VUCA(ブーカ)ということばを耳にしたことはあるでしょうか。VUCAとはひと言で言うと「あらゆるものを取り巻く環境が複雑化し、将来の予測が困難な状態」のことです。
最近ではビジネスシーンでも耳にすることの増えたVUCAですが、とくに人材業界で注目を集めているキーワードのようです。
そこでこの記事では、VUCAとはなにかまたVUCA時代に必要とされる人材について詳しく見ていきたいと思います。
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「VUCA」とは、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をつなぎ合わせた造語です。VUCA時代とはこれら4つの要因により、ビジネスを取り巻く環境が激変し、先の予測が困難な現在の社会を表しています。
まずはこの4つの要因について見ていきたいと思います。
Volatilityとは、変動性を意味することばです。
IT技術の進歩とともに、現代のビジネスシーンはたやすく激変する時代になりました。IT技術の驚異的な進化にともない、新しい事業や業界が生まれ、そして消えていくまでのスピードも速まっています。
またテクノロジーの側面以外でも、価値観や社会の仕組みなどもこれまでになかったようなスピードで変化を続けています。社会の変化に対応するためには、ハイペースで変動する環境に対応しなければなりません。
これらさまざまな変動性のある要因により、先の見通しを立てることが難しくなっているため、不安定な状況になっているのです。
一方で、こうした不安定な状況を逆手に取ったビジネスも立ち上げられており、新たな価値観や仕組みが作られ、新たな市場がたちあがっています。
社会の変化の早さに対応するためには、普段から情報収集や柔軟な思考、斬新な発想などが求められているのです。
Uncertaintyとは、不確実性を意味することばです。
世界で起こる政治的な変化や災害等の影響が、ビジネスにも大きな影響を与えることがあります。
たとえば、誰もが予測していなかったイギリスのEU離脱や、アメリカの大統領選挙でトランプ大統領が誕生するなど、多くの人がまさかと思う政治的な変化が、世界中の市場に影響を与えることになりました。
また、2011年の東日本大震災は日本各地に多大な影響を与え、「想定外」の出来事ということばが頻繁に使われました。現在の社会は、常に想定外の出来事が起こる可能性があるのです。
もう少し身近なビジネスの場面で見ても、急に海外から競合が参入してきたり、突然新たな競合が生まれたりすることも多くなりました。こうしたことが起きると、業務に著しい影響があることから、仕事のやり方を根本的に変えていかなければならなくなります。
Complexityとは、複雑性を意味することばです。
近年のグローバル化の進展にともない、複数の国や地域、企業などが関わってビジネスが複雑になることで事業展開が難しくなることがあります。
2008年に起きたリーマンショックはよい例です。
アメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻し、その影響により世界規模で金融危機が起こったことは記憶に新しいと思います。
リーマンショックが引き起こした世界同時株安と超円高は、日本にも大打撃を与えました。経営が苦しくなった大手企業が海外に拠点を移していった結果、大手企業の下請けとして業務を行っていた中小企業の倒産が相次ぎました。
世界のどこかで起こった出来事が、自分の国だけでなく自分の会社にも大きな影響を与える事例だと言えるでしょう。
また、海外でイノベーションを起こしたサービスが日本で普及していない事例もあります。
たとえば、アメリカ発の配車アプリであるUberや民泊サービスのAirbnbは、画期的なサービスとして評価され世界中で利用されています。
しかし、日本国内では法整備が遅れているため、ほとんど普及していません。新たなサービスと国の法規制が複雑に関係し合ってビジネスを複雑化させている事例と言えるでしょう。
グローバル化が進んだ現代の環境では、それぞれの国や地域の法律や文化・習慣など、多くの要因によりビジネスが複雑化しています。その結果、一つの国や企業だけで解決できる問題が少なくなりました。地球規模で複雑に絡み合っているため、問題解決はより一層困難になっているのです。
Ambiguityとは、曖昧性を意味することばです。
近年のビジネスでは因果関係が不明瞭なことが多くなっています。そのため手探りでビジネスを進めていく場面が増えています。
