事業承継とは?成功へと導く進め方やポイント・継承との違いも解説

事業承継とは?成功へと導く進め方やポイント・継承との違いも解説

記事更新日: 2023/02/22

執筆: 高浪健司

事業承継は、事業を次の世代へ引き継ぐことを言います。

しかし、近年では少子高齢化に伴い、中小企業を中心に事業承継が難しくなっており、後継者が見つからないという理由で廃業となってしまうケースが増えています。

一から育てあげてきた会社を、後継者が見つからないといった理由で廃業とするのは非常に残念で、勿体ないことであります。

そこで今回は、事業を上手に次世代へ引き継いでいけるよう、事業承継の課題や方法、計画の進め方などについて、詳しく解説していきます。

事業承継とは

「承継=うけつぐこと」という言葉のとおり、事業承継とは事業(会社)の経営を後継者へ引き継ぐことを言います。

ただし、事業承継の場合は株式を引き継いだり代表者が交代したりするだけではなく、その会社の経営権や経営理念、企業資産や企業イメージ、ブランド、得意先などとの信頼関係、負債などなど、事業に関する目に見えるものだけではなく、目に見えないもの全てに対しても引き継ぐということになります。

そのため、事業承継は単なる相続問題ではなく、会社そのものの存続に関わる極めて重要な取り組みですので、慎重かつ正確に進めていく必要があります。

事業承継と事業継承の違い

事業承継とよく似た言葉で「事業継承」といった言葉があります。一見すると同じように思われがちですが、それぞれ意味合いが異なってきますので、その違いを知っておくと良いでしょう。

承継(しょうけい)

承継は「先の人の地位や事業、精神などを受け継ぐこと」です。

つまり、前任者がこれまで培ってきた「地位・精神・身分・仕事・事業」など、抽象的なものを受け継ぐといった意味合いを持ちます。

継承(けいしょう)

継承は「先の人の身分や権利、義務や財産などを受け継ぐこと」です。

この場合、前任者がこれまで得てきた「経済的価値や資格」など、具体的なものを受け継ぐといった意味合いを持ちます。

承継も継承も「受け継ぐ」といった意味では大きな違いはありませんが、抽象的なものなのか、それとも具体的なものなのか。それぞれ受け継ぐ内容の意味合いが異なってくるわけです。

なお、どちらの用語を使用しても間違いではありませんが、権利や義務を引き継ぐ際の法律用語や税制などでは「承継」が使用されているため、そういった意味でも「事業承継」が適切であると言えるでしょう。

事業承継の主な構成要素

事業承継は、これまで成長させてきた会社の経営資産を後継者へ引き継ぐことを示していますが、引き継がれる資源には主に3つの要素「経営権」、「資産(物的)」、「知的資産」に分けられます。

経営権の承継

経営権の承継というのは「人」にあたる部分で、経営権を後継者へ引き継ぐということを意味しています。

経営権には、経営に関するノウハウや取引先との信頼関係、従業員への指揮命令権など、その決定権は広範囲にわたります。

しかし、多くの中小企業では経営権を現経営者ひとりに集中しているケースが多く、一度にすべてを引き継ぐことになる後継者にとって大きな負担となります。

そのため、現経営者はスムーズな承継ができるよう、あらゆる準備や根回しが非常に重要です。

資産の承継

株式会社の場合、現経営者が保有する株式や資産をそのまま後継者へ引き継ぐというのが一般的です。

ただ、自営業など個人事業の場合は、事業用として現経営者自身で資産を所有しているケースが多く、そういった場合は現経営者が所有している資産を後継者へそのまま引き継ぎます。

なお、資産を引き継ぐ場合、資産状況によっては贈与税や相続税など税金が発生してくるケースがあるため、税金関連で後継者の負担にならぬよう、税負担に考慮した承継方法が必要です。

