リファラル採用はすでに在籍している社員が人材を推薦・紹介する採用方法です。これはアメリカや欧州では非常にメジャーな採用方法です。
うまく運用することで、採用コストを下げながらも優秀な人材を確保し、企業内の結束感も高まることが期待できます。
この記事では、リファラル採用とはどういったものなのか、そのメリット・デメリット、どういう企業がリファラル採用を導入するのに向いているか、そしてリファラル採用を成功させるためのポイントをご説明します。
このページの目次
リファラル採用とは、社員が自分の知人や友人を自社に紹介し、採用選考につなげる採用手法です。
社員が直接紹介するため、企業の文化や仕事内容にフィットした人材を見つけやすく、採用ミスマッチのリスクを低減できます。
ベンチャー企業やスタートアップを中心に広がり、近年では大企業でも採用活動に取り入れられるなど、注目度が高まっている採用手法です。
リファラル採用が注目される理由は、効率的に優秀な人材を確保できる点にあります。
特にITや金融、コンサルティングといった専門職や採用難易度の高い職種では、社員からの紹介によって質の高い応募者を確保しやすいというメリットが評価されています。
また、エッセンシャルワーカーなどの業種では、「従業員のエンゲージメント向上」がリファラル採用の大きな魅力となっています。
このように、業種や課題に応じて幅広い効果が期待できる点が、リファラル採用の普及を促進させているのです。
参考:リファラル採用の実施状況に関する 企業規模・業界別統計レポート【最新版】
「縁故採用」は古くからある採用方法です。企業の中でもある程度の発言力をもった社員が、血縁者や知人を推薦するというものです。
企業はその推薦を断りづらいことも多く、推薦された人(採用予定者)の能力は度外視されるため、目的に合った人材が採用出来ない可能性があります。
推薦者が企業の採用方針を理解していない場合もありますし、何より採用予定者の能力を度外視するという点で、リファラル採用とは性質が異なります。
リクルーター制度は、採用に関わる社員(リクルーター)が出身校や学生時代に在籍したサークルなどに出向き、企業が必要とする人材に声をかけていく方法です。
リクルーターは学校などに直接出向くため、若い社員が担当する傾向があります。
新卒の学生を採用したい場合に有効と言える採用方法です。リファラル採用は、このリクルーター制度が原点になっています。
リファラル採用には、従来の採用手法と比較して、以下のようなメリットが4つあります。
企業の特性をよく理解し、企業として信頼できる社員がその人脈を使って採用活動をするので、企業と求職者のマッチング率が上がります。
また、信頼できる人から紹介された企業で働くことで、初期段階から企業に親近感が生まれます。そのような環境は離職率を低下させます。
リファラル採用は大手の求人サイトに広告を出したり、就職フェアにブースを出す必要がありません。
リファラル採用に関わった社員に特別報酬を出すこともありますが、そのコストは一般的な採用活動よりも安くなります。
リファラル採用では「いい職場があれば転職したい」といった、ぼんやりとした転職願望を持っている人を見つけやすくなります。
求職者はリファラル採用を行う社員と個人的なつながりがすでにある状態です。
例えばプライベートで現職に不満を持っていることを話したりして、その会話からリファラル採用がスタートすることもあり得ます。
リファラル採用に関わる社員は、その企業の経営戦略の一部に関わることになります。
重要な仕事を任されているという感覚は、社員の意識を高く保つために必要な要素です。
リファラル採用では採用活動に関わらない社員にも、この採用方法の意味を説明する必要があります。こうしたコミュニケーションは、企業が求める人材のイメージを明確にしてくれるので、企業内の意識が高まります。
リファラル採用を導入する際は、以下のような3つのデメリットを理解し、十分に検討しましょう。
リファラル採用の場合、もともと友人・知人である人を採用することになります。
プライベートでの人間関係が悪化した場合や、どちらかが退職してしまうと企業に残った人が居場所を無くしたように感じて離職してしまう可能性があります。
リファラル採用に関わる社員が事前に十分な教育を受けていない場合、企業が本来必要としていない人材を紹介してしまうことがあります。
