会社設立直後に、クレジットカードを作れるかどうか不安な人もいるでしょう。
実際、法人カード審査通過の目安は、設立3年以上で2期以上の黒字といわれています。
一方で、「個人与信」によって設立直後に発行できるクレジットカードも多いのです。
この記事では、法人カードの基礎知識やメリット、選び方、おすすめの法人カードを紹介します。
このページの目次
会社設立直後の経営者が、クレジットカードを持ちたいと考えたときに備えるべき基礎知識を確認しましょう。
法人カードとは、事業費決済のためのクレジットカードを指します。
一見すると簡単ですが、個人カードとの違いを考えるうえでは重要な概念です。
法人カードだけでなく、ビジネスカードやコーポレートカードなども聞いたことがあるでしょう。
これらの違いは次のとおりです。
法人カード | 事業費決済のためのクレジットカードで、ビジネスカードやコーポレートカードを含む |
ビジネスカード | 個人事業主や中小企業向けのクレジットカード |
コーポレートカード | 大企業向けのクレジットカード |
大企業向けならコーポレートカード、そうでないならビジネスカードと呼び、これらはすべて法人カードと総称されます。
ポイントは、個人事業主が使うビジネスカードも法人カードと認識される点です。
法人カードと個人カードの違いは、事業費を決済するか生活費を決済するかという点です。
法人代表者であっても、生活費を決済するクレジットカードは個人カードとなります。
法人カードには、デビットカードを使うという手段もあります。
クレジットカードは月ぎめ後払いなのに対し、デビットカードは即時引き落としなので、キャッシュフローは異なりますが使用感は近いものとなります。
与信審査がなく、口座に残高がある分だけ決済することができるので、クレジットカードの審査に不安がある方や利用限度額が気になる方はデビットカードを検討しても良いでしょう。
デビットカードなら、年会費・発行手数料無料で高還元率の「GMOあおぞらネット銀行 ビジネスデビット」がおすすめです。
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1期目の決算を経ていない会社設立直後でも、クレジットカードの発行はできます。
その理由は、法令で禁止されていないからです。
法令で禁止されていなければ、クレジットカード発行会社が発行可否の判断を自由に行うことができます。
そこで気になるクレジットカード発行会社の審査基準ですが、前提として公開されていません。
ではなぜ会社設立直後でも、クレジットカードの発行が可能なのでしょうか。
審査基準が公開されていない前提は変わりませんが、審査基準のほんの一部は公式サイトなどに記載されています。
実際に人気のある法人カードのページをいくつか見てみると、決算関連書類の提出は必須とされていないことが多いです。
それだけでなく、設立直後でも入会可能などの記載も見られました。
法人カードは法人(事業)ではなく、法人代表者の信用をもとに審査が行われていると推測できます。
会社設立直後でも発行できる法人カードはあります。
大前提として審査基準はわからないのですが、公式サイトなどに記載された情報から審査基準を推測してみましょう。
たとえば「三井住友カード ビジネスオーナーズ」は公式メディアにて次のような記載があります。
このような記載がある法人カードは三井住友カードだけではありません。
人気のあるほとんどの法人カードで決算関連書類の提出が不要とされています。
審査通過にまったく影響がないとは言い切れませんが、会社設立直後だからといって法人カードが発行できないわけではないのです。
法人カードの発行には多くのメリットがあるため、それぞれ紹介していきます。
知らないメリットがあれば、この機会に認識して法人カードを上手に活用するための参考にしてみてください。
会社設立直後にクレジットカードを発行する8つのメリット |
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法人カード発行のメリットとしてよく挙げられるのが、経理業務の効率化です。
さまざまな費用を法人カードで支払い、会計ソフトと連携すれば、自動でクレジットカード明細を取得し、仕訳も自動で行ってくれます。
役員や従業員が法人カードを持つことで、出張旅費や接待交際費など、これまで役職員が立て替えていた経費も、種類により立て替え不要です。
さらに、役職員が法人カードを利用すると、経営者(管理者)は「いつ・だれが・どこで・いくら利用したのか」が把握できます。
経費精算システムと連携すればその利用データを取得できるため、経費精算がラクになるのです。
事業費を決済する際、銀行振込を行うこともありますが、銀行振込には手数料が発生することが多いものです。
一方、クレジットカードで支払う場合には、分割払いやリボ払いを利用したり、加盟店が規約に反して手数料を設定していたりする場合を除き、支払う側に手数料負担は生じません。
クレジットカードで支払える場合はクレジットカードで支払うようにすると、決済に伴う手数料(決済コスト)が削減できます。
個人カードの大きなメリットとして認識されるポイント還元ですが、法人カードでもメリットといえるのです。
最近では、貯めたポイントを利用代金の支払いに充当できるカードも増えてきました。
ポイントを代金の支払いに充当すれば、ポイント獲得機会を逃さずお得に利用できます。
利用100円ごとに1ポイント貯まり、1ポイント1円相当で利用できるポイントプログラムを前提として、下表に具体例を示しました。