知的資産の承継

知的資産は、人材、技術、技能、特許(ブランド)、組織力、経営理念、顧客との信頼関係など、いわゆる目には見えにくい経営資源を引き継ぐことを指します。

知的資産は、会社にとっての強みであり非常に価値ある重要なもので、特に中小企業にとって会社は信頼関係で成り立っているところが多々あります。

そのため、次の世代にしっかり承継されなければ経営自体が上手く回らなくなる可能性も十分考えられます。

なお、知的資産を後継者へ引き継ぐためには時間が必要ですので、現経営者は早い段階から承継について考えておくようにすると良いでしょう。

事業承継を行うことの重要性

日本における全企業数のうち、99.7%を占めているのが中小企業であり、雇用においては約3,200万人と全体の約7割もの人たちを雇用しています。

こうしたことから、日本の経済を支えているのは間違いなく中小企業であると言えるでしょう。

しかし近年では、少子高齢化に伴い中小企業の経営者も高齢化してきているという状態であり、加えて後継者が決まっていないなど、後継者の確保が非常に困難であるとしています。

中小企業庁によると、2025年には中小企業・小規模事業者の経営者64%にあたる約245万人が70歳以上になるとしており、さらにこの245万人のうち52%の127万人が、いまだ後継者が決まっていない状態だとしています。

仮にこの状態のまま進んでいくと多くの中小企業で廃業が余儀なくされ、2025年頃までには約650万人もの雇用が失われるとしています。

また、GDP(国内総生産)約22兆円が損なわれる可能性もあるのなど、まさに悪循環に陥ってしまうのです。

特に日本の中小企業には、高い技術や技能を持った優秀な企業がたくさん存在しています。

そうした優秀な企業が後継者問題で廃業していくのは非常に残念なことであり、日本の産業においても大きな損失です。

こうしたことから、事業承継は非常に重要性の高い取り組みのひとつである言えるのです。

事業承継がうまく進まない理由

前述のとおり、少子高齢化が進むなか、多くの中小企業では後継者が決まっていないなど、事業承継に関する問題が大きな課題となっています。

では、そもそもなぜ事業承継計画が進んでいない状態なのでしょうか。その理由を解説していきます。

1. 事業を譲る気がない

そもそも「事業を譲ることを考えていない」というのが、もっとも多い理由となっています。

高齢化が進んでいるとはいえ、人生100年時代と言われているほど心身ともに元気な方が多く、事業承継する気持ちになんてなっていないという高齢経営者が大半です。 

しかし、いつまでも経営に携わっていると、いざ事業承継をしようとしても余裕がなくなり、事業承継をおこなうタイミングを逃してしまうことになります。

スムーズな事業承継を進めるには、準備期間を含め約5年~10年が目安となります。事業承継は早い段階から準備する必要があります。

2. 後継者がいない

事業承継をしたいけど「後継者が見つからない」といった理由も非常に多いです。後継者が決まっていない場合、事業承継に向けた計画を立てるのは確かに難しいです。

しかし、事業承継というのは、親族承継や従業員承継、第三者承継(M&A)など、複数の手法がありますので、よく検討しなるべく早い段階で後継者を決めることが重要です。

3. 事業承継の必要性を感じない

自分がやめると同時に会社もやめる。このように「自社には事業承継をおこなう必要がない」という理由も一定数あります。

会社を自分の代で終わりにするといった理由に至るまでには様々な考えがあってのことだと思いますが、これまで培ってきた会社の価値がすべて失われてしまうということは、非常に勿体ないことです。

このように、事業承継がうまく進んでいないもっとも多い理由を3つ挙げましたが、その他にも「事業に関して将来性に不安がある」「相続税や贈与税などの税金対策」「借入に関しての個人保証がある」など、理由は様々です。

いずれにせよ、事業承継対策は非常に重要で大切なことですので、しっかりと問題に向き合い、時間をかけて確実に計画を進めていきたいところです。

事業承継の具体的な方法

事業承継を進めていくにあたり、具体的な方法としては「親族内承継」「従業員等への承継」「M&A」の3つがあります。

続いて、事業承継の具体的な方法である「親族内承継」「従業員等への承継」「M&A」について、それぞれご紹介していきます。

親族内承継

事業承継を検討する際、もっとも多く行われているのが、会社を息子など親族に継がせる親族内承継です。なお、親族内承継をおこなった場合、以下のメリット・デメリットが考えられます。

