適正を見抜く目的で比較的短い期間でのジョブローテーションが導入されることがあります。社員にとってもあらゆる業務を回ることで、自分の適正・興味を知るだけでなく、社内全体の流れの把握や人材交流に役立ちます。

中間層の社員を対象とした場合

 ある一定の能力のある中間層の社員には、グループや部署をまとめるリーダーの育成を目的に行われます。職務を変えることによるマンネリ防止・新しい職務の習得・他業務理解・部署の活性化を図る場合もあります。

幹部候補生を対象とした場合

言うまでもなく、総合的スキルをもつジェネラリスト育成のために行われます。

いろんな社員と交流させることによる人材把握・人脈構築、部署間の関係理解、経営者・運営者的視点や包括的視野を持たせる、改善点発見のきっかけとする、人を動かす力の養成などの目的もあります。

より理解・把握・スキルの養成が難しいことから、比較的長いスパン(3~5年)で行われます。

3. 人事異動とジョブローテーションの違い

人事異動は企業組織の中で、人材の配置・地位・勤務状態を変えることを言います。人事上のすべての変更を指しているので、配置転換・転勤・出向・解任・昇格・降格のほか、採用・退職なども含まれます。

ジョブローテーションは人事異動の一つの形態ではあります。しかし、人事異動では欠員を補う、組織を強化するというように主眼が組織にあるのに対して、人材育成を目的とするジョブローテーションでは人材に主眼がある点で違うと言えるでしょう。

4. 社内公募とジョブローテーションの違い

社内公募は、企業が必要とする役職や職種などの条件を社内で一般公開し、希望者を公募したうえで選定する制度です。こちらも人事異動の一形態ですが、社員の意思が反映されるかどうかという点で違いがあります。

ジョブローテーションは社員の意思に関係なく、人事部の判断によって全社員の中から決定されます。

ジョブローテーションのメリット

ジョブローテーションには会社側・社員側双方の視点から見て、以下のようなメリットがあげられます。

1. 会社側のメリット

 人材の適性がわかり、効率よい人事判断に役立つ。

特に新入研修としてジョブローテーションを行う場合、人材の適正を効率的に把握することができ、その後の人事配置が適材適所に行えるメリットがあります。

 ジェネラリスト・幹部候補生を育成できる。

多様な部署・職種の経験をさせることで、あらゆるスキル・知識の習得に役立ちます。また、包括的・多角的視野が身につき、経営者的視点を持つことができるので、ジェネラル・幹部候補生の育成にも効果的です。

部署間の交流が活発になり、業務上の連携がスムーズに進む。

ジョブローテーションによって人員入れ替えを頻繁に行うと、部署間の垣根がなくなり交流が活発になります。前職での人脈を活用した業務の連携など、仕事を円滑に進めるのにも役立ちます。

その他のメリット

その他にも、ジョブローテーションを導入することによって以下のようなメリットがあります。

  • 新しいアイディア・イノベーションを期待できる。
  • 組織の活性化につながる。
  • 業務のブラックボックス化(属人化)を防ぐ。
  • 欠員などいざという時の配置転換に柔軟に対応できる。
  • 向上心のある人材にとっては魅力的な制度なので、採用時の人材確保に役立つ。

 

2. 社員側のメリット

ジョブローテーションは、短期間に多くの業務を経験し人脈も作れるため、社員にとっても以下のようなメリットがあります。

様々な業務理解を深められる

・自分の適性・興味を見つけられる。

人脈づくりができ、将来仕事をスムーズに進められる。

・部署の関係性、業務の繋がりがわかり、会社をよく知ることができる。

・包括的・多角的視野が身につく。

・マンネリ防止やモチベーションアップにつながる。

 

 ジョブローテーションのデメリット

反対に、ジョブローテーションにはデメリットも存在します。会社側・社員側の両視点からのデメリットは以下のとおりです。

1. 会社側のデメリット

スペシャリストの育成には向かない。

ジョブローテーションによって短期間で部署移動させてしまうと、職務の大まかな理解はできても専門的知識・スキルまでは習得させられません。スペシャリストの育成には向かないというデメリットがあります。

一時業務が停滞したり、生産性が低下することもある。

ローテーションのたびに、引き継ぎや新人指導などの労力と時間がかかるため、一時的に業務が滞ったり、生産性が低下するリスクもあります。

社員の退職リスクがある。

ジョブローテーションに賛同しない社員は退職を希望する場合があります。

理由には、「自分の適性が一定の業務に合わない」「新しい部署の社員と馴染めない」「希望しない職種である」「プロジェクト途中でのローテーションによるモチベーション低下」などが考えられます。

 職種間で給与体系が違う場合に導入が難しい。 

職種間で給与体系が違う場合は、異動によって給与額が変わったりモチベーションが低下するといった弊害があります。社員が納得できる説明や策を講じなければ反対する社員も増え、導入が難しくなるでしょう。

2. 社員側のデメリット

また、短期間で業務をかえるジョブローテーションでは、社員にとっても以下のようなデメリットがあります。

・短期間での移動を繰り返していると専門性が身につかない。

移動直後は新人状態になるので慣れるのに時間がかかる。

・希望しない職種も一定期間行う必要がある。

・転職・再就職では不利になる可能性もある。

 

