企業が定めた目標に向け、従業員1人ひとりがやりがいを持って仕事をしていく環境づくりはとても大切です。
しかしながら、従業員それぞれで目標を設定し、自主的に行動してもらうことは意外に難しいと感じるでしょう。
目標管理シートは、従業員の目標や成果を適切に管理するもので、シートの活用は従業員のモチベーション向上や組織活性化に有効です。
この記事では、目標管理シートの書き方を中心に、よくある失敗例や効果的な運用ポイントなどを詳しく解説していきます。
このページの目次
目標管理シートとは、目標や成果を文書にして進捗管理を行うためのシートで、目標管理制度(MBO:management by objective)に基づき作成されます。
シートの作成には、ExcelやWordを使用したり、人事評価システムの目標設定機能や目標管理ツールを用いたりするのが一般的です。
目標管理シートはビジネスシーンに限らず、トップアスリートが自身の目標を達成するために活用するケースもあります。
目標管理制度(MBO)は、米国の経営学者「ピーター・F・ドラッガー」によって提唱された、組織マネジメント手法です。
日本では、バブル経済が崩壊した後、年功序列から成果主義へと経営環境が変化したタイミングで浸透しはじめました。
現在でも目標管理制度(MBO)への関心は高く、多くの企業で導入されている、オーソドックスなマネジメント手法です。
目標管理シートを使う目的は、従業員1人ひとりが目標を設定し、達成までのプロセスを客観的に管理するためです。
目標管理シートを使うことで、以下の効果が期待できます。
設定した目標の意識づけや、業務の進捗状況を適切に把握・管理するためには、目標管理シートの導入が有効です。
目標管理シートの書き方に関しては、企業によってさまざまです。
作成する際は、Excel、Word、Webツールなど、形式は問いません。
以下は、目標管理シートに記載すべき基本的事項です。
シートを作成する際に盛り込むと良いでしょう。
まず達成すべき目標を記載します。
目標の設定は、目標管理シートを作成するうえで、もっとも重要な項目です。
目標を記載する際は、言葉にくわえて具体的な数値を明記すると、より明確化されブレにくくなります。
目標は複数記入しても良いですが、複数ある場合は3つ程度にするのが望ましいです。
あまり多すぎると、どの目標も達成できないなど、中途半端になってしまう可能性が高くなります。
次に、目標を達成するための具体的なプロセスを記載します。
達成に向けてどのような行動をし、いつまでに達成するかを明確に記載しましょう。
達成期間の設定は、長すぎず短すぎず、「数ヵ月もしくは1年間」とするのがポイントです。
目標の達成につなげるためには、評価基準を設けることも重要です。
評価基準が明確に定められていると、目標達成の原動力を与える効果があるほか、評価するための材料にもなります。
評価基準は、設定した目標に対して「A・B・C・D」など、段階にわけると評価しやすいでしょう。
たとえば、「新規受注獲得件数/半年で100件」といった目標設定にした場合を例にあげます。
といった具合に、評価基準をランク形式にすると良いでしょう。
設定した目標に対し、どのくらい達成できたのか、評価基準をもとに評価し、結果を記入します。
このとき、達成結果だけを記入するのではなく、結果にいたるまでの具体的なプロセス(振り返り)についても記入するようにしましょう。
自身の行動を振り返ることで、改善すべき問題点が明確になり、次の業務へと生かせます。
目標が達成できなかった場合は、達成できなかった理由にくわえ、達成のためにどのような行動をすべきか、自身の考えを記入しましょう。
設定した目標に対する「振り返り」はとても大切です。
最後に、上長が自由にフィードバックができる欄を用意しましょう。
上長からのフィードバックは、客観的意見として次の目標設定に生かすことができます。
またモチベーションやパフォーマンスの維持向上、人材育成などにも有効です。
フィードバックの質は、業務の質に大きく関係します。
