ペーパーレス化や業務効率化などを目的とし、給与明細を電子化する企業は増えています。
給与明細の電子化は、印刷、封入、郵送など、様々な手間やコストが削減できるなどのメリットが得られますが、一方でデメリットも存在しています。
この記事では、給与明細の電子化に伴うメリット・デメリット、電子化の導入方法、おすすめのWeb給与明細システムのご紹介をしていきます!
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このページの目次
給与明細の電子化とは、従来紙で作成し従業員に交付していた給与明細を、PDFなどの形で電子データ化することをいいます。
給与明細の電子化は、ペーパーレス推進、コスト削減、テレワークなど多様な働き方への対応に非常に適しており、給与明細の作成から従業員への交付まで一連の流れを全てWebシステム上で行うことができるWeb給与明細システムも多くの企業で導入されています。
ここでは、給与明細電子化のメリットを会社側、従業員、それぞれの視点から解説します。
給与明細電子化による会社側のメリットは以下が挙げられます。
給与明細電子化による従業員側のメリットは以下が挙げられます。
では、実際に給与明細を電子化する方法を確認していきましょう。
平成19年1月1日の税制改正によって「給与明細・賞与明細・源泉徴収票」の電子交付が認められ、その前提として、
受給者(交付を受ける者)に対し、あらかじめ、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、電磁的方法又は書面で承諾を得ること
(所令352の31、所令3561)(引用元:国税庁)
つまり、給与明細を電子化する際には従業員の同意を得なければならないということが義務付けられています。
また、給与明細を電子化にしても、従業員から書面で請求された場合は、従来どおり用紙にて給与明細書を発行し、交付しなければなりません。
「すべての従業員から同意(承諾)を得ること」が、給与明細を電子化する際には、まず行わなければならないことになります。
なお、従業員に承諾を得る際は書面、電子メール、Webなどの方法で行うのが一般的です。
下記は、会社が従業員に対して電子化を承諾してもらうための同意書の例です。
2019年〇〇月〇〇日
給与明細等電子交付同意書
株式会社 〇〇〇〇
人事総務部
2007年1月1日から所得税法改正により、給与所得明細書の電子配布が認められました。当社におきましても環境面にも配慮した企業を目指すため、紙媒体で交付していた給与所得明細書を〇年〇月分より電子交付へ切り替えていく運びとなりました。つきましては下記事項をご確認の上、同意下さいますようお願い申し上げます。
同意事項
2019年〇〇月〇〇日
パソコン:
携 帯:
※電子交付の配信元のメールアドレスは「○○○@○○○.co.jp」となります。
※迷惑メール対策などでメール受信設定をされている場合は、本メールアドレスからのメールを受信できるように設定してください。
※PDFファイルを開くためには、PDF閲覧ソフト「アクロバットリーダー」が必要です。
※個人情報に関しましては、当社の規定に従い、それらの取り扱いには細心の注意を払います。
以上、上記電子交付事項について同意します。
承認日 年 月 日
受給者氏名 ㊞
同意書の内容に対し、従業員から署名捺印を得て初めて、電子化の承諾を得たことになります。
なお、同意書の作成について分からないことなどある場合は、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
従業員からの同意を得られたら、あとは給与明細を電子化するツールを選び導入していきます。
国税庁によれば、電子交付の方法として、以下が認められています。
昨今は個別で電子メールなどに添付するのではなく、人事労務管理システムの1つであるWeb給与明細システムを利用して電子化する企業が圧倒的に増えています。
人事労務のみならず、様々な社内の基幹システムと連携しているケースもあるので、社内のニーズに沿ってシステムを選定していくと良いでしょう。
Web給与明細システムに関しては、各社のサービスを比較している資料・記事がありますので、詳しくはご確認ください。
結論から言うと、法改正により確定申告の際に源泉徴収票の添付が不要になったので、必要なし!です。
かつては、確定申告の際に添付する源泉徴収票は、会社から書面で交付されたの源泉徴収票を添付する必要がありました。
しかし、平成31年4月1日以降の確定申告の提出から、源泉徴収票の添付は不要とされたため、会社が給与明細・源泉徴収票を電子化していたとしても、確定申告には関係ありません。