親族内承継には、こうしたメリット・デメリットがあると考えられます。

そのため、早い段階から後継者候補を見つけ、意思疎通をおこなっていくことに加え、従業員や取引先などにも理解を得ておくことが重要です。

従業員承継

会社の後継者として子どもなど親族に適切な人物が見つからない場合、親族以外の役員や従業員に事業承継するケースもあります。

世間一般では、事業承継といえば親族といったイメージが強いですが、近年では少子高齢化が進んでいることなどから親族ではなく、従業員等に承継するケースが増えています。

親族への承継ができればそれに越したことはありませんが、親族内承継ができないというケースもあります。

いずれにせよ従業員等への承継は、後継者となる人物をしっかり見極め、早い段階から意思疎通を図ることが重要です。

M&A

親族内や自社内に後継者となる人物がいない場合、M&Aを活用した事業承継あります。M&Aと聞くと、「身売り」や「敵対的買収」などといったネガティブなイメージがあるかもしれません。

しかし、M&Aは売り手企業と買い手企業が納得いくまで交渉し、友好的に進めていくもので「後継者が見つからず、でも廃業は避けたい」などといった場合は、非常に有効的な手段です。

M&Aを活用する場合、企業価値を高めておくことが重要です。

特に企業のブランド力や技術力、ノウハウや特許権など目に見えないものほど非常に価値あるもので、そういった部分が高ければ買い手も見つかりやすくなりますし、売却時も高値になる可能性もあります。

そのため、M&Aを用いた事業承継を考えた時点で、それに向けた準備・行動をすることが重要です。

事業承継に向けた準備の進め方

では実際に事業承継をおこなう場合、どのように準備をしていけば良いのでしょうか。次に事業承継に向けた準備の進め方について解説していきます。

なお、事業承継に向けての進め方として、以下の図のように概ね5つのステップで進めていくことになります。

1. 事業承継に向けた準備の必要性の認識

事業承継は現経営者がその必要性を認識してはじめてスタートします。

また、事業承継には長い時間が必要とされ、一般的に事業承継に要する期間として約5年~10年の期間が必要です。

そのため、事業承継の準備スタート時期は、現経営者が60歳を迎えた時をひとつの目安として捉えておくと良いでしょう。

2. 現状把握「見える化」

後継者へ事業を承継する際には、まず経営状況や課題を洗い出し、会社の現状を正確に把握することが重要です。

具体的には、事業の将来性や経営体制、会社の強み・弱み、経営資源、財務状況などを洗い出し可視化します。

こうして、現在の経営状況や事業承継における課題等を見える化し、しっかり経営課題を整理することが非常に重要です。

3. 経営改善「磨き上げ」

会社の将来や経営に安定性が感じられないと、後継者となる人の承継意欲がなくなると同時に、企業価値の低下は承継に対する選択肢を減らす原因にも繋ります。

そのため、事業の強化をおこない、運営体制を磨き上げ、後継者が後を継ぎたいと思えるような状態へと向上させていくことが重要です。

4-1. 事業承継計画の策定「親族内・従業員承継」

事業承継が親族や従業員の場合、会社の中長期的な事業計画を明確にしたうえで、承継タイミングや必要な資金調達など、具体的な事業承継計画を策定します。

この時、現経営者と後継者が一緒になって事業承継計画を策定するのがポイントです。現経営者と後継者が共同でおこなうことで、会社の経営理念や価値観を伝えやすくなります。

前述のとおり、事業承継は経営権や株式だけでなく 会社の思いなどを引き継ぐことも大切で、特に目に見えない資産ほど会社にとって価値あるものなのです。

4-2. M&A等のマッチング「社外への引継ぎ」

社外への引継ぎをおこなうM&Aの場合、基本的には専門的知識を持った仲介業者に依頼をして、様々なことを相談しながら進めていきます。

検討する内容としては、主に「会社全体を売却するのか」「従業員の雇用維持はどうするのか」といった売却条件です。

また、M&Aによる引継ぎの場合、売却条件に見合った相手先を見つけることが非常に重要なポイントとなります。そのため、じっくり時間をかけ、相談しながら良い相手先を見つけましょう。

