優秀な企業ほど在庫管理を徹底しているのは有名な話。逆に言えば、在庫管理に力を入れたからこそ、会社を成長させられたのです。在庫管理は会社の未来を左右する重要な位置づけです。
それなのに、在庫管理が軽視されがちなのは何故だと思いますか?答えは、在庫管理と利益が密接に繋がっていることに気付いていないからです。
これから、在庫管理の重要性を基礎から振り返り、在庫管理の徹底によるメリットについて説明します。この記事を読んで在庫管理について復習し、利益アップにつなげましょう!
このページの目次
まずは、在庫管理の基本からおさらいしましょう。
「在庫管理なんて、欠品が出ないようにストック多めにしとけばOK!」と軽く考えるのではなく、「在庫管理を徹底しないと生き残れない!」くらいの危機感を持ってください。
在庫は『棚卸資産』と呼ばれ、平均して総資産の10%程度を占めます。そのため、棚卸資産を適切に管理していないと、市場競争で勝ち抜けないと言われています。
在庫管理を改善させるためには、在庫の捉え方が重要です。仕入時も保管時もコストがかかるので、在庫は「現金が形を変えたモノ」「ランニングコストがかかるモノ」とも言えます。
・買い付けた商品 など
・原材料
・部品
・半製品
・仕掛品
・完成品 など
また、『在庫=現金化できる価値のあるモノ』ではあるものの、お客様に購入してもらえない限り、ただのモノのままです。
それに、商品としての価値がなくなると、お金をかけて仕入・保管しても現金化できなくなります。
在庫管理とは、お客様に提供する商品の数量や状態(品質・機能)を適正に保つことです。
どれだけ素晴らしい商品を保有していても、在庫管理が上手くいっていないと商品の価値が低下+お客様からの評価がダウンしてしまうため、利益減少につながります。
広い意味では、今後の需要予測や適正在庫数をキープすることも、在庫管理の範疇だと言えるでしょう。
・受入、検品、検収
・棚上げ、棚卸
・出庫、発送
・返品処理
・期限切れ在庫処理
・需要予測を立てる
・適正在庫を保つ
在庫管理の重要性を理解するために、在庫管理の流れを把握しておきましょう。
(1) 商品や原材料の仕入・検品・受入
(2) 店頭に出せない分はバックヤードで管理・棚卸
(3) お客様に販売・受注・出庫
(4) 在庫を店頭に回す
(5) 在庫が少なくなったら追加仕入
+(6)返品処理
在庫管理を単純化して説明すると、この5ステップの繰り返し。
このステップのどこかでトラブルが発生する場合には、在庫管理が上手くいっていないということです。
それでは、在庫管理が上手くいっていないケースと、在庫管理が上手くいっているケースを比較してみましょう。
在庫管理に問題があると、どんな結果をもたらすのでしょう?
在庫管理の流れ(1)~(6)で起こる代表的なトラブルを、ステップごとに紹介します。
結果 | |
(1) 仕入数が多過ぎる |
・保管場所確保で余計な出費 |
(1) 仕入数が少なすぎる | ・注文時に欠品してお客様からクレーム |
(2) 在庫を把握できておらず古くなった商品を発見 |
・値下げ価格で販売 |
(2) 実地棚卸と帳簿棚卸で数や金額が合わない |
・会社の利益を正確に把握できない |
(3) 「在庫あり」と表示して販売したのに、実際は在庫がない |
・注文をキャンセルされる |
(3) 受注時に残在庫数が分からない |
・在庫数確認のためにお客様をお待たせする |
(4) 店頭に商品を回すまでに時間がかかる |
・注文を受けられない期間が長引く |
(5) 在庫がなくなったのに気付けない |
・追加仕入が遅れて欠品状態が続く |
(6) 代替品が見つからず、返品依頼への対応が遅れる |
・お客様からの評価が下がる |
次は、在庫管理が上手くいっているケースを見ていきましょう。
結果 | |
(1) 必要最低限の仕入数をキープ |
・広々とした保管スペースで作業効率アップ |
(2) 店頭商品数と在庫数を把握できている |
・店頭商品がなくなればすぐに補充できる |
(3) 注文時に在庫数が分かるのでお客様に正確な情報を伝えられる |
・信用が高まり売上アップ |
(4) 欠品がなく店頭商品数が一定に保たれる |
・欠品のないお店として人気が出る |
(5) 在庫の減り具合を把握できる |
・過剰仕入が予防でき無駄なコストがかからない |
(6) 返品依頼にスムーズに対応 |
・お客様評価が上がりリピーターが増える |