具体的に説明すると、求職者は知人や友人である紹介者の社員から仕事の説明や社内の様子を聞いていると、それを信じて入社を決める可能性が高いです。それが正しい認識ではなかった場合、仕事のミスマッチが生まれてしまいます。
また、紹介者が求職者の能力や仕事に求めるイメージを正しく理解していない場合も、仕事のミスマッチが生まれます。
一般論として、人は自分に何か共通点がある人と仲良くなる傾向があります。リファラル採用を長期的に続けると、人材が偏る可能性があります。
ファラル採用で効率的に優秀な人材を確保するには、適切な準備と仕組みづくりが欠かせません。
ここでは、リファラル採用を導入するための具体的なステップを解説します。
まずは、リファラル採用をスムーズに進めるための制度を整備します。
どのポジションでリファラル採用を活用するのか、紹介方法やフロー、選考基準を明確にすることが重要です。
また、紹介者や候補者の双方に負担をかけないよう、シンプルでわかりやすいプロセスを設計しましょう。
ポジションを幅広くカバーする「ポジションサーチ」などの仕組みを導入すると、社員が気軽に紹介できる環境をつくることができます。
リファラル採用を活用するには、紹介者へのインセンティブの設定が効果的です。
適切な報酬を設定することで、社員のモチベーションを高め、紹介の件数を増やすことが期待できます。
インセンティブの相場は、1万円〜30万円程度が一般的ですが、法令を遵守し適切に設計することが重要です。
たとえば、職業安定法第40条では、企業が労働者に対して「賃金や給料の形での報酬」を支払うことは認められている一方、高額な報酬は「報酬供与」とみなされ、違法となる可能性があります。
法令に違反した場合は、同法第65条に基づき6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性もあるため、十分に注意しましょう。
リファラル採用では、社員への周知活動が重要になります。
採用制度の概要やメリット、紹介方法などを具体的に伝え、社員の理解と協力を得ましょう。
具体的には、以下のような方法が有効です。
これらを継続的に行うことで、リファラル採用が自然と社内に定着し、紹介のハードルが下がります。
ここでは、リファラル採用を行う際に注意すべき4つの注意点について解説します。
採用活動をするときには、リファラル採用だけでなく他の採用方法も状況に応じて利用しましょう。
「本当に成果のある採用活動」とは、「採用した人材と企業のニーズが合い、離職率を下げる」ことです。その目的を達成するためには採用方法を1つに絞るのでなく、企業側が間口を広げるように意識することが大切です。
リファラル採用では、社員が「この会社を人に紹介したい」と思える職場環境の構築が重要になります。
いくら高額なインセンティブを設定しても、企業自体に魅力がなければ、紹介は進みません。
社員が日々の業務にやりがいを感じられるような制度を設けたり、経営方針や人事評価の仕組みをオープンにして信頼を築いたりすることが大切です。
リファラル採用はアメリカや欧州では非常にメジャーな採用方法です。
しかし日本ではあまり知られていないため、採用に関わる社員への教育にも時間がかかります。
人事担当者は焦らず、制度運用の改善を繰り返しながら、長期的な視点でリファラル採用を企業内に浸透させていくことが大切です。
日本ではまだ新しいタイプの求人ということもあり、リファラル採用の実施そのものの難易度が高いと言えます。
リファラル制度について従業員への理解促進を促し、対応した仕組みを作り上げることは容易ではありません。
そのため、場合によっては専用ツールの導入も検討した方がよいでしょう。
提供会社によっては、ツールの提供だけではなく、コンサルティングを受けることもできます。
こうしたサービスを利用することでよりスムーズな導入も可能になります。
おすすめのリファラル採用サービスを知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
リファラル採用は正しく運用すれば、採用活動のコストを削減でき、企業にとって優秀な人材を確保することができます。それば離職率の低下につながり、長期的に企業内で人材を育てていくことが可能となります。
日本ではまだまだ定着していませんが、企業としても市場で長期的に生き抜いていくために、取り入れてみる価値がある採用方法と言えます。
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