市場価値とは、簡単に言うとその人材のニーズの高さです。
市場価値が高い人ほど転職では有利ですが、そうでない場合は「なかなか転職先が見つからない」ということもあり得ます。
転職したいと考えるなら、自身の市場価値については意識しておくべきでしょう。
本記事では、市場価値の概要や基準、構成要素や自身の市場価値のチェック方法を紹介します。
市場価値の高め方や今後市場価値が高まると思われる人物像についても紹介するので、ぜひ確認してください。
このページの目次
「市場価値が高い」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。
「専門スキルを持つこと」「唯一無二の経験や実績があること」などと考える人もいますが、これは必ずしも正解ではありません。
市場価値とはどのようなことを表わしているのか、具体的に見ていきましょう。
「市場価値」とは、その市場において求められる経験やスキル、実績、さらにはそれを求める企業のニーズです。
どんなに専門性の高いスキルや希有な経験を持っていたとしても、市場ニーズがないならば「市場価値が高い」とは言いません。
例えば特定のスキルや経験を持つ人について「欲しい」と思う企業が多く、かつその条件を満たす人材が少ない場合、「需要>供給」です。この人材の市場価値は高いといえます。
一方、その条件を満たす人材が多ければ、市場は「需要=供給」あるいは「需要<供給」となります。市場に置いて供給過多となれば、市場価値が高いとはいいません。
市場価値を決めるのは、その市場における需要と供給のバランスなのです。
市場価値の基準は、そのときの市場のニーズによります。全ての市場に共通する価値基準はなく、絶対的な数値もありません。
とある市場で「市場価値が高い」とされた人が別の市場に行くと、驚く程低評価だった…、このようなケースは非常によくあることです。
市場価値の基準を考えるときは、まず自身がどの市場にいて、どのような職に就きたいのかを明確にする必要があります。
その上で、その市場では何が求められているのか、どのような経験やスキルが重視されているかを知らなければならないのです。
人材の市場価値は、多面的に評価されます。転職者の市場価値を決めるものとして、5つの構成要素を紹介します。
仕事上、必要なスキルが身についているかどうかは非常に重要です。
技術職なら難易度の高いスキルほど高く評価されます。あるいは事務系なら基本的なPC操作やニーズの高いソフトが使いこなせることが望ましいでしょう。
なお、スキルにはコミュニケーションスキルやビジネスマナーも含まれます。
社会人として最低限必要なことができていない場合、たとえ仕事ができたとしても、マイナス評価を受けることもあります。
転職先で即戦力として働けるかどうかを測る上で、実務経験は重要です。
どのような仕事を手掛けどのような結果を出したのか、具体的に示せることが望ましいでしょう。
一般事務系の仕事だと、アピールできるポイントがないと感じるかもしれません。しかし、「ワークフローを改善して業務を効率化した」「データを分かりやすくまとめて分析した」などの経験は、あらゆる業務で重宝されます。
どのような業務に就いていたにせよ、仕事で得た経験をどのように生かしていけるかを述べられれば、それは立派な実務経験となります。
前職が応募中の企業と同業種なら、即戦力と見なされます。求人中の企業ニーズに合いやすく「市場価値が高い」と判断されるでしょう。
ただし、あまりにもたくさんの企業を渡り歩いている場合、「長続きしない人」という印象です。
職歴が同業種ばかりなら「キャリアアップのため」と言えますが、異業種の場合は「なぜこんなに転職しているんだろう」と思われるかもしれません。
辞めたり勤めたりを繰り返していると、市場価値が下がることもあるでしょう。
中長期的なキャリア目標を持っている人ほど、転職では高く評価されます。やりがいや前向きな姿勢が評価され、市場価値向上につながるでしょう。
このとき、キャリアプラン達成のための具体的努力や計画をアピールできると、なお良しです。
中長期的な目標と併せて、今取り組んでいることについても紹介できるようにしておきましょう。
中途採用なら、学歴はさほど重視されない傾向にあります。実務経験やスキルがあれば、学歴はほぼ無意味といえるでしょう。
一方、新卒からすぐ転職する場合や第二新卒の場合、実務経験やスキルがありません。学歴を見られることは多くなります。
また、職種によってはどのような学校を出ているのかで適性を推測することもあります。
