大注目のClubhouseとTwitterの音声チャットSpaces、競合しそうでしない理由

大注目のClubhouseとTwitterの音声チャットSpaces、競合しそうでしない理由

記事更新日: 2021/03/30

執筆: 編集部

今やかなり巨大な市場になりつつあるデジタル音声市場

そんな音声市場で、登録ユーザー500万人・評価額約1000億円、と飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している非常にホットなサービスが音声チャットのClubhouseです。

Clubhouseの熱狂の中、じつはTwitterも「Spaces」という音声チャットサービスのテストを開始していることはご存知でしょうか。

Spacesはまだベータ版で限られた人しか利用できないですが、デモを見てみるとけっこう似ている.......

TwitterがClubhouseのパイを奪わんがため、サービス開始するような印象さえ抱くところですが、実際のところはどうでしょうか?

デジタル音声市場の勃興

海外ではオーディオブックやポッドキャストなどの音声コンテンツはかなり充実していて、現時点でもデジタル音声コンテンツ/広告市場はかなり巨大な市場になりつつあります。

米IAB社の調査によると、2016年の音声広告収入は11億ドル規模だったものが、2019年には27億ドルまで成長。

日本市場でも2020年の広告市場は16億円、2025年には420億円規模に成長すると予測されています。

デジタル音声広告市場規模推計・予測2019年―2025年デジタルインファクト調べ

今後も音声広告を巡った競争は激化していくものと考えられていますが、

本記事では音声コンテンツサービスの最前線に踊り立ったClubhouseと、それに追随するTwitterの新音声チャットサービスSpacesについて見ていきます。

ClubhouseとTwitterの対立?

今話題のClubhouseのスタートは2020年春から。

まだサービス開始から1年も経っていない状態にも関わらず、登録ユーザーは500万人以上(2021/2/1時点)、評価額は1000億円規模とまさに「ユニコーン」の名に恥じない成長ぶり。

その熱狂の中にあるClubhouseを意識してかいまいか、Twitterも2020年12月には「Spaces」という音声チャットサービスのテストを開始しています。

お互いに競合するようなサービスに見えますが、細かい機能やUI/UXを見ていくと、実際には両者の「思想の違い」が透けて見えます。

この両者の「違い」について詳しく見ていきましょう。

ClubhouseとSpacesの類似点

両者ともに音声チャットサービスということで、UIやUXはかなり似た印象を受けます。以下は類似点を挙げたものです。

  • 優れた音質
  • 招待制(Spacesはベータ版のみ?)
  • ルーム制(Spacesの場合は”スペース”という呼称)
  • ZoomやDiscordとも違う、話者とオーディエンスにわかれつつも交流可能なシステム

下の画像のように、一部のUIは似ているとも言えます。


UI例(画像出典:Spaces公式Twitter

ClubhouseとSpacesの相違点

上記の共通点以外にも、音声チャットサービスということで似たようなサービスになっていきそうな印象が強い両者ですが、違う点も多くあります。

  • 実名か匿名か
    Clubhouseは実名を推奨

  • ルームの主催者の扱い
    Clubhouseではルームの主催者が抜けてもモデレーターを新たに指名することでルームが続くような仕組みになっている。一方、Spacesではスペースの主催者(チャットを始めた人)が抜けてしまうとそのチャットは終了してしまう。

  • それ以外の機能
    Clubhouseでは原則音声以外のコンテンツを利用できないが、Spacesではツイートを共有しながらチャットができるほか、リアクションスタンプを利用することも可能。

またSpacesではTwitterと連携して使用することが想定されているようで、タイムラインからルーム開始のツイートを行えたり、Twitterにチャットの内容を投稿することもできるようです。

タイムラインへの投稿イメージ(画像出典:Spaces公式Twitter

Clubhouse・Spacesそれぞれに感じる思想

Clubhouseは多くの人が自由に会話できることを重視しています。

フォローしている人のルームだけではなく、ユーザーの興味のありそうなルームもレコメンドでおすすめされ、入退室も自由。オープンかつ流動性が高い状態が保たれているため、交流の幅も広がり、コンテンツ自体もかなり偶発的な要素が強いことが特徴です。

そんなClubhouseで最もその思想が反映されているのが、「録画録音の禁止、外部への流出禁止」という点。

(利用規約上は)アーカイブが残らない点は、ユーザーに安心して話せる場を提供していると言えます。

加えて「今聞かなければ、この先絶対に聞くことができない」という特別感もユーザーを没入させることに一役買うかたちに。

ただアーカイブが残らないということは、様々な問題の温床になりうることも意味しています。

ニューヨーク・タイムズ女性記者へのハラスメントユダヤ人へのヘイトスピーチが行われるなど、問題が一部でてきていることも事実として挙げられるでしょう。

一方のSpacesはどうでしょうか。以下にSpacesの特徴を列挙しました(一部先の内容と重複)。

  • ユーザーが『部屋』を作って、フォロワーを招待できる
  • ツイート共有機能
  • リアクションスタンプ
  • 話者を決められるのはSpaceを作ったホストのみ
  • 報告/ブロック機能
  • 音声が自動テキスト変換される

こうしてみるとClubhouseとは若干異なり、フォローフォロワーを軸にした比較的クローズなコミュニケーションを行うことになりそうです。

「報告/ブロック機能」や「自動テキスト変換」は、匿名性は維持しつつも悪質なコンテンツが蔓延ることは抑止しようとしており、Twitterらしい機能とも言えます。

これらを加味すると、SpacesはClubhouseの持つオープンな要素はかなり薄まる可能性が高く、あくまでTwitterの音声機能の1つとして利用されることになるでしょう。

覇権争いは行われるのか?

SNSをはじめ、インターネットサービスは概してトップのサービスのみが生き残るものです。かつてTwitterの対抗馬として注目されたマストドンも今やほとんど見る影もないことがそれを象徴しています。

スケールメリットがものを言うインターネットサービスでは、より多くのユーザーを集め、より多くの可処分時間を費やさせたサービスが勝つことになります。

とてつもないスピード感で成長を続けるClubhouseとSNSの重鎮Twitter。

どちらかが勝利を収めるのか、それとも違う形で共存していくのか?

両者の思想やUIUXの違いも踏まえると、恐らくユーザー層を分ける形で共存していくことになるでしょう。ストーリー機能を実装したインスタグラムとフリート機能を実装したTwitterが共存しているように。

ただ今後も拡大していくであろう音声SNSの動きは要注目です。

※本記事は2021/2/2時点の情報に基づき執筆されています。アップデートに伴う記事内容との乖離についてはあらかじめご了承ください。

画像出典元:Unsplash

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