会社の役員といえば取締役を思い浮かべますが、会社の役員は取締役だけではありません。取締役の他に監査役・執行役という役員が存在します。
会社には取締役が必要ですが、実は監査役の設置は義務ではありません。しかし、監査役の設置が義務化されないためには条件があります。そこで、今回は監査役についてご紹介します。
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以前の株式会社では「株主総会」「取締役会」「監査役」が必須でした。しかし、平成18年5月1日に会社法が施行され、一定の条件を満たせば監査役を設置しなくてもよくなりました。
従来は株式会社の場合取締役3名、監査役1名が必須でしたが、会社法が施行されてからは以前に比べて自由な機関設計ができ、取締役1名でも法人の設立が可能になっています。
そのためか、会社法が施行された後に設立された会社は、監査役が設置されていない事が多いです。
監査役を設置しなくてもよい条件は1つではありません。複数のパターンがあるので確認しましょう。
株式譲渡制限会社である場合、監査役の設置は任意なため監査役を設置する義務がありません。
株式譲渡制限会社は、定款に「株式を譲渡する時は会社の承認が必要」であることが記載されている会社です。
株式譲渡制限会社の株主は、自分が所有している株式を譲渡するのに、会社の承認を得る必要があります。
株式の譲渡制限があると会社側は、好ましくない相手に株が譲渡されるのを防ぐことができます。
取締役会を設置しない場合、監査役の設置は任意なため監査役を設置する義務がありません。
株式譲渡制限会社であっても、取締役会を設置することができます。
取締役会を設置している会社は原則、監査役の設置が必要になります。
取締役会を設置して会計参与を設置する場合、監査役の設置は必要ありません。
取締役会を設置している会社は監査役の設置が必要ですが、監査役に代えて会計参与を設置することができます。
会計参与はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、会社法で新たに設置されたものです。
会計参与は税理士・公認会計士などで構成されており、決算書の作成・説明などを実施する内部の機関です。監査役と会計参与はどちらも設置することが可能です。
会計参与は決算書の信頼性の向上に繋がると期待されていましたが、責任が重い・報酬が高いなどの理由であまり普及していません。
会社法の施行以降、監査役の設置は条件を満たせば必須ではなくなりましたが、そもそも監査役とは何でしょうか?
簡単に言ってしまえば監査役は「取締役や会社が不正などをしていないか監査する」「計算関係書類などが適正に処理されているか監査する」役割を担っています。
監査役は大きく「社内監査役」と「社外監査役」に分けられます。社内監査役と社外監査くについては後ほどご紹介します。
監査役には主に以下のような権限があります。
監査役は取締役を監査する立場にあるため、監査役は株主総会で選任されます。
監査役を取締役会で選任してしまうと、取締役に有利な人が選ばれる可能性が高くなってしまいます。
監査役は基本的に自由に選ぶことができますが、実は監査役は誰でもなれるわけではありません。
例えば、取締役と監査役を兼任することができてしまうと「監査する立場」と「監査される立場」が同じになり、監査の信憑性が薄れてしまいます。
そのため、会社の取締役・従業員・会計参与・子会社の取締役などは監査役になることができません。さらに会社法などに違反した人もなれません。
子会社の取締役などは監査役を兼務することができませんが、親会社の取締役などは監査役を兼務することができます。
社内監査役は、その会社で取締役や従業員などとして勤務していた方のことです。
社内監査役の特徴は、その会社の取締役や従業員などの勤務経験があるため、社外監査役に比べて会社の内部事情に詳しいことです。
そのため、社内監査役には「会社の問題点を発見しやすい」「内部情報の収集が得意」といったメリットがあります。
社内監査役には「社内の問題点に気づきにくい」「取締役などに厳しい意見を言いづらい」といったデメリットがあります。
社内監査役は言い換えれば、その会社出身の監査役です。
そのため、会社を客観的にみることが難しく、会社内の常識にとらわれてしまい社内の問題点に気づきにくくなってしまいます。
さらに、監査役は取締役を監査する立場です。
今まで取締役に意見を言うことが困難な状況であった場合、監査役になったからといって、取締役に対して厳しい意見を言うことができるでしょうか。
収入が監査役報酬のみの場合、会社の経営陣に対して厳しい監査を実施することが社外監査役に比べて難しくなってしまうのではないでしょうか。
社外監査役は、過去にその会社で取締役や従業員などとして勤務していない方のことです。
社外監査役は社内監査役とは異なり、その会社の取締役や従業員などの勤務経験がないことが特徴です。
そのため、社外監査役には「その会社の問題点を客観的に捉えることができる」「取締役などに対して厳しい監査ができる」といったメリットがあります。
社外監査役はその会社の監査役報酬とは別の収入源があることが多いいです。
社内監査役に比べてその会社に依存する必要がないため、取締役などに厳しい監査を実施することが可能になります。
社外監査役には「その会社の内部事情に詳しくない」「監査役業務に費やす時間に限りがある」「問題点の根本にたどりつけない可能性がある」といったデメリットがあります。
社外監査役は、その会社の勤務経験がないため客観的な問題点に気づくことはできます。
しかし内部事情に詳しくないため、発見した問題点の追求が困難になってしまいがちです。
さらに、社外に本業がある場合が多いため、監査役業務に費やす時間は社内監査役に比べて短くなります。
社外監査役は客観的な問題点には気づけますが、社内監査役に比べて現場レベルでの問題点に気づくことは難しいでしょう。
税理士を監査役に選任する会社も少なくないのではないでしょうか。
監査役の役割からも税理士に監査役に任命したくなりますが、税理士を監査役にする場合は顧問税理士以外の税理士を選ぶことをオススメします。
顧問税理士は会社の実情を知っていますし、会社から委託されている立場です。
顧問税理士と監査役を兼任することは「監査する立場」「監査される立場」双方の立場が混在してしまうのではないでしょうか。
会社法の施行以降、監査役の設置は必須ではなくなっています。
それは「監査役が不要になった」ということではありません。
監査役は取締役などを監査するという重要な役割があります。最近では、企業の不祥事が報道されることも珍しくありません。公正な経営を心がけるためにも監査役を設置するなどして、健全な会社運営を目指しましょう。
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