自己破産後に再び起業する方法|知っておくべき制約・支援制度について解説

自己破産後に再び起業する方法|知っておくべき制約・支援制度について解説

記事更新日: 2024/10/10

執筆: 遠藤亜美

自己破産後に再び起業することは可能なのでしょうか?

本記事では、自己破産手続き中やその後に受ける制約、再起業を支援する制度について解説。

再起業でぶつかる「壁」の乗り越え方や、再起業を成功に近づける方法も紹介します。

経営に失敗したとしても、再チャレンジの道は開かれています。

再起業を目指している方はぜひこの記事をご活用ください。

 自己破産後でも再起業はできる

自己破産は、借金の返済義務を免除するための法的手続きです。

手続きが完了すると、手続き中に課されていた一定の財産制限や就業制限が解除され、起業家・個人事業主として再びスタートを切ることができます。

ただし、破産者名簿に登録されている間や信用情報機関に事故情報が残っている間は、金融機関からの融資が難しい場合があるため、資金調達の工夫が必要。

重要なのは、自己破産後の制約を理解し、適切な準備を整えることです。

自己破産手続き中・自己破産後に受ける制約

この章では、自己破産手続き中および手続き後に受ける制約について、詳しく解説します。

自己破産手続き中に受ける制約

自己破産の手続きには「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があります。

破産者に財産がほとんどない場合は、同時廃止事件として処理され、特別な制約がかかることはありません。

しかし、財産がある場合は管財事件として扱われ、破産管財人が選任されることになります。

この管財事件においては、さまざまな法的制約を受けることがあり、手続き完了までは事業活動や生活に一定の制限が生じます。

  • 財産の管理
  • 就業
  • 住居や移動

財産の管理

手続き開始決定前に所有する財産は破産管財人によって管理され、破産者は財産を自由に処分することができません。

不動産や車などの価値のある資産は、換価されて債権者への返済に充てられる可能性があります。

なお、破産手続開始決定後に得た「新得財産」は差し押さえの対象外です。

就業制限

手続き中は、法律で定められた職業、特に士業(弁護士や税理士など)に就くことができません。

これは、職業によっては、破産による信頼性の問題が生じるためです。

ただし、免責許可決定後は制限が解除(復権)されるため、仕事を再開することができます。

住居や移動

裁判所や破産管財人は、破産者の所在を常に把握しておく必要があります。

そのため、裁判所の許可なく住所を変更すること、長期の旅行へ行くことは原則として認められていません。

お墓参りや冠婚葬祭など、やむを得ない事情のある遠征であれば許可が下りる可能性が高いですが、娯楽目的の旅行は許可が下りる可能性は低いと考えておきましょう。

参考:債務整理 さいたま法律相談室

自己破産後に受ける制約

自己破産の免責許可が下りれば上記の制約はなくなり、再起業が可能になります。

しかし、破産手続きを行ったという記録により、以下のような制約が残ります。

資金調達のハードル

破産手続きが完了すると、破産した事実が信用情報機関に記録され、いわゆる「ブラックリスト」に載ることになります。

この記録はしばらくの期間残り、その間は金融機関からの融資やローンの審査が厳しくなるほか、クレジットカードの新規発行もできなくなると言われています。

社会的信用の回復

取引先への債務を残したまま自己破産すると、その後の信頼関係は大きく損なわれます。

特に、取引先が信用情報を重視する業界では、破産者との取引を避ける傾向が強く、新たなビジネスチャンスを得ることが難しくなる可能性があります。

もう失敗しない!「1度目の失敗原因」を振り返ろう

再起業に向けての第一歩は、過去の失敗から学び、同じ過ちを繰り返さないことです。

