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有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化され、「人への投資」が企業価値を左右する重要なテーマとなっています。
しかし、「何から始めればよいか分からない」と頭を悩ませている人事責任者や経営層の方も多いのではないでしょうか。
人的資本経営サービスには、人材データの収集・分析や開示業務を効率化する「システム」と、人材戦略の策定から実行まで支援する「コンサルティング」があります。
本記事では、人的資本経営サービスを導入するメリットや失敗しない選び方のポイントを徹底解説。
さらに、おすすめのサービス11選を「システム」「コンサルティング」に分けて比較・紹介します。
自社に最適なサービス選びの参考にしてください。
目次
人的資本経営とは、従業員の知識やスキル、経験を企業の資本と捉え、人材への投資を通じて企業価値の向上を目指す経営手法です。
「人が育てば企業も育つ」という観点のもと、個人のパフォーマンスを最大化させることが、結果的に企業の競争力強化へと還元される好循環を生み出します。
参考:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
人的資本経営が注目を集めている背景には、企業を取り巻く環境の変化や社会的要請があり、主に以下の3つの要因が挙げられます。
日本では2023年3月期決算より、「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正に伴い、有価証券報告書を発行する上場企業など約4,000社を対象に、人的資本情報の開示が義務化されました。
この改正により、有価証券報告書内に「サステナビリティに関する考え方及び取組」という項目が新設され、主に以下の情報を記載することが求められています。
さらに2026年3月期からは、同府令の改正により人的資本情報の開示要件が拡充されました。
単なる方針や実績数値の報告にとどまらず、「企業戦略と関連付けた人材戦略と、それを踏まえた従業員給与等の決定方針等」の開示が新たに求められるようになっています。
このように企業には、自社の人材戦略や多様性への取り組みを経営戦略と結び付け、その成果を投資家や社会へ分かりやすく示すことが欠かせません。
参考:金融庁「サステナビリティ情報の開示に関する特集ページ」
参考:金融庁「『企業内容等の開示に関する内閣府令』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」
参考:金融庁「『人的資本可視化指針(改訂版)』の公表について」
ESG投資を重視する投資家や企業が増加していることも、人的資本経営が求められる背景の1つと考えられます。
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス・企業統治)」の頭文字を取った言葉で、企業の持続的な成長や社会的価値を評価するための指標です。
人的資本は、ESGの中でも特に「S(社会)」と「G(ガバナンス)」に深く関わるため、投資家は、次のような非財務情報を重視して投資先を評価しています。
つまり、ESG投資からの資金調達を有利に進め、社会的な信頼を獲得して企業価値を向上させるためには、「人への投資」である人的資本経営の実践と情報開示が、企業の持続的な成長を支える重要な要素となります。
少子高齢化による労働人口の減少を背景に、シニア人材や外国人材など、多様な人材の活用が求められています。
また、リモートワークや時短勤務の普及によって、働き方の選択肢も広がっています。
こうした変化により、従来の画一的な人材管理だけでは、一人ひとりの能力や強みを十分に活かしきれなくなりました。
さらに、DXの進展によって定型業務の自動化が進む中、企業の競争力を左右する要素として、人材が生み出す付加価値やイノベーションの重要性が高まっています。
そのため企業には、従業員一人ひとりの能力や状況に応じたマネジメントを行い、個々のパフォーマンスを最大化する人的資本経営への取り組みが欠かせません。
人的資本経営の推進や情報開示には、多くの工数や専門知識が必要です。
人的資本経営サービスを活用することで、以下のようなメリットを得られます。
従業員のスキルや評価、勤怠情報などの人事データは、複数のシステムやExcelに分散して管理されているケースが少なくありません。
人的資本経営サービスを導入すれば、散在するデータを一元管理できるようになり、必要な情報の抽出や集計を効率化できます。
人事部門の集計作業にかかる負担を大幅に削減することが可能です。
2023年から有価証券報告書における人的資本情報の開示が義務化され、企業には「女性管理職比率」や「男女間賃金格差」などの指標を正確に算出・開示することが求められています。
多くの人的資本経営サービスには、ISO30414や政府の推奨項目に対応したテンプレートや自動集計機能が搭載されています。
手作業によるミスを防ぎながら、効率的かつ正確に開示準備を進めることが可能です。