専門性の高い職に転職する場合は、職種に合った学校を出ている方が、市場価値が高いと見なされやすいでしょう。
転職のとき、自分の市場価値を考えることは非常に重要です。しかし、あまりにも市場価値ばかりに気を取られるとマイナスの効果もあります。
自分の市場価値を考えるとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
自分の市場価値を知ることで、今の自分に何が足りないのか、どこを補えば良いのかが分かります。
スキルアップ・キャリアアップの方向性が良く分かり、具体的な行動につなげやすくなるでしょう。
また、一つの会社に長く留まっていると、「社内の評価=自分の価値」と誤解しがちです。しかし、実際のところ、社内の評価と市場価値は必ずしも一致しません。
社内ではあまり評価をされない人も、外から見れば非常に優秀で市場価値の高い人だった…ということもありうるでしょう。
この場合、市場価値を知ることが自分の真価を発見するきっかけになります。
自分の市場価値は重要ですが、それで全てが決まるわけではありません。
あまりにも市場価値を重視し過ぎると、あらゆることを市場価値のみで判断してしまう恐れがあります。
そもそも、市場価値のないスキルや経験が全てムダというわけではありません。
キャリアアップやスキルアップのためだけに本当にやりたいこと・叶えたいことを諦めるのは本末転倒といえます。
市場価値はあくまでもそのときの市場ニーズであり、時々で変わるあいまいなものです。決して絶対的なものではないと心得ておいた方がよいでしょう。
転職では、やはり市場価値の高い人が有利です。業種や職種によって違いがあるものの、「市場価値が高い」と言われる人には一定の特徴があります。
どのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。
前述した市場価値の構成要素である「スキル」「実務経験」「前職・職歴」「キャリアプラン」「学歴」は、いわば企業のニーズです。
これらの要素をバランス良く保有している人が「市場価値の高い人」と言われるでしょう。
ただし、これらの要素のうちどれが重視されるかは、転職する企業や業界によります。
専門性の高い業種なら実務経験や職歴が重視されるかもしれません。
一方で営業系やコンサル系といった対人スキルが重視される業界なら、経験よりもコミュニケーション能力やスケジュール管理能力などの方が重視されることもあるでしょう。
市場価値の基準は、年齢によっても異なります。一般に、それぞれの年代に求められる価値は以下の通りです。
20代はまだ社会人になって数年という人が多く、実務経験やスキルはさほど重視されません。
知識習得への積極性がある人や仕事に対してポジティブな姿勢を見せる人、柔軟な思考ができる人などの市場価値が高くなります。
一方、30代になると、すでにさまざまな仕事をこなしているはずです。それなりの実務経験が求められるのはごく一般的で、実績が重視されます。
多様な経験・実績のある人ほど市場価値が高いと評価されるでしょう。
また、40代は管理スキルが必要です。求人内容も管理職やマネージャー職が多くなります。
ビジネス基礎力や経験・実績は「ある」という前提になっている場合が多く、それ以上の人的能力が重視される傾向にあるのです。
自身の市場価値を知る方法として、「転職活動をする」「転職エージェントに登録してみる」などの方法があります。
自分の市場価値を正しく見極めるには「第三者」への情報開示が必要です。
転職活動は、自身の市場価値を知る上で非常に重要です。
履歴書に職務経歴やスキル、特技などを全て書き出すだけでも、自分を客観視する良いチャンスとなるでしょう。
今の自分の情報を全て書き出した履歴書で転職活動を展開すれば、市場において自分がどのようなポジションにいるのかすぐに分かります。
また、本格的な転職活動をする前に求人サイトや求人用のSNSなどを活用するのもおすすめです。
履歴書を元にプロフィールを埋め、オファーを待ったりめぼしい会社に声を掛けたりしてみてください。
このときの企業の反応ややり取りの様子で、自分の市場価値を計りやすくなるでしょう。
転職エージェントとは、企業と求職者をマッチングさせるサイトです。
求職者が自分でプロフィールを登録すると、専門のエージェントがスキルや経験をチェックし、マッチする仕事を紹介してくれる仕組みです。
このとき市場価値が高ければ高単価・好条件の案件を提案されます。一方、そうでない場合は、あまり満足のいく仕事は紹介してもらえないかもしれません。
