脱サラをして会社を設立したいと考えているけど、自己資金が足りない。銀行から融資を受けたいけど、自己資金が足りない。そんな時に考えるのが「見せ金」という方法です。
見せ金という言葉は聞いたことあるけど、そもそも見せ金とは何か?見せ金によって会社を設立したり、融資を受けることは可能なのか?そういった疑問を持たれている方も多いかと思います。
そこで本記事では、見せ金の基本的な意味から、見せ金とみなされる事例やみなされない事例を取り上げつつ、リスクを最小限に抑える方法をご紹介していきます。
このページの目次
そもそも見せ金とはどういう意味でしょうか?
見せ金は会社設立時に利用されるケースが一般的なのですが、
厳密な定義は「会社の発起人が、払込取扱金融機関以外の者から借入をして、これを払込金として実際に払込取扱金融機関に払い込み、設立登記後直ちに払込金を引き出して借入金を返済する行為」とされています。
これではよく意味がわかりませんよね。
簡単に言ってしまうと、会社を設立するときに必要となるお金(資本金)を、自分のお金では足りない等の理由から、他の人や銀行から借りてお金(資本金)があるように見せる行為のことをいいます。
会社設立を例にすれば、設立を承認する法務局に対して資本金があるようにみせることをいいますし、融資を例にすれば、お金を貸してくれる銀行に対して資金力(口座残高)があるようにみせかけることをいいます。
利用される場面は後ほど紹介しますが、いずれにしても見せ金という行為は「実際はお金がないのに、相手を信用させるためにお金があるように見せかけるカラクリ行為」を意味すると理解しておいてください。
では次に、見せ金という行為は違法かどうかについてみていきます。
結論からお伝えすると、ケースによって解釈の余地はあるのですが、一般的に見せ金とみなされた場合には違法性があると判断されるケースが多いです。
先ほどの見せ金の意味からもわかるように、何かしらの目的を達成するために他者を欺く行為なので、全く問題ないと主張することには無理がありそうですよね。
このように、他者を欺く目的で行った見せ金行為は違法性を伴うことがありますが、実際には見せ金ではなく自分自身のお金なのに、相手から「これは見せ金ではないのか?」と疑われてしまう場合もあります。
そのため、自分の行為が見せ金と判断されないようにすることが重要とも言えます。
見せ金と判断されるポイントについては、後ほど細かく紹介していきます。
見せ金と似た概念で「預け合い」と言われる行為もあるのでここで合わせて紹介します。
預け合いとは、金融機関と共謀して行う詐欺行為を指し、会社法でも禁止されている違法行為となります。
金融機関と手を組んでお金(口座残高)があるように見せかけることは、コンプライアンスが厳しい今では考えにくいのですが、一昔前までは利用されていたこともある手法です。
先ほどの見せ金が「自分」が主体の行為であるのに対し、預け合いは「自分と金融機関(銀行)」が主体の行為である点が違います。
ここからは見せ金が実際にどのような場面で利用されることがあるかをみていきましょう。
まずは、冒頭でも少し紹介しました会社設立の場面です。
今では株式会社を資本金1円からでも設立することが可能ですが、信用力の観点から資本金を多くしたいという動機があります。
例えば、資本金を1,000万円に設定したいが、自己資金が400万円しかない場合に、不足分の600万円を銀行等から一時的に借りて充足しようと考えるのが見せ金行為の代表例です。
会社設立以外にも、融資を受ける場合に見せ金が利用されることもあります。
銀行からお金を借りることを想定すれば、個人でも法人でも銀行側に信用してもらうだけの資金力を提示する必要があります。
つまり、お金を借りたいという動機から、見せ金行為を実行する人もいるわけです。
最後の例として、マイホームを購入する場合にも見せ金が利用されることがあります。
大きな買い物なので、一般的には頭金と住宅ローンの組み合わせで購入することが一般的ですが、この頭金は自己資金でまかなう必要があります。
自己資金が足りない場合には、マイホームを手に入れたいという動機から、見せ金でなんとかしようと考える人もいます。
いずれのケースでも、何かしらの動機があり、見せ金を利用していると言えるのです。
見せ金がどのような場面で利用されるのかについて見てきましたが、これらはいわばどのような動機を持って他者を欺こうとするかについての紹介でした。
ここからは、自分自身のお金だから厳密には見せ金ではないのに、相手側から見せ金と疑われてしまう事例について紹介していきます。
