【事例多数掲載】株式交換とは?知らないと損するM&Aの新潮流を専門家が解説!

【事例多数掲載】株式交換とは?知らないと損するM&Aの新潮流を専門家が解説!

記事更新日: 2024/09/03

監修: 松尾 慎太郎

スタートアップ企業のEXITの手法として、「M&A」が注目を浴びています。

M&Aの手法は多数あり、今後スタートアップのM&Aはキャッシュによる対価ではなく、株式を対価にしたM&Aが増えていき、新しい潮流の1つとなっていく可能性が高いです。

株式を対価にしたM&Aにも種類はありますが、本記事では100%子会社化する際に活用される「株式交換」に焦点を当てて説明していきます。

本記事の前半では、株式交換が今後増えるであろう理由背景、メリットやデメリットを紹介。

後半では、弊社が独自に調査し、未だ他の記事では触れていない株式交換を用いたM&Aの事例を6つ掲載しています。本記事を読むことで、M&Aの選択肢を増やすことができれば幸いです。

この記事の監修者

松尾 慎太郎 M&Aコンサルタント

ITスタートアップにて新規事業の立ち上げや拡大を担い、その後大企業にてコンサルティング業務や大企業やスタートアップのアライアンスを支援。 2021年11月にプロトスター株式会社へ参画し、大企業の新規事業開発やスタートアップのファイナンスを支援。現在は、取締役 兼 スタートアップM&A事業の責任者も兼務し、複数の支援実績もあり。情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授を務める。

経営者は株式交換を知らないと損!

「株式交換」という手法は、日本では現在馴染みのない手法ですが、先述のとおり、今後スタートアップM&Aの新潮流となる可能性が非常に高いです。

本章では株式交換を説明したのち、なぜ知らなければ損してしまうのかを解説していきます。

そもそも株式交換とは?

株式交換とは、名前にある通り、株式を交換することによってM&Aを行う手法のことです。

子会社となる 譲渡企業の株式を所有していた株主には、親会社となる譲受企業の株式を所定の交換比率で計算された株数を割り当てます。

株式交換に関しては、子会社となる譲渡企業の株式を100%取得し、完全子会社とする場合にのみ活用することができます。

もし、完全子会社にはしないが株式を対価として支払うことでM&Aを行いたい場合は「株式交付」という手法があります。

細かい制度の違いなどはありますが、大きくは完全子会社にする場合か、そうでない場合によって違いが分けられるので、株式を対価としてM&Aを行うという部分においては同様の手法といえます。

今回は、株式交換に焦点を当てて説明していきます。

海外では、キャッシュ一本化の方が稀

出典:「産業競争力強化法における事業再編計画の認定要件と支援措置について」(経済産業省)


実は、海外では対価としてキャッシュのみを支払うということは主流ではありません。

日本ではM&Aの対価はキャッシュで払うものというイメージが定着していますが、今後は流れが変わっていくと考えています。

「株式交換」は政府も力を入れて推進する手法

政府が「スタートアップ育成5カ年計画」を公表してから約2年が経とうとしています。

スタートアップの創業数、投資額の伸びなど入口の期待が高まる中、スタートアップの出口の設計にも力を入れています。

特に、株式を対価とするM&Aに期待が高まっており、産業競争力強化の一部改正などによるキャッシュ一本化ではない対価の支払い方もできるような、支援に力を入れていることがわかります。

まさに最近、政府が海外とのM&Aにおいても自社株を使って買収することが可能となるよう会社法を改正する方針である、というニュースがありました。

これは海外のスタンダードを日本にも適用しつつあるということで、日本においてもM&Aの対価が株式を交えて支払われるということが徐々に割合を増していくと予測できます。

参考:https://www.meti.go.jp/press/2023/02/20240216001/20240216001.html
参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA27BZU0X20C24A5000000/


上記から、株式交換がM&Aの手法として活用が増えていく下地が出来上がってきていることがわかります。

では具体的になぜ、株式を対価にするM&Aがここまで注目を浴びているのかを紐解くべく、売り手企業側の観点から考えるメリット・デメリットについて次章で説明します。

譲渡企業にとって株式交換を活用するメリット3つ

1.スケール化が可能

まずは第1に、現状の事業成長をさらに加速することができるという点です。

現在の主流である株式譲渡とは違い、株式交換は経営者が譲受企業の株を保有するため、M&A後も譲渡企業を継続して経営するケースが多く見受けられます。

そのため、譲渡企業を成長させるための経営戦略・スキームの1つの手段として株式交換を用いることで、スタートアップ単体より、大企業など譲受の企業アセットを活用し、さらに事業を伸ばすことが可能になります