的はずれにならないよう、数値だけにたよらず、経験や数値に反映されない部分も把握し、適切なフィードバックを心がけましょう。
目標管理シートに盛り込むべき基本的な項目のテンプレートです。
以下のテンプレートを参考に、自社にあった目標管理シートを作成してみてください。
目標管理シートの作成は、やり方を間違えると失敗に終わってしまうことがあります。
ここでは、目標管理シートの作成でやってしまいがちな失敗例を3つ紹介しますので、作成する際、よく確認するようにしてください。
目標の数が明らかに多いのは、失敗につながる可能性が高いといえます。
前述のとおり、目標が多すぎるとすべてが中途半端になり、どの目標も達成できなくなる可能性があるからです。
ほかにも、目標達成までのプロセスが煩雑化するという問題があります。
目標は優先順位を決め、上位3つ程度に絞るようにしましょう。
上長と部下との間で認識や方向性にズレが生じていると、モチベーションの低下につながります。
モチベーションの低下は、目標達成を妨げる原因となるため、コミュニケーションをよく取り、互いの認識を一致させることが大切です。
また実力に対して目標のハードルが高すぎる、あるいは低すぎる、こうした極端な目標設定も避けるべきでしょう。
ハードルが高すぎるとモチベーションの低下につながり、逆に低すぎると成長につながりません。
適切な目標設定を行うため、設定する目標の理由や背景など、十分に認識し合うことが重要です。
目標管理がノルマ化してしまうのも、失敗する要因のひとつです。
会社側が一方的に決めてしまうノルマは、義務感によるモチベーションの低下や、指示待ちの従業員を増やす可能性もあります。
そもそも目標管理制度は、上長と協同しながら目標を設定し、目標達成に向けたプロセスを適切に管理するものです。
部下の意見を尊重しながら、成長を実感できる目標設定を行いましょう。
目標が人事評価に連動しすぎるのも良くありません。
評価ばかり気にしてしまい、積極的に業務を行うことができなくなるからです。
昇進・昇格・昇給など、人事評価に影響する部分をできるだけ減らし、モチベーションアップにつながる目標設定を心がけましょう。
目標管理シートを導入するなら効果的に活用し、成果につながる運用を目指したいところです。
ここでは目標管理シートを運用するにあたり、効果的なポイントを2つ紹介しますので、チェックしておいてください。
目標管理シートを作成し、結果を確認するだけでは、効果的な運用は期待できません。
なぜなら、目標と違った方向へ進んでいたとしても軌道修正できず、成果のないまま終わってしまう可能性が高いからです。
目標管理は、一般的に半年から1年をかけて行うケースが多く、思いどおりに進まないことも多々あります。
効果的に運用するには、目標達成までのプロセスにおいてこまめに確認し、現状を把握しておくことです。
現状把握のための進捗確認は、週に1回程度の頻度で行うのが良いでしょう。
目標管理シートを効果的に運用するためには、PDCAサイクルを回すことも忘れてはいけません。
PDCAサイクルは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を1つのサイクルとして、繰り返し行う管理手法のことです。
PDCAサイクルを何度も回すことで、改善すべき点が多く見つかり、課題解決能力や達成力の向上につながります。
目標管理シートは、作成して終わりではありません。
作成後、PDCAサイクルを回し続け、スピーディーに課題を解決しながら、目標達成に向けて活用していくことが大切です。
目標管理シートは、目標管理制度(MBO)に基づき、従業員の目標や成果を管理するためのシートです。
目標管理シートを導入することで、おもに以下の効果が期待できます。
目標管理シートを単に作成するだけではなく、プロセスの進捗状況をこまめに確認し、PDCAサイクルを回し続けることが大切です。
目標を適切に設定し管理することは、従業員のモチベーション向上はもちろん、組織活性化につながるなど、企業にとっても大きなプラスとなります。
目標管理シートをうまく活用し、従業員と企業の成長につなげていきましょう。
画像出典元:O-dan