国の政策として取り組みが進められている「働き方改革」。少子高齢化による人手不足が業界問わず深刻化してきているなか、「働き方改革」はもはや政策に付随するものではなく、企業が生き残りを図るために欠かせない事業戦略ともなっています。
今回は、様々な取り組みが展開されている「働き方改革」のうち、実現性と成果の観点から選んだ6つの好事例をご紹介していきます。
このページの目次
働き方改革とは、簡潔にいうと「労働者の働き方を見直して改善していこう」という動きです。
元々は、政府が「一億総活躍社会」を実現するための手段の一つとして取り組みを始めた「政策」でした。
しかし、少子高齢化が進んできたことにより、いまやどの業界においても「人手不足」が深刻化してきています。
そのため「働き方改革」は政府が主導するものというよりも、企業にとっては今後の生き残りを図るための重要な事業戦略という位置づけで捉えられ始めています。
「選ばれる」企業となるために様々な取り組みが展開されている「働き方改革」ですが、今回はその中から「労働時間などの見直し」「多様な休暇制度の整備」「女性活躍推進の仕組み作り」の3ジャンルで6つの事例をご紹介していきます。
洗剤やヘアケア、スキンケア用品の大手ユニリーバ・ジャパン株式会社では、2016年7月より新人事制度「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」を導入しています。
WAAは端的に言うと、すべての社員が働く場所や時間を自由に選べる仕組みであり、以下のような内容となっています。
フレックスタイム制度や時短制度などを導入・運用している会社は多くあるものの、中には実質的にはうまく活用されていなかったり、制度はあるものの有名無実化しているような会社も少なくありません。
ところが、ユニリーバ・ジャパンの場合は社員の9割がWWAを活用。社内全体で残業時間を削減しながら売上高を伸ばすことに成功しています。
その秘訣として、ユニリーバ・ジャパンはトップのコミットメントやビジョンの共有、さらにはITなどのテクノロジーの活用を挙げています。
日本最大手のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZO(旧社名:スタートトゥディ)では、「ろくじろう」と称した1日6時間労働の取り組みを、2012年5月から行っています。
就業時間は午前9時から午後3時まで。限られた時間に集中して仕事に取り組めるようになることが目的ですが、「6時間」という数字には実は別の意味もあります。
それは、労働基準法においては労働時間が6時間以内であれば休憩を取る必要がない、ということ。これにより昼休みも廃止することができ、午後3時という早いタイミングでの退社が実現しているのです。
なお、昼休みの時間こそないものの、軽食をとることはOKとされているので、空腹のために集中力が下がるという心配もありません。
6時間労働への取り組みの結果、ZOZOでは労働時間削減はもちろんのこと、1人あたりの労働生産性が向上。
それにより売上高アップも達成しており、社全体での業務効率化に成功しています。
元・サッカー日本代表の中田英寿氏をはじめとして、トップアスリートのエージェントで有名な「株式会社サニーサイドアップ」では、「プライベートも一生懸命たのしもう!」を合い言葉に、「プライベートしっかり休暇制度」と称した様々な種類の休暇制度を導入しています。
・「ファミリーホリデー休暇」制度
・「誕生日休暇」制度
・「恋愛勝負休暇」制度
・「失恋休暇」制度
・「結婚記念日休暇」制度
・「離婚休暇」制度
中でも特に特徴的なのは「離婚休暇」でしょう。これは、文字通り離婚をした場合に1日の休暇を取得できるというものです。
離婚に伴う事務手続きなどに使える現実的な制度とのことですが、もしかしたら多少なり傷ついた心を癒やすためにも使われているかもしれません(1日では足りないかもしれませんが)。
誰もが知る大手飲料会社の主力商品や若者に人気のジュエリーブランドなども手がける「ワヴデザイン株式会社」では、現在のように「働き方改革」が叫ばれるようになる以前の2012年から「11か月働いて1か月休む」という制度を取り入れています。
1か月という時間の使い道はもちろん自由。
旅行だろうと、留学だろうと、それこそ他の会社で仕事をしようが、何をやっても自由だというのが面白いところです。
ワヴデザインでは1か月休暇を取得した社員の過ごし方をブログという形で公開しており、「30日間世界一周」「フィリピン・セブ島格安英語留学」「スペイン・サンティアゴ巡礼」などの時間の過ごし方が紹介されています。
ちなみに、ワヴデザイン株式会社では1か月休暇導入前、2週間休暇を試験的に導入していますが、初めての試みであり苦労や反省が多かった、とのこと。
もしかしたら、1か月という思い切りの良さが、制度成功のカギなのかもしれません。
ウェブサイトの制作や運用、デジタルマーケティング支援などを行う株式会社メンバーズでは、「女性社員の長期的なキャリア形成の支援強化」「ワークライフバランスの実現」「多様なワークスタイルの確立」の3つをテーマに、女性活躍推進計画「Womembers Program」を立案・実行しています。
このように、Womembers Programの取り組み内容は多岐にわたっています。
株式会社メンバーズではこれらの取り組みにより、女性管理職の比率が向上するなどの効果が出ているとのこと。
株式会社サイバーエージェントでは「女性が出産・育児を経ても働き続けられる職場環境の向上」を目的として、以下の8つの制度をパッケージ化した「macalon」という独自制度を整備しています。
「macalon」には、「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」という意味が込められているとのことで、子どもをもつ女性や、子どもを産み育てたいという女性を対象とした制度が特に充実している点が特徴です。
様々な取り組みが展開されている「働き方改革」の中から、今回は実現性と成果の観点から選んだ6つの好事例をご紹介してきました。
「働き方改革」については企業の規模や業態に関わらず様々な取り組みが展開されていますが、制度を創設しただけでうまく活用されていなかったり、業務効率性の向上や企業の魅力アップなどといった成果につながっていない事例も散見されます。
「働き方改革」に取り組むにあたっては、ただシステムを変えたり作ったりするのではなく、その取り組みがもたらす成果までを具体的に目標設定すること、そして目標に見合った成果を得られているかをきちんとチェックすることが重要です。
画像出典元:Unsplash、Pexels、pixabay