転職エージェントでは単価等まできちんと提示されるので、「今の自分の価値」がリアルに分かります。
先の予測が不可能な今の時代は「VUCA(ブーカ)時代」とよばれます。これは、次の4つの単語の頭文字を取ったものです。
社会環境は目まぐるしく変化し、どのように変わっていくのかは誰にも予想できません。
これから先、どのような人が「市場価値が高い」と言われるようになるのでしょうか。VUCA時代に求められるスキルを参考に見ていきましょう。
過去の事例や成功にしがみつかない人、柔軟な思考ができる人は、市場価値が上がります。
移り変わりの激しいVUCA時代では、予測不可能なことも起り得ます。過去のデータや実績が参考にならなくなれば、自分で考えて行動するしかありません。
これからの時代、問題解決のための論理的な思考ができるのはもちろん、正しいといわれることまで「なぜだろう」と考えられる人こそが、市場価値の高い人です。
変化の目まぐるしい時代だからこそ、意志決定・行動の早い人が求められます。市場の需要は高く、市場価値が上がるでしょう。
とはいえ、ただやみくもに意志決定・行動すればよいわけではありません。
適切に意志決定するためには、変化の様子を見て風向きを判断できること、大量の情報から「何が本当に重要な情報なのか」を見極めることが必要です。
これは普段から市場にアンテナを張り巡らし、変化の様子を常に予測していなければできません。
VUCA時代には、視野をより広く持てる人が求められます。一つの価値観に固執せず多様な価値観を受け入れられる人が、市場価値の高い人です。
変化の読めない時代には、自分の持つ価値観が根底から覆されるケースもあり得ます。このときそこで立ち止まるのではなく、受け入れて前に進める懐の広さが必要です。
また、今やビジネスをグローバルに展開する企業は珍しくありません。多国間でやり取りすることが増える上、社員も多国籍化してくる可能性はあります。
このとき、自分と異なる文化背景や思考を持つ人と適切にコミュニケーションを交わすには、相手の価値観を尊重して受け入れることが必要です。
どのような相手とも柔軟にコミュニケーションを取れる人は、どこに行っても重宝されます。
「市場価値を高めたい」と思った時は、自分が今後どのようになっていきたいかを考えると、具体的な方法が見えやすくなります。
自分の市場価値を高める上で取り組んでいきたいことを紹介します。
市場価値を高めるには、その市場で評価されるスキルや経験を身に付ける必要があります。
まずは将来どのようにキャリアを積み上げたいかを明確にし、その上で必要なスキルや経験を割り出していきましょう。
キャリアプランは、転職市場で市場価値を決める判断基準の一つです。「将来このようになりたい」とはっきり語れる人ほど高く評価されやすく、転職も有利になります。
将来のビジョンをイメージすれば、足りないスキルが分かったのではないでしょうか。次にすべきことは、不足しているスキルを得ることです。
たとえすぐには取得できないスキルだとしても、まずは取り組んでみましょう。
「現在勉強中です」「取得予定です」などと言えれば、それだけでも市場価値を高めやすくなります。
また、どのようなスキルを積んでいけばよいか分からない人は、求人情報をチェックするのがおすすめです。
希望する職種や業種などを見れば、「このような人が欲しい」と記載してあります。今の自分のスキルと見比べて、足りないものをピックアップしてください。
即戦力を期待する会社なら、実績があることは大きなアピール力を持ちます。
企業の求めるレベルの実績があれば、これだけで「市場価値が高い」と判断されるでしょう。
「作業工程を見直して、業務効率を上げた」「データの集計方法を見直した」…、自分で週単位、月単位で目標を立てていき、達成すればそれが実績です。
日々自分の取り組みや進化を記録していくことが自身の市場価値を高め、転職時のアピール材料となるでしょう。
市場価値は、人材の需要と供給のバランスで決定します。
市場価値の判断基準はスキルや経験、職歴などですが、どのようなスキル、実績を求めるかは業種や職種によってまちまちです。
その市場において自身の市場価値を高めたいなら、何が求められているのかを明確にしておく必要があるでしょう。
自身の市場価値を高められれば、転職では俄然有利となります。
まずは転職活サイトに登録などをして自身の市場価値を知り、その上で不足しているスキル・実績を補ってみてはいかがでしょうか。
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