「給与前払いサービスは貸金業に該当しない」と金融庁が判断しましたが、「でも、お金を貸してるんでしょ?安心して使えるサービスなの?」と心配している方もいますよね。
法律上の問題点に関して金融庁が明確な答えを出しているので確認しましょう。
今回は、給与前払いサービスが貸金業に該当しない理由(金融庁の見解)、違法サービスであるファクタリングとの違い、おすすめの給与前払いサービスについて詳しく解説します。
給料前払いへのニーズが高まっている時代です。給与前払いサービスを導入して福利厚生を充実させれば、人手不足の解消に役立ちますよ。
このページの目次
給与前払いサービスとは、社員に給料の一部を前払いするための事務手続きや振込作業を代行するサービスです。
特別な事情がある時には、従業員が勤め先に給料の前払いを請求することが認められています。しかし、いざ給料の前払いをしようと思うと、勤務時間の確認や給料日に支払う金額から前払いした金額を差し引く作業などの手間がかかります。
福利厚生制度に給料前払いを取り入れた場合、社員の働きやすさはアップしますが事業主の負担が増えるのが問題でした。
給料前払いサービスを導入すれば煩わしい作業を代行してもらえるので、企業側の負担を最小限にしつつ社員の利便性が良い職場環境の構築が実現します。
給料前払いサービスは従業員の勤怠情報を勤め先企業と業者とで共有し、業者が「社員からの前払い申請の受付→勤務状況の確認→振込作業を行う」ことを代行する仕組みです。
事業主が業者と契約してサービスを導入しますが、運用にかかる利用料金は無料~数十万円と幅があり、費用の負担割合はサービスごとに異なります。
など、費用負担の取り決めは様々です。
また、前払いする給与を雇用主が用意するか、業者が立て替えて支払うかの違いもあります。
預託金型:雇用主が業者に預けたお金で前払い給料を支払う
立替型:業者が前払い給料を立て替えて支払う
業者が前払い給与を立て替えて支払う『立替型』のサービスだと、一時的にサービス業者が社員にお金を貸す状態になります。そのため、「貸金業に該当するのでは?」「貸金業登録をしないのは違法では?」と指摘されました。
給与前払いサービスが貸金業に該当するか確かめるために、サービスを利用した際の流れをひとつずつチェックしましょう。『預託金型』を利用した時の流れはこちらです。
事前に勤め先企業がサービス業者に前払い分の給与を預けているので、業者のお金が労働者の手に渡ることはありません。このことから、「預託金型のサービスは貸金業ではない」と言えます。
続いて『立替型』の給与前払いサービスの流れです。
「(2)申請された金額を立て替えて支払う」というステップが存在するため、一時的にサービス業者のお金を従業員が手にします。
この部分があるせいで「給与前払いサービスは貸金業では?」「貸金業に該当するなら貸金業登録をせずに事業を行うのは違法だ」といった意見がありました。
そんな指摘を受けて動いたのが株式会社ペイミー(Payme inc.)です。
ペイミーは、「グレーゾーン解消制度」を使って、経済産業省や金融庁に自社サービスの適法性を照会しました。
<照会内容>
『サービス導入企業の従業員に支払う給与の前払いが労働基準法第11条に規定する賃金に該当する場合、貸金業法第2条第1項に定める貸金業に該当するのか?』
「グレーゾーン解消制度」とは、事業者が安心して事業を展開するために規制の適応になるかを関係省庁に確認できる制度。政府が明確な答えを出してくれれば、給与前払いサービスに法律上の問題があるのかがハッキリします。金融庁が出した答えを見てみましょう。
Paymeの照会に対する金融庁の判断は『給与前払いサービスは貸金業には該当しない』でした。
つまり、立替型の給与前払いサービスを提供しても違法ではありません。これで、貸金業に関するコンプライアンス上の問題は解決しました。
「給料前払いサービスには法律上の問題があるのでは?」と指摘された背景には、”給料ファクタリング”の存在があります。
給与前払いサービスと給与ファクタリングは、どちらも給料日前に現金が手に入るサービスですが両者は似て非なるもの。次は、給与前払いサービスとファクタリングの違いを解説します。
給与前払いサービスは福利厚生制度として企業が導入するサービスですが、給与ファクタリングは従業員が業者と契約を交わす金融サービスです。
この2つのサービスの違いを明確にするために、給料として支払われるお金の動きを図を用いて説明します。
まずは、どちらのサービスも利用しない場合です。
会社は給料日になったら従業員に直接給与を全額支払います。
給与前払いサービスを使うとどのように変化するのでしょう?
