文書管理規定とは、重要な文書や保管が義務付けられている文書を組織的に管理するために設けられた規定です。
社内で「文書管理の方法が部署によって違う」「文書を適切に管理できていない」等の問題が発生している場合は、規定がすでに形骸化しているのかもしれません。
現状に即した文書管理規定に改め、文書が適切に管理・保管される体制を整えましょう。
本記事では、文書管理規定の概要と規定の作成方法、さらには文書管理マニュアルとの違いや両者を適切に備えておくメリットを紹介します。
文書管理の悩みがある企業は、大元の文書管理規定を見直すことが解決につながります。
このページの目次
文書管理には「文書管理規定」「文書管理ガイドライン」「文書管理マニュアル」などがあって、「それぞれの関係が分からない」「何を見ればよいか分からない」と感じる社員もいるかもしれません。
文書管理規定を見直す前に、そもそも文書管理規定とは何なのかを理解しましょう。
文書管理規定は「社内規定」の一つです。
社内規定とは、企業の秩序・組織としての体裁を保つ上で必要な決まりです。法律に抵触しない範囲で企業が自由に設定でき、企業・社員間の合意等は必要ありません。規定違反をした社員に対しては、法律の範囲内でペナルティを課すことも可能です。
会社法では、「法務省令で定める体制」の実現のため、企業に適切な内部統制システムの構築を求めています。これに対し多くの企業が自社の社内規定を充実させ、業務の適性を確保しているのです。
文書の取り扱い・管理に関わる文書管理規定は、その内容から「総務規定」に含められます。
文書管理規定は、企業の日常業務で発生するあらゆる文書の取り扱い・管理方法について定めた規定です。
企業における文書関連マニュアルの最上位に位置するものであり、部門・部署を問わず共有されます。文書管理について、絶対的・普遍的な「基礎原則」と考えればよいでしょう。
ただし、文書管理規定はあくまでも基礎原則であり、全ての文書管理・保管をカバーするものではありません。
文書の種類や管理方法は部署によって異なるため、各部署では文書管理規定をベースとした「文書管理ガイドライン」「文書管理マニュアル」等を備えているのが一般的です。
社内規定は頻繁に変更するものではありませんが、適宜現状に即した見直しが必要です。
文書管理規定の見直しを長らく行っていない企業は、規定がすでに現状と乖離している状態かもしれません。文書管理規定を見直して、現状に即したものに修正しましょう。
文書管理規定を見直すべきタイミングについて紹介します。
文書が無理矢理押し込まれていたり、分類が乱れたりしている場合、文書管理規定と現状がかみ合っていない状態なのかもしれません。
業務内容が変わったり組織が大きくなったりすると、扱う文書の種類が増えます。文書管理規定にない種類の文書が出て、現場が対応しきれなくなっているのです。
このまま放置すると、文書管理規定が形骸化します。現場と協働して、規定の改訂を検討しましょう。
近年は契約をオンライン化したり資料・文書をファイル形式でやり取りしたりするケースが増えています。
文書管理規定を長年放置してきた企業の中には、電子文書の取り扱いについて明確な指針を示していないところもあるでしょう。
このケースも、文書管理規定が現状にマッチしていません。電子文書の取り扱いが属人化してしまう前に見直しが必要です。
市場における優位性確保のため、あるいは業務効率を上げるために、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進中の企業もあるのではないでしょうか。
全社的に「脱・アナログ」を目指している企業も、文書管理規定の見直しがおすすめです。
紙ベースの文書をデジタル化する際、原則・目安がないと混乱します。文書管理の効率化を妨げないよう、先を見据えた規定を設定しなければなりません。
企業は会社法に基づいて内部統制を構築する必要がありますが、「文書管理規定を設定しなければならない」とする法律はありません。
企業によっては、「文書管理規定を設定していない」「文書管理規定はあるが、ただの形式に過ぎない」等のケースもあるでしょう。
この場合、企業としての「文書管理の原則」が存在しません。「現場マニュアルのみで足りている」ということもあるでしょうが、将来的にトラブルになる可能性があります。
企業としての体裁を保ったり秩序を保ったりする上で、全社的な原則は設定しておいた方がベターです。文書管理規定について改めて考え、全社員で共有できる原則を作りましょう。
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文書管理規定は社内規定の一つのため、安易に変更するのは厳禁です。手順を踏み、必要十分な規定を作成しましょう。
文書管理規定を作成する手順・ポイントを紹介します。
まずは文書管理規定を作成する総責任者を決めましょう。
規定の作成には、各部署・部門から担当者を出してもらうこととなります。チームとして円滑に規定の作成ができるよう、まとめ役の存在が必要です。
現状を把握するため、現行の規定や、各部署・部門にある文書管理に関するマニュアルを集めます。その上で、文書の扱い・保管方法など、関連するものを大別してまとめましょう。
現行の規定がある場合は、定められた項目が現状に即しているかチェックします。不足しているところは追加して、不要なものは削除しましょう。
またゼロから規定を作る場合は、各部署・部門のマニュアルをならしてチェックし、普遍的な内容を規定に載せます。
詳細は文書管理マニュアルに記載するため、文書管理規定では「大義」のみを記載すれば問題ありません。
一般的な文書管理規定に載せられる項目は、以下の通りです。
文書管理規定では、自社にとってどのような項目が必要で、どのような項目が不要なのか、しっかりと見極めなければなりません。
草案が完成したら、各部署・部門のトップにチェックしてもらい、抜け漏れがないか確認しましょう。
どのような文書管理規定を作るかは企業の自由ですが、文書の中には法律で保管法・期間を定めたものがあります。
文書管理規定完成したら専門家に依頼して、法律に則っているかどうかをチェックしてもらいましょう。
全て終わったら、理事会等で決議にかけて、文書管理規定についての承認を得ます。
文書管理規定については、社員への周知義務はありません。とはいえ、文書管理は主に現場で行われる業務です。
必ず社員への周知を徹底し、全員が文書管理規定をチェックできるようにしておきましょう。
特に関係の深い部署については、文書管理規定の詳細について説明会を開くのもおすすめです。
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文書管理規定のほかに、文書管理マニュアルを置いている職場が多々あります。文書管理規定と文書管理マニュアルには、どのような違いがあるのでしょうか?
