コーポレートガバナンスとは?意味や目的、必要性などやさしく解説

コーポレートガバナンスとは?意味や目的、必要性などやさしく解説

記事更新日: 2020/04/03

執筆: 編集部

マスコミで企業の不祥事がニュースになると「経営陣はコーポレートガバナンスを強化する必要がある」と批判されます。

また、同じような状況で「コンプライアンス意識が低い」とも批判されます。

どちらも言っていることは何となく分かるけど、どういう意味かと改めて聞かれると困る、という方も多いと思います。

この記事では、コーポレートガバナンスとは何かなぜ企業にとって必要なのか、似たような使い方をされるコンプライアンスとはどこが違うのかを分かりやすく解説しています。

コーポレートガバナンス(企業統治)とは

コーポレイト(コーポレート)は会社で、ガバナンスは「治めること」「統治すること」という意味です。

ガバナンス(統治)の2つの方向

企業は利益を追求する組織なので、ガバナンスの目的は「効果的な利益の追求」にあります。

儲けるためには何をしても良いわけではないので「人に迷惑をかけない利益の追及」もガバナンスの重要な目的です。

しかし、この2つの目的は相反する場合があります。輸入牛肉を国産牛として売れば利益は増えますが、そんなことをしてはいけません。

コーポレートガバナンスとは、「経営の効果・効率」と「経営の正しさ」を両立させるための企業コントロールです。

ガバナンス欠如のさまざまなタイプ

コーポレートガバナンス(企業統治)をイメージするには、企業がガバナンスに失敗した例を見るのが早道です。

世間に「ガバナンスの欠如」という非難を浴びた事例には、次のようなさまざまなタイプがあります。

実際には、上記のいくつか要因が重なって生じる場合が多いのが「ガバナンスの欠如」と指摘される事態です。

誰のための利益か

コーポレートガバナンスは上記のように「正当な企業の利益」を守る行為ですが、そもそもその利益とは誰のものなのでしょうか?言い換えると、会社は誰のものなのでしょうか。

アメリカ流に「企業は株主のものだ」といえば教科書的には正解なのかもしれませんが、日本の実情、日本人の実感はそうではありません。

毎年6月に全国の株主総会で繰り広げられる光景を見ると、経営陣が会社を株主のものだと考えているとは到底思えません。

かといって、会社は従業員ものだという日本的経営(家族的経営)も、すっかり様変わりしています。

このように本音と建前が違う実情の中で、日本企業のコーポレートガバナンスがどうあるべきか(だれの利益を守るためのものか)をひとまず定義するとすれば「関係者のみなさまのため」というしかありません。

企業の関係者とは、英語でいうとステークホルダー(stakeholder)で、株主、経営者、従業員、取引先、顧客、地域社会のすべてを指しています。

しかし、この関係者同士は、時としてあちらを立てればこちらが立たずの関係になり、それがコーポレートガバナンスを複雑にしている大きな要因です。

ステークホルダーとは「掛け金を持っている人」

stakeとは、もともとは競馬の掛け金のことです。上手くやらないとパーになってしまう掛け金を持っているのがステークホルダーで、最初は主に株主を指していましが、現在では企業の利害関係者全体を指す言葉になりました。

 

コーポレートガバナンスとコンプライアンスの関係

コーポレートガバナンスには「企業統治」という訳語が与えられ、コンプライアンスには「法令遵守」という訳語が与えられています。この2つはどのような関係にあるのでしょうか。

コンプライアンスを保つために行うのがコーポレートガバナンス

「企業統治」はコーポレートガバナンスにぴったりの訳語ですが、「法令遵守」はコンプライアンスの訳語としては非常に不十分で、法礼遵守という日本語からコンプライアンスの意味を考えると多くの部分が抜け落ちてしまいます。

コンプライアンスのcomply(応じる、従う)は、法令に従うだけでなく、道徳に従い、世間の常識や価値観にも適切に応じるという意味を含むからです。

日本的なコーポレートガバナンスが「関係者の皆さまの利益を守る」ことを目的にする企業コントロールだとすると、コンプライアンスと同じ意味になります。

つまり、「コンプライアンス意識の欠如」という状態にならないために強化しなければいけないのが、コーポレートガバナンスなのです。

CSR(企業の社会的責任)とコーポレートガバナンスの関係

コーポレートガバナンスやコンプライアンスと類似する言葉にCSRがあります。

CSR(Corporate Social Responsibility)とコンプライアンスは同じ意味です。(ただしコンプライアンスを単に「法令遵守」という狭い意味にとらないことが条件です)

