2017年1月より、国税もクレジットカード納付ができるようになりました。
国税…つまり、会社や個人事業主が納める法人税や申告所得税、消費税などもクレジットカードで支払うことができるということです。
始まってまだ間もないこのシステムについて、よく分からないという方も多いと思います。
クレジットカードを使って税金を納めるとどうなるのか?
経営者にとってメリットやデメリットはあるのか?
などの疑問からおすすめのクレジットカードまでわかりやすく解説します。
このページの目次
会社は決算によって利益を確定させ、その利益に対して法人税を計算(個人事業主であれば確定申告における申告所得税)し国に納めなければいけません。
その納付方法はさまざまで、これまでは「ダイレクト納付」「インターネットバンキング」「コンビニ納付」「振替納税」「窓口納付」といった方法がありました。
そしてこれらの納付方法に加え、2017年からはクレジットカードでの納付も可能になりました。これが「クレジットカード納付」です。
つまり、法人税や申告所得税、消費税などもクレジットを利用して納付することができるのです。
この納付方法は「国税クレジットカードお支払いサイト」を運営する納付受託者(民間業者)に納付を委託するもので、インターネットに接続できるパソコン等とクレジットカードを持っている方でしたら誰でも行うことができます。
利用できるクレジットカードは、以下のいずれかのマークがついているものです。
Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、TS CUBIC CARD
この中で、主に関わってくるのが法人税や申告所得税及復興特別税、消費税、相続税や贈与税などではないでしょうか。
また、上記のうち所得税徴収高計算書の提出が必要となる「源泉所得税及び復興特別所得税」及び「源泉所得税」の納付については、e-Tax(国税電子申告・納税システム)において、
計算書データを送信した後、メッセージボックスに格納される受信通知から「国税クレジットカードお支払サイト」へアクセスする方法により納付が可能です。
1度の手続につき1,000万円未満、かつ、ご利用になるクレジットカードの決済可能額以下の金額(決済手数料含む)
1. 注意事項の確認
↓
2. 納付情報の入力
↓
3. クレジットカード情報の入力
↓
4. 支払手続完了
申告所得税や消費税の納付に「振替納税」の届出をしている個人事業主がクレジットカード納付に切り替えるときは、支払いが重複してしまう恐れがありますので、あらかじめ税務署へ連絡してからにしましょう。
※法人の場合は振替納税の制度がありませんので、このような問題は起きません。
では、この方法。会社や経営者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?また、逆にデメリットになることはあるのでしょうか?
納付手続きがネット上で行えますので、銀行や税務署に行く手間や時間を気にしなくて済みます。
カード会社によっては他の支払いと同様にマイルなどのポイントがつく場合があります。
国税の納付は原則一括納付(特例もありますがその場合は利子税が発生します)ですが、カード会社の利用規約に基づき支払い回数を分けることができます(ボーナス支払いはできません)
「回収は早く、支払いは遅く」が、キャッシュフローの大原則。
つまり、支払い回数を分けることにより支払いを遅くできる=現金が手元に残る→キャッシュフローが良くなる、というわけです。
クレジットカードの請求書(利用明細)だけでは経費で落とすための証拠資料にはなりません。他の支払いと同様に、クレジットカードの請求書に納税証明書を添付しておくべきでしよう。
※納税証明書は税務署で発行してもらえますが交付までに3週間程度かかる場合があります。
他の支払いと同様に、納税金額も利用限度額の範囲でしか使用することができません。しかも、1つの税目、一回の納付につき1種類のカードで行わなければいけません。
納付税額 | 決算手数料(税込) |
1円~10,000円 | 82円 |
10,001円~20,000円 | 164円 |
20,001円~30,000円 | 246円 |
30,001円~40,000円 | 328円 |
40,001円~50,000円 | 410円 |
※以降10,000円を超えるごとに82円加算。
出典:国税クレジットカードお支払いサイト
金額の訂正等をする場合には、税務署に連絡して訂正が可能ですが決済手数料は還付されません。
ネット上でのやり取りなので、フィッシング詐欺などのリスクも当然あります。
今のところ(2019年3月現在)詐欺などの報告はありませんが、国税庁では「国税庁HP」「確定申告書等作成コーナー」「e-Tax」以外からアクセスしないよう注意喚起しています。
実際にクレジット納付をする場合、使用するクレジットカードはどのようなものがよいのでしょうか?
