政治をはじめ企業や医療など、様々な場面で「説明責任」という言葉が使われるようになりました。
説明責任という言葉を英語にすると「アカウンタビリティ」となるわけですが、このアカウンタビリティを含め説明責任とは、一体どういった意味を持つのでしょうか。
今回は、説明責任(アカウンタビリティ)という言葉の意味やその重要性、さらにはどのような場面で使用されるのかなど、詳しく解説していきます。
このページの目次
大手企業や政治家など影響力のある組織や人が何からの不祥事が発覚した際、「説明責任を果たすべきだ!」と、不祥事を起こした側に対してマスコミなどから追求されるといったことをよくニュースなどで見聞きします。
このように、利害関係者に対して自身が担当し権限を持ってその内容や状況について、より詳しく明確に説明することを説明責任と言います。
この説明責任という用語は、1960年代にアメリカで誕生した「アカウンタビリティ(accountability)」が語源となっており、「アカウンティング(accounting:会計)」と「レスポンシビリティ(responsibility:責任)」が組み合わせた造語。
つまり、アカウンティングは経済学から生まれた概念であり、経営者が株主・投資家に対して企業の経営状況や財務内容を報告することへの義務や、企業が他の利害関係者に状況を説明する責任を指す場合に多く使われます。
たとえば株主がいる場合、原則として株主は会社の経営には関与しません。そのため、株主は会社の経営状態や財務状況など、会社の経営状態に関する情報が乏しく不安要素が多くなります。
そうした株主に対する不安要素を補うため、経営者は株主に向けて経営状況を開示する必要があるわけです。
もちろん株主に限らず、説明責任は利害関係にあるすべての人に対して説明をおこなう義務や責任が生じます。
さて、前項でお伝えしたアカウンタビリティですが、これによく似た言葉にレスポンシビリティという言葉があります。
アカウンタビリティ・レスポンシビリティともに「責任」という意味となるため非常に混同しやすい言葉となります。
そのため、「アカウンタビリティ」と「レスポンシビリティ」の違いを少しここで触れておくことにします。
前述のとおり、アカウンタビリティは利害関係者に対して説明責任や義務を果たし、事態に関して相手に納得してもらい事態を収拾するためにおこなう対策です。
それに対しレスポンシビリティは、「責任」や「責務」といった意味を持ち「実行責任」と表現されます。
たとえば社内でプロジェクトを立ち上げるとします。立ち上げるプロジェクトに対してリーダーとなった者が計画を立て、属するメンバーがその計画に従ってプロジェクトを実行します。
その際、そのプロジェクトの成果が不十分だった場合、そのプロジェクトのリーダーが責任を負うことになります。これがレスポンシビリティです。
つまり、レスポンシビリティというのは単に責任を負うということ。そしてアカウンタビリティは責任をもって説明する義務を負うこと。双方にはこのような違いがあるわけです。
前項で説明責任(アカウンタビリティ)の言葉についてお伝えしてきましたが、では実際に説明責任(アカウンタビリティ)という言葉はどういった場面で使用されるものなのでしょうか。
続いてアカウンタビリティが使用される代表的な場面をご紹介します。
医療や看護の場では症状や治療方法などについて専門的用語が非常に多く、検査や治療の必要性、そして現状などについて専門用語で話されてしまうと患者やその家族は理解できなくなってしまいます。
そのため、医師らは患者や家族に対して分かりやすい言葉で説明する必要があります。なお、その際「患者が医師に対してアカウンタビリティを求める」といった具合に使われます。
福祉や介護の場合、サービスを提供する事業者側は、利用者側に対して契約時に施設の概要や利用料金の説明など多岐に渡ってサービス内容を丁寧に説明する必要があり、利用者側はその説明を聞いて十分納得したうえで契約するということが求められます。
こうしたことは、社会福祉法・第76条第1項において「社会福祉事業の経営者は利用契約の申込み時の説明を努力義務」として規定されています。
必要な情報のみ開示するのではなく、利用者側がしっかり理解することができる。これこそアカウンタビリティの重要なポイントです。
学校など教育の場においてもアカウンタビリティは重要です。
そもそも学校教育というのは、保護者や地域住民などの協力があってこそ成り立つわけです。そのため、学校側は利害関係者に対して十分な説明義務を果たすことが重要となります。
もちろん生徒自身にも活動内容など情報詳細をしっかりと理解してもらえるようなカタチでの説明が求められます。
特に教育の場というのは、多方面に渡ってアカウンタビリティが存在しています。
企業における説明責任(アカウンタビリティ)というは、もともと株主に対しての説明責任やその義務を意味する言葉でした。
