「ギグワーク」という言葉を耳にしたことがありますか?
2019年頃からアメリカが発端で生まれた言葉で、スキマ時間で、シフトや堅苦しい雇用関係がない新しい働き方に、近年多くの人が注目しています。
働き方や社会そのものが変化するこの時代に、ギグワークという選択肢の是非について述べていきます。
このページの目次
ギグワークとは、単発・短時間の労働で、継続した雇用関係がない働き方のことをいいます。
英語で「gig」とは「即興演奏」や「短いセッション」を意味するスラングで、そこから単発・短時間で仕事を受ける働きとしてギグワークという言葉が生まれました。
ギグワークの担い手として働く人を「ギグワーカー」、ギグワークで成立する経済圏を「ギグエコノミー」と呼びます。
ギグワーク普及の理由のひとつとして、デジタル化が挙げられます。
デジタル化により、インターネット環境さえあればいつでもどこでも仕事ができるようになったことで、単発で受けられる仕事が増えたことが、ギグワーク普及の背景となっています。
さらにコロナ禍が拍車をかけました。
コロナ禍により、時短勤務やリモートワークで、スキマ時間や自由時間を有効に使おうとする動きが増えたことや、収入減をクラウドソーシングで補いたいとう動きが、ギグワークの普及に繋がりました。
ギグワーカーは急増しています。
人材仲介会社「ランサーズ」が2021年1月〜2月にかけて行った調査によると、国内のギグワーカーは少なくとも308万人。去年の同じ時期と比べておよそ5倍と見られています。
ただ、現状日本の厚生労働省によると、ギグワーカーという働き方について国としての明確な定義はまだなく、実態の把握や保護のあり方について検討する段階には至っていないようです。Uber eatsの進出やクラウドソーシングサービス、スキルマーケットの拡大によりギグワーク自体も認知度は高まりつつありますが、日本ではまだ馴染みがないのが現状です。
ギグワークを本業として働く人も少なく、ギグワーカーを守る制度もありません。加えて、日本ではギグワーカーの正確な統計も無いため、日本ではまだギグワークはあまり理解されていません。
アメリカではギグワークの働き方は浸透しており、ギグワークだけで生計を立てている人も珍しくありません。
アメリカのギグワーカーの2018年の総収入は1兆4000億ドルに上ります。もっともギグワーカーの40%は専門スキルを持ち、博士号を持つ人も少なくないので、もちろん全てのギグワーカーが高収入というわけではありません。
しかしアメリカではギグワーカーを守る法整備もなされており、ギグワークもひとつの働き方として認められています。
東南アジアや南アフリカでも、このギグワークという柔軟な働き方が収入を支えています。もっとも、アメリカでギグワークを行う者達はこれらの国出身の人も多いとのこと。
中国でもこの働き方が広がりを見せています。中国人的資源社会保証部の発表によると、国内でギグワークを行う人々は2億人以上に上っており、そのうち50%以上が若い世代だといいます。
このように、世界では既にギグワークという働き方は主流になりつつあるのです。
前述したように、働き方改革による残業の軽減や、コロナ禍によってスキマ時間や自由時間を有効に使いたいという現代人のニーズが増えました。
ギグワークは数時間からの仕事が多く、当日急に働けるなど、ちょっとした時間にすぐ働ける点もメリットのひとつです。
ギグワークは初心者でもできる簡単な仕事が多いことも特徴です。
ギグワークでは経験が求められる仕事や完結までに時間がかかる仕事は少なく、単純作業や誰でもすぐ理解できるものが多く、誰でも働きやすいものになっています。
専門性や経験が問われる仕事でも、ギグワークでは短時間や一日単位で終わるものが多いです。
特定の組織に属さないため、同僚や先後輩など、人間関係に悩まされないことも特徴です。加えてノルマもないため、比較的ストレスフリーで働ける働き方だと言えます。
単純作業や誰でもできる仕事が多いため、仕事の単価は低めです。
誰でもできるからこそ、続けても専門的なスキルが身に付くわけではないため、報酬が上がることも考えにくいでしょう。
ギグワークでは雇用契約が発生しないため、労働関連の法律が適用されません。トラブルが起きたり、残業分の報酬が貰えなかったりしても、全て自己責任になってしまいます。
アメリカではギグワークという働き方が浸透し、すでに法整備も進んでおりギグワークが安定した職業になりつつありますが、日本ではまだ案件が少ない上に法整備もされていないため、ギグワークだけで生活することは困難です。
今の日本では、本業の他に副業としてギグワークの働き方をすることが主流と言えます。
ギグワークの仕事例を、今すぐ簡単にできる「単純作業編」とスキルがあるなら高収入も夢じゃない「スキルアップ編」に分けてご紹介!
※()内は収入目安
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特定の組織に属さないという点では、ギグワークとフリーランスは何が違うのでしょうか。
フリーランスはプロジェクト(案件)単位で仕事を請け負います。
例えば、フリーランスのプログラマーは「このプログラムを完成させる」という契約を交わして仕事をします。プログラムにかけた時間が短くても長くても、報酬が変わることはありません。
対してギグワークは、空いているスキマ時間でできる仕事を探します。
案件の全てを完遂する必要はなく、部分的作業も可能です。
つまりギグワークは自分の好きなタイミングで始められ、自分の好きなタイミングで辞めることが可能です。
ギグワークは簡単な仕事が多いことを特徴に挙げましたが、フリーランスは専門性の高い仕事で、自分のスキルがなければ案件を獲得することは難しいです。
それゆえ、フリーランスは自分のスキルを磨けば報酬アップが望めますが、ギグワークは報酬アップには繋がりにくいと言えます。
ただ、今まで単純作業のものが多かったギグワーク界隈では、「時間ではなくスキルを売るギグワーク」にシフトしている動きもあるようです。
こうした動きや、日本ではまだ明確な定義がないことから、ギグワーカーとフリーランスの線引きも曖昧になりつつあります。
日本では現状まだあまり馴染みのないギグワークですが、今後増えることは間違いないと言われています。
働き方改革を掲げる日本がよりギグワークの導入を積極的に行えば、次のような効果が期待できると思われます。
ギグワークは働く個人にとっても、導入する企業にとってもメリットがあります。
アメリカを始めとする欧米諸国よりも、日本のギグワーク普及が遅れている原因としては、やはり従来の日本の雇用に対する考え方でしょう。
非正規雇用は年々増えつつも、やはり未だに正規雇用志向が強く、副業禁止の企業が多数あることも原因です。
ギグワークの普及には、日本はまだ時間がかかるかもしれませんが、働き方や社会が大きく変化していることから、これからどんどん普及してくることは間違いないでしょう。
総合的に、「必要なときに必要なだけ稼ぐ」ギグワークは、働き方や社会が大きく変わる今、まだまだ伸び代が大きい市場だと言えます。
ギグワークの普及で様々なメリットがもたらされる一方で、ギグワーカーの保護や経済格差の助長など、議論されるべき課題も多々あります。
ギグワーカーが適切に守られる法制度が確立するまでは、あくまで副業として、本業とうまく組み合わせて働くことが賢明と言えるでしょう。
アメリカなどではギグワーカーの法的保護が進みましたが、馴染みの薄い日本では現時点ではギガワーカーの法的保護がなされていません。日本ではギグワーカーの立場は弱いのが現状です。ギグワーカーを守る法整備がなされたり、導入企業が増えれば、真の働き方改革を押し進めることができるでしょう。
「組織から個人の時代へ」ーそんな時代に、ギグワークという働き方を、新しいひとつの選択肢として考えて見てはいかがでしょうか。