なお、親族内・従業員承継の場合とM&Aなど社外への引継ぎ場合は、基本的に同時検討で進めていくのが良いでしょう。

5. 事業承継/M&A等の実行

事業承継計画をはじめ、税務や法務、M&Aに必要な手続きに沿って、それぞれ実行していきます。

ただし、事業承継計画や手続き等を進めていくなか、状況はその時々で変化していくものです。

そうした変化に応じて随時計画を修正するなど、専門家のアドバイスを受けながら常にブラッシュアップしていくことが重要です。

このように、ステップ1から5までが事業承継に向けた準備の進め方となっています。

繰り返しになりますが、事業承継には非常に多くの時間と労力が必要となるため、できるだけ早い段階から動き出すことが重要です。

おすすめの事業承継・M&Aマッチングサイト4選!

社外の人への事業承継・M&Aを検討する場合に利用したいのが事業承継・M&Aマッチングサイトです。

ここでは、おすすめの4選を紹介します。



 
 

中小企業のM&Aなら「事業承継総合センター」


画像出典元:「事業承継総合センター」公式HP

 
 
 

特徴

事業承継総合センター」は中小企業の事業承継型M&Aが得意な事業承継サービスです。

複数の買手企業を保有する仲介会社と複数社連携しているため、買手情報は4,000件以上。仲介会社や買い手企業の比較検討ができます。

また着手金無しの成果報酬制、状況開示要求が可能、クライアントへの重要事項説明の実施など、信頼して事業承継が行えるようにしっかりとした仕組みを備えています。

なおあくまで参考程度ですが、サイトTOPから自社の企業価値診断が無料でできます。

 

機能

・仲介会社や買い手企業の比較検討
・M&Aの品質を担保するための仕組みを整
・着手金無しの成果報酬制

料金プラン

サービス利用手数料:無料:0円

M&A仲介契約料:

売買金額 報酬料率
5億円以下の部分 5%
5億円超~10億円以下の部分 4%
10億円超~50億円以下の部分 3%
50億円超~100億円以下の部分 2%

100億円超の部分

1%

最低成果報酬はM&A仲介会社により異なる場合がございます。

 

 

M&Aと出資戦略を宣伝!「JPMergers」

画像出典元:「JPMergers」公式HP

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「JPMergers」は着手金・中間報酬無料のM&Aマッチングサイトです。仲介業者が介在しないため、低料金かつスピーディーにM&Aを実現できます。

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機能

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料金プラン

着手金・中間報酬は一切かかりません。

譲渡案件は対価の2%または200万円のいずれか高い方、出資案件は対価の1%または100万円のいずれか高い方を成功報酬として支払う必要があります。

オプションとしてM&Aアドバイザーから助言や支援が受けられる『月額制M&Aアドバイザリーサービス』が用意されており、初期登録費用は無料、売り手企業は月額20万円から利用できます。

 

 

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画像出典元:「TRANBI」公式HP

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手数料は無料、買手は成約価格の3%のみと明確な料金形式も魅力です。

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料金プラン

利用手数料:無料

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TRANBIの詳細は下記から確認できます。

 

 

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画像出典元:「バトンズ」公式HP

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地方自治体とも協力しているため、地元に密着した事業の譲渡も安心です。

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機能

・豊富な決済手段
・導入しやすいシステムを実現
・主要なECサービスと連携

料金プラン 

利用手数料:無料

成功報酬料:20万円~

 

まとめ

親族や従業員に承継する方法、株式や事業を売却するM&Aをおこなう方法など事業承継は複数の方法から会社の状況に応じた方法で進めていきます。

なお、事業承継を進めるにあたっては約5年~10年の期間が必要とされ、さらに法律などを伴う専門的な対応もおこなわなくてはなりません。

そのため、専門機関に依頼をし、適切なアドバイスなど専門家の協力を仰ぎながら進めていくことが、事業承継をスムーズに進めていくための重要なポイントです。

新たな世代となり、会社がさらに成長し発展していけるよう、期間にゆとりを持ち、抜かりなく確実な事業承継を実現しましょう。

画像出典元:o-dan

 

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