企業で扱われる文書には、多種多様なものがあります。
業務で一時的に扱う軽微なものから、個人情報などセキュリティに注意すべきもの、法律によって保存期間が定められた重要なものまであり、それぞれに応じた管理が必須です。
そこで今回は、文書管理に焦点を当てて、文書管理とは何か?その重要性と管理のポイント、そしてツールを導入する場合の注意点などを徹底的に解説します。
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文書管理は、ただ書類をファイリングして保管しておくというだけではありません。では、文書管理とは一体どのようなものなのでしょうか。
文書管理とは、企業や組織・団体における書類の整理・保存・管理を指すもので、業務効率化を図るためには必要不可欠な取り組みの一つです。
一口に文書といっても多種多様なものがあり、文書によって必要になる時期や保存しておくべき期間が異なります。
その管理業務そのものが意外に負担になっているケースも多々あります。
特に、文書を紙ベースで保存・管理している組織では、負担になっているコストの削減も課題です。
一般的に文書を紙ベースで管理するには、ファイリングをして既定のキャビネットに保管します。
このようなケースでは、定期的にバインダーファイルや印刷用紙、インクを購入しなくてはなりませんから、小さなコストがかさんでいる現実があります。
こうした状況は、文書を紙から電子データに管理方法を変更することによって脱却することが可能です。
紙ベースで管理をしていると、書類を印刷する・ファイリングする・キャビネットにしまうといった作業がついて回ります。
一つ一つの作業にかかる時間はとても軽微なものですが、一日のうちに何度も書類を扱う総務部のような部署では、総合的にみると大きな負担になっていることもあるのです。
組織が適切な文書管理に取り組めば、業務の簡略化、作業効率性の向上、管理業務の負担軽減、経費コストの削減へと繋がります。結果的に、会社全体の経費削減、生産性向上を図れるのです。
文書管理が重要なのは、書類にまつわる業務を効率化することはだけではありません。書類の紛失リスクを軽減できるのも重要なポイントです。
組織が扱う書類のなかには、機密文書や個人のプライバシーに関する情報が記載された文書があります。
これらを紛失するようなことがあれば、会社あるいは団体の信頼や信用を大きく損なうことにもなりかねません。
2018年にNPO法人日本ネットワークセキュリティ協会が調査した「情報セキュリティインシデントに関する調査報告書」によると、個人情報の漏洩の主な原因は紛失・置き忘れによるもの(26.2%)が最多。管理ミスによる漏洩(12.2%)も第4位と上位に食い込んでいます。
それほど重要な書類ではなくても、業務上必要な書類であれば、探すだけで時間を浪費してしまいます。また、その間、業務の手を止めることにもなり、業務に支障が出かねません。
少し古いデータですが、2017年に文具の大手メーカーであるコクヨ株式会社が紙書類を探す行為について調査を実施したところ、ビジネスパーソン一人当たりにつき年間80時間も書類探しに費やしていることがわかったのです。
これは、1日にして平均およそ20分。
多くの社員を抱えている企業や団体であれば、毎日20分×社員数もの時間を無駄にしていることになります。
たくさんの文書を扱う部署であるほど、書類探しにかかる時間は増えるでしょう。
生産性を向上させるのであれば、文書を適切に管理することは必須といえます。
文書管理を行ううえで無視できないのが、法定保存文書の存在です。
法定保存文書とは、法律によって保存期間や保存方法が定められた文書のこと。規定を守らずに廃棄等してしまうと、罰則の対象になる場合もあります。
ここでは、会社組織に関連する法定保存文書の保存期間についてご紹介しておきます。
これから文書管理について導入を検討している方は、必ず目を通しておいてください。
・定款
・株主名簿
・株主総会議事録
・取締役会議事録
・稟議書
・重要決裁文書
・官公庁への提出文書
・知的所有権に関する書類
・登記
・印鑑登録簿
・訴訟関係書類
・製品開発・設計に関する重要文書 など
保存年数が法律で明確に定められていないものであっても、文書の重要性および性格上、永久保存が妥当なものばかりです。
ここに挙げた文書はいずれも会社・団体にとって最上級に重要なものです。
なお、株主総会議事録は10年保存が定められていますが、審議の経過や議決内容など会社の在り方を問うものが記載されていますから、これも永久保存すべきでしょう。
会計帳簿 | 10年 |
計算書等 | 10年 |
製品の製造・加工・出荷・販売記録 | 20年 |
会社の経営状況や、何かトラブルがあった際に社会に影響を及ぼす可能性のある製品に関しての記録は、かなり長い年月の保管が定められています。
取引に関する帳簿類 | 7年 |
決算に関する書類 | 7年 |
給与所得者の扶養控除等に関する書類 | 7年 |
源泉徴収簿 | 7年 |
資産取引に関する帳簿 | 7年 |
事業報告書 | 5年 |
産業廃棄物管理票の写し、および委託契約書 | 5年 |
契約期限を伴う協定書など | 5年 |
従業員の身元保証書 | 5年 |
誓約に関わる書類 | 5年 |
一般健康診断個人票 | 5年 |
監査報告書 | 5年 |
会計監査報告書 | 5年 |
取引や決算、給与、資産など会社の財務に関わるものは、比較的長期の保存が定められています。
ここで注目していただきたいのが、従業員個人のプライバシーに関する書類も5年もの長期保存が規定されている点です。
身元保証書や健康診断個人票は、その人のプライバシーに関わる重要書類。プライバシーに配慮しつつ、漏洩に十分注意しての文書管理が求められます。
四半期および半期報告書 | 3年 |
官公署への出願等に関わる文書 | 3年 |
労働者名簿 | 3年 |
賃金台帳 | 3年 |
雇用に関する書類 | 3年 |
災害補償に関する書類 | 3年 |
労災保険に関する書類 | 3年 |