在庫管理が上手くいっていないケース1から分かるのは、在庫管理を怠ることでの損失はかなりのものだということ。
不適切な在庫管理をしているとトラブルが多発し、売上ダウンに加えて、信用の低下、無駄な作業による人件費の増大…など、負の悪循環が起こります。
対して、在庫管理が上手くいっているケース2では、在庫管理の徹底によってたくさんの恩恵を受けていることが分かります。
それに、在庫管理の改善で余剰資金ができれば、それを元手にして事業を拡大させることも可能。
利益を上げている会社が在庫管理に力を入れているのは、こういった理由があるからです。
在庫管理の目的は、欠品を出さないためだけではありません。在庫の過不足を無くすことが、利益の最大化につながるからです。
在庫管理を徹底すれば、「事業の安定+事業拡大」という大きなメリットが得られます。
在庫管理を改善させると良いことがたくさんある…という事実が分かったら、在庫管理がもたらすメリットのからくりを詳しく考えてみましょう。
・最短時間で商品を探し出せるから
・無駄な管理スペースをなくせるから
・仕入ミスを減らせるから
・廃棄ロスをなくせるから
・人件費の節約になるから
在庫管理が上手くいけば適正在庫を保てます。
在庫数が必要最低限に維持されているので、必要になった商品をすぐに探し出せるのがメリット。目当ての商品に辿り着くまでに無駄な時間がかからず、時間を有効活用できます。
また、在庫管理を徹底して「どこに」「何が」「いくつ」あるのかを明確にしておけば、生産性が大きくアップします。
在庫を多く抱え過ぎえると、在庫を管理するために広いスペースが必要となり管理コストが上昇します。
在庫管理に力を入れれば、管理コストを最小限に抑えられるでしょう。
そして、スペースに余裕ができると、従業員のつまずき事故を減らせるので、怪我防止にも役立ちます。
在庫管理が不十分で残在庫数を正確に把握していないと、間違えて無駄な商品を大量仕入してしまうミスにつながります。
仕入ミスを予防できれば、無駄な出費を減らせます。
在庫管理をする上では、商品の鮮度も重要ポイント。
仕入れた順に売っていかないと死蔵品が出てしまうからです。デッドストックは利益減少に直結します。在庫回転率が適正化できれば、期限切れ商品の廃棄ロス問題に悩まずに済みます。
在庫管理を改善させれば全ての作業がスムーズに進み、従業員の残業代をカットできます。
・欠品が減るから
・迅速な商品発送ができるから
・信頼度が向上するから
・品質が安定するから
・需要予測ができるから
・キャッシュフローが安定するから
・従業員のやる気につながるから
欠品ばかりですぐに商品が手元に届かない状態では、お客様を満足させられません。
でも、在庫管理が上手くいけば、欠品とは無縁。いつも豊富な品揃えのお店だと思ってもらえます。
在庫管理がイマイチだと、注文を受けてから発送までに不必要な時間がかかります。
テンポよく発送作業ができれば、迅速に商品を届けることができ評判が良くなるでしょう。
在庫がないのに注文を受けてしまったら、信用ガタ落ちは間違いありません。
在庫管理がしっかりしていれば、そんなミスを避けられます。ミスがなく余裕があるので手厚いサービスを提供でき、お客様から信頼できるお店だと思ってもらえるのが大きなメリットです。
適正に在庫管理がなされていれば、理想的な在庫回転率が実現。古い商品を売りつけることがなくなるので、高品質のお店として人気が出るでしょう。
在庫の減り具合をチェックすれば、何が売れていて、何が売れていないかが一目瞭然。それを参考にすれば、需要予測ができ今後の見通しを立てられます。
投資する金額が大きければ大きいほど、需要予測の必要性が増します。
無駄な在庫による赤字転落を予防するためには、今後の売れ行きを見越して商品を仕入れなくてはいけません。
事業を運営していく上で忘れてはいけないのがキャッシュフローです。
仕入れに資金を使い過ぎると、手元キャッシュが少なくなり資金繰りが苦しくなるのが問題。在庫管理が適正なら、不必要な出費を減らせるのでキャッシュフローが安定します。
在庫管理の最大のメリットとも言えるのが、従業員のやる気を奪わない点です。
クレーム対応や無駄な作業が減れば、社員のモチベーションは各段に上がります。
ここまで在庫管理の重要性について説明してきましたが、こんなにも在庫管理のメリットがたくさんあるのに、なぜ後回しにされるのでしょう?