値引き利用 | 充当利用 | |
代金 | 10,000円 | 10,000円 |
ポイント値引き | 1,000円相当 | 利用なし |
決済金額 | 9,000円 | 10,000円 |
ポイント支払額 | 利用なし | 1,000円相当 |
キャッシュアウト | 9,000円 | 9,000円 |
獲得ポイント | 90ポイント | 100ポイント |
表のとおり、ポイントを請求時に利用することで、キャッシュアウトは同じでも獲得ポイントは多くなります。
ポイントは値引き利用するよりも、請求時にポイントで支払うほうがお得なのです。
楽天カードや三井住友カード、アメリカン・エキスプレス(年会費支払い)など、ポイント支払いが可能なカードではポイント支払いを優先して利用しましょう。
JCB(Oki Dokiポイント)やクレディセゾン(永久不滅ポイント)などのように、ポイントで支払うときに交換レートが低くなる場合もあるため注意が必要です。
海外出張の機会が多い場合は、マイルに交換すると高い還元率を狙える場合もあります。
事業費をクレジットカードで決済すると、翌月1回払い(マンスリークリア)の場合に最大で約2ヵ月ほど支払いを遅らせることができます。
極端な例ですが、年利5.0%で安全に資金を運用できる経済状況で、1,000万円の設備に投資するとしましょう。
A社はその場で現金一括払いしましたが、B社はクレジットカードを利用し、2ヵ月後に全額引落しです。
そこでB社は、2ヵ月間、1,000万円を年利5.0%で運用できることになります。
すると運用益は約8.3万円(1,000万円×5.0%÷12ヵ月×2ヵ月)の運用益を出せるのです(単利計算)。
資金繰りが上手といえる会社は、クレジットカードを利用したB社でしょう。
仮に運用しなかったとしても、万が一のことが起きたときの備えとして支払いを遅らせることには価値があります。
クレジットカードは、単に後払い決済(立て替え払い)のツールとして利用できるだけでなく、さまざまなサービスが付帯しています。
これまでに紹介したなかでは、ポイント還元や経理システムとの連携サービスなどです。
出張が多い会社にとっては、次のような付帯サービスも非常に魅力的といえます。
法人カードの付帯サービスの例 |
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クレジットカードは、クレジットカード発行会社の審査に通らなければ持てません。
そのためには、一定の信用力が必要とされるのです。
プラチナカードは審査基準が厳しく年会費も高いため、一般的にハイステータスといわれています。
プラチナカードを持っていると、やはり一般カードより信用力があると認められるでしょう。
2022年4月現在、法人税や消費税などの国税もクレジットカードで納付できます。
国税についてもクレジットカードを利用することによって、実質的に納付期限を遅らせることができるのです。
クレジットカード納付には、納付税額1万円ごとに約83.6円(税込)の手数料がかかります。
比較的低額の納付の場合は、ポイント還元より手数料の負担が多くなるため注意しておきましょう。
会社設立直後のクレジットカード選びのポイントを紹介していきます。
前述のとおり、決算関連書類の提出を求められていないクレジットカードを選びましょう。
求められている場合は、そもそも会社設立直後の作成が難しいカードといえるからです。
ポイント還元プログラムがあるほうが経営者にとって嬉しいはずです。
年会費が高くても、ポイント還元率が高ければ利用を検討する価値があります。
たとえば、年会費1万円でポイント還元率が1.0%のカードの場合、年間100万円利用するとポイントで年会費が回収できるのです。
一方、年会費が5,000円と安くても、ポイント還元がない場合は、いくら利用しても年会費をポイントでは回収できません。
クレジットカード選びをもう少し厳密に行うなら、実質還元率を考慮する必要があります。
実質還元率とは、年間利用額に対して、年会費控除後の還元額がいくらかという指標です。
還元額というのが少し抽象的ですが、通常はポイント還元額のことを指します。
この方法であれば、前述したとおり年会費を考慮しつつクレジットカードのお得度を評価することが可能です。
しかしクレジットカードには、会計ソフトとの連携、Google PayやApple Payへの対応有無、付帯保険の充実度など、金額(還元額)に換算することが難しい要素もあります。
上記の実質還元率は、目安として参考にしてください。
会社設立直後におすすめのクレジットカード4種類を紹介します。
事業に合ったクレジットカード選びにお役立てください。
会社設立直後におすすめのクレジットカード4選 |
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画像出典元:「アメリカン・エキスプレス」公式HP
基本年会費 | 36,300円 |
追加年会費 | 13,200円 |
国際ブランド | American Express |
ポイント還元率(目安) | 0.3%(代金充当時) |
電子マネー | Apple Pay(QUICPay) |
発行スピード | 通常1~3週間 |
ETC年会費 | 550円 |
国内旅行傷害保険 | 最高5,000万円(利用付帯) |
海外旅行傷害保険 | 最高1億円(利用付帯) |
ショッピング保険 | 年間500万円(自己負担額1万円) |
ポイント名 | メンバーシップ・リワード |
アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カードは、年会費は高めですが、その分だけ各種サービスが充実しています。
たとえば、国内主要空港のラウンジを利用できますし、空港送迎(ハイヤー)も片道4回分無料です。
アメックスのビジネスカードは、利用可能枠が一律には設けられていない点も大きな特徴といえます。
貯まったポイントは年会費充当で利用することが最もおすすめです。
年会費に充当すると、通常は0.3%ほどの還元率が1.0%と高くなります。
画像出典元:「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード(SAISON PLATINUM BUSINESS AMEX)」公式HP
基本年会費 | 22,000円(年間200万円以上利用で次年度11,000円) |
追加年会費 | 3,300円 |
国際ブランド | American Express |
ポイント還元率(目安) | 0.5% |
電子マネー | Apple Pay(QUICPay・iD) Google Pay(QUICPay・iD) |
発行スピード | 最短3営業日 |
ETC年会費 | 無料 |
国内旅行傷害保険 | 最高5,000万円(利用付帯) |
海外旅行傷害保険 | 最高1億円(利用付帯) |
ショッピング保険 | 年間300万円 |
ポイント名 | 永久不滅ポイント |
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードは、海外出張が多い場合に特におすすめの法人カードです。
世界1,300ヵ所以上もの空港ラウンジを無料で利用できる、プライオリティパス(プレステージ)の年会費が無料になります。
また、海外利用時はポイント付与率が2倍になるため、海外出張が多い場合に嬉しいカードです。
年間200万円以上利用すると次年度の年会費が半額の11,000円になる点も見逃せません。
画像出典元:「JCBカード」公式HP
基本年会費 | 1,375円(税込)※初年度無料 |
追加年会費 | 1,375円(税込) |
国際ブランド | JCB |
ポイント還元率(目安) | 0.5% |
電子マネー | なし |
発行スピード | 2週間以上(目安) |
ETC年会費 | 無料 |
国内旅行傷害保険 | 最高3,000万円(利用付帯) |
海外旅行傷害保険 | 最高3,000万円(利用付帯) |
ショッピング保険 | 年間100万円(海外のみ自己負担額1万円) |
ポイント名 | Oki Dokiポイント |
JCB法人カードの年会費は1,375円(税込)と、比較的年会費が安い法人カードです。
連携している会計ソフトは、弥生会計やクラウド会計freeeと充実しています。
これまで紹介してきたカードはゴールドカードやプラチナカードなので、一般カードから持ちたい場合に適した法人カードです。
画像出典元:「UPSIDER」公式HP
基本年会費 | 無料 |
追加年会費 | 無料 |
国際ブランド | VISA |
ポイント還元率(目安) | 決済額あたり1.0%~ ※一部利用先では還元率が異なります。 |
電子マネー | なし |
発行スピード | 最短即日で利用開始可能 |
ETC年会費 | 要問合せ |
国内旅行傷害保険 | 要問合せ |
海外旅行傷害保険 | 要問合せ |
ショッピング保険 | (不正利用補償)2000万円まで |
ポイント名 | ― |
「UPSIDER(アップサイダー)」は、最大10億円の利用限度額と発行枚数が無制限のカード(リアル・バーチャル)が特徴です。
初期費用・年会費・利用料・追加カード発行料は基本的にすべて無料。
企業の成長を加速させたい新規上場企業やスタートアップ企業、そして不正利用の課題を抱えている企業に向いています。
また、企業と一緒に伴走してくれる心強いサポートも大きな魅力です。
最後に、会社設立直後のクレジットカードに関するよくある質問をまとめました。
法人カードの年会費は経費にできます。
勘定科目は一般的に「支払手数料」が用いられているようです。
消費税の課税取引(仕入れ)となるため、仕入税額控除の対象となります。
キャッシング機能の有無はカードによりますが、基本的にはないものと考えておいたほうが良いでしょう。
仮に法人カードでキャッシング機能が付帯されていたとしても、一般に金利コストが割高なので、ほかの資金調達手段を検討すべきです。
何をもって「甘い」とするかで異なるため、一概に回答することはできせん。
少なくとも各社の基準によりカードの発行可否を判断しており、審査基準に差があることは確実です。
個人カードは最短5分でカード番号が発行されるものもありますが、法人カードは最短でも3営業日程度かかることが多いです。
一般的には、2~3週間程度と見積もっておくのが良いでしょう。
会社設立直後でもクレジットカードは作れますが、作れるカードと作れないカードがあり、この記事では「会社設立直後でも作れるクレジットカード」を紹介しました。
クレジットカードは本来、後払い(ツケ)のツールなので、経営者はクレジットカードを資金繰り(キャッシュフロー)改善の手段として認識しておきましょう。
経理・経費精算業務の効率化ツールとしての有効性のほか、旅行(出張)補償や、快適な旅行(出張)を実現するためのサービスも有効といえます。
経営者は、事業経営を進めていくうえでクレジットカードの有用性を認識し、最大限に有効活用していきましょう。
画像出典元:Pixabay