会社と給与前払いサービス業者が業務委任契約を結び、会社は労働者に福利厚生制度として給与前払い制を提供します。
給与前払いサービスを利用した時の流れを見てみましょう。
どちらも企業がサービス業者と接点があることが分かります。
続いて、給与ファクタリングを利用した場合の流れを紹介します。
給与ファクタリングは、労働者が給料を受け取る権利(給料債権)を業者に売って現金を手に入れる方法です。そのため、従業員と業者が直接売買契約を結び、勤め先の会社は一切タッチしません。
契約が済んだら業者は債権の買取金額を労働者の口座に振り込みます。給料日になって会社から給与が支給された後に、従業員が買取金額分の金額を業者の口座に振り込めば返済が完了。
返済できない時には業者が労働者への取り立てを行います。
この流れからするとファクタリングは貸金業に見えます。しかし、ファクタリング会社は『給料債権』の売買をする金融サービスだと主張し、手数料を徴収して儲けを出していました。
貸金業には金利の上限が定められていますが、金融サービスの手数料に関する上限はありません。ファクタリング業者は法外な手数料を利用者に課して荒稼ぎしていたのです。
金融庁は「給料ファクタリングは貸金業に該当するのに無登録営業をしている違法なヤミ金業者!絶対に利用したらいけない!」と警告しています。さらに、給与ファクタリングを行っている男性が2020年10月に貸金業法違反容疑で逮捕されました。
これらのことから分かる通り、違法サービスであるファクタリングと給与前払いサービスは別物です。
ファクタリング業者が危険を冒してまで違法サービスを行うのは需要があって儲かるから。つまり、給料日よりも前に現金が欲しい人が増加しているからです。給料前払いへのニーズが高まっている理由も知っておきましょう。
外国人労働者の増加や働き方が多様化したことで、給料の受け取り方に関しても柔軟な対応が求められる時代となりました。
それに加えて、新型コロナウイルスの影響で収入が不安定になった人も多いです。こんな時代だからこそ、給料を前借りできるサービスへのニーズが高まっています。
給料前払いサービスが登場する前は、従業員が自ら雇用主にお願いして給料を前借りしていました。
「申請する時に気まずい思いをするの嫌だな…それにお金に困っていることを同僚に知られるかも…?」と思うと利用しづらいですよね。
給料前払いサービスは勤め先ではなく業者に振込申請するので、社員が気兼ねなく前借りできます。従業員が使いやすいサービスだという点も、給料前払いサービスが広まった理由です。
最近の求職者は給料額以外に「働きやすい職場環境」を強く求める傾向があります。
事業主が人手不足解消のために行っている工夫が福利厚生を充実させること。その一環として給料前払いサービスを導入する企業が増えています。
多くの人から求められている給与前払いサービスを利用すれば、従業員の定着率が上がるだけでなく、求人への応募数も増えて人材不足解消に役立ちます。
職場環境を改善させたい事業主の方は、給与前払いサービスの導入を検討してみてくださいね。
給与前払いサービスは機能や利用料金にかなり差があるので、自社が求める条件に合ったものを選ぶことが大切です。
でも、数多くあるサービスを全部チェックすると膨大な時間がかかってしまいますよね。そんな手間を省くために、厳選したおすすめサービスの要点をまとめてお伝えします!