ここでは、よくある失敗原因を振り返り、再起業に向けた準備を進めるためのヒントを紹介します。

市場ニーズの誤認

自分が提供する商品やサービスが市場で求められていると信じ込み、十分な市場調査をしないまま事業を進めてしまうパターンです。

結果として、顧客が実際に求めているものとはズレが生じ、売上が思うように伸びずに事業の早期終了を招くことが多々あります。

失敗しないためには

市場の動向を常に把握し、時代や顧客の変化に対応できる柔軟なビジネス戦略を立てることが重要です。

リリース前には、小規模なテストマーケティングを実施し、顧客からのフィードバックを集めることで、ニーズに合った商品を提供できるようにします。

また、競合分析を行い、他社との差別化ポイントを明確にすることも欠かせません。

資金繰りの問題

資金繰りの見通しが甘かったために「黒字倒産」してしまうケースがあります。

黒字倒産とは、会計上は利益が出ているものの、取引先からの入金が遅れたり、予期しない大きな支出が発生したりして現金が不足し、債務を支払えずに倒産することです。

失敗しないためには

運転資金の十分な確保が重要で、少なくとも3〜6ヶ月分を手元に残しておくことが推奨されます。

資金計画を立てる際には、現金収支のシミュレーションを行い、売上や支出のタイミングを慎重に管理しましょう。

取引先からの入金サイクルが長い場合は、短期借入やファクタリングなどの資金調達手段を検討することも効果的です。

メンバー間の対立

経営者同士や主要メンバー間で意見の食い違いが生じると、組織全体の士気が低下し、効率的な意思決定が難しくなります。

これが原因で、ビジネスの方向性が定まらず、競争力を失うことがあります。

失敗しないためには

メンバー間の対立を避けるためには、明確な役割分担と事前の合意が不可欠です。

起業時には、各メンバーの強みや役割を明確にし、誰が何を担当するのかを事前に決めておきましょう。

また、対立が生じた場合には、第三者の意見を取り入れることも有効です。

信頼できるアドバイザーやメンターを通じて、客観的な視点で問題を解決することで、対立を早期に解消し、チーム全体の調和を保つことができます。

マーケティング不足

どれだけ優れた商品やサービスを提供していても、効果的なマーケティングが行われなければ、顧客にその価値を伝えることができません。

価格設定やプロモーション方法などが適切でなかったために、事業が失敗するケースもあります。

失敗しないためには

ターゲット市場を明確にし、最適な価格設定・効果的なプロモーション戦略を行います。

競合の価格や顧客の支払い意欲を理解し、それに基づいて適切な価格を設定することで、顧客に納得感を与えることができます。

ターゲット層にリーチするチャネルを複数活用し、商品の魅力を最大限に伝えましょう。

リリース時には特典やキャンペーンを実施することで、顧客の関心を引き、購買意欲を高めることができます。

再起業でぶつかる「2つの壁」の乗り越え方

再起業に挑戦する際にぶつかりやすいと言われる障壁と、その乗り越え方について解説します。

精神面の壁

過去の失敗に伴う経済的損失や社会的評価の低下が心に深い傷を残し、新しいチャレンジを躊躇してしまうことがあります。

心理的な障壁を乗り越えるためには、以下の2つのアプローチが有効です。

本当にやりたいことかを深く考える

取り組もうとしている事業が、本当に自分のやりたいことなのかを、納得するまで何度も自問自答することが大切です。

これにより、ビジネスに対する情熱や目的意識を明確にし、困難な状況に直面したときにも挫けずに続けられる強いモチベーションを得ることができます。

過去のネットワークを活用する

もう一つの重要なアプローチは、一社目で得たネットワークを切らさずに積極的に頼ることです。

以前のビジネスで築いた人脈や信頼関係は、再起業時に非常に貴重なリソースとなります。孤立せずに周囲の助けを求めることで、再起業の成功確率を大きく高めることができます。

