出店戦略やエリアマーケティングには、その地域の人口や性別・家族構成といった特性、競合の出店状況などを精査する必要があります。
商圏分析ツールは、そうしたデータの分析や地図上でのシミュレーションを行うことができ、精度の高い出店・販売戦略を立てることに役立つツールです。
この記事では、商圏分析ツールについて、その仕組みや機能を解説し、さらにおすすめのツールに関しても比較・紹介します。
このページの目次
商圏分析ツールとは、出店・エリアマーケティング戦略に必要な地域の人口、人流、各種統計データなどを地図上で分析できるツールです。
出店を予定している地域を選択して、地図上で商圏をシミュレーションする、レポートで特長を分析する、需要を予測するといった機能が備わっています。
情報をもとにニーズを把握することで、出店・販売戦略の精度を向上でき、長期的には売上や営業利益自体の向上にも役立つツールです。
(税抜価格)
画像出典元:「MarketPlanner GIS」公式HP
「MarketPlanner GIS」は、20年近い運営歴を持ち、1,200社を超える幅広い企業で利用されてきた実績豊富な商圏分析ツールです。
デスクトップ型のGIS(地理情報システム)で機能が充実しており、さまざまな形式の商圏作成・分析が可能なのが特長。
利用できるデータも国勢調査、商業統計、人口推計データなど幅広く、自社データを取り込んだ分析も可能です。
レポート機能も充実しており、簡単な操作で指定した地域の人口や年収、介護や診療など特定のニーズの状況などをエクセルで出力することができます。
実績、機能ともに充実しており、さまざまな企業で利用しやすいツールと言えるでしょう。
詳細に関してはお問い合わせが必要です。
画像出典元:「楽商地図」公式HP
「楽商地図」は、商圏分析に必要十分なシンプルな機能を備えた、使いやすさに強みを持つGIS型ツールです。
レポート機能が大きな特長で、地域を指定するだけで人口、世帯などの情報をグラフや表に整理したエクセルファイルを出力し、地域の特性を把握可能。
そのほかにも、簡易な商圏作成や統計データ・自社データを地図上にオーバーレイして視覚的に分析する機能などもひととおり備わっています。
比較的シンプルな構成ですが使い勝手はよく、かつ必要十分な機能をカバーしているため、はじめての商圏分析ツールにも適しています。
料金プランは買い切り型で、無期限で利用できる通常ライセンスと、3ヶ月ライセンスが用意されています。
なお、3ヶ月ライセンスから通常ライセンスへと移行する場合は、差額での購入が可能です。
通常ライセンス | 3ヶ月ライセンス | |
ライセンス料金 | 165,000円 | 41,800円 |
(税込)
画像出典元:「Genavis 商圏分析」公式HP
「Genavis 商圏分析」は、製造、小売、金融、広告などの幅広い業種の約800社、9,500ライセンスで導入されてきた実績豊富なツールです。
ユーザーニーズを取り入れた操作パネル設計によるスピーディーな操作感が大きな特長で、Webからでもストレスなく使えます。
また、機能面では、商圏作成、データ分析、商圏レポートの作成など、必要十分な内容をカバー。
1947年の創業以来、空間情報に関わるサービスを提供し続けてきたノウハウを活かしたコンサルティングも魅力で、導入後のアフターフォローも充実しています。
単なるツール導入ではなく、成果まで見据えて導入したい企業に適しているでしょう。
インターネット経由で利用するASP版の料金は以下のとおりです。
その他の利用形態に関してはお問い合わせが必要です。
Genavis 商圏分析 ASP版 | ||
初期費用 | 200,000円 | |
月額費用 | 1 ID | 50,000円 |
2〜5 ID | 100,000円 | |
6〜10 ID | 150,000円 | |
11〜15 ID | 200,000円 | |
16〜20 ID | 250,000円 | |
21〜25 ID | 300,000円 | |
26〜30 ID | 350,000円 | |
31 ID以上 | 要問合せ |
(税抜)
画像出典元:「ArcGIS Business Analyst」公式HP
「ArcGIS Business Analyst」は、豊富なデータラインナップと、柔軟なレポートや可視化方法が魅力のGISツール。
最新の人口統計・住所データに加えて、オプションで人流やSNS投稿、地形などのデータが利用可能です。
そうしたデータをインフォグラフィックスをはじめとするさまざまな形式で可視化して分析することができます。
さらに、処理性能の高さや、利用シーンに合わせた3種類のアプリケーションラインナップ(デスクトップ、Web、モバイル)も特長。
処理性能の高さや機能面を重視する企業にはうってつけのツールと言えるでしょう。
ArcGIS Business Analyst Pro Subscription Basic:参考価格990,000円*(税込)
詳細に関してはお問い合わせが必要です。
なお、21日間の無料トライアルが利用可能です。
*価格は販売代理店である株式会社 東京地図研究社が公式HPに掲載している定価情報を参考にしています。
画像出典元:「MarketAnalyzer」公式HP