具体的に紹介します。
文書管理マニュアルは、文書管理規定よりも実務に沿ったマニュアルです。位置付けとしては文書管理規定よりも下位にあり、部門・部署ごとに内容が違うことも多々あります。
文書管理規定が「文書管理を秩序立てて行うためのもの」であるのに対し、文書管理マニュアルは「文書管理を効率的に行うためのもの」と考えればよいでしょう。
例えば、「文書の廃棄」というテーマがあった場合、文書管理規定では「保管が終わった文書は速やかに廃棄すること」と大まかなルールを載せます。
これに対し文書管理マニュアルは、「○年保管した文書は△△に取りまとめ、処分場に持ち込む」など、詳細に記されるのが一般的です。
文書管理については文書管理規定・文書管理マニュアルを見る必要がありますが、いちいち両方をチェックするのは非効率的です。
社員は「文書管理マニュアル」をチェックして文書管理を行い、疑問や問題が出たときに文書管理規定を見直す…、というのが一般的な流れとなるでしょう。
文書管理を確実に行いたい場合は、文書管理規定・文書管理マニュアルを1セットにしておくと、社員の手間が掛かりません。
文書管理マニュアルは、現場に即した形で作成します。そのため、部署・部門で内容が異なるケースもあり得ます。
文書管理規定を確認しながら、業務効率化を図れる方法を探しましょう。
文書管理マニュアルの作成方法について紹介します。
まずは、各部署・部門がどのように文書管理を行っているかチェックします。管理方法はもちろん、どのくらいの文書を扱ったり保管したりしているのかを明確にしましょう。
電子文書がある場合は、ファイル・サーバー等の詳細も報告してもらわなければなりません。
文書管理マニュアルは、「文書のライフサイクル」に合わせて詳細を記載します。必然的に、文書管理規定よりも項目は多くなるでしょう。
業務に携わる社員が迷うことのないよう、マニュアルには文書の発生から廃棄までの詳細を盛り込んでください。
一例として、以下を紹介します。
文書管理マニュアルに記載すべき内容が分かったら、原案を作成します。部署・部門ごとに内容が全く異なる場合は、分けて作成した方がよいでしょう。
文書管理マニュアルの作成が終わったら、各部署・部門にチェックしてもらいます。
現場から「不要」「足りない」等の声が上がったら、都度内容を精査します。必要があればマニュアルに反映し、最適化を図りましょう。
マニュアルに曖昧な部分を残すと、勝手なマイルールで文書狩りする社員が出てくるかもしれません。
独自ルールが入るすき間がないよう、マニュアルは詳細かつ具体的に作成することが必須です。
現場も納得できる文書管理マニュアルが仕上がったら、社内に周知します。適用後法律が変わったり会社の方針が変わったりした場合は、適宜改訂を加えていきましょう。
文書管理マニュアルは、法律に即していて、業務の実態に適応していることが必須です。
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文書管理規定・文書管理マニュアルの遵守を徹底すれば、社内の文書管理が効率化されます。これによって、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
適切な文書管理によって得られるメリットを紹介します。
文書が適切に管理・保管されている場合、文書を探すのが容易になります。ファイルに入っていない場合でも所在の可能性を考えやすくなり、探す手間・時間がかかりません。
2017~18年にコクヨ株式会社が実施した調査によると、ビジネスマンが文書探しにかける時間は1日平均20分だそうです。
すなわち、1年では約80時間が文書探しに使われていることになります。
文書管理規定・文書管理マニュアルで文書管理が行き届けばムダがなくなり、業務効率はグッと高まるでしょう。
社内で管理される文書の中には、顧客に関するものも多く含まれます。文書管理を適切に行えば、顧客情報の共有がスムーズです。
顧客に対し迅速かつ最適化されたサービス・対応ができるようになり、顧客満足度の向上が期待できます。
文書管理規定を策定することは、「内部統制システムが適切に構築されている」という事実の裏付けとなります。現状に即した文書管理規定は、上場審査では必須です。
また、文書管理規定・マニュアルで文書管理を徹底すれば、情報漏えい・紛失・改ざん等のリスクも低減できます。
世間に対しても「適切に文書管理ができている」というよいイメージをアピールしやすくなるでしょう。
適切な文書管理規定を定めることは、企業の信用を高めることにもつながります。
現在の規定が現実と乖離していたりそもそも文書管理規定を設けていなかったりする企業は、現状に即した文書管理規定を設定しましょう。
ただし、適切な文書管理には「文書管理マニュアル」も必要です。文書管理規定を改める・新設する際は、文書管理マニュアルについても見直すことをおすすめします。
文書管理が効率化すれば、業務効率が上がったり企業イメージ向上につながったりとさまざまなメリットがあります。
業務効率化・スリム化が急務とされる現代、文書管理規定・文書管理マニュアルについても見直してみてはいかがでしょうか。
画像出典元:Unsplash、Pixabay
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