アパレル業界において売上高は世界3位(約2.2兆円)、時価総額は世界2位(約6.7兆円)となった「ファーストリテイリング」の決算を見ていきます。
2020年8月期第1四半期の連結業績は、前年同期に対し減収減益となっています。なお、2020年8月期よりIFRS16号を適用したことで、事業利益で9億円、営業利益で12億円の押し上げがあります。
ジーユー事業は好調に推移したものの、国内ユニクロ事業と海外ユニクロ事業は苦戦しています。
国内ユニクロの売上収益は前年同期比131億円減と大幅な減収となりましたが、これは気温が高かった影響で防寒衣料の販売に苦戦したことによるものです。一方、営業利益については、粗利益率の改善、経費削減により増益を確保しています。
海外ユニクロは韓国不買運動と香港デモの影響が直撃し、前年同期比で減収減益に。特に、営業利益は28.0%減と大幅な減益となっています。韓国、香港を除くと増収増益とのことです。
地域別では
韓国と香港は赤字と厳しい状況が続いています。
当第1四半期末の店舗数は、国内ユニクロは817店舗、海外ユニクロは1,432店舗、ジーユーは438店舗、グローバルブランドは979店舗、グループの総店舗数は3,666店舗となりました。
第1四半期と12月の下振れ分を反映したことに加え、足元の韓国、香港の状況を考慮し、通期の業績予想を下方修正しました。
すべての事業で増収増益を見込んでいましたが、通期では海外事業は増収減益予想に変更となりました。国内ユニクロ事業、ジーユー事業、グローバルブランド事業は増収増益見込みで変更はありません。
韓国ユニクロは厳しい状況が続いており、通期でも大幅な減収減益、赤字となる見込みです。最高財務責任者(CFO)の岡崎氏は「ひたすら真摯に韓国市場、お客様に向き合っていくのみ」と。韓国の店舗数は前期末から2店舗退店し、186店舗となっています。なお、海外ユニクロの店舗数が最も多いのは中国で、738店舗。いずれは国内ユニクロ店舗数を超えていくのでしょうか。
画像出典元:「株式会社ファーストリテイリング」プレゼンテーション資料
2019年8月期通期の業績は、前年同期に対し増収増益、過去最高の業績となっています。売上高は2期連続で2兆円を超え、3期連続で過去最高益を達成。絶好調です。
これは、海外ユニクロ事業の拡大と、ジーユー事業の大幅な増収増益が寄与したことによります。国内ユニクロ事業は伸び悩んでいますが、海外ユニクロ事業は売上高初の1兆円超えを達成。海外ユニクロ事業は国内ユニクロ事業を超え、ファーストリテイリングの成長エンジンとなっています。
【グラフ】グローバルEC事業の売上推移
ファーストリテイリングはEコマースの拡大にも注力しており、Eコマース売上高はグローバルで2,583億円、売上構成比11.6%まで成長。将来的にはEC化率30%を目標に取り組んでいくとのことです。
セグメント別の業績を詳しく見ていきましょう。
国内ユニクロ事業は、前期に対し増収、営業利益は2桁減益となっています。下期は夏物商品の販売が好調だったものの、上期は暖冬による冬物商品の販売に苦戦。売上総利益率は、暖冬の影響や春夏商品の早期の在庫処分により前期比1.7ポイント低下の46.7%となっています。
一方、Eコマース売上高は前期比32.0%増の832億円と伸長し、売上構成比は前期の7.3%から9.5%へ上昇しています。2019年8月末の国内ユニクロ店舗数は、出店33店、退店44店となり前期末比10店舗減の817店舗に。
海外ユニクロ事業は、前期に対し2桁増収増益と好調に推移しています。売上収益は初めて1兆円を超え、営業利益率は13.5%と、国内ユニクロ事業の11.7%よりも高い水準を維持。
地域別では、グレーターチャイナ(中国・香港・台湾)は売上収益5,025億円(前期比14.3%増)、営業利益890億円(前期比20.8%増)と大幅な増収増益に。グレーターチャイナだけで海外ユニクロ事業の売上収益の約半分を占めます。なかでも中国が好調で、営業利益は30%を超える増益、Eコマースも前期比約30%の増収、売上構成比は約20%と大幅に伸長しています。
一方、香港は天候不順やデモの影響で、韓国は不買運動の影響で減収減益に。
そのほかの地域は、東南アジア・オセアニア地区は2桁増収増益、米国は赤字幅が大幅に縮小、欧州はロシアが牽引し増収増益となっています。海外ユニクロ店舗は、前期末比138店舗増の1,379店舗に。
インドに初出店
ユニクロは次々と海外へ進出し、2018年9月にオランダ、2019年4月にデンマーク、9月にイタリアに初出店。10月にはインド初の店舗をデリーにオープンし、好調なスタートを切っています。近いうちにベトナムにも出店予定と、ユニクロの海外での快進撃がまだまだ続きそうです。
ジーユー事業は、前期に対し2桁増収、営業利益は2.4倍となっています。過去最高の業績を達成。
マストレンドにフォーカスした商品構成に転換したこと、TVCMを中心にマーケティングを強化したことで通期の既存店売上高は同4.0%増と好調に推移。
【GU 公式】GU CM 無敵カーデ
中条あやみさんと小籔千豊さんが出演するGUのCMは好評です。
グローバルブランド事業は、前期に対し減収増益、黒字に転換しています。
黒字に転じた要因は、前期にコントワー・デ・コトニエ事業などで減損損失を99億円計上したことによるものです。
セオリー事業は安定的に成長し増収増益に。プラステ事業は増収となったものの、出店による経費増で営業利益は前期並み。コントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業及びJ Brand事業は赤字が継続しています。