人的資本経営サービスには、組織診断サーベイやパルスサーベイ機能を備えたものも多くあります。
従業員のコンディションや組織課題を可視化することで、データに基づいた人材配置や育成施策を実行しやすくなります。
従業員一人ひとりの能力を活かせる環境づくりが進み、エンゲージメント向上や離職防止にもつながります。
人的資本情報を適切に開示し、「人への投資」の成果を示すことは、ESG投資を重視する投資家からの評価向上につながります。
また、採用活動においても、人材育成や働きやすい環境づくりへの取り組みを客観的なデータで示せるため、求職者からの信頼獲得に効果的です。
人的資本経営サービスは、自社の課題に合わせて適切なサービスを選ぶことが重要です。
ここでは、失敗しない選び方のポイントを解説します。
人的資本経営サービスは、人的資本を可視化できる「システム」と人的資本経営の推進を支援する「コンサルティング」の2つに分けられます。
まずは、自社にはどちらのサービスが必要かを明確にしましょう。
以下のような課題を抱えている企業には、人的資本の可視化に強いシステムの導入がおすすめです。
可視化システムの代表例として、社員の基本情報やスキル、評価などのデータを一元管理できる「タレントマネジメントシステム」があります。
また、すでに人事データを蓄積している企業には、人的資本開示に特化したシステムもおすすめです。
有価証券報告書などで求められる指標を自動で集計し、ダッシュボード上で可視化できるため、情報開示にかかる工数や担当者の負担を大幅に削減できます。
以下のような課題を抱えている企業には、コンサルティングサービスの導入がおすすめです。
2026年3月に公表された「人的資本可視化指針(改訂版)」により、企業には単に定められた数字を開示するだけでなく、「自社の経営戦略といかに連動しているか」というストーリー性や独自の指標設定がより強く求められるようになりました。
しかし、いざ自社独自の人材戦略を完璧に描こうとすると、事業が複雑でどこから手をつければいいか分からないと手が止まってしまう企業も少なくありません。
コンサルティングサービスは、こうした人的資本経営の高度化に悩んでいる企業に最適です。
専任のコンサルタントやデータサイエンティストが伴走し、人的資本戦略の立案から人事制度の設計、情報開示の支援まで幅広くサポートしてくれます。
また、すでにタレントマネジメントシステムなどを導入しているが、うまく戦略や開示に活かせていないといった場合には、既存システムの効果的な活用方法を含めた実践的なアドバイスを受けることも可能です。
「可視化システム」か「コンサルティング」か、自社が進むべき方向性が定まった後は、以下の4つの視点も踏まえて最適なサービスを比較検討しましょう。
人的資本経営の推進は人事部門にとって大きな負担となるため、自社のリソース不足を補ってくれる手厚いサポートがあるかが重要です。
システムの場合は、初期設定の支援や機能アップデート、専任担当者による運用の伴走体制があるかを確認しましょう。
コンサルティングの場合は、サポートのカバー範囲をあらかじめすり合わせておくことが大切です。
戦略の設計から情報開示、現場への定着支援まで包括的に対応してくれるのか、あるいは特定の課題に特化した部分的な支援なのかなど、あらかじめ確認しておきましょう。
システムを導入する場合、人的資本の可視化にはあらゆる人事データの集約が不可欠です。
労務管理や給与計算、採用管理など、すでに社内で運用している既存システムからスムーズにデータを統合できるかを必ず確認しましょう。
データの連携が手軽にできるシステムを選ぶことで、データ収集の手間やミスを大幅に削減できます。
企業規模や成長フェーズによって、適したサービスは異なります。
特にスタートアップや中小企業の場合は、将来的な事業拡大や従業員数の増加を見据え、登録できる人材データ数や機能を柔軟に拡張できるスケーラビリティに優れたシステムを選定しましょう。
また、コンサルティングを利用する場合も、事業環境の変化やビジネスの方向転換に合わせて柔軟に戦略を見直してくれるパートナーを選ぶことが重要です。
人的資本経営サービスの料金は、システムの規模やコンサルの支援範囲によって大きく異なります。
導入にかかる費用相場は以下の通りです。
| 支援範囲 | 料金の目安 | |
| 可視化システム | 人事データの集約、各種指標の自動算出・管理など | 50万〜300万円ほど (初期費用+月額料金 の年間トータル) |
| コンサルティング (スポット支援) |
特定の指標設定、部分的なアドバイスや実行支援など | 100万〜500万円ほど |
| コンサルティング (ワンストップ支援) |
経営戦略との連動、人事制度の再設計を含む包括的支援 | 1,000万円以上 (数百万円の初期費用 +年間契約料) |
※従業員規模やカスタマイズの要件によって変動します。
価格だけで判断せず、自社の課題解決につながるかという視点で費用対効果を見極めることが重要です。
▼ タレントマネジメントシステムについてもっと知りたい方はこちらもご覧ください。
自社に最適なサービスがひと目でわかるよう、おすすめの人的資本経営サービスを一覧で比較しました。