「MarketAnalyzer」は、導入企業2,000社以上、大手企業でも多数導入と、業界でもトップクラスの実績を誇るツールです。
洗練されたUI、直感的な操作、高い処理速度を兼ね備えているため、どんな企業でも使いやすいのが特長。
機能面も、基本の商圏作成、データ分析やレポート出力に加えて、クラスター分析や相関分析、シェア集計など発展的な分析もカバーしています。
また、利用可能な統計データが多く、サポートが充実しているのもポイント。
機能と実績に関しては他社と比べてもかなり優れているため、コスト面のハードルさえクリアできるなら第一の選択肢になるでしょう。
機能および利用するライセンス数によって料金が変化します。
別途トレーニング費用として10万円が必要です。
また、2週間の無料トライアルが利用可能です。
標準版 | ビッグデータ対応版 | ||
初期費用 | 550,000円 | ||
年間利用料 | 1ライセンス | 1,200,000円 | 1,800,000円 |
5ライセンス | 2,400,000円 | 要問合せ |
(税抜)
画像出典元:「jSTAT MAP」公式HP
「jSTAT MAP」は、総務省統計局が無償で提供するGISツールです。
Web上から利用可能で、かんたんな操作で都道府県、市区町村、地域、メッシュレベルで統計情報を表示して分析することができます。
商圏作成や特定地域のレポート出力も可能で、商圏調査やエリアマーケティングにも活用できるため、商圏分析ツールのファーストステップにもおすすめです。
初期費用:無料
月額費用:無料
画像出典元:「FalconEyeGIS」公式HP
「FalconEyeGIS」は、GISを研究するGISソフトラボが無償で提供しているツール。
ベーシックな機能構成で使いやすく、おもに地図上での描画やデータ表示などができます。
官公庁や各都道府県の統計データをFalconEyeGISに読み込んで利用でき、ユーザーデータも登録可能です。
本格的な商圏作成やレポート系の機能は備わっていないため、他ツールと組み合わせて使うのが良いでしょう。
初期費用:無料
月額費用:無料
画像出典元:「RESAS」公式HP
「RESAS(リーサス)」は、内閣府および経済産業省が提供する「地域経済分析システム」と呼ばれる地図情報ツールです。
Webブラウザから無料で利用可能で、人口、産業、企業活動、消費、観光等など、テーマ別に用意されたマップから詳細なデータを表示・分析することができます。
自治体や地方創生で使われることが多く事例も公開されているため、関連する業種での導入であればより使いやすいでしょう。
初期費用:無料
月額費用:無料
画像出典元:「QGIS」公式HP
「QGIS」は、無償、オープンソースで提供されている海外製GISツール。
地図上へのデータ表示や情報編集がメインの機能ですが、アップロードしたデータの解析やプラグインを活用したカスタマイズなど、柔軟な使い方も可能です。
データは自前でアップロードする必要があり、自由度が高い分操作にも習熟が必要ですが、無料ツールとしては高機能なため、使いこなせればコスパは良いでしょう。
初期費用:無料
月額費用:無料
画像出典元:「Knowns Biz」公式HP
「Knowns Biz(ノウンズ ビズ)」は、ノウンズ株式会社の提供するデータ分析ツールです。
独自の分析フレームワークで、従来の分析では見逃しがちな新たなビジネスチャンスを可視化します。
また、億単位の膨大なデータから、属性データと消費者意識データを掛け合わせた高度な分析で、顧客の潜在ニーズや行動を深く理解することができます。
さらに、料金体系は、利用アカウント人数によるため月額制ですきなだけデータの活用が可能です。
Knowns Bizの料金プランは下記の通りです。
Lightプラン | Basicプラン | Proプラン | |
初期費用 | 10万円 | ||
月額利用料 (12ヶ月間契約) |
10万円 | 20万円 | 50万円 |
月額利用料 (6ヶ月間契約) |
11万円 |
22万円 |
55万円 |
アカウント利用人数 | 1〜3 | 1〜10 | 1〜40 |
分析機能※1 (オリジナルジャンル) |
× | ○ | ○ |
カジュアルリサーチの 自動ダッシュボード |
× | ○ | ○ |
オプション※2 特化型分析(CM分析) |
○ | ○ | ○ |
(税表示なし)
※1 オリジナルジャンル 独自に選んだ自社と競合だけでのポジショニングマップなども制作可能。
※2 特化型分析 より専門的に分野を絞った分析。
また、下記の機能もオプションサービスとして提供されています。
サービスの無料お試しも可能なので、導入前に利用してみましょう。
画像出典元:「MAP-STAR Web診療圏分析」公式HP
「MAP-STAR Web診療圏分析」は、病院・医院に特化した商圏分析ツール。
住所と診療科目を設定するだけ、わずか数秒で、予想来院患者数や人口構成、周辺の病院・医院の状況がひと目で分かるのが大きな特長。
データも医院、歯科医院、人口などの内容があらかじめ用意され、自動更新されるためとにかく手間いらずです。
月額17,000円から利用可能と有償の商圏分析ツールとしては安価なため、はじめやすいツールでもあります。
利用できるデータや機能が異なる3プランが用意されています。
