クラウド会計ソフトに関心はあるものの、まだ導入に踏み切れないという経営者は多いのではないでしょうか。
その理由は、コストパフォーマンスやサービスの質がわからず、自社にとって具体的なメリットがわからないためかもしれません。
今回は、クラウド会計ソフトのシェア状況や人気の会計ソフト、他社の主な導入理由、メリット・デメリットを解説していきます。
ぜひ会計ソフト選びの参考にしてください。
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2019年3月末、株式会社MM総研による個人事業主13,172人を対象にした「クラウド会計ソフトの利用状況」が調査されました。
その結果、会計ソフトを利用しているのは全体の約3割で、そのうちクラウド会計ソフトを利用しているのは約2割でした。
この数字だけを見ると、インストールタイプの従来型会計ソフトのほうが圧倒的シェアを誇っているように見えます。ところが、これを過去データと比較すると、今後の動向まで推察することができます。
株式会社MM総研では、今回の調査と同様の調査を2016年から毎年おこなっています。この調査結果を並べてみると、クラウド会計ソフトの導入割合が年々増加していることがわかります。
その背景には、会社員として働く以外の働き方が容易になっていることも挙げられます。フリーランスや副業・兼業などのパラレルワーカーが増えることも考えられるため、クラウド会計ソフトのシェア状況はどんどん高まっていくでしょう。
クラウド会計ソフト事業者のシェア状況を見ると、大手3社が台頭しているのが現状です。なかでも「弥生会計」は、利用者が半数を超えています。
この背景には、パソコンが普及して手書きの帳簿から会計ソフトへと変わり始めた当初からサービスを展開していた実績があり、信頼度が高いからだといえます。
広告を積極的に打ち出しているfreeeは、その認知度の上昇とともに2018年から約2%も利用者が増えています。
一方、もとは一般ユーザーの家計簿アプリとして登場したマネーフォワードは、法人向けサービスに力を入れていることもあり、個人事業主からの導入に伸び悩みが見られます。
今後、この3社のバランスがどうなるのかはわかりませんが、大手3社が互いに切磋琢磨することにより、クラウド会計ソフトのサービス品質が向上することは想像に難くありません。
また、利用者が増えることにより、現状デメリットとして考えられていることもデメリットでなくなる可能性は十分に考えられます。
会社経営では、日々発生するコストを管理したり、会計情報として残したりしていくことになります。それだけでなく年度末には、決算書など確定申告のための準備もあります。
こうした会計業務は、ルーチン化していてもトータルで見れば、かなりの時間を費やしていることがわかります。
その理由には、会計処理に必要な経理知識を要することや、処理できる端末に制限があることが関係しています。
しかし、クラウド会計ソフトなら、そういった問題点もクリアできます。その結果、作業時間の短縮に繋がります。
税制改正のように法律が変われば、会計処理に反映させなければなりません。
インストールタイプの会計ソフトでは、処理プログラムの更新作業が必要です。買い切り型であればユーザー側で作業をおこなうことになります。
この場合、データのバックアップや再インストール後の再設定など細かな作業が発生します。さらにその間、入力作業をおこなうことができず、作業を中断することになります。
クラウド会計ソフトの場合、サービス提供事業者が更新作業を含め関連作業をおこなってくれるため、煩わしい作業をする必要がなくなり、業務を効率化できます。
インストールタイプのクラウド会計ソフトでは、家電量販店などでソフトウェアを購入することになります。さらに、法改正などでソフトウェアのシステムがバージョンアップされた場合、新たに買い直しが必要になります。
会計ソフトによっては使用できるパソコン台数に制限があり、それを解除するためにはソフトウェアのグレードアップをすることになり、新たに買い直すことになります。
クラウド会計ソフトの場合は、利用台数に制限がないうえに、バージョンアップで新たにコストがかかることもありません。
シェア上位を占める人気のクラウド会計ソフト3社を比較していきます。
手軽に導入できることから、個人事業主からの評価がとても高い「会計freee」(運営:freee株式会社)。
freeeが多くの個人事業主に選ばれる理由は、「簿記の知識がなくても、操作できる独自システム」です。
会計サービスそのものはもちろん、パソコンからもスマホからも、見やすく入力しやすいシステムが、生活の中で無理なく使いこなせるとして人気を集めています。
次に、freeeのサービスそのものについて、少しお話しましょう。freeeの個人事業主向け会計ソフトは、スタータープラン・スタンダードプラン・プレミアムプランの3段階が用意されています。
スタータープラン | スタンダードプラン | プレミアムプラン | |
月払い |
1,180円/月 | 2,380円/月 | なし |
年払い |
11,760円/年(月当たり980円) | 23,760円/年(月当たり1,980円) | 39,800円/年(月当たり3,316円) |
メンバー追加 | freee認定アドバイザー以外はメンバー追加不可 |
4人目以降、1人あたり |
4人目以降、1人あたり年額払いのみ3,600円 |
※税抜価表記
スタータープラン、スタンダードプラン、いずれも手頃な価格でスタートできるのですが、より手軽に始められるスタータープランです。しかし、ここでもやはり価格だけで選んでしまうのは要注意。価格の違いには当然、機能に差が出てくるわけです。
例えば、スタータープランにはついていない、「消費税の申告機能」について。
2年前の売り上げが1,000万円以上の個人事業主の場合、消費税の課税義務が発生するため、消費税の申告機能のあるスタンダードプランを選択したほうが良いでしょう。
