TOP > 起業 > 起業家 > 【もう怖くない!】起業に失敗した後に転職はできる?失敗経験が活かせる再就職や転職の方法をアドバイス
失敗に対する寛容性が低いといわれる日本において、「失敗への恐怖」は潜在的起業家に起業をためらわせる要因の1つです。
しかし実際のところ、起業の経験を「価値ある経験」と見なす企業は多々あります。
起業の失敗が、ただちにキャリアの致命傷となるわけではありません。
本記事では、起業失敗後の起業家のキャリアや転職・再就職事情、さらには起業経験者の再チャレンジを支援する東京都の取り組みについてご紹介します。
このページの目次
起業の失敗が、転職や再就職に影響を与える可能性は少なからずあります。
起業失敗後のキャリアを考えたとき、多くの起業経験者が抱く不安を見ていきましょう。
会社員になると、会社のルールや上司の指示に従わなければなりません。
起業家時代とは異なり、自分の裁量が制限されること、意志決定までに時間がかかることについて、多くの起業経験者が不安や不満を感じることもあるでしょう。
しかし、会社員生活に不安のある人は、必要以上にネガティブな先入観を持たないことが大切です。
会社員は働き方の自由度が低下する反面、価値観の異なるメンバーと切磋琢磨できるなどのメリットもあります。
一社員として目標達成に向けて協働することは、ビジネスパーソンとして成長していく上で有益な経験となるはずです。
失敗への寛容性が低いといわれる日本のビジネス社会において、「起業に失敗した」という事実に自信をなくす起業経験者もいます。
履歴書や職務経歴書を作成しているとき、「採用してくれる会社はないのでは……」と不安になる人は少なくありません。
人材の流動性が高まっている昨今、職歴よりもスキルや実績を重視する企業が増えているのが実情です。
「起業して事業経営の流れを一通り経験した」という実績は、転職や再就職活動において強力な武器となります。
応募企業の見極めや自己アピールを適切に行えば、起業経験者が新たな就職先を見つけるのは難しいことではありません。
資金ショートなどで自己破産した場合、信用情報機関に「事故情報」として登録されます。
社会的な信用を失うリスクが高まることから、就職そのものが難しくなるのではと不安に感じる人が多いようです。
しかし実際のところは、自己破産については転職先への申告の義務はなく、また企業側も官報などを日常的にチェックしている企業ではない限り、自己破産した事実が転職先に知られることはほとんどありません。
ただし一部の職種、例えば弁護士や司法書士などの「士業」や生命保険募集人や貸金業など、自己破産の手続き中は一部の職業への就職が制限されますが、免責許可決定が確定すれば解除されます。
自己破産したとしても、起業の経験を「強み」として適切にアピールすれば、再就職や転職は十分に可能です。
起業に失敗した場合、「会社員として働く」「再び起業する」という選択肢があります。
それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
会社員になれば収入が安定的に確保される上、福利厚生や社会保険も充実しています。
仕事中は一社員として自分の業務に集中でき、事業展開や資金繰りに頭を悩ませる必要がありません。
起業していたときよりも精神的なストレスが少なくなるのは、大きなメリットです。
転職や再就職をスムーズに実現するポイントは、起業の経験や実績を活かせる求人を選択することです。
例えば新規事業の立ち上げ部門・経営管理部門などの求人なら、起業経験を活かしたアプローチが可能となります。
就職して得られるキャリアやスキルは、再び起業にチャレンジするときにも役立つでしょう。
ただし先述のとおり、会社員には起業家ほどの裁量権や意志決定権がないことや、企業の社風や文化によって合う、合わないが顕著に出るため、企業研究の徹底と求人応募の妥当性を精査することは必須です。
現行の会社法では、自己破産した場合でも経営資格は維持されます。
資金ショートに起因する事業廃止であっても、再び起業することは可能です。
再起業のメリットは、事業経営のノウハウや人的ネットワークを持った状態でスタートできること。
手探り状態になりがちな起業初期のフェーズも、スムーズに乗り切りやすくなります。
再起業に利用できる補助金や支援制度もあるので、ぜひ利用してみてください。
再起業に当たっての注意点は、起業に失敗した原因と対策を明確にしておくことです。
「市場調査が甘かった」「資金繰りに失敗した」……、事業が立ち回らなくなる原因は様々あります。
原因をしっかりと分析し「どのようにすべきだったのか」まで考えておくことが、再起業の成功につながるはずです。
参考:自己破産者でも再び会社は設立できますか? | ビジネスQ& A | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
起業経験は、転職において高く評価される傾向にあります。
たとえ起業に失敗したとしても「起業しなければよかった」などと悲観する必要はありません。
起業経験が高い評価につながる理由について、詳しく見ていきましょう。
失敗の経験が評価されるのは、失敗が新しい視座の獲得やレジリエンスの強化に有益であるためです。
起業に失敗した人は、既存の考え方が通用しない場面があること、困難な状況に立ち向かうことの重要性を経験から理解しています。
他責思考に陥らず失敗にきちんと向き合った人を、高く評価する企業は少なくありません。
失敗の経験があるということは、弱みではなく強みと言えるでしょう。
プロトスター株式会社 中川 絢太
起業を経験したことで、あまり動じなくなったことは、今のキャリアに役立っていると思います。何が起きても「こういうこともあるよね」「こんなもんだよね」と考えられて、良い意味で淡々と、メンタルがぶれずに業務を進められるようになりました。
ビジネスのリアルな流れや課題を肌で理解している起業経験者は、企業にとって魅力的です。
資金調達、マーケティング、営業などを1人でこなしてきた人はジェネラリストとして重用されます。
起業の経験は汎用性が高く、どの職種でも高い評価を得られます。
