近年、日本でも耳にすることの増えた「CHO」。しかし、まだまだ認知度が低く、どういった役職なのか正確に把握できている人は少ないです。
CHO(CHRO)とは、簡単にいうと、人事に関する最高責任を持つ人物を指します。
今後の日本企業にとって、CHOの重要度はより増していくことでしょう。なぜなら、少子高齢化の進む日本では、労働人口の減少により人的リソースの確保がより困難になると考えられるからです。
今回の記事ではCHOがどのような役割を持つのか、どういったスキルが必要でどういった業務を行なっているのかを紹介します。
CHOについての知識がゼロの方でも分かるよう分かりやすく解説していますので、是非参考にしてみてください!
このページの目次
CHOとはChief Human Officer(チーフヒューマンオフィサー)の略で、日本語で表すと最高人事責任者となります。CHROも同じ意味です。
CEOなどと同じく、一般的にCxO(最高◯◯責任者)に分類される役職の一つで、文字通り「人事」に関する最高責任を持っています。
CHOと人事部長は似ているようで全くの別物。なぜなら、CHOは経営戦略の目線から人事を組み立てていく必要があるからです。
人事部長はあくまで会社の方針に則る形で人材の育成を行います。対して、CHOは会社の方針から見直し、経営目線から人材育成や人材評価のための仕組みづくりから行なっていきます。
経営目線を持って仕事を行う点から、人事部長とCHOは全く違う役職であると言えるのです。
CHOはなぜ会社に必要な存在なのか、なぜ近年需要が高まっているのか、その理由をご存知でしょうか。
結論から言うと、CHOが以下3つの役割を担っているからです。
1. 経営の目線から最適な人材の確保を行う
2. 人事の目線から柔軟な経営判断をサポート
3. 社員の評価基準や育成方法を明確にする
詳細は以下に記載してあります。
CHOが設置されるのは、経営と人事の両方の視点から、最適な人材確保が期待されているからです。
経営の4大経営資産と言われている「ヒト・モノ・カネ・情報」。このうち最も希少性が高い資産がヒトです。
「モノ」は代わりが効きますし「カネ」の調達の方法も多様化してきました。インターネットの普及で様々な「情報」にもアクセスできるようになりました。
対して、ヒトはどうでしょう。少子高齢化によって労働人口は減る一方。優秀な人材の獲得は難しくなってきています。
人材を確保することは、会社を作っていくこと、組織を作っていくことと同じです。そして、人材確保を最適化して強固な会社を作り上げていくのが、CHOの役割です。
新型コロナウイルスの流行などもあり、先の見えない時代が続いています。人事の目線から、今後の会社方針などをサポートする役割もCHOは担っています。
これまで、人事側の人間が経営に携わることはほとんどありませんでした。人材の育成や獲得は会社経営ほど重要視されない傾向にあったのです。
しかし、人材資源の重要性が認知された現在。経営サイドも会社の方針に則った形で人材獲得が必要になりました。
人事の目線を持つ人物が経営に関わることで、人事に関する経営判断のスピード向上が望めます。
CHOの重要な役割として、社員の評価基準や育成方法を明確にすることが挙げられます。
評価基準を明確にすることで従業員の不満や不公平感をなくしたり、従業員のモチベーション向上に役立つからです。
評価基準が不明瞭で社内で共有されていないと、自分の評価が適切なのかどうか社員は納得できません。
社員自身が自分の評価に対して納得するために基準を明確にしておく必要があります。
さらに、どのようにして社員を育成していくのか、どう評価していくのか。そのプログラムを作成するのはCHOの重要な役割です。
ここからは、CHOの業務内容を確認しながら、どういったスキルが必要になるのかを確認していきます。
具体的には以下5つのスキルが必要です。
1. 経営者視点
2. 人事に関する専門知識
3. 全ての部署の業務内容を把握
4. 戦略立案能力
5. マネジメント能力
詳細は以下をご覧ください。
CHOに必ず必要なのが、経営者視点です。人事に詳しいだけではCHOは務まりません。CHOに期待しているのは、人事の視点を持ってして経営方針を検討することだからです。
経営者と同じ視点に立って、長期的、中期的、短期的に会社の今後を考える必要があります。経営者と同等に会社の今後を考える能力がなければ、到底CHOは務まらないでしょう。
CEOの右腕として、経営を考える能力は必須です。
人事に関する最高責任者ですので、当然人事に関するありとあらゆる知識に長けていないといけません。でないと、現場の人間に対して指示が出せないですよね。
人事に関する知識は、労務管理や給与計算など多岐にわたりますが、特に注意しておきたいのが法律関連の知識です。
なぜなら、労働法など法律関連は改正が多いからですね。こまめにチェックしていなければ知識が古いままになってしまう可能性があります。
CHOは、会社全体を見て人材の配置を考える必要があります。つまり、全ての部署の業務内容を把握しておく必要があります。