機能や特徴、料金などの詳細については、次章で詳しく解説していきます。
| タイプ | トライアル | サポート体制/支援範囲 | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
SmartHRタレントマネジメント
|
可視化システム
|
❌
|
初期導入サポート・運用サポート
|
開示用プリセットレポートを搭載
|
タレントパレット
|
可視化システム
|
⭕️
|
専任サポート・コンサルティング
|
ISO30414のテンプレートを標準搭載
|
HRBrain
|
可視化システム
|
⭕️
|
導入・運用・自走支援
|
人材データと財務指標を可視化
|
One人事[タレントマネジメント](旧スマカン)
|
可視化システム
|
⭕️
|
支援プログラム・伴走支援
|
労務・給与からタレントマネジメントまでワンストップ管理
|
パナリット
|
可視化システム
|
要問合せ
|
カスタマーサクセス
|
約300種類の指標を標準搭載
|
Human&Human
|
可視化システム
|
⭕️
|
専任サポート
|
データ収集から整形まで自動化
|

画像出典元:「SmartHRタレントマネジメント」公式HP
「SmartHR(スマートエイチアール)タレントマネジメント」は、人事・労務データを一元管理し、人材配置や組織分析を効率化できるクラウド人事労務システムです。
労務管理の日常業務を通じて従業員情報が自動で蓄積されるため、配置シミュレーションや組織図の作成、人材データの分析をスムーズに行えます。
特に、人的資本開示で求められる項目を整理したプリセットレポートが用意されており、開示のたびにデータを集計・加工する手間を削減できる点が強みです。
人事データの収集や可視化にかかる負担をできるだけ減らしたい企業に適しています。
SmartHRタレントマネジメントは、初期導入費用・サポート費用が無料で、月額利用料のみで利用できます。
3つの料金プランを用意しており、15日間の無料トライアルも利用可能です。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「タレントパレット」公式HP
「タレントパレット」は、人材データの一元管理と高度な分析機能を備えたタレントマネジメントシステムです。
社員の保有スキルや評価などを集約し、エンゲージメント分析や離職防止分析、異動シミュレーションなどを行えます。
特に、国際標準規格である「ISO 30414」に基づくテンプレートを搭載しており、社内に点在する人的資本データをすぐに客観的な指標としてアウトプット化できる点が強みです。
グループ会社を含めた全社規模でのデータ管理や、多角的な分析結果を経営戦略に活用したい大企業に適しています。
タレントパレットは、初期費用と月額費用が発生する料金体系を採用しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。
画像出典元:「HRBrain」公式HP
「HRBrain(エイチアールブレイン)」は、人材データの可視化から組織のエンゲージメント向上までを支援するタレントマネジメントシステムです。
特に、従業員のパフォーマンスや離職率などの人材データと財務指標との関連性を可視化し、人的資本が企業価値に与える影響を分析できる点が強みです。
人事データを集約・分析するだけでなく、業績との関連性を把握しながら説得力のある人的資本開示を進めたい企業に適しています。
HRBrainは、利用人数に応じた月額料金制です。
料金の詳細にはお問い合わせが必要ですが、無料トライアルでは有料プランと同様にすべての機能を利用できます。

画像出典元:「One人事」公式HP
「One人事(ワンジンジ)[タレントマネジメント]」は、人事労務管理とタレントマネジメントを一元化できる人事システムです。
従業員のスキルや資格を可視化できるほか、個人の目標に合わせたKPI設定やMBO・360度評価シートの作成にも対応しています。
特に、人材データを一元管理しながら、労務管理から人事評価、人材育成までをワンストップで運用できる点が強みです。
人的資本経営の推進と情報開示を効率的に進めたい企業に適しています。
One人事[タレントマネジメント]は、利用人数に応じた初期費用・月額費用制を採用しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。
また、30日間の無料トライアルを利用できます。

画像出典元:「パナリット」公式HP
「パナリット」は、既存の人事データを活用して人的資本情報を可視化・分析できる人的資本経営支援ツールです。
既存の人事システムやデータファイルをそのまま接続するだけで自動でデータが更新され、リアルタイムで各種指標を可視化できます。
特に、ISO30414や経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート」に対応した約300種類の指標がプリセットされている点が強みです。
既存の複数システムを変えずに、手間なく最新の人的資本データを可視化したいという課題を抱える企業におすすめです。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「Human&Human」公式HP