自分の行為が見せ金と判定されるかされないかについての明確な指針はありませんが、見せ金の趣旨から目安となる指標を想定することは可能です。
具体的な事例を見ていく前に、大切な考え方となる判定基準をフローチャートでご紹介します。
このフローチャートは見せ金と判断される可能性がある事例の特徴から作成したものなので、理解をする目的程度で参考にしてみてください。
見せ金と判定される場合、大きく分けて2つの目安があります。
一つ目は、資金の流入があったとき、それが一時的なものかどうかという点です。
毎月定期的に入金される給料であれば特に問題ありませんが、規則性のない大きな金額がまとまって入金された場合、相手側(例:審査担当者)は審査を通るために用意した見せ金ではないのか?と疑う可能性があるためです。
二つ目は、不定期なお金の流入に合理性があるかどうかという点です。
まとまった金額が口座に記録され、それを相手側に提示した場合、見せ金と疑われる可能性があると言いましたが、合理的な説明や必要に応じた資料提供が出来れば何ら問題はありません。
この2つの視点を持って、次からは見せ金と判定される可能性がある事例についてみていきます。
見せ金と判定される可能性がある事例と有名なのが、主に下記の3つです。
1. 宝くじ当選による入金
2. 個人名義からの多額の振込
3. タンス預金の口座振込
これらに共通していえることは、いずれの場合も一時的な入金であり、金額が多額になる可能性がある点、つまり判定基準①に該当するということです。
判定基準①に該当するだけでは、即座に見せ金と判定されるわけではないですが、判定基準②に照らして合理的かどうか、必要であれば関連資料を提出出来るかの対策が必要といえます。
上記2の「個人名義からの振込」も、場合によっては個人からの借入金とみなされ、自己資金と認められない可能性もあるので注意が必要です。
それでは反対に、見せ金にならない事例について紹介していきます。
これも先ほどと同様に、フローチャートに該当するかどうかである程度判断が可能です。
見せ金にならない事例の一例をあげてみます。
1. 宝くじ当選による入金(+証明資料有)
2. 事業性が認められる個人名義からの多額の振込
3. 定期的なタンス預金の口座振込
4. 親や配偶者からの支援金(+証明資料有)
5. 自己保有資産(株式や不動産等)の換金
上記はあくまでも一例ですが、1~3は先ほどの見せ金に該当する事例に客観性を持たせた場合、4と5も同じく自分のお金と主張できる例だと言えます。
いずれも、自己資金と言えるだけの客観性を持っている点がポイントといえます。
会社設立時や融資を受ける際など、自分の行為が見せ金と判定されるか否かわからなくなった場合には、是非一度フローチャートを参考にしてみてください。
最後に、見せ金によって会社を設立した場合のリスクについてみていきます。
会社法では、見せ金自体を禁止する条文はないので若干曖昧なのですが、過去の判例では見せ金による会社設立は無効であるとの結果が出ています。
これは、お金があるように見せかけて行った払込は無効となり、その結果会社法で要求されている財産に満たなくなり(会社法27条4項)、結果として設立無効原因(会社法828条1項1号)となるロジックとなっているためです。
見せ金を利用して会社を設立した場合、そもそも設立自体が無効となる可能性もありますが、別のリスクもあります。
それは、会社を設立した発起人自体に税務リスクが生じるという点です。
これは見せ金を使った場合、会社設立後に会社口座に振り込まれたお金が再度発起人に戻される点に起因するためです。
簡単に言ってしまえば、会社のお金を発起人に支払っている側面に注目され、役員報酬とみなされる可能性があるということです。
そのような場合には、役員報酬に係る税金を納税しなければならないことにもなりかねません。
いかがだったでしょうか?
見せ金という方法は、何かしらの目的を達成するために他者を欺く行為です。
見せ金という方法を積極的に使って会社設立をしたり、融資を受けることのリスクについて理解して頂けたかと思います。
また、本当は自分のお金であるのに、見せ金と思われてしまうケースもあります。
そのような場合に、自分自身のお金であると主張するための重要な考え方もお伝えしました。
これから会社設立をしたいと考えている方、新規で融資を受けようとしている方の参考になれば幸いです。健全な会社運営を目指して頑張りましょう!
クリーンな会社経営を行う上で「見せ金」については十分注意する必要があることがおわかりいただけたと思います。
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TAK