身体障害に関する診断書等の書類 | 3年 |
当直日誌や受発信文書など軽易な書類 | 2年 |
雇用保険に関する書類 | 2年 |
保存期間が短くなっても、従業員個人に関わるものや外部に漏れ出ては困るような書類が管理対象になっています。
個人情報が詰め込まれた履歴書の扱いについては、雇用に関する書類に準拠します。
入社した従業員のものは、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、ほぼ全ての企業が退職するまで管理しているはずです。
これについては、法律上そのような保存期間の規定はないのですが、個人情報保護および管理という観点から、退職まで厳重管理している会社がほとんどです。
その一方で、退職者や不採用者の履歴書は、異なった扱いを受けます。
退職者に関しては、一度労働契約を結んでいますから、雇用に関する書類に該当します。
よって、退職者の履歴書は、労働基準法第109条の労働関係に関する重要書類に当たり、最低3年間の保存義務が発生します。
ですが、企業の中には復職する可能性を踏まえて、3年を超えて保管しているケースもあります。
廃棄する際は、自社でシュレッダーにかけたうえで、信頼できる廃棄専門業者に委任するなどして、外部に情報が漏れ出てしまわないように十分注意します。
不採用者の履歴書に関しても、法律上の規定があるわけではありません。ですが、志願者が返却を求めるケースもあるため、不採用が決定してもすぐには廃棄せずに一定期間は保管しておくのがベターです。
返却するかどうかは企業・団体に一任されていますが、廃棄する場合は、処分記録を残すようにしておくのが良いでしょう。
万が一、保管期間を過ぎて返却や問い合わせがあっても、記録があればスムーズに対応できるからです。
紙ベースで書類を扱っていると、事あるごとにプリントアウトしてファイリングする手間がかかります。
それだけでなく、紙書類が増え続けることになるため、保管場所や保管方法にも配慮しなければなりません。
そんな手間とコストを削減するならば、文書管理ツールを導入して、紙書類を電子化してしまうのがおすすめです。
しかし、せっかくツールを導入しても、それが活かされなければ意味がありません。
ここでは、文書管理ツールでできることと導入における注意点、そしてツールを上手く活用して業務の効率化・生産性アップを図る方法についてご紹介します。
いま注目されているのは、インターネット上の保管スペースに電子化した書類を一括して置いておける文書管理ツールです。
電子化したからといって元の書類を廃棄してしまうわけにはいきません。
株式会社日本パープル提供の「MAMORU ONE」や株式会社ワンビシアーカイブズ提供の「書類保管サービス」など多くのサービス運営会社では、同社内にある保管庫で原本を預かるサービスも併せて提供されています。
文書管理ツールに登録した文書は、必要に応じてインターネットを通してモニター上に呼び出せるようになっています。
文書へのアクセス権は、個人や部署単位で制限できるようになっているため、他部署の人が誤って操作してしまう心配もありません。
さらに便利なのが、保管期限が近くなると、廃棄のアナウンスをしてくれるところです。
紙書類を自社内で管理しているときは、個々にリマインドなどで把握していなければなりませんでした。しかも、廃棄する書類の量が多いと、分別や廃棄処理の作業だけで何時間も費やすこともあります。
文書管理ツールを利用していると、原本はサービス提供会社の倉庫内にありますから、廃棄依頼をかけるだけで処理が終わり、業務負担がかなり軽くなるのです。
文書管理ツールには、オンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型は、自社専用に用意されたサーバーに電子化した文書を保存して管理します。クラウド型は、インターネットを介して電子化した文書を管理します。
これらのツールを上手く活用するためには、導入前にまず文書管理の目的を明確にしておくことです。
たとえば、社内にある紙書類を全て電子化したい、どこからでもいつでも必要書類を閲覧できるようにしたいなど。
そのうえで紙書類についての課題解決の優先順位を決め、一番解決したい課題は何かを整理します。
文書管理ツールにはさまざまなものがあり、それぞれで特徴が異なりますから、最も解決したい課題にマッチするツールを導入するようにしましょう。
文書管理ツールを上手く活用するポイントは、ITに不慣れな人や紙書類に慣れた人に対する配慮です。
特に、ITに対して苦手意識の強い人がいると、社内の電子化が停滞する要因にもなります。
毎日扱っているうちにいずれ慣れてきますから、一時的なものと割り切って根気よくレクチャーしましょう。
ツール上に表示するバインダーも、紙書類を扱っていたときと同様のものに合せるなどして、視覚的な混乱をできるだけ減らすようにします。
また、誤操作などを防ぐためにも、アクセス権はしっかりと設定しておきましょう。
たとえば、閲覧はできるが編集は担当者のみ、閲覧も編集もできないなどのようにしておくのです。そうすれば、本来操作していい人だけが編集できるため、データの勝手な改変を防げます。
紙書類を扱う企業や団体において文書管理は、業務効率化のほかにも、セキュリティ管理という点においても重要な課題です。
紙ベースで管理していると、関連する業務をマンパワーに頼ることになり、ヒューマンエラーの原因にもなりかねません。
組織内で片付けらえれるエラーであればいいですが、万が一にも外部漏洩が起これば、信用問題にかかわります。
電子化すれば、ヒューマンエラーによるリスクや業務負担も軽減され、書類探しで時間を浪費することもなくなります。
また、企業や団体にとって紙書類による情報管理は、環境保護の観点からいっても電子化への移行が好ましいでしょう。
文書管理ツールを導入する際には、今回ご紹介した内容を参考に、自社に合ったツールを検討してみてください。
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