2.買収先の株主として参加することができる

第2に、株式交換では親会社となる譲受企業の株主になることができるというのも強力なメリットです。

なぜメリットであるかというと、大きく2点あります。

保有株式の価値向上に直結しやすい

1点目は、譲渡企業であるスタートアップの経営を引き続き行い、事業成長に成功した場合、親会社となった譲受企業の株価が向上することにつながるのです。

つまり、スタートアップの事業成長が、保有株式の価値向上に直結しているため、株式を交換した時点より高価にすることができるということです。

新たなキャリアの選択肢が増える

2点目は、買収側の株主としてグループインすることで、新たなキャリアの可能性が広がるということです。

スタートアップの経営もしつつ、親会社となった譲受企業の株主となって経営に対して発言もすることができるというのは、新たなキャリアの選択肢が増えることになります。

スタートアップ単体で成長する際は経営継続か引退かの2択になりがちですが、さらに選択肢を増やすという点では強力なメリットでしょう。

また、簡易株式交換という手法を活用することで更にM&A成約までのハードルが低くなります。簡易株式交換については後ほど詳細に紹介します。

3.買い手とのスムーズなM&Aが可能となる

第3に、M&Aの成約までのハードルが低いというメリットがあります。

ハードルが低い理由としては、大きく2つあります。

キャッシュを準備する必要がない

1点目は、譲受企業は基本的にキャッシュを準備する必要がないためです。

譲渡企業の株式を得るために、自社の株式を交付するので、キャッシュの移動はありません。

バリュエーションの合意に至りやすい

2点目は、株式価値は流動的であるため、バリュエーションの合意に至りやすいという点があります。

今後の成長に期待できるスタートアップのM&Aでは、どうしても財務価値が経営者の想定より高くならず、期待していたよりも譲渡価格が低くなってしまい、両社で価格の合意に至らないという課題があります。

その課題を解決するのが、価値が流動的な資産同士の交換です。

第2のメリットでも説明しましたが、グループインすることで、スタートアップの価値向上が、親会社となる譲受企業の価値向上に直結するので、スタートアップの成長次第で譲渡価格を押し上げることが可能ということです。

譲受企業は、キャッシュ不要かつ想定より低い価格での譲受が可能となり、譲渡企業の経営者はM&A後のスタートアップ経営次第で自分の保有財産の価値の向上に繋げることができるため、両者にとってWin-Winになります。

※買収対価の一部について、一定の目標達成と 連動させ追加で代金を 支払うアーンアウト条項 も、バリュエーションの目線相違の解消手段として注目されています。

 
また、条件次第で譲受企業内で株主総会の特別決議を省略することができるという点も、買い手がスムーズにM&Aを推進するためには強力な手段となります。

この手法を「簡易株式交換」と呼び、まさに簡易的にM&Aを行えるという点でスピード感を持って交渉することができるため成約に至りやすくなります。

重要な点ですので、詳細に関して後述します。

譲渡企業にとってのデメリット2つ

1.譲渡企業であるスタートアップを引き続き経営する場合を想定した手法である

ここまでメリットを述べてきました。

そこで、読まれた方は薄々感じたかもしれませんが、こちらの株式交換というスキームは、M&A後も引き続きスタートアップの経営を行っていくことを前提にしているということです。

他のスキームに関しても、M&A後も引き継ぎ期間としてロックアップという条項が追加され、数年間は引退することができないなどの決まりが設けられることは多いですが、株式交換においてはロックアップ以前に、自ら会社を継続させて成長させていきたいという方でしか合意に至らない可能性が高いです。

譲受企業側からしても、自社の株式をすぐに売却しそうな人に渡したくはないことは容易に想像できます。

そのためM&A後に経営に残りたくないのであれば、株式交換以外のスキームを活用しましょう。

2.すぐにキャッシュが手元に入らない

2点目のデメリットとして、手元に得られるのは株式だけで、キャッシュを得ることができないという点です。

ある程度まとまったキャッシュが欲しくてM&Aしたいという場合では、全くキャッシュの流入しない対価を全て株式で交換する手法を活用すべきではないでしょう。

※株式交換においても、対価としてキャッシュを混ぜることも可能であるため、詳細に関してはM&Aを検討する早め段階で専門家に相談することをおすすめいたします。

【補足説明】簡易株式交換とは?