CRIA(クリア)の良いところは企業側の費用負担が完全にゼロ円であること。初期費用も月額費用もかかりません。
CRIA側は、従業員が給与前払いを受けるときにかかる手数料で収益を得るビジネスモデルです。
またこれは多くの給与前払いサービスでいえることですが、前払い資金はCRIAが建て替えてくれるため、導入にあたって資金を用意する必要もありません。
さらに、CRIAは上場企業メタップスの子会社が運営しています。まだ世間的に普及しきっておらず、法律との兼ね合いも不安視される給与前払いサービスですが、CRIAなら急にサービスが停止するなどの不安も比較的少ないといえます。
セブン銀行と提携しているため、24時間365日いつでも給与を受け取れる点は、従業員にとって嬉しいポイントでしょう。
初期費用・月額利用料金ともに0円です。
ただし給与の支払い時に従業員が数百円の手数料を負担することになります。
画像出典元:ペイミー公式HP
ペイミーは2017年11月にリリースし、現在では導入社数400社以上、導入従業員数は延べ20万人以上を突破した急成長中の給与前払いサービスです。
導入費用が無料です。
人気の理由は圧倒的な使いやすさで、給与前払いがとても簡単でスムーズになると評判です。
勤怠管理システムとのスムーズな連携を実現しており、給与前払いを利用しない人でもスマホで自分が働いた時間をすぐ確認できるようになるというメリットがあります。
人材の採用や維持につながったという声も多く、例えばアルバイトの採用単価が7~8万円から1万円になったという衝撃的な事例もあります。
導入費用が無料です。
ペイミーを利用して給与前払いを受け取る際には、基本的に従業員負担で一回あたり数百円程度の手数料がかかります。
ペイミーのサービス内容の詳細、実際に導入した企業の声などは資料をご参照ください。
画像出典元:enigma pay公式HP
enigma payは数ある給料前払いサービスの中でも知名度が高いサービスの1つ。サポート体制には定評があるので、給料前払いサービスの導入にあたり不安がある企業でも安心して利用できるでしょう。
初期費用・月額利用料金ともに0円です。
ただし、サービスを利用する従業員は前払い申請ごとに数百円のシステム利用料がかかります。
楽天早トク給与は2020年4月にスタートしたサービスなので、よく知らない方も多いかもしれませんが、企業にとっても従業員にとってもメリットの大きいサービスなのでとてもおすすめです。
基本料金は半年間無料、さらにあらゆる勤怠管理ツールとの連携が可能なので、導入にあたって面倒な作業が発生しません。
導入時や運用時に、コールセンターにて手厚いサポートを受けられることも特長です。「導入後の企業の労力を最小限」にというコンセプトのもと提供されているサービスなので難しい作業も一切ありません。
従業員が給与を引き出す際には手数料が発生しますが、楽天銀行であれば利用手数料が0円。楽天銀行での受け取りであれば、従業員は申請1回につき楽天ポイントを受け取れるという楽天ならではのうれしい特典もついています。
給与前払いサービスは利用にあたって発生する手数料を企業・従業員どちらか一方に負担させるケースが多いのですが、楽天早トク給与は双方に負担させることで共に少額負担で済むスタイルになっており、バランスのよいサービスだと言えるでしょう。
料金は、月額料金として毎月固定の「基本料金」(半年間無料)と利用回数・金額に応じて課金される「従量料金」の2種類がかかります。
詳しくは資料をご参照ください。
画像出典元:THE給与公式HP
給与の前払いを希望する従業員が多い企業にうってつけなのがTHE給与。建設業・運送業の会社に特におすすめです。
従業員の手数料がかからないことが他サービスとの大きな違いで、従業員定着率の向上を期待できます。
導入時の設置作業・導入後のメンテナンス作業も、全て運営企業にお任せできます。
またTHE給与本体は勤怠管理機能も兼ね備えており、様々な給与計算ソフトと連携が可能なため、給与明細をウェブ上で確認することもできます。
さらに、ドライバー管理の機能も新たに追加され、給与前払い、勤怠管理、静脈認証など様々なシステムをオーダーメイドすることが可能になっております。
リース販売は、月額35,000~利用することが可能です。搭載機能により価格変動があります。
「給与前払いサービスは貸金業なのでは?」と疑われたことがありましたが、金融庁は「貸金業には該当しない」との見解を示しました。それに、違法サービスであるファクタリングとはまったく違うサービスです。
給料日よりも前に現金を受け取りたい人が増えている現在。福利厚生制度のひとつとして給料前払いサービスを導入すれば、社員が働きやすい会社になるのは間違いありません。
無料で使えるものから有料で多機能なものまでサービス内容は様々です。企業と従業員の両方が使いやすい給与前払いサービスを選んでくださいね。
画像出典元:O-DAN