Web給与明細システムは、ツールによっては、人事労務システムの機能の1つとして、Web給与明細が利用できるものもあります。
一般的に搭載されている機能は以下になります。
次の章では、おすすめのWeb給与明細システムをご紹介していきます。
おすすめは、SmartHR、オフィスステーション 給与明細、マネーフォワード クラウド給与、ジョブカン給与計算、sai*reco(サイレコ)の5つです。
いずれもWeb給与明細システムに求められているPCやスマホでの明細閲覧・従業員による明細印刷、源泉徴収票の作成機能が備わっています。
給与明細のメール送信サービスはサイレコのみ、未対応です。
画像出典元:「SmartHR」公式HP
SmartHRは給与明細の電子化機能を備えている、クラウド労務管理システムです。
源泉徴収票や年末調整、給与明細のメール送信などWeb給与明細として十分な機能を備えています。
労務管理システムとしては雇用契約から入社手続きがペーパーレスで行えるほか、電子申請(社会保険・雇用保険など)が可能です。
導入企業 | テレビ朝日、メルカリ、楽天、富士ゼロックス、日清食品ホールディングス、大和証券、星野リゾート、イオン、産経デジタル など |
無料トライアル | プロフェッショナル | スタンダード | スモール | ¥0 |
15日間 | お問い合わせ | お問い合わせ | お問い合わせ | 0円 |
基本的に有料プランは非公開のためお問い合わせが必要です。
30名以下の企業に限定されている「¥0プラン」は人事労務手続きに必要な機能だけが備わっている無料プランです。15日間の無料トライアル終了後も引き続き無料で利用できます。
その他
501人〜1000人
住民票の変更の手続きもフォーマットに入力するだけで簡単
会社からの書類の確認などが来ているときは画面に通知されるので、分かりやすい。住民票の変更時に会社へ報告する際、フォーマットに入力するだけなので簡単にできる。給与明細のデータが過去分まで遡って確認ができるので、書類が欲しい際にもすぐに用意することができる。
メーカー/製造
501人〜1000人
入力時にエラーが発生すると入力し直しになる
メインサーバーは安定しているが、どれだけネットワークが安定していてもランダムで文字入力時のラグが発生する。無理に入力し続けようとするとサーバーが落ち、Safariから開き直しになるため、一時保存機能は最低限欲しい。色が水色だと文字が見にくい。もう少し明るい色を使用してほしい。
画像出典元:「オフィスステーション 給与明細」公式HP
「オフィスステーション 給与明細」は既存給与ソフトのデータをAPI・CSVで簡単に連携できるWeb給与明細サービス。
給与・賞与明細をWeb上で配信できるため、毎月の給与明細の印刷や封入作業がなくなり業務効率化とペーパーレス化が進められます。
ただし、給与計算機能は搭載されていないため、サービス単体で給与明細を発行できない点は注意が必要です。
導入企業 | TOYOTA、ポラスグループ、APAグループ、スヴェンソンホールディングス、日本生命 など |
無料トライアル | 初期費用 | 従業員19名以下 | 従業員20~499名 |
30日間 | 登録料110,000円 | 一律1,100円/月 | 1人あたり55円/月 |
オフィスステーション 給与明細の初期費用は登録料110,000円のみ。
初期費用に20万円かかるサービスもあるなかではお得な設定です。
また、1名あたりの費用も20名以上であれば1人あたり55円/月で利用できそれだけでも十分安いのですが、人数が増えれば増えるほど安くなり、801名以上の企業であれば33円/月で利用できます。
マネーフォワードクラウドクラウド給与は、給与計算や銀行との振込連携によるオンラインでの一括振り込み、Webでの明細閲覧・発行が行えるクラウド給与計算ソフトです。
クラウド給与を契約すると、マネーフォワードクラウドの他サービス4つの無料プランが利用できます。
ジョブカン勤怠管理など外部サービスとの連携数は業界最多。従業員の勤怠管理データと給与計算を紐づけてシームレスな運用が可能です。
法人は月額2,980円、個人事業主は月額880円が基本料金(年額プラン)となります。
基本料金には5名分までの料金が含まれており、6名以上の場合は1名あたり300円が加算されます(※クラウド給与の場合)。
クラウド給与に加え、会計・確定申告、請求書、経費、マイナン バー、勤怠、社会保険のサービスがセットになっており、有料プランの 契約ですべてのサービスを利用することが可能です(利用人数によっ て従量課金が発生します)。
医療
11人〜30人
初期設定さえクリアすればとても便利