なぜなら、どの部署がどういった働きをしているのか、どういった業務があってどういったスキルが求められるかを把握していないと適材適所に人材を配置できないからです。
このように、CHOは人事の知識だけに関わらず会社の業務全般の知識を把握しておく必要があるため、多様な経験を積んでおく必要があります。
CHOは経営、人事の両方の視点を持ち、今後どのような動きが必要になるのかという戦略を立案する能力が求められます。
そして、立案した戦略をもとに、人材の育成方法や評価基準、採用方法などを確立していくわけです。
自らが戦略を立案し、リーダーシップを持って会社を先導する。そういった能力がCHOには求められるのです。
CHOには立案した評価基準や育成方法を現場で徹底させるマネジメント能力も必要です。本当に社内に意味ある形で浸透していなければ、評価基準や育成方法は意味を成しません。
そのためにも、現場の声を拾い上げるコミュニケーンがとれるかどうかも重要です。現場の声によっては、作り上げた基準を改善する必要が出てくる可能性があります。
戦略立案にとどまらず、それを実行に移し実現させるマネジメント能力もCHOには必要です。
ここからは、実際にCHOを設置している企業事例を3つ見ていきます。
実際、CHOがどのような取り組みを行なっているのかを把握してもらえるはずです。
1. サイバーエージェント
2. カゴメ
3. カインズ
詳細は以下をご覧下さい。
日本の代表的なCHOといえば、サイバーエージェントのCHO麻野耕司さんの名前が挙がります。
麻野さんは、サイバーエージェントの社員評価制度として「ミスマッチ制度」を導入しました。
これは、下位5%の人材にマイナス査定を行うというものです。社員としては、マイナス査定をされないために自身の実力を向上させる必要がありますよね。
この取り組みによって、社員が会社にぶら下がり状態になることを防ぎ、実力主義と終身雇用の両立を図るために採用しています。
優秀な評価制度を作ることで長期的に活躍できる人材を生み出している好事例です。
(参考:https://www.motivation-cloud.com/hr2048/851)
カゴメのCHOである有沢正人さんは、今回紹介したCHOの代表的な役割を実現している方です。
有沢さんは「経営と人事の連動」「人材こそが価値を生み出す」という発言をされていて、この信念を実現するためにグローバルジョブトレードを基軸とした戦略を組み立てました。
具体的には、報酬制度や評価制度を新たに構築したり、年功序列から職務型への評価基準を設けることで、メリハリのある処遇を実現したりしています。
CHOを代表する良い事例として紹介させていただきます。
(参考:https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00056/081600003/)
大手ホームセンターのカインズも2021年の9月新たな人事戦略を打ち出しました。戦略立案を行ったのはCHOの西田政之さん。
西田さんが取り入れたのは「DIY HR」というユニークな取り組み。これは、社員自身のキャリアを自分で作り上げていくという取り組みで、社員の自己実現を目標としています。
ホームセンターらしく自分のキャリアをDIYしていこうということです。
具体的には、メンバーの意思によって異動が可能であったり、上司と定期的に1対1で自分のキャリアに関して相談できるという取り組みです。
(参考:https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/052000047/00032/)
日本企業にCHOが少ないのは、人材獲得や離職に関してそこまで注力してこなかった背景があります。人事と経営を絡めようという文化がほとんどありませんでした。
実は、日本企業に以前から存在していた「執行役員人事部長」や「取締役人事部長」は、ポジションとしてはCHOとほぼ同じなんです。
ただし、あくまでポジションが同じというだけです。CHOのように人事が積極的に経営に絡む姿勢を示す役職ではありません。
人事が経営に関わることはなく、人事は経営陣の指示を受けて動くことが多かったんですね。これがCHOを設置する日本企業が少ない理由の一つです。
CHOは人事における最高責任者です。人事と経営、両方の観点から会社を導く存在でなければなりません。
人事採用、育成の仕組み作りから、戦略の組み立てまで幅広い知識と経験が求められます。
貴重な経営資産である「人材」についての責任を任されているため、会社作りの根本を担うことになります。特に、少子化の進む日本ではより重要度が増していくことでしょう。
CHOの役割を把握することで、他社や自社における今後の動きが見えやすくなります。
ぜひこの機会に、今活躍しているCHOがどのような動きをしていて今後どのような動きをしていくのか、動向に注目しておきましょう。
画像出典元:o-Dan
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