それは、在庫管理が地味な存在のため、メリットやデメリットが見えにくいからです。
長いスパンで事業計画を立てれば在庫管理の必要性に気づけるはず。でも、目の前のことしか見えないと、売上金額ばかりが気になり在庫管理のことまで頭が回りません。
それに、在庫管理が煩わしい作業で、非常に手間がかかることも後回しにされがちな理由。
やってて楽しい作業ではないので、後回しにしたくなるのも当然です。実際の現場では、在庫管理にまつわる悩みで溢れています。
二重入力や作業ミスで在庫データと実際数量に差異が出る…など、ヒューマンエラーがひとつでもあると在庫管理が上手くいきません。また、在庫の種類や総数が多くなると、人の目だけで全てを管理するのは物理的に不可能です。
在庫管理にはこういった難しさがあるため、ついつい後回しにされてしまうのでしょう。でも、在庫管理を後回しにし続けている限り、無駄を減らすことはできません。
「在庫管理を徹底したいのにできない…」とお悩みの方におすすめなのが、『在庫管理システムの導入』です。
次は、在庫管理システムについて説明していきます。
在庫管理システムとは、在庫の状況や入出庫の情報、在庫不足情報等の管理を目的とした専門システム。
入出庫管理機能や返品管理機能が付いているものが一般的です。導入形態は、大きく分けて2系統。
1つ目は、自社サーバーを導入するオンプレミス(パッケージ)型。2つ目は、Webブラウザーを介するクラウド型です。
在庫管理システムを使えば、「また在庫数が合わない…」といった悩みが解決するはず。
これから、在庫管理システムによるメリットを紹介するので、在庫管理を改善させたい方は検討してみてください。
在庫管理を難しくさせている要因が人為的ミス。人の手でデータ入力をする限り、書き写しミスが発生します。
在庫管理システムを導入し、ハンディターミナルによるバーコード読み取りに変更すれば、ヒューマンエラーを減らせます。
在庫管理システムを使えばタイムラグがなくなり、リアルタイムで情報共有できるのもメリットのひとつ。
今現在の在庫状況が可視化されるので、発注数を決める際など様々な場面で役立ちます。
在庫管理システムに記録されている過去の入出荷や在庫のデータを基にすれば、需要予測を立てやすいです。
在庫数を適正に保てれば、過剰在庫に悩むこともありません。
リアルタイムでデータが転送されるため、煩わしい在庫管理業務が各段にラクになります。
バーコード入力でサクサク作業が進められれば、効率アップ間違いなし!
在庫管理システムを使って、一定の在庫数量を下回った時にアラートが出るようセットしておけば、欠品のない状態をキープすることが可能。
在庫がゼロになってから慌てて発注する…なんてトラブルを予防できます。
在庫管理にかかるコストは倉庫費、人件費、配送費、保管費など。これらは、在庫金額の15%~25%ほどだと言われています。
在庫管理システムには初期費用と利用料がかかりますが、トータルで考えると在庫管理費用のコスト削減につながるでしょう。
適当な在庫管理のままでは事業を成功させることは難しいです。
なぜなら、在庫管理は利益に直結しているからです。利益を最大化したいのであれば、在庫管理の徹底は必ずしておくべきことのひとつ。
在庫管理を改善させれば、無駄が減り売上アップにつながります。
なお下記の記事では、おすすめ在庫管理システムの比較を詳しくしているので、ぜひご参照ください。
在庫管理に力を入れて、明るい未来を手に入れてくださいね。
画像出典元: o-dan