また、2ユーザー目以降は割安です。
1週間の無料トライアルを利用できます。
ブロンズ | シルバー | ゴールド | ||
初期費用 | 1ユーザー目 | 50,000円 | 250,000円 | 300,000円 |
2ユーザー目以降 | 10,000円 | 50,000円 | 60,000円 | |
月額利用料 | 1ユーザー目 | 17,000円 | 27,000円 | 30,000円 |
2ユーザー目以降 | 6,800円 | 10,800円 | 12,000円 |
(税抜)
画像出典元:「SEARCHBOX」公式HP
「SEARCHBOX」は、かんたん操作とリーズナブルな価格が特長のツール。
ひとつの商圏を作成・分析するのに必要なのは数クリックだけで、地域を指定すれば10秒で商圏情報を調査でき、豊富なデータを表示できます。
クラウド型のためマルチデバイスでどこでも利用可能で、月額も13,200円からと業界トップクラスの低価格と、利用のハードルが低いのも魅力です。
利用できる機能が異なる2プランが用意されています。
なお「社外利用」とは、SEARCHBOXを利用して自社以外の企業等への提案をおこなう場合の契約形態です。
SearchBox | SearchBox Plus | |
社内利用価格 | 1ID 13,200円/月 | 1ID 26,400円/月 |
社外利用価格 | 5ID 792,000円/年 | 要問合せ |
(税込)
画像出典元:「KDDI Location Analyzer」公式HP
「KDDI Location Analyzer」は、auのスマホデータを活かしたユニークなデータ活用が特長のツールです。
auのスマホ契約ユーザーの端末データ(同意済み)から位置情報を取得して活用しているため、居住人口だけでなく、通行人口・滞在人口も取得可能。
他ツールと異なり、統計データや利用企業自身で用意するデータだけでなく、より新鮮で正確なデータを活用できるため、精度の高い商圏分析を可能にします。
年間契約のみで、利用ID数によって料金が変化します。
また、2週間の無料トライアルが利用可能です。
1ID | 〜5ID | 〜10ID | |
初期費用 | 要問合せ | ||
年額費用 | 2,640,000円/年 | 5,280,000円/年 | 7,920,000円/年 |
(税込)
出店予定地域の地図上に商圏のオブジェクトを作成し、データと組み合わせて視覚的な調査ができます。
ツールにもよるものの、距離による単純な円形商圏はもちろん、電車や自動車での到達可能圏、シェアを基準にした商圏なども作成可能です。
作成した商圏をもとに、ニーズの大きい地域の特定、売上の予測などを行うことで、正確な出店戦略を立案することができるようになります。
官公庁の統計データや、自社で蓄積した店舗データ、競合データなどを地図上に表示することができます。
多くのツールでは、国勢調査を中心とした人口関連のデータ、商業統計による事業所データなどがあらかじめ搭載されており、かんたんに表示可能です。
表示方法も、値による色分けやグラフ表示、インフォグラフィックなどさまざまで、作成した商圏と組み合わせることで、より正確な分析を可能にします。
特定の地域を指定して、人口や需要予測などを一覧化、グラフ化して出力することができます。
わざわざ商圏を作成し、統計データと組み合わせて確認しなくても、数クリックで商圏の特長を把握することができる機能です。
はじめての商圏調査ツール導入なら、まずはこの機能が充実したツールを選ぶのも良いでしょう。
商圏分析ツールの基本機能は、商圏の作成、データの表示・分析、レポート出力がメインですが、ツールによって細かい仕様などが異なります。
商圏作成なら円形商圏以外にも対応しているか、データ分析ならハフモデル分析、クラスター分析などに対応しているかなどをチェックしましょう。
また、デスクトップ版、Web版、アプリ版など導入形態によって機能や処理性能が異なるため、こちらも確認しておきましょう。
多くの商圏分析ツールには統計データが標準されていますが、その内訳がツールによって異なります。
国勢調査、商業統計、経済センサス、昼間人口などがメインですが、ツールによっては独自のデータを提供しているケースもあります。
ニーズに合わせて最適なデータを提供しているツールを選ぶことが重要です。
また、データの更新頻度にもバラつきがあるため、できるだけ新鮮なデータを搭載しているツールを選びましょう。
商圏分析ツールの費用はかなり幅が広く、月額1万円強で利用できるものから10万円以上かかるものまでさまざま。
商圏作成や分析機能が充実している高機能なツールは基本的に高額な傾向にあるため、ニーズがはっきりしていれば、機能を絞ったツールを選ぶのも良いでしょう。
また、無料トライアルを提供しているツールや、無料で利用できるツールもあるため、まずは触ってみてから検討しても良いでしょう。
商圏分析ツールは、使いこなせば出店やエリアマーケティングの精度を大きく向上できる有用なツールです。
機能や利用できるデータ、価格などツールによってバラつきが大きいため、自社にあったツールを選ぶことが重要。
まずは業務の棚卸しやニーズの明確化、要件定義をして、必要十分な構成のツールを選びましょう。
画像出典元:O-dan