今までエクセルで管理していました。ツールを使用することで、勤怠チェックと給与の照合に最低3日かかっていたのが、通常1日程度に減らせました。導入するときには初期設定さえ時間を取れれば、あとは選択式になっています。設定がうまくできれば、あとはすごく便利なツールだと思うので、おすすめします。
小売
2人〜10人
知識がないと使いこなせない
社会保険の随時改定など、全般的な社会保険業務のやり方がわかりずらかった。毎月の給与計算には支障はないが、労働保険についても非常にわかりずらく、こういった臨時的に発生する業務にはむいてなかった。上手に使いこなせる人はよいかもしれないが、知識がないと、できたつもりになって実際には間違えた数字を反映する可能性がある。
ジョブカン給与計算はWeb給与明細の機能を備えたクラウド「給与計算ソフト」なので、Web給与明細に特化したシステムでは不可能な給与計算や賞与計算もできます。
勤怠管理や労務管理などのジョブカンシリーズとの連携が可能で、これらと連携して利用すれば各従業員の勤怠データとの紐づけも簡単に行えます。
さらにToDoリストやリマインド機能でミスを防ぐことが可能に。給与計算業務に関する作業時間や人件費でお悩みの会社にはピッタリのツールといえるでしょう。
導入企業 | WACUL、キャプサー、ノハナ、ホームネット など |
無料トライアル | 無料プラン | 有料プラン | 大規模(500名目安)の企業向け |
30日間 | 0円/月 | 400円/月 | お問い合わせ |
給与計算ソフトの機能が利用できるため従業員1名につき月額400円と他のWeb給与明細サービスと比べると割高ですが、ジョブカンシリーズを利用している場合は特別料金となります。
従業員数が500名を超える場合は特別プランとなりますので、詳細は資料をご参照ください。
サービス
51人〜100人
WEB上で明細や源泉徴収票などを配信できる
WEB上で明細や源泉徴収票などを配信できることから、印刷する手間も省けました。ペーパーレスにより経費の削減にもなったので、非常に良かったです。エクセルで給与計算していたことと比べると管理も楽になりました。
不動産
501人〜1000人
見やすいがコピーして使用出来ないのが不便
一度申請したものが根拠資料不足や文言不足で帰ってきた際、添付した後に一時保存ができないことに気づきました。Googleアカウントを使っている会社は、社員の方も便利に感じると思います。間違え防止の為なのか同じ内容の申請の書式でも、前の内容をコピーして利用できないので、またいちいち入力するのが少し不便に感じるかもしれません。
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上記期間中は、有料プランでのみ使用できる機能を含めた全機能をお試しいただけます。
資料請求は以下のフォームから。備考欄に「乗り換えキャンペーン参加」とご記入をお願いします。
画像出典元:「sai*reco」公式HP
sai*reco(サイレコ)は、Web給与明細の機能を備えているクラウド人事管理システムです。
人事異動といった従業員情報の管理から人事評価、社内申請の承認、組織管理といった機能も利用することができます。
人事管理システムの機能が豊富で高機能なものが多いため、初期費用・月額料金ともに費用が高く設定されています。
導入企業 | GMOあおぞらネット銀行、LVMHファッション・グループ・ジャパン、エムエム総研 など |
無料トライアル | 初期費用 | 月額料金 | システム利用料 |
あり(申し込み可能) | 400,000円 | 一律22,000円/月(100名以下) 101名以上は1人あたり220円/月 |
1,000円/月 |
初回はシステム導入費として400,000円必要です。
システム利用費は、100名以下の場合:月額22,000円、101名を超える場合:1名あたり月額220円積算となります。
その他、システムメンテナンス費用が月額1,000円かかります。
メーカー
51人〜100人
人事に対して具体的な根拠を持たせられる
結果だけでなくその結果に行きつくまでの過程もしっかりと見える化をして評価ができるのが嬉しいです。業界問わず、誰かを評価する立場にある人にオススメしたいツールです。「なぜその人事になったのか」ということに具体的な根拠をもたせることができるのは助かると思います。
給与明細の電子化には非常に多くのメリットがありますが、導入する際はデメリットや注意点などもしっかり把握しておくべきです。
企業におけるペーパーレス化や業務効率化を図る動きは年々加速し、今後も給与明細を電子化にする企業が増えていくことでしょう。
これから給与明細システムを導入する企業は、メリットだけではなく、デメリットや注意点なども良く理解し、比較検討した上での導入しましょう。
画像出典元:Pixabay / 写真AC