クレジットカードには企業や個人事業主向けの「ビジネスカード」、「コーポレートカード」といった名称のカードがあり、総じて「法人カード」と呼んでいます。
個人用のクレジットカードは一般的な利用を前提としたクレジットカードですので、個人事業主であったとしても法人カードを利用することをおすすめします。
また、法人カードもカード会社によってさまざまな特典があり、どのカードを選んだらよいのか迷うところではありますが、ここでは前述したメリットとデメリットに基づき「ポイント還元率」「分割・リボ払可能」「利用限度額」に注目して紹介します。
画像出典元:「JCBカード」公式HP
基本年会費 | 1,375円(税込)※初年度無料 |
追加年会費 | 1,375円(税込) |
国際ブランド | JCB |
ポイント還元率(目安) | 0.5% |
電子マネー | なし |
発行スピード | 2週間以上(目安) |
ETC年会費 | 無料 |
国内旅行傷害保険 | 最高3,000万円(利用付帯) |
海外旅行傷害保険 | 最高3,000万円(利用付帯) |
ショッピング保険 | 年間100万円(海外のみ自己負担額1万円) |
ポイント名 | Oki Dokiポイント |
JCB法人カードの年会費は1,375円(税込)と、比較的年会費が安い法人カードです。
連携している会計ソフトは、弥生会計やクラウド会計freeeと充実しています。
これまで紹介してきたカードはゴールドカードやプラチナカードなので、一般カードから持ちたい場合に適した法人カードです。
国際ブランド | Visa、MasterCard |
年会費 | 初年度無料/2年目以降2,000円(税別) |
追加カード年会費 | 3枚まで無料 |
ETCカード年会費 | 無料 |
ポイント還元率 | 0.6%~1.1% |
申し込み資格 | 個人事業主、法人代表 |
限度額 | 300万円 |
※個人事業主:EX Gold for Biz S(エグゼクティブ ゴールドフォービズ エス)
※法人代表者:EX Gold for Biz M(エグゼクティブ ゴールドフォービズ エム)
『オリコEX Gold for Biz』は使いやすさとコストパフォーマンスからみても、総合的にバランスのとれた法人カードです。
納付の観点からみても個人事業主、中小企業であれば申し分ありません。
国際ブランド | Visa、MasterCard |
年会費 | 初年度無料/2年目以降1,250円(税別) |
追加カード年会費 | 400円(税別) |
ETCカード年会費 | 初年度無料/2年目以降500円(税別)※年1回以上の利用で翌年度無料 |
ポイント還元率 | 0.5% |
申し込み資格 | 満20歳以上の個人事業主、法人代表 |
限度額 | 10~150万円 |
『三井住友for Ownersクラシック』は還元率(0.5%)と限度額が低いというのがデメリットですが、その他のサービスはかなり充実していて、しかも年会費が1,250円と安いので小規模法人や個人事業主におすすめです。
ETCカードの年会費も、1年間のうちに1回使用すれば翌年度は無料となりますので、実質無料に近いかたちです。
また、満20歳以上の個人事業主から申し込みができますので、早くに起業したい時には強い味方になってくれるでしょう。
国際ブランド | AMEX |
年会費 | 初年度無料/2年目以降31,000円(税別) |
追加カード年会費 | 12,000円(税別) |
ETCカード年会費 | 初年度無料/2年目以降500円(税別) |
ポイント還元率 | 0.5% |
申し込み資格 | 満20歳以上の個人事業主、法人代表 |
限度額 | 審査により個別設定 |
『アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード』は、他と比べると年会費が31,000円(2年目以降)で高めということと、支払回数が一括のみというのがデメリットですが、なんといっても世界トップクラスの知名度があり限度額は申告内容や利用実績に応じて1,000万円以上にもなります。
また、審査が比較的通りやすく設立1年目からでも発行可能というのが最大の利点ではないでしょうか。
国税庁では現在「e-Tax」や「確定申告書作成コーナー」など税務手続きのサイバー化を推進しています。
納税にクレジットカードが利用できるようにしたのも、その一環だと思います。
税務手続きの簡素化や利便性を高めるこの取り組みは、税務官庁はもちろん、納税者にとってもメリットになるはずです。
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