ジョブローテーション導入のポイント

ジョブローテーションは、終身雇用を前提とした従来的な日本企業に適した制度であるため、導入企業が多くありました。

ただ、グローバリゼーションによって個人のスキルアップの手段として転職を選択する人が増えている現在では、時代に合わないと言う声も上がっています

また、各業務が高度化・複雑化している現状で、短期間での業務習得は難しいという評価もあります。

そのため、ジョブローテーションの導入時には以下のポイントを押さえると良いでしょう。

1. 自社の目指す方向・求める人材像を明確にする

まず、それぞれの企業が目指す方向や求める人材像をはっきりさせることが大事です。どういったスキルを持った人材が必要かを突き詰め、全く職種の異なる部署にもまんべんなくローテーションさせるのか、関連した職種のみに限定するのかと言った点などを決定していきます。

2. 導入にあたって徹底的な周知をする

導入には社員への説明が欠かせません。制度に反対する社員にはより徹底した説明、不安な社員には精神面でのサポート体制も必要です。

また、新規採用時には自社の方針を明確に打ち出し、ジョブローテーションによって社内でキャリアアップが可能であることを周知させましょう。方針に賛同する求職者が集まるため効率的です。

3. 社員の希望・キャリアプランの汲み上げも必要

場合によっては各人材の客観的な適正・スキルだけを判断材料としたジョブローテーションではなく、本人の希望やキャリアプランを重視したプロセスの設計も必要となるでしょう。社員のモチベーションアップにつながり、離職率も下がります。


ジョブローテーションに向いている企業・職種

それぞれの職種や企業にジョブローテーションを取り入れられるかを検討するには、ジョブローテーションに向いている企業・職種はどのようなものか参考にすると、イメージしやすいでしょう。

・社員数の多い企業

 人員が多ければ業務が回らなくなるリスクが小さいため

・長期的に社員を育成していきたい企業

 専門知識の習得を急ぐ必要はないため

・業務間に密接な繋がりがある企業

 多様な業務を知ることで業務を円滑にすすめることができるため

・複合的なサービスを提供している企業

 いろんな業務を知ることで相乗効果が期待できるため

・後にジェネラリストかスペシャリストかを選択するキャリアパスをとっている企業

 選択するためには様々な業務を経験させる必要があるため

・企業ポリシーを統一・浸透させたい企業

 M&Aを行った会社や店舗・支社の多い会社など

・幅広い知識が必要となる職種

 現場と本社両方の業務理解が必要な職種など。

・イレギュラー対応が必要ない職種

 経験やノウハウの必要がない、マニュアル化できる業務なら引き継ぎが楽なため

・短期間プロジェクトを行う職種

 担当プロジェクトに最後まで関われないのはモチベーション低下につながるため

 

ジョブローテーションの効果的な期間

ジョブローテーションの期間は目的や企業によって様々です。新入社員が全体的な業務を把握するためには、それぞれの異動期間は3~6ヶ月が良いとされています。

一方幹部候補の育成の場合、業務理解のみならず人を動かしていく力も必要なので、3~5年が効果的と言えるでしょう。一般的な人事異動の周期も多くの企業で3年となっています。

ジョブローテーション導入の流れ 

1. 社員へのリサーチ

もちろんリサーチの有無は企業の判断に任せられますが、必要な場合は、「キャリアプラン・スキル・希望職種・異動時期・介護や育児の有無」などについて、社員に聞き取りを行います。

2. 「だれ」を異動するか決める

勤務年数や年齢・スキルなどをもとに対象者を決定します。

3. 「どこ」へ配属させるか決める

配属先の欠員状態とともに、対象者のキャリアプラン・性格についても考慮し、配属先を決定します。

4. 「どれだけ」行うか、実施期間や目標を決める

キャリアパスの中のこの期間に何を期待するか、目的をはっきりさせた上で、具体的な実施期間と習得目標を決定します。

5. 対象者・配属先への連絡

担当業務に支障が出ないように、前もって双方に実施内容を伝えます。初めて異動する対象者には徹底した事前説明を行い、精神面でのサポート体制を整えておくと安心です。また、モチベーションを上げる言葉がけも重要です。配属先では指導役やフォロー役人員の決定、業務マニュアルの作成を行っておくと円滑に進むでしょう。

6. 実施中は定期的に現状確認

実施中は定期的に習得事項の確認を行い、計画通りにスキルアップしているかチェックするようにしましょう。


ジョブローテーションの事例

1. 富士フィルム

 人材育成の基本をOJTに置く富士フィルムでは、各人に合わせた「育成計画」を策定し、3年後に目指す姿を上司・指導員と共有しながら成長できる環境が整っています。その育成状況に合わせたジョブローテーションを行い、多様な価値観に触れさせることで人間としての成長もサポートしています。各人の成長計画に寄り添っているのが魅力の事例です。

2. 双日

総合商社の双日では、人材育成・組織力の向上・社員の活性化を目的としたジョブローテーションを2009年から導入しています。

また、出向や海外駐在を含む3つ以上の業務経験は管理職登用の要件ともなっています。異動のなかった社員にも、異なる職種の経験を積ませ、タフな人材育成を積極的に行っています。

3. 三井ホーム

三井ホームも総合職採用をした社員に向け、ジョブローテーションを行っています。

家づくりに関わる「営業担当」「社内設計」「設計担当」「工事担当」「本社技術スタッフ」「本社事務スタッフ」のあらゆる業務を体験させることで、お客様の期待以上の価値を提供できるプロフェッショナルを目指しています。


まとめ

ジョブローテーションにはメリット・デメリットがあり、制度を良しとしない企業や社員も増えています。

そのため、会社が理想とする方針をきちんと設計し、採用時から社員の理解を得たり、希望・キャリアプランを汲み取れる工夫を行うことが必要です。

導入の仕方によっては非常に有効な人材育成制度となるので、ぜひ検討されると良いでしょう。

画像出典元:Burst

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