グローバルにさまざまな要素が絡み合い、驚くようなスピードで環境が変化し、その変化の先にもさらなる変化が続いていくような現代社会では、問題の解決を図る鍵となるものが明確ではありません。
現代のビジネスでは業界を超えて競争が活発化する中で、多くのイノベーションが新たに生まれていきます。しかし、どのようなものが生まれ、どのように社会や経済に影響を与えるかを予測することは困難です。このような状況下では、何が正解なのかも曖昧になります。
時間を掛けて問題解決の答えを探し当てたとしても、急激な変動性によって次の瞬間には答えではなくなるといった曖昧さが、現代社会の不安定要素のひとつと言えるでしょう。
たとえば、ITの進化により業界の区分さえも曖昧になっています。VUCA時代以前であれば、自動運転が可能な自動車を自動車メーカー以外がつくるといったことは考えられなかったはずです。
しかし現実には、GoogleやUber TechnologiesなどのIT系企業が自動車業界に参入し、研究開発を進めた結果、実用化まで迫ってきています。
曖昧で先が読めないVUCA時代では、自分が何に興味を持っていて何をしたいのかを理解している必要があります。しっかりした自分の軸を持っていれば、変動しやすく、不確実で、曖昧な時代でも行動を起こすことができます。
先を読むことが難しい時代ですので、ビジョンが正しくなくても問題ありません。大切なことは自分なりのビジョンを持ち続けることです。
自分が将来どうありたいか明確なビジョンを持っていれば、たとえ状況が変わったとしても、ビジョンを実現することを基準として行動を起こすことで、目標に向かって主体的に取り組むことができるでしょう。
環境がすさまじいスピードで変化するVUCA時代では、慎重に物事を検討している間に状況が変化してしまいます。良いアイデアを思いついたら失敗を恐れず、まず行動することが重要です。
失敗したらすぐにやめればよいのですし、上手くいきそうなのであればそのまま続ければいいのです。アイデアがあればまず試してみて、状況に合わせて軌道修正をするなど次の行動を考える習慣をつけましょう。
VUCA時代では、思いついたことをすぐに実行できる行動力が求められます。失敗を恐れずに行動ができる人や、いち早く結果を出せる人が活躍していくでしょう。なぜなら、慎重に検討しているうちに環境はどんどん変化してしまうからです。
最新の情報をチェックしたり、多くの人と情報交換したりして、常に新しいことを学ぶ姿勢を大切にしましょう。自分の情報や能力の引き出しが多いほど、行動の選択肢も増え、不測の事態や急速な変化にも対応することが可能になります。
ここで重要となるのは、インプットだけでは効果が薄いということです。アウトプットを意識しながらインプットをするようにしましょう。
やりたいことを決めて自分で行動をして行く中で、興味がわいたことなどがあれば、調べてみてそして実際に試してみることで自分のものにするようにしてください。
VUCA時代では、多様な価値観から生み出されるイノベーションが求められています。多様な価値観を持つ人材をまとめて、その強みを活かせるように導くことのできるリーダーシップも重要になります。
行動のモチベーションの源泉が明確な人は、他人から見て情熱的に見えます。このような情熱を持つ人と一緒に仕事をしたいと思う人達をまとめあげて成果を出すことが必要になります。
プロ意識が高く自分のビジョンと重なる部分がある人を巻き込んで、結果を生み出せるチームを作り上げることで、新たなイノベーションを生み出すことが求められているのです。
現代はさまざまな要因により先の見えない時代になっています。そのような時代を表すことばとして「VUCA」ということばが使われています。
現代のビジネスシーンもグローバル化やIT化など、さまざまな要因により先の見えない不明瞭な時代に突入しています。VUCA時代とも呼べる現代のビジネスシーンで生き残るためには、短時間で激変する環境に対応できる能力が求められているのです。
このようなVUCA時代に求められる人材像とは、明確なビジョンを持ち、スピード感を持って行動でき、情報収集や学習を常に怠らない人材です。また多様化した人材をまとめる力をもつ高いリーダーシップも求められます。
VUCA時代に対応するためには、企業も人もあらゆる環境に対応できる能力が必要とされます。多様化し激変する環境の中で生き残るためにも、必要とされる人材になれるよう日頃からの努力を怠らないようにしましょう。
画像出典元:PEXELS