その他機能に関しても、詳しくは公式ホームページにて確認し、あなたに合ったプランを選択しましょう。
マネーフォワード クラウド(運営:株式会社マネーフォワード)の魅力は、「自動化連携できる金融機関(銀行、クレジットカード会社など)が豊富」な点です。
同社が2018年1月に発表した資料では、対応する金融機関は2,650以上。また2018年11月、同社のプレスリリースでは、足利銀行提供の個人向け参照系APIと提携したことが発表されていました。
この点からみても、連携する金融機関がいかに豊富かを伺えます。
とはいえ、他のクラウド型会計ソフトにおいても、メインバンクやメジャーなクレジットカード会社など、一般的に多く使われている金融機関は網羅されています。
そのためマネーフォワード クラウドは、自社もしくは取引先が地方銀行などを常用している場合などに活用されると考えられます。
次に気になるコスト面について。マネーフォワード クラウドの個人事業主向け会計ソフトには、無料プラン・ベーシックプラン・あんしん電話サポート付きベーシックプランと、3つの選択肢があります。
月額プラン | 年額プラン | |
スモールビジネス | 1ヶ月あたり3,980円 | 1ヶ月あたり2,980円 |
ビジネス(1ヶ月無料) | 1ヶ月あたり5,980円 | 1ヶ月あたり4,980円 |
価格的にみると、マネーフォワード クラウドの無料プランも魅力的ですよね。しかし、無料プランでは会計仕訳が年間50件しか処理ができないため、年間で支出・売り上げが多い場合には、あまりお勧めはできません。
一方、会社勤めの傍ら、副業の範囲で小規模事業をしている方は「無料プラン」でも十分活用できるでしょう。
また、ベーシックプランでは、仕訳データ処理も無制限なうえに、他社の確定申告ソフトとも連携できるなど、本格的に事業を進める方にとって、オススメできる内容と言えます。
やよいの青色申告(白色申告)オンライン(運営:弥生株式会社)は、パソコンにダウンロードするタイプの会計ソフトとして広く使われていた「弥生会計」がベースとなっている、クラウド型会計ソフトです。
つまり、会計ソフトのなかでも「老舗」と言えるでしょう。
やよいの青色申告(白色申告)の魅力は、なんと初年度が無料であること。
プラン | 初年度 | 通年(2年目以降) | |
青色申告 |
セルフプラン | 無料 | 8,000円/年 |
ベーシックプラン(操作質問可能) | 6,000円/年 | 12,000円/年 | |
トータルプラン(操作質問・業務相談可能) | 10,000円/年 | 20,000円/年 | |
白色申告 | フリープラン | 無料 | |
ベーシックプラン | 4,000円/年 | 8,000円/年 |
※税抜価格
また、やよいの青色申告(白色申告)オンラインは使えば使うほど自動的に学習していくため、2年、3年と続けて使用する場合には、より高性能な状態で使えることが期待できます。
だからこそ、まずは1年間利用して、弥生会計ブランドの信頼度を体験してみるのもいいかもしれませんね。
クラウド会計ソフトは、使用料を支払い、インターネットを介して利用するサービスです。
インターネット環境があれば、パソコン・タブレット・スマホから利用できるため、従来のように利用場所が限定されません。
業務で使用している銀行やクレジットカードの入出金や使用履歴も、連携さえしておけばクラウド会計ソフトに自動的に反映されます。
従来型の会計ソフトと違って異なる会計データを簡単に連携させられるため、帳票作成や資料作成にもすぐに対応できます。
このほか、セキュリティ面についても、オンラインバンクでも使われているセキュリティと同等レベルのものが使われていますから、データ漏洩のリスクも低く安心です。
メリットを要約すると、全体的に経理・会計業務の時短化・効率化・簡素化が図れるところだといえます。
クラウド会計ソフトは、インターネット上で使用する会計ソフトであるため、インターネット環境を要します。
ただ、インターネットが使えない環境は、あまり一般的ではなく、限定的と考えられるため、デメリットとして考えるほどではないかもしれません。
利用料の支払いがランニングコストとしてかかるのはたしかにデメリットですが、クラウド会計ソフトを使うことによって作業が時短化することなどを考慮すると、従来の会計ソフトを利用するよりもコストパフォーマンスは高くなるはずです。
つまり、ランニングコストがかかっても、それに見合うパフォーマンスが望めるため、実質的にかかるコストは低くなるでしょう。
押さえておきたいデメリットは、自社に合わせたカスタマイズができないことです。
規模の大きな会社であれば、自社の業務フローに合わせた会計システムを構築したほうが結果として費用対効果が高い場合があります。従業員が300人以下など中小企業やベンチャーに、クラウド型会計ソフトが向いているといえます。
クラウド会計ソフトに対応できる税理士が現状少ないという点においても、今後クラウド会計ソフトに対応する税理士が増えると考えられます。
たしかにクラウド会計ソフトにはデメリットもありますが、導入によるメリットと比較すると十分小さいものだと言えます。
クラウド会計ソフトのシェア状況や人気の会計ソフト、他社の主な導入理由、メリット・デメリットを解説しました。
クラウド会計ソフトは、年々導入率が上がっています。現在、手書きやインストールタイプの会計ソフトを利用しているのであれば、移行させることで経理や会計業務の作業にかかる負荷が軽くなるのを実感できるはずです。
従来型の会計ソフトとは違い、クラウド会計ソフトは導入コストもかかりません。
まずは、お試しから始めてみて、自社にマッチするかどうかを確認してみてください。
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