TOP > 資金調達 > 投資 > CVCとは?失敗する理由とメリット,デメリットを解説
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近年、新しい事業拡大戦略の一つとして注目されているCVC。しかしCVCのそもそもの定義やVCとM&Aとの違いを把握している人は多くないのではないでしょうか?
本記事ではCVCとVC、CVCとM&Aとの違いを比較しながら、CVCのメリット・デメリット、そして事例紹介と共にCVCを成功に導く上で必要な視点について紹介していきます。
この記事でCVCの持つ課題だけではなく、ポテンシャルへの理解が深まります。
このページの目次
CVCとは「Corporate Venture Capital(コーポレートベンチャーキャピタル)」の略です。
投資事業を主としていない事業会社が自己資金でファンドを組成して、事業シナジーを目的に未上場の企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動組織のことを指しています。
国内企業のCVC事例として
・KDDIグループはGreeとの協業を皮切りにCVCを組織、事業拡大に弾みをつける
・旭化成は海外ベンチャーの買収
・GMOグループは出資先IT企業と事業シナジーを創出
それぞれの企業が異なる成果をCVCによって得ています。
CVCとM&Aの大きな違いは出資先への影響力が挙げられます。
M&Aの場合は買収を行うことで相手先企業の経営にまで入り込み、事業コントロールを行うことが可能になります。
反面、買収後の運用コストや損失が発生した場合のコストを全て抱え込むことになります。
CVCではあくまで出資先企業の技術のみを利用することになります。
経営権を握れない、コントロールができない反面、M&Aに比べると低コスト低リスクであることが特徴として挙げられます。
CVCとVCの違いは出資目的の違いにあります。
VCは主にキャピタルゲインを狙って設立・運用されます。
そのため、事業領域を限定することなく、株式を売却した際により多くのリターンを得ることができる企業に投資が行われます。
一方、CVCでは主に事業シナジーを得ることを目的としています。
そのため協業することで新たな利益を得られる、事業領域が重なる事業に出資することが多いです。
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多額な資金を利用したM&Aや自社のリソースのみで新規分野に参入した場合失敗した際の損失は資金面、組織面、運営面でも大きなものとなります。
CVC投資であれば、あくまで技術面での協力にとどまるので損失は資金面のみ抑えられ、低リスクとも言えます。
また製品・技術を一から開発する場合は多くの時間・資金等のリソースが必要になりますが、
CVC投資では事業開発を「外注」するためコスト面でもメリットがあることになります。
CVCの形式では、創業者が経営権を持ったまま、事業を協業できます。
これにより、創業者の熱意を維持する効果だけではなく、自社側の協業担当者にとっても、外部の企業文化に触れる機会が生まれます。
外部の刺激を受けることにより新たなイノベーションが生まれることが期待できます。
第一に「どの企業がシナジーをうむ事業か」を判別すること自体が決して簡単なことではありません。
CVCでは一般的に10年の期間を見積もるとされていますが、数年後でさえ投資先がどのようになっているかの予想は容易ではありません。
加えて、その時の自社の方針、状況すら見通しを立てることすら難しいと言えます。
状況が不安定である中、有益な投資先を選ぶことは簡単なことではありません。
現状ではCVCのスキーム自体が国内では目新しいこともあり、運用に関するノウハウが乏しい状況です。
そのような状態で投資先企業が自社にとって有益な投資となるようにコントロールすることは難しく、各CVCの担当者が手探りで行っているのが現状です。
ベンチャー企業の成功確率は低く、製品・市場が新しいほどこの確率は低くなっていきます。
特に研究開発型のベンチャーは製品・技術の開発に時間と資金、多くのリソースが必要になります。
加えてCVC側は常に開発段階・事業化段階・市場での競争、それぞれのフェーズで失敗リスクがあることを認識している必要があります。
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Greeとの資本提携、共同事業での成功体験を元に2012年にオープンイノベーションを目的にファンドを設立。
主に KDDI Open Innovation Fund を通じてこれまで27件の事業連携、5社の子会社を実施してきた実績があります。
事例としては、株式会社nanapiが挙げられます。
2013年にメディア事業を運営する同社へ2億7千万円を出資、その後2014年に株式を取得し、KDDIの連結子会社化しました。
旭化成は2008年からアメリカのシリコンバレーやボストンを拠点にCVCを運営しています。
どうCVCはこれまでに水処理や殺菌デバイス、正極材などの分野に投資を行なっています。
中でも代表的な事例は、「Crystal IS」です。深紫外線 LEDのベンチャー企業 Crystal ISに対し、最初はCVCの位置づけで投資を行っていましたが、事業化に成功した後、株式を取得し2012年に子会社化しました。
GMOグループのCVC部門にあたるGMO Venture Partnersも国内の上場、未上場インターネット事業の企業に対して積極的な投資を行っています。
同CVCは2015年にChatWorkへ3億円の出資を行いました。
2017年にはグループの事業会社、GMOグローバルサイン株式会社のIDアクセス管理クラウドサービス「SKUID(現・トラストログイン)」と連携するなど、事業シナジーをおこしています。
過去の記事ではCVCについての解説のみならず、国内CVCを200社以上ピックアップした記事もあるので是非ご覧ください。
画像引用:PwCプレスリリース
PwCの調査によると、CVCの抱える課題として
この二点が代表的なものとして挙げられてます。
以下にこの二点を克服する上で必要な視点を紹介していきます。
戦略リターンを期待するCVCにとっては事業シナジーが明確なベンチャーに投資することは自然な成り行きです。
しかし、近傍の事業に固執することは投資先の選択肢を狭めてしまうことになります。
結果的に有望な投資先が見つからず、事業シナジーを起こすというCVCの役割が果たせなくなるリスクも抱えています。
そのため、事業シナジーが明確ではないが、成長が見込める周辺領域のベンチャー企業へ投資することは投資機会の損失を防ぐ意味でも検討する価値があると言えます。
また、戦略の一つとして、自社への影響についての確信が持てない段階ではCVCでマイノリティ投資を行い、対象会社の重要性や市場での競争力に確信がもてた段階でM&Aに進むという戦略も合理的な方法と言えます。
その点で、CVCは短期的な事業シナジーにとらわれ過ぎず、中長期的な視点でかつ周辺領域で有望な投資先を見つけ積極的に投資を行うことで、事業シナジーがおきる確率を増やす、ということも重要な視点になってきます。
戦略リターンと財務リターンのどちらを重視するか、は重要な課題とされています。
しかし、実際にはどちらのリターンも同じように求める必要があると言えます。
戦略リターンを実現する上で競争力のあるベンチャー企業と組むことは必須事項と言えます。
競争力のあるベンチャー企業に投資を行うことで結果的には財務リターンを得ることも可能になるため、その点では戦略リターン・財務リターンは二律背反の事項ではないことがわかります。
また、ファンドとして競争力のあるベンチャーに投資できているか判断する上で、財務リターンをモニタリングすることは有用であると言えます。
これらを加味すると、戦略リターン・財務リターンの双方を追求するべきでしょう。
CVCが今後の事業拡大の戦略の一つとして規模、分野関わらず拡大していくことは確実です。
現在、新しい投資の形として注目されるCVCですが、メリットも多い反面、まだまだ新しい分野であるため、ノウハウが蓄積されていないことから発生する課題も数多くあります。
そうした中で事業シナジーをおこすには経営陣、CVC、M&A部門が連携し、目的を明確にした上で腰を据えて取り組むことが必須となっていきます。
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現在、登録済のベンチャー企業は2,600社以上、投資家数は900名以上にのぼります。
画像出典元:O-DAN