資金面の壁

一度起業に失敗した経歴があると、銀行からの融資や投資家からの出資が受けにくくなります。

資金調達の障壁を乗り越えるためには、以下の2つのアプローチが有効です。

ステージによって資金調達の方法を変える

資金調達の方法は、起業のステージによって異なることを理解し、適切なタイミングでアピールしましょう。

例えば、事業の初期段階ではエンジェル投資家やクラウドファンディング、事業が成長する段階では銀行融資やベンチャーキャピタルからの資金調達が適しています。

また、そもそも資金調達をせずに自己資金から事業を始めることができないかも検討すると良いでしょう。

一度目の失敗を二度目の起業に活かす

投資家や金融機関は、過去の失敗から何を学び、どのように改善策を講じているかを注視しています。

現実的なビジネスプランを示し、慎重に資金の使途を計画することで、投資家や融資機関に対して安心感を与えることができます。

過去の失敗を踏まえて、新たな事業における収益性や持続可能性を強調することも重要です。

参考:再チャレンジ起業家ガイドブック

再起業を成功に近づける方法

ここでは、再起業を成功に近づけるための具体的な方法を4つ紹介します。

小規模なビジネスから始める

小規模かつ少ない資金でスタートできるビジネスから始めることで、資金や人材の負担を軽減し、ビジネスモデルの検証を段階的に行うことができます。

これにより、リスクを抑えながら、成功に向けた地盤を固めることが可能になります。

小規模ビジネスについて詳しく知りたい方はこちら

支援制度を利用する

再起業を支援するさまざまな公的制度や補助金を積極的に活用しましょう。

資金面や人材面でのサポートを提供し、再チャレンジを後押ししてくれます。

支援制度の詳細については、次章で詳しく解説します。

起業スクール・セミナーに通う

起業に関する知識やスキルを向上させるために、起業スクールやセミナーに参加することも有効です。

これらの場では、ビジネスプランの作成方法やマーケティング戦略、資金調達のコツなど、再起業に必要な具体的なノウハウを学ぶことができます。

また、他の起業家や専門家とのネットワークを築くことで、貴重なアドバイスを得られる可能性もあります。

起業スクール・セミナーについて詳しく知りたい方はこちら

経験者の体験を参考にする

他の起業家がどのようにして再チャレンジを成功させたのか、その経験談の中に自身の再起業に活かせるヒントが見つかるかもしれません。

失敗から立ち直った事例を知ることで、精神的な支えにもなり、再起業へのモチベーションを維持することができます。

例えば、近畿経済産業局が作成した「再チャレンジ起業家ガイドブック」もその一つです。

再起業に役立つ支援制度や、再起業にチャレンジしようとしている人材のインタビューなどを掲載しています。

起業経験者のインタビューに興味がある方はこちら

再チャレンジに向けた支援制度

最後に、再起業を目指す際に役立つ各種支援制度を紹介します。

これらの制度を上手く活用して、再起業の基盤を固めましょう。

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)

過去に事業に失敗した経験がある起業家を対象にした日本政策金融公庫の融資制度です。

再起業を目指す際に必要な運転資金や設備資金を低金利で提供し、再チャレンジを後押しします。

参考:新規開業資金(再挑戦支援関連)

経営者保証ガイドライン

再起業時の融資において、個人保証の負担を軽減するための制度です。

従来、経営者による個人保証が融資の条件となることが一般的でしたが、このガイドラインにより、経営者が個人財産を担保にするリスクを減らすことができます。

また、早めに事業再生や廃業を決断した際には一定の生活費が残ることや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどが、ルールとして策定されています。

参考:経営者保証ガイドライン

小規模事業者持続化補助金

従業員数が製造業や建設業などで20人以下、商業やサービス業で5人以下の小規模事業者を対象に、販路開拓に取り組む費用を補助する制度です(全国商工会連合会)。

広告費や設備投資費などを対象に、通常枠の場合で最大50万円(経費の3分の2以内)が補助されます。

参考:小規模事業者持続化補助金

特定創業支援事業

再起業を支援するために、創業に関する知識やスキルを提供するプログラムです。

自治体や商工会議所が主催するセミナーやワークショップに参加することで、経営や財務、マーケティングなどの基礎知識を習得でき、再起業に必要な準備を整えることができます。この支援事業を受けることで、税制優遇や創業関連保証枠の拡大などの特典を受けられる場合があります。

支援内容は自治体によって異なるため、各自治体のHPを確認してください。

TOKYO Re:STARTER STUDIO

東京都が主催する再チャレンジ起業家の事業開発を支援するプログラムです。

このプログラムでは、再起業を目指す起業家に対して、ビジネスマッチングや資金調達、専門家によるメンタリングなど、幅広いサポートが提供されます。

東京都での起業・東京都への進出を検討している方には、強力な支援を受けられる機会となります。

なお、2024年の応募締め切りは10月31日(木)までです。

興味がある方はこちらから詳細を確認してください。

参考:TOKYO Re:STARTER

まとめ

再起業に向けては、過去の失敗を糧にし、慎重かつ戦略的な準備を行うことが重要です。

特に、適切な支援制度を活用することで、再チャレンジのハードルを低くし、成功への道を切り開くことができます

また、メンタルサポートや信頼できるネットワークの構築も、再起業を成功させるために欠かせない要素です。

自分のビジョンに自信を持ち、周囲のサポートを得ながら、一歩ずつ前進していくことが成功への鍵となります。

画像出典元:Pixabay

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