監査役設置会社とは?監査役の設置義務がなくても監査役は必要?

監査役設置会社とは?監査役の設置義務がなくても監査役は必要?

記事更新日: 2023/09/24

執筆: 編集部

監査役設置会社という会社をご存知でしょうか?

会社法が施行され自由度の高い機関設計が可能になり、1人でも会社の設立が可能です。

そんな中、今でも監査役設置会社は存在しています。

会社法施行以降、監査役は任意となっていますが、監査役の設置は必要ないのでしょうか。

今回は監査役設置会社についてご紹介します。

監査役設置会社とは

監査役設置会社とは、機関設計の1つで監査役を軸にした機関設計がされている株式会社のことです。

監査役設置会社は「株主総会」「取締役会」「監査役」の3つの組織から構成されています。


突然3つの組織から構成されていると言われてもわかりにくいので、国家の機関におきかえてみましょう。

「立法機関→株主総会」「行政機関→取締役会」「司法機関→監査役」とするとイメージしやすくなります。

取締役会が設置されていなくても監査役の設置は可能

会社法の施行以降、監査役の設置は任意となっています。

監査役の設置は任意ですが、非公開会社(株式譲渡制限会社以外)、取締役会設置会社などでは監査役の設置が必要になってきます。

「取締役会を設置していないと監査役を設置できない」と感じてしまいますが、取締役会が設置されていなくも監査役の設置は可能です。

監査役会とは

監査役に似た言葉で監査役会があります。

実際に行う監査の内容は監査役と監査役会で違いはありません。

資本金5億円以上のなどの大会社の場合は、監査役ではなく監査役会の設置が必要になります。

監査役会は「最低3人以上の監査役」「監査役の半数以上は社外監査役」「常勤の監査役」が必要になります。

監査役とは

監査役設置会社で重要な役割を担うのが監査役です。

監査役は「取締役や会社が不正などをしていないか監査する」「計算関係書類などが適正に処理されているか監査する」役割を担っています。

社内監査役と社外監査役の違い

監査役は社内監査役と社外監査役に大きく分けることができます。

社内監査役は、その会社で取締役や従業員などとして勤務していた方です。

一方社外監査役は、過去にその会社で取締役や従業員などとして勤務していない方です。

監査役に就任する前にその会社で働いていた場合は社内監査役、働いていない場合は社外監査役とするとわかりやすくなります。

社内監査役は、その会社に勤務経験があるため社外監査役に比べて内部事情に詳しく、会社の問題点を発見しやすいのが特徴です。

社外監査役はその会社に勤務経験がないため、勤務経験のある社内監査役では気づきにくい、その会社を客観的に捉えた問題点を発見しやすいのが特徴です。

取締役と監査役の兼任

「監査役を設置すると役員数が増えてしまうから、取締役と監査役を兼任しよう」と思ったことはありませんか?

しかし、取締役と監査役の兼任はできません。

監査役は取締役を監査する立場です。

取締役と監査役を兼任することは「監査する立場と監査される立場が同じ」ということになります。

こうなってしまっては監査の信憑性が薄れてしまいます。

 

監査役の監査の範囲

監査役の監査は「会計監査」と「業務監査」の2つの内容に区分されます。

「会計監査」は、取締役などが作成した貸借対照表や損益計算書などの計算書類に、不正などがないかを監査します。

「業務監査」は、取締役の業務執行の監査です。

公開会社ではない場合(株式譲渡制限会社以外)は、監査役の監査の範囲を「会計監査」に限定することが可能です。

しかし、定款で監査役の監査の範囲を「会計に関するもの」に限定している場合は、たとえ監査役を設置していても監査役設置会社に該当しないので注意しましょう。

監査役の権限

監査役には様々な権限があり、主に以下の権限を行使して会計監査、業務監査を実施します。

  • 取締役会の出席、発言
  • 取締役に対して取締役会の招集を請求、自ら招集ができる
  • 貸借対照表・損益計算書などの計算書類の監査
  • 取締役や会計参与などから事業の報告を求める
  • 株主総会における質問の説明

 

監査役の限界

監査役には様々な権限がありますが、監査機能には限界があります。

監査役は取締役会の招集を請求できたり、取締役会の出席や取締役会で意見をの述べることができます。

しかし、監査役は取締役ではないため、取締役会において議決権がありません。そのため、代表取締役や業務執行者の選定・解職には限界があります。

監査役設置会社のメリット

会社の信用力の上昇

会社法施行以降、1人でも会社の設立が可能になっています。

そのため、監査役を設置せずに取締役1人で会社を設立する方が増えています。

監査役が設置されているだけで、企業の外部からみれば規模の大きい、コンプライアンスに気を使っているという印象を与えます。

ただし、監査役の仕事が全くないような会社であればそこまで信用力の上昇にはなりません。

取締役の業務の監査

代表取締役=株主のような会社であれば問題ないですが、代表取締役と株主が一致していないような経営と資本が分離している会社であれば、取締役を監査する人が必要になってきます。

そのような会社の場合、監査役がいないと取締役が暴走をした時に止める存在がいません。

代表取締役と株主が異なる場合は、監査役を設置することをオススメします。

監査役設置会社のデメリット

報酬が増える

監査役は取締役の業務執行などの監査をします。

監査役を設置することは同時に監査役に報酬を支払うことになります。

監査役であれば1人の報酬ですみますが、監査役会を設置するとなると最低3人以上の報酬の支払いが必要になります。

監査役を設置すると監査役を設置していない会社に比べて経費が増えます。

登記費用の増加

監査役は取締役と同様に任期が定められており登記が必要です。

通常取締役の任期は2年、監査役の任期は4年です。

公開会社ではない場合(株式譲渡制限会社以外)、取締役・監査役は共に定款で最長10年の任期に伸ばすことができます。

取締役と監査役の任期の周期が同じ時期であれば影響はないですが、例えば取締役の任期が3年、監査役の任期が5年であれば登記のタイミングがずれ司法書士に支払う報酬や登記費用が増えます。

人員の確保

取締役の監査という重要な役割がある監査役です。

会社としてはどんな人でも監査役にするわけにはいきません。

監査役は1名以上、監査役会を設置するとなると監査役は3名以上、そのうち社外監査役は半数以上必要になるので、監査役にする人を確保するのは大変です。

監査役が退任した時には、次の監査役を探す手間が必要です。

まとめ

代表取締役=株主、非公開会社、役員1名、取締役会を設置していない、零細企業などであれば監査役の設置は基本不要です。

監査役設置のメリットよりも監査役設置のデメリットの方が大きくなってしまいます。

しかし代表取締役と株主が異なる(経営と資本の分離)、公開会社、取締役会の設置、会社の規模が大きいなどであれば取締役を監査する監査役は必要になってきます。

監査役は会社法の施行以降、公開会社・大会社などを除くと設置が任意となっています。

監査役の設置は会社の規模、状況によって必要・不要が異なるので、各々の会社に応じて判断することが大事です。

監査役を設置する場合は事前に人員の確保をすることをオススメします。

画像出典元:写真AC 、O-DAN

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