この章では最後に先ほど軽く触れた簡易株式交換についても詳しく説明します。

簡易株式交換とは、M&Aの対価が親会社となる譲受企業の純資産額の5分の1以下である場合、一定数の株主から反対通知がなされない限り、譲受企業において株主総会決議を省略することができる手法です。

この理由として、買い手企業の株主の利益に与える影響が軽微であることが挙げられます。

そのため譲受企業が大企業の場合は、迅速なM&Aの決定のために株主総会を省略できる簡易株式交換は是非とも活用したい手法であると考えられます。

スタートアップの企業価値評価の規模を考慮しても適用されるケースは多いですので、これからの需要が高まると予測できます。

なお、譲渡企業であるスタートアップにおいては株主総会は必要であることは変わらないです。

【ここでしか読めない!】株式交換を活用したM&A事例6選

本章では、株式交換によってM&Aが行われた事例を4つ紹介します。

また、最後に番外編として事例を2つ紹介しています。

株式会社アラタナ×株式会社スタートトゥデイ

<譲渡側企業の概要>
アラタナは宮崎県の地域活性化をビジョンに据えて、ECサイト構築やwebマーケティングなどのECに特化した事業を展開していました。

<譲受側企業の概要>
スタートトゥデイはzozotownやwearなどを運営する会社です。 ※スタートトゥデイは2018年にZOZOへ社名変更を行っています。

M&Aの目的・スキーム

スタートトゥデイは、顧客に抱えているファッションブランドの多様な要望に応えるため、アラタナの技術やノウハウを獲得したいという目的があり、M&Aに至りました。

アラタナの代表である濵渦さんはM&A後もロックアップ期間が設けられていました。

また、簡易株式交換を活用したM&Aになっています。

譲渡価格・譲渡時の株主の状況

スタートトゥデイは915,313株を交付しましたので、当時(2015年)のスタートトゥデイの株価の安値(788.0円)で計算すると、約7億2100万円の譲渡価格であったことが推察されます。

※ただし前章でも触れた通り、株式は価値が流動的であるので、あくまでも参考としての価格です。

また、ベンチャーキャピタルがアラタナの株主に参加していました。そのため種類株式が混ざっていますが、成約に至っています。

M&A後はどうなった

アラタナの代表の濵渦さんはロックアップ期間終了後も事業に残り1年半ほど継続して経営していましたが、最終的には、アラタナが2020年に吸収合併される際に濵渦さんは退社しています。

松尾コメント

本事例のようにロックアップ後も会社に残る意思がある場合は、株式交換の特徴が活きます。スタートトゥデイの株式を保有することで、アラタナの業績を伸ばすことが株式の価値向上につながりますので、重要なインセンティブとなります。濵渦さんのようにビジョンを持って事業を行っていく、継続していくという方には最適なM&Aスキームだったと言えるでしょう。

株式会社MEJ×株式会社ユーグレナ

<譲渡側企業の概要>
ユーグレナは、ミドリムシを活用したヘルスケア事業、エネルギー・環境事業を展開している会社です。ヘルスケア事業のマーケティングは紙媒体などオフラインマーケティングが中心であり、デジタルマーケティングへの移行に苦戦していました。

<譲受側企業の概要>
MEJはIT×ヘルスケアの領域で事業を展開するスタートアップで、若い女性が主なターゲット層であり、主力ブランドを100%オンラインで運営するなどデジタルマーケティングに強みを持っていました。

 M&Aの目的・スキーム

ヘルスケア領域における商品ラインナップの拡大や、若い女性層への販路拡大やデジタルマーケティングのノウハウを獲得する目的でM&Aに至っております。

また、簡易株式交換を活用したM&Aとなっています。

MEJの代表には業績条件付のストック・オプションを割り当てられました。

譲渡価格・譲渡時の株主の状況

MEJの全ての株式である51,850株を、DCF法を用いて算出した1株あたり11,602円~16,575円の間の価格で合意したと開示資料に記載があったため、最低でも約6億円の譲渡価格であったことが推察されます。