しかし、近年では責任義務はもちろんのこと、組織の方針や個人の言動そして行動、また、それらに伴う結果についても説明しなければならないといったところも含まれています。
経営者が経営戦略を立て、経営者から権限を委譲された管理者が戦略に基づき行動し活動するのが企業における基本的な仕組みとなるわけですが、権限を委譲された管理者は経営者に対して説明責任(アカウンタビリティ)を負うことになります。
つまり管理者は経営者への報告や行動監査などの対応が求められるのです。
近年、これまで長期に渡り続けられてきた終身雇用制度も終わりを迎え、次なる成果主義制へとシフトされつつあります。
これにより、個人の役割などがより明確化されると同時に、従業員一人ひとりのアカウンタビリティの意識が重要とされてきているのです。
個々に与えられた職務や役割に対して確実にやり遂げる責任、そしてそれに伴う行動や言動に関して説明する義務。これらをすべて果たすことが、今この時代に求められているのです。
企業などでは常に説明責任(アカウンタビリティ)を意識し、日々行動していくことは非常に重要なことで、ますますアカウンタビリティが求められています。
では、説明責任(アカウンタビリティ)を浸透させてしていくには、どのように取り組んでいけば良いのでしょうか。その考え方を次に見ていきましょう。
アカウンタビリティというものは、当然ながら経営陣など一部の従業員だけが意識するというものではなく、社内全体において強化することが重要です。
従業員一人ひとりの意識を改善することによって、会社全体にアカウンタビリティが浸透していくのです。
したがって、全従業員にアカウンタビリティの重要性を確実に伝えられる体制を整えることが、何よりも重要となります。
従業員などへの評価体制も非常に重要な取り組みです。前述のとおり、アカウンタビリティの実行は従業員一人ひとりの自覚意識が重要です。
そのため、従業員それぞれの職務において確実にアカウンタビリティを果たしているかを確認したり適正に評価したりする評価体制が重要となり、こうした体制を整えることによって、従業員のアカウンタビリティへの意識向上に繋がります。
社会に対するアカウンタビリティを果たしていくには、自社におけるアカウンタビリティの意識を強固なものにしていかなければなりません。
そのためには計画をこまめに見直し、実施や検証、改善を繰り返しながら、活動の質を高めていくことが重要です。
いずれにせよ、企業内においてアカウンタビリティを浸透させ実現させていくためには、会社全体の意識改革がもっとも重要です。
さらに従業員一人ひとりが責任や義務を自主的に果たすといった姿勢を持ってこそアカウンタビリティを果たすことになります。
くれぐれも「部下がやったことなので、私は知らない」ということでは、まったく世間が納得しないということを、しっかりと覚えておきましょう。
説明責任(アカウンタビリティ)は利害関係者に対してより詳しく説明するということで、日本でも説明責任に関しては非常に重要視されています。
ではなぜ、説明責任が日本でも重要視されるようになってきたのでしょうか。
それは、企業などが何らかの不祥事やトラブルを起こした際、その問題を起こした側に対し世間から厳しく評価されるようになったというところにあります。
これまではあくまで法で定められている範囲のなかで、必要最低限の情報開示をしておけば済んでいました。
しかし時代の変化と共に社会的責任などが求められるようになり、より広範囲にわたった透明性のある情報開示が要求されるようになりました。
また、これに対して企業側も、しっかりとした情報を開示しておくことは後のリスク軽減にも繋がるという考え方となり、経営における説明責任、つまりアカウンタビリティが重要視されてきたものだと感じとれます。
今この時代、説明責任(アカウンタビリティ)を意識することは、企業などが持つ健全性の維持や社会的責任を果たすため非常に重要となる概念であり、それと同時に必要不可欠な活動であると言えるのです。
今回は、説明責任(アカウンタビリティ)の言葉の意味を詳しくお伝えしてきました。
ここでお伝えしてきたとおり、説明責任(アカウンタビリティ)とは自身が持つ権限や職務に関し、その現状などを利害関係者に対して詳しく説明する義務のことを言います。
近年においては、企業における意識的な情報開示など経営に対する透明性がより求められる時代となってきており、こうしたアカウンタビリティに対する意識や取り組みが非常に重要となってきます。
また、アカウンタビリティの意識を高め、それをしっかり果たすことは、自社に対する世間からの信用やイメージの向上へと繋がるため、事業も円滑に進めていくことができるでしょう。
なお、アカウンタビリティの実行は経営陣のみが意識しただけでは意味をなさず、それにはやはり経営陣をはじめ、従業員一人ひとりの自覚を促すなど、会社全体で取り組むといった確固たる体制構築が必要不可欠です。
企業では今後もこうした透明性のある情報開示が求められるとされ、一層アカウンタビリティの遂行が求められていくことでしょう。
画像出典元:PhotoAC