中でも新規事業の企画立案や事業戦略の策定、人材採用・育成、企業経営コンサルティングなどでは、起業によって得たノウハウや経験を大いに活用できます。
プロトスター株式会社 中川 絢太
複数社のオファーをいただきましたが、再就職時に企業から評価された点として、ゼロからイチを立ち上げた経験と、ある程度の規模の組織をマネジメントした経験も評価されたと思います。
新しい事業展開を考えている企業や新たなイノベーションを求めている企業は、失敗を恐れずにリスクを取れる人材を求めています。
そのような企業からすると、起業に失敗した起業経験者にマイナスのイメージを持つことはありません。
チャレンジ精神を持つ社員には、変化を恐れずに行動できる・知らないことを積極的に学ぼうとする姿勢が見られます。
特に創業期や成長期のフェーズにある企業にとって、チャレンジ精神豊富な起業経験者は価値のある存在です。
起業経験がある人の多くは、周囲の人々をまとめて動かした経験や、自ら判断して行動を起こした経験を持っています。
リーダーシップと自主性を兼ね備えた起業経験者は、企業が理想とする社員のイメージに近いと言えるでしょう。
加えて、リーダーシップのある人は、周囲を巻き込んで動きやすい環境を作るのが得意です。
そうして組織されたチームは、共通の目標に向かって団結しやすく、パフォーマンスの向上も期待できます。
また、チームが活性化して指示待ちしない自律的な人材が増えることは、企業の生産性向上にも有益です。
起業経験者を雇い入れることで、組織変革を期待する企業も少なくありません。
「スタートアップの創出が経済活性化のカギを握る」というのは、今や世界における共通認識です。
日本政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を決定し、スタートアップ創出・育成のためのエコシステム構築に尽力しています。
スタートアップを支援する動きは都市・自治体レベルで広がっており、起業のハードルが下がってきているのが現状です。
とはいえ世界の現状と比べると、日本の起業率はまだまだ低く、これを上げるには、潜在的起業家への支援を充実させるだけでは不十分だといわれています。
失敗した起業家が不安を払拭し再チャレンジできる環境がなければ、スタートアップの裾野は広がりません。
再チャレンジの仕組み作りが求められる中、「起業に失敗した起業家」に焦点を当てているのが東京都の施策です。
ここからは、東京都が手掛ける起業家支援プログラム「TOKYO Re:STARTER」について詳しくご紹介します。
参考:スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する|経済産業省
TOKYO Re:STARTERとは、東京都が主催する起業家の再チャレンジを支援する事業です。
事業分野を問わず、倒産や自己破産など、起業に失敗した経験のある人が対象となります。
起業のハードルが下がっているとはいえ、一度失敗してしまった起業家は、個人保証や資金調達などの問題から再チャレンジが難しいのが実情です。
また日本のビジネスシーンでは失敗への寛容性が十分に醸成されておらず、起業意欲を失う人も少なくありません。
TOKYO Re:STARTERが目指すのは、「何度でも挑戦できるTOKYO」の実現です。
過去の経験や挑戦が正しく評価される環境を構築することで、起業に失敗した起業家や、現在起業をためらっている人の背中を後押しします。
TOKYO Re:STARTERの具体的な取り組みは、「TOKYO Re:STARTER コミュニティ」「TOKYO Re:STARTER STUDIO」の2つ。
起業家の再チャレンジに必要なプラットフォームとアクセラレーションプログラムの提供により起業経験者の支援を行います。
TOKYO Re:STARTER COMMUNITYは、起業家にリスタートのきっかけを提供するプラットフォームです。
コミュニティ参加者は、ネットワーキングを利用して、起業経験・挑戦を価値ととらえる企業の採用担当者や、VCとつながることが可能です。
新たなビジネスパートナーや投資家との出会いにより、ビジネスチャンスの拡大にも期待できます。
コミュニティでは全8回のイベントが行われます。
これまでには、Chatwork創業者・山本 敏行氏による講演や、起業経験者のキャリア選択の現状についてパネルディスカッションが行われています。
TOKYO Re:STARTER STUDIOは、再起を目指す起業経験者を集中的に支援するアクセラレーションプログラムです。
過去に事業撤退した起業家や、自己破産などを経験している起業家などで、再度起業に挑戦したい方が対象となります(2024年10月31日まで募集)。
選考を通過した参加者は、経験豊富なメンターやエンジニア、マーケターらの伴走支援を受けることが可能です。
プロによる事業検証や試作品(MVP)開発の支援・ヒアリング対象者のマッチングサポートを受けることで、起業家はより高精度なビジネスモデルを創出できます。
また再起を目指す起業家にとってうれしいのが、プログラム終盤に「デモデイ」が設定されていることです。
デモデイでは、中間報告会で選抜された5名〜8名程の起業経験者に、VCや投資家へのピッチを行うチャンスが与えられます。
うまくビジネスマッチングが成立すれば、資金調達や業務提供等の道が開けるでしょう。
起業の失敗は、次のキャリアを踏み出す際に大きな不安を生み出すかもしれませんが、たとえ事業経営に失敗したとしても、起業によって得た経験は決して無駄にはなりません。
また、チャレンジ精神があり、失敗を恐れず実際に行動してきた人物は企業にとって非常に魅力的な人材です。
失敗経験を強みとすることで、新たなキャリアを力強く踏み出せるでしょう。
東京都の「TOKYO Re:STARTER」をはじめ、日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」など、起業経験者の転職や再起業で利用できる制度はさまざまあり、失敗した経験のある起業家が再起する環境は整いつつあります。
積極的に活用して、新たなチャレンジに役立ててください。
画像出典元:O-DAN