したがって、コンプライアンスと同じく、CSR(企業の社会的責任)をまっとうするために強化しなければいけないのがコーポレートガバナンスだと言えます。

CSRはおもにヨーロッパで議論され、推進されてきたもので、ステークホルダーを隣国や地球環境も含めて広くとらえるのが特徴です。

国境を接し、ドナウ川などの河川を共有するEU諸国では、川の向こう岸に隣国の原子力発電所があったりするので、企業の社会的責任を国内のスケールで考えるのでは不十分なのです。

コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンスの本質に大企業や中小企業の違いはありませんが、上場企業には指針とすべき「コーポレートガバナンス・コード」というものがあります。

海外からの投資を期待できる国際水準の企業を目指す

東京証券取引所は、国(金融庁)の強い後押しのもとに2015年に「コーポレートガバナンス・コード」を発表しました。(2018年に改訂)

国がコーポレートガバナンス・コードの策定を急いだ理由は、端的に言うと「アメリカにはあるから」です。

第二次安倍内閣の「日本再興戦略」(2014年)は、低下する日本企業の国際競争力を「再興」させようとするものですが、コーポレートガバナンス・コードの策定はその施策の1つです。

具体的には、日本的経営(日本企業のローカル性)を企業統治の面で国際標準に合わせて、海外からの投資を増やそう、というのが「コード」を急がせた動機です。

しかし、かつて不平等条約の改正のために欧米の憲法を翻訳して作られた明治憲法が日本人の肌に合わなかったように、ニューヨーク証券取引所のコーポレートガバナンス・コードを参考にしたコードには、日本企業にとって現実的とは言えない内容(ハードルの高い目標)も含まれています。

コーポレートガバナンス・コードの内容

コーポレートガバナンス・コードは、5つの基本原則の下に73の原則が示された詳細な「指針」です。

5つの基本原則は次の通りです。

1. 株主の権利・平等性の確保

2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

3. 適切な情報開示と透明性の確保

4. 取締役会等の責務

5. 株主との対話

しかし、正直なところ、これらの原則はどれも、企業がふだんはあまり考えていないことばかりです。

とくに、「取締役会の責務」の中にある次のような原則を見ると、取締役会の形骸化を防ぐことの難しさを感じさせられます。

  • 取締役会の役割・責務
  • 監査役及び監査役会の役割・責務
  • 取締役・監査役等の受託者責任
  • 経営の監督と執行
  • 独立社外取締役の役割・責務
  • 独立社外取締役の有効な活用
  • 独立社外取締役の独立性判断基準及び資質
  • 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件
  • 取締役会における審議の活性化
  • 情報入手と支援体制
  • 取締役・監査役のトレーニング

この原則の文言にも、筆者が太字にした部分に「難しいだろうが頑張ろう」というニュアンスが現れています。

日本の企業の取締役会が「株主からの受託責任」をまっとうするために「経営陣に対する実効性の高い監督」を行なうのは、そう簡単とは思えません。

社外取締役会や監査役会の「実効性」についても、楽観的な見通しを持つ人は多くはないはずです。

コーポレートガバナンス・コードの遵守状況

「コード」の文中に頻出する「会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために」という目的はきわめて正当なものですが、その目的のためにこのコードにしたがってガバナンスすることは、簡単ではありません。

しかし、2016年12月の東証の調査によると、東証一部上場企業約2,148社の89.2%がコーポレートガバナンス・コードの78原則の90%以上を実施していると答えていますす。

(参照:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」

「コード」の発表から1年余りでのこの対応を、私たちはどう捉えたらよいのでしょうか?

実は企業のこの対応の早さは、東証が「コーポレートガバナンス・コードを実施しない場合は、その理由を説明せよ」と求めているからです。

「コードを守りますか?もし否ならその理由を説明しなさい」と金融庁や東証に言われたら「守ります」と返事しておく方が安全で、その体裁だけでも作っておくに越したことはありません。

それが「90%以上を実施」という答の実態だと言ったら皮肉すぎる観方でしょうか?

コーポレートガバナンスは「コード遵守」だけではない

「コード」の遵守はおもに株主を意識したアメリカ流のガバナンスで、日本の企業統治はそれに留まらず、従業員、関係会社、取引先、顧客、地域社会に配慮したものでなければなりません。

ガバナンスの主体は企業経営者ですが、従業員も参画した企業理念の構築と、理念にもとづく企業行動の習慣化、風土化がもっとも肝要です。

したがって日本の企業がコーポレートガバナンスを強化するには、大企業においても、海外からの投資を意識した「コード」とにらめっこをして対応策を考えるだけではなく、株主以外のステークホルダーにも十分に配慮することが肝要です。

まとめ

コーポレートガバナンスとは、企業経営を効率的にかつ正しくコントロールすることです。

「効率的」とは、より利益が上がるようにということですが、「正しく」とはその利益が不正なものであってはならないのはもちろん、経営者だけの利益でもなく、株主だけの利益でもなく、従業員を含めた関係者すべての利益でなくてはならないということです。

画像出典元:pixabay

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