株主構成に関しては、ベンチャーキャピタルは株主にはおらず、種類株式もありませんでした。

M&A後はどうなった

M&A後のMEJの経営は引き続き代表の古賀さんが担っています。

松尾コメント

株式交換を活用かつ、業績条件付の株式報酬型ストック・オプションを割り当てている本事例は、譲渡側企業の代表がM&A後も経営に残る動機となる強力なインセンティブを設定している代表例と言えます。MEJの業績向上が、ダイレクトに保有株式の価値向上につながることは経営のモチベーションに繋がります。実際に、ユーグレナの外部公表資料にも、MEJ代表の古賀氏のコミットメントを高めたいということが明確に記載されています。

 株式会社OZ MODE×株式会社No.1

<譲渡側企業の概要>
OZ MODEはシステム開発の請負企業であり、優秀なエンジニアを育てる教育システムや独自ノウハウを有しています。 

<譲受側企業の概要>
No.1はセキュリティ商品の製造・販売、OA関連商品販売、情報通信端末販売を事業領域としています。

 M&Aの目的・スキーム

No.1は昨今のIT・DXの時代の要請から、ハードとソフトを一体化したデジタル商材の対応が必要だと考えており、ソフトの技術力・ノウハウを保有しているOZ MODEを買収することで一体化が実現できると確信し、M&Aに至っています。

また、No.1の社内にいる人材のリスキリングやシステムの内製化などをOZ MODEの技術力・ノウハウを活用して達成しようという狙いもあります。

本事例では、簡易株式交換を活用しています。

譲渡価格・譲渡時の株主の状況

No.1は319,200株を交付しました。今年の安値(1,138.0円)で計算すると約3億6300万円の譲渡価格であったことが推測できます。

株主に関しては、OZ MODEはEPARKという会社の完全子会社であったことから、実質的にはEPARKとNo.1間でのM&Aであったことが分かります。

M&A後はどうなった

本事例は2024年4月に行われた直近のM&Aですので、今後も目が離せません。

松尾コメント

上記でも軽く触れましたが、本事例の特徴として、OZ MODEが元々別の企業(株式会社EPARK)の完全子会社であったことが挙げられます。そのため株式交換を利用したことにより、No.1の株主にEPARKが入ることになります。 このように、株式交換では譲受企業が対価のキャッシュを準備する必要がないという大きなメリットもありますが、代わりに株主構成が変わってしまうという懸念点もあります。今回の記事では譲受企業側のデメリットは論点ではないため詳細は割愛しますが、株式交換を検討する際には必ず入念な議論が必要となる点になります。

 株式会社FRACTA×フィードフォースグループ株式会社

<譲渡側企業の概要>
FRACTAはブランディングを支援する会社です

<譲受側企業の概要>
フィードフォースグループはshopifyの活用によるECサイト構築支援を事業領域としている企業です。

 M&Aの目的・スキーム

フィードフォースグループ全体でブランド開発からコンバージョンまで一気通貫して提供するブランドDX体制を構築するためにFRACTAとのM&Aに至りました。

本事例では簡易株式交換を活用しています。

譲渡価格・譲渡時の株主の状況

フィードフォースグループは530,400株を交付しました。2023年の安値(345.0円)で計算すると、約1億8300万円の譲渡価格であったことが推測できます。

また、譲渡時には投資事業会社がFRACTAの株主に含まれていました。

M&A後はどうなった

M&A成約から約1年である2024年4月にFRACTAの事業縮小を行っています。具体的には、支援サービスの新規受注の停止です。理由に関しては業績悪化や経営資源の選択と集中による事業縮小であると公表しています。

松尾コメント

本事例は元々、資本提携から両社の関係が始まっていたので、0からの株式交換ではなく2段階での統合という特徴があります。 スタートアップとしては、まずは大企業との資本提携や業務提携を模索し、そこで上手くいけばM&Aを視野に入れるという流れが、スムーズにM&Aを行う1つの戦略になり得るということが本事例から学びとることが出来ます。

 番外編:Suishow株式会社×株式会社モバイルファクトリー

譲渡企業の株主ごとに、M&A手法を分けてM&Aを行っています。その一部で株式交換を活用していますので、株式を対価に混ぜているM&Aとして番外編として紹介します。

<譲渡側企業の概要>
Suishowは位置情報共有SNSなどの次世代コミュニケーションツールを開発する会社です。

<譲受側企業の概要>
モバイルファクトリーは位置連動型ゲームを開発する会社です。

 M&Aの目的・スキーム

両社の知見・ノウハウを共有し、両社の事業成長を加速できると考えM&Aに至りました。

特徴的な点は、Suishowの代表であった片岡氏とは株式譲渡を活用し、ベンチャーキャピタルなど他の株主に対しては株式交換を活用するという2種類のM&A手法を同時活用したことにより成約している点です。