「Human&Human(ヒューマン アンド ヒューマン)」は、人的資本データの集計・分析を効率化できる人的資本経営支援ツールです。
勤怠や給与、エンゲージメントなどのデータを一元管理し、離職率と勤続年数を組み合わせた相関分析などを行えます。
特に、各システムと連携してデータ収集から整形までを自動化でき、人的資本情報の開示に必要な組織データの集計や分析をスムーズに行える点が強みです。
Excelでの集計作業に負担を感じている企業や、手軽に人的資本データの分析・レポート作成を行いたい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「パーソル総合研究所」公式HP
「パーソル総合研究所(人的資本経営支援)」は、長年にわたる調査・研究で培った知見を活かし、人的資本経営の推進を支援するコンサルティングサービスです。
組織の課題や特性に応じて、人材戦略の策定や人材育成、エンゲージメント向上施策の設計などを支援します。
特に、経営戦略に紐づく人材戦略の策定から、人的資本指標(KPI)の設計・モニタリング、改善施策の実行、情報開示までを一貫して支援できる点が強みです。
専門機関の知見を活用しながら、自社に適した人的資本経営を推進したい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。
無料のオンライン個別相談(30分)を提供しています。

画像出典元:「PwC Japanグループ」公式HP
「PwC Japanグループ(人的資本経営/人的資本開示)」は、人的資本経営の推進から情報開示までを総合的に支援するコンサルティングサービスです。
人的資本経営や開示に関する成熟度診断を行い、戦略の策定から施策の実行、情報開示まで一貫したサポートを提供しています。
特に、HCROIに基づき人的資本価値を最大化する独自フレームワークや、ESG・サステナビリティ分野の豊富な知見を持つコンサルタントによる支援が強みです。
グローバル基準に沿った人的資本開示や、投資家視点での企業価値向上に取り組みたい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「JMAC」公式HP
「JMAC(人的資本経営コンサルティング)」は、経営戦略と連動した人的資本経営の推進を支援するコンサルティングサービスです。
人事領域に加え、経営戦略やサステナビリティ分野の専門家が連携し、人事戦略の策定やKGI・KPIの設計、施策の実行支援を行います。
特に、人的資本経営の体制構築から組織への定着、HRテクノロジーの活用まで幅広くサポートできる点が強みです。
経営戦略と人事戦略を連動させながら、人的資本経営の基盤づくりを進めたい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「タナベコンサルティング」公式HP
「タナベコンサルティング(人的資本経営コンサルティング)」は、経営戦略と連動した人的資本経営の推進を支援するコンサルティングサービスです。
経営理念を起点に、事業戦略・組織戦略・人材戦略を一体で設計し、人材マネジメントの仕組みづくりまで一貫してサポートします。
特に、人的資本情報の開示を企業価値向上につなげる戦略設計や情報発信の支援に強みがあります。
人的資本経営にこれから取り組む企業や、現状分析から人事KPIの設計まで伴走支援を受けたい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。

画像出典元:「アビームコンサルティング」公式HP
「アビームコンサルティング」は、人的資本経営の戦略策定から施策の実行までを支援する総合コンサルティングサービスです。
経営戦略と連動した人材戦略の策定をはじめ、人事制度の見直しや従業員エンゲージメントの向上、IT基盤の整備まで幅広く支援します。
また、独自のSaaS型プラットフォーム「ABeam Human Capital Platform」を提供しており、人的資本指標の管理や分析を通じてデータに基づく改善サイクルを構築できる点も強みです。
人的資本経営の戦略策定からシステム基盤の整備まで一貫して進め、中長期的な企業変革を実現したい企業に適しています。
料金の詳細にはお問い合わせが必要です。
人的資本経営は、単なる情報開示への対応ではなく、従業員の能力を最大限に引き出し、企業価値の向上につなげる重要な経営戦略です。
サービスを選ぶ際は、まず「開示業務やデータ管理を効率化したいのか」「人材戦略の策定から支援を受けたいのか」を明確にし、システムとコンサルティングのどちらが適しているかを整理しましょう。
そのうえで、必要な機能やサポート体制、将来的な拡張性を比較しながら、自社に合ったサービスを選ぶことが大切です。
人的資本経営の課題や目指す姿は企業によって異なります。
気になるサービスがあれば、まずは資料請求や相談を行い、自社に最適なパートナーを見つけてみてください。
人的資本経営の推進と企業価値の向上につながるはずです。
画像出典元:O-dan