本事例では簡易株式交換を活用しています。

譲渡価格・譲渡時の株主の状況

Suishowの代表である片岡氏には、株式譲渡を活用しており、保有していたSuishowの株式82.86%を約8億2100万円で譲渡しています。

また、残りの17.14%の株式には株式交換を活用しており、モバイルファクトリーの180,000万株を交付しました。2023年の安値(583.0円)で計算すると、約1億円の譲渡価格であることがわかり、Suishowの譲渡価格の総額は約9億2100万円であったと推測できます。

M&A後はどうなった

本事例は、モバイルファクトリーが片岡氏を表明保証に関する問題で訴訟提起するという結末を迎えています。

松尾コメント

株式交換と株式譲渡を同時利用したM&Aの成約は前例が少なく、今後のスタートアップM&Aにおいて大変貴重な事例でしたが、表明保証問題で最終的に訴訟になってしまう点は、まさにM&Aの落とし穴です。 経営者の限られたリソースの中でM&Aを成約に持っていくことは大変負担が大きく、そのうえでM&A手法の工夫も行いたいとなると、M&Aの途中で挫折してしまったり、M&A後に重大な問題が起きてしまいかねません。 M&Aは経営者の人生において大きな決断ですので、2人3脚でM&Aを推進するアドバイザーの伴走が鍵を握ります。

 


番外編:株式会社サイトビジット×株式会社freee

こちらの事例は、株式交換活用と目的は一緒であるものの、別の手法を使っているという点で紹介したい内容となっています。

<譲渡側企業の概要>
サイトビジット株式会社は法務に関わる方の業務支援をクラウドサービス「NINJA SIGN」を提供することで行っている企業です。

<譲受側企業の概要>
freeeはスモールビジネスを対象としたバックオフィス業務の自動化や最適化を支援している会社です。

 M&Aの目的・スキーム

両社の事業自体はスモールビジネス向けに業務効率化システムの提供という点で共通しており、freeeが提供するサービスを拡充するという目的でM&Aに至りました。

先述した通り、手法が特殊である事例です。具体的には、2段階構造のM&Aとなっており、1段階目でサイトビジットの株式の70%を取得し、その際に残りの30%を3-5年以内にフリーに売却するという権利設定をしていました。要するに、自社株式を代表に保有させることで実質的に3-5 年のロックアップのような形になっていたということになります。

そしてfreeeは、残りの30%の取得の際に、簡易株式交換を活用しています。

M&A後はどうなった

現在では、サイトビジットが提供する「NINJA SIGN」は「freeeサイン」という名前に変更し、現在もフリーの主要事業の一角を担っています。

松尾コメント

譲渡企業の代表にM&A後も経営に残ってもらうか否かは、M&Aにおける重要な項目の1つです。 もし、代表に残ってもらう前提でM&Aをした場合は、株式交換を活用するだけでなく、ロックアップやストックオプションの割り当て、そして本事例のような2段階買収などのスキームを柔軟に提案することで、M&A後の譲受企業は、想定どおりの事業計画を進めることが出来ます。

 全体を通しての特徴・共通項

事例を通して、特徴や共通項は2つあります。

1つ目は、全てにおいて簡易株式交換が活用されているということです。

やはり親会社となる譲受企業にとって、簡易株式交換は是非とも活用したい便利な手法であることが事例からも伺えます。

2つ目は、M&A後も代表がすぐに引退をせずに継続しているという点です。

やはり株式交換を活用した際は、親会社となる譲受企業の株式が譲渡企業であるスタートアップの経営者の手に渡るので、その株式の価値向上のためにもグループに残り活動することが前提として想定されていることが分かります。

おわりに

この記事では、株式交換のメリット・デメリット、事例を紹介・解説しました。

弊社では、スタートアップに最適なファイナンス支援を提供するために、資金調達からM&Aまでの支援を行っています。

今後、株式交換を含めた株式を対価とするM&A手法の活用が活発化していくことが予測されます。

本記事で解説したように、知らないと大きく損をすることがあるため、M&Aに少しでも興味がある場合は、自社の価値、自社にベストなスキームや戦略とは何か?買い手候補企業、パートナー候補の存在を早めに専門家に確認することもおすすめします!

この記事に関連するラベル

最新の記事

ページトップへ