セオリートップページ
まだまだ売上構成比は低いですが、この中からユニクロ、ジーユーに続く第3のブランドが出てくるかもしれません。
韓国では不買運動の影響でユニクロの売上が大幅に減少しましたが、これは日韓関係の悪化に加え、決算説明会での役員の発言が問題視されたことによるものです。
事の発端は、ファーストリテイリングの第3四半期決算説明会において、最高財務責任者(CFO)の岡崎氏が「足元に一定の影響が売上に出ているが、われわれとしては過度に政治の情勢に振り回されることなく商売を粛々とやっていく」「その影響は長くは続かないであろう」という趣旨の発言をしたこと。この発言が、韓国消費者を軽視していると誤解を与え、急速に広まったことで韓国ユニクロ側は謝罪の意思を表明。
しかし、謝罪が中途半端だったためか批判が高まり、ユニクロは不買運動の槍玉にあげられることに。後日、改めてファーストリテイリングと韓国現地法人エフアールエルコリアは公式に謝罪を行いました。
韓国での売上は減少したものの、店舗数は出店10店、退店8店と前期末比2店舗増の188店舗に。むしろ増えています。2020年8月期も7店舗出店予定となっていますが、売上回復はしばらく見込めないと思われます。
2020年8月期の業績は、前期に対し増収増益、過去最高の業績を更新する見込みです。
海外ユニクロ事業は引き続き拡大し、韓国を除くすべての地域で大幅な増収増益となる見込み。国内ユニクロ事業、ジーユー事業、グローバルブランド事業も増収増益を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社ファーストリテイリング」公式HP・プレゼンテーション資料
2019年8月期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となりました。
国内ユニクロ事業は減収減益となったものの、好調な海外ユニクロ事業が牽引し、同期間において売上収益、全ての利益項目ともに過去最高を更新しました。
「ユニクロ誕生感謝祭」の開催日を6月へ後ろ倒したこと、在庫処分を早期化したことにより減収減益に。上期の減益幅が大きかったこともあり、営業利益は前年同期比19.5%減となりました。
中国大陸、東南アジア・オセアニア地区が好調に推移し、海外ユニクロ事業は増収増益に。
韓国は減収減益、米国は赤字幅が縮小したものの計画を下回りました。欧州は情勢不安により減益となりましたが、ロシアは好調。2019年4月にはデンマーク初の店舗をコペンハーゲンに出店しました。
販売が好調だったことに加え、原価率の大幅な改善と値引率の低下により、売上総利益率が大幅に改善。営業利益は前年同期比74.5%増と、利益が大きく回復しました。
2019年8月期の業績予想に変更はありません。引き続き、海外ユニクロ事業が牽引し過去最高の業績となる見込みです。その海外事業を牽引しているのが、5月末時点で687店舗出店している中国です。海外店舗の半分を中国が占めます。
ユニクロが企業やデザイナーとコラボするアイテムは中国でも人気で、記憶に新しいところでは6月に発売された、現代アーティストKAWS(カウズ)とのコラボレーションTシャツを手に入れようと大混乱が起きました。
次に店舗数が多いのが、186店舗出店している韓国です。店舗数が多いこともあり、日韓関係の悪化による不買運動の影響が懸念されます。
ただ、ファーストリテイリングは、足元で一定の影響は出ているものの長期化はしないと見ています。むしろ現時点で、第4四半期において若干の増収増益を見込んでいるとのことです。
画像出典元:「株式会社ファーストリテイリング」プレゼンテーション資料・公式HP
2019年8月期 第2四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収増益となりました。売上収益、営業利益、四半期利益すべてにおいて過去最高を更新。
暖冬の影響により国内ユニクロ事業が計画を下回ったものの、ジーユー事業は計画を大きく上回り、海外ユニクロ事業も好業績が続きました。
資産2兆152億円のうち、現金及び現金同等物は前年同期に対し2,624億円増加し、1兆1,110億円となりました。これは、2018年12月に300億円の社債を償還した一方で、6月に2,500億円の社債を発行したこと、営業キャッシュフローが増加したことなどによります。
ファーストリテイリングは、「国内ユニクロ事業」「海外ユニクロ事業」「ジーユー事業」「グローバルブランド事業」を主な報告セグメントとして区分しています。
国内ユニクロ事業は、前年同期に対し減収減益となりました。
第1四半期に暖冬の影響で冬物商品の販売が計画を下回ったことから、上期全体の売上収益は計画を下回りました。また、第2四半期で値引販売を強化したことから、上期の粗利益率も計画以上に低下しました。
海外ユニクロ事業は、前年同期に対し増収増益となりました。
好調だった地域は、
一方、計画を下回った地域は、
海外事業を牽引しているユニクログレーターチャイナは、通期で売上収益5,000億円、営業利益850億円を目指しています。
ジーユー事業の業績は、前年同期に対し大幅な増収増益となりました。
マストレンドにフォーカスした商品構成にしたことや、TVCMやウェブ広告と連動させたマーケティングを行ったことにより、既存店売上高が増収と回復軌道に乗せることができました。
グローバルブランド事業の業績は、前年同期に対し減収増益に。セオリー事業は、米国セオリーの売上が好調で、大幅な増益となりました。一方で、コントワー・デ・コトニエ事業は販売不振が続き、赤字が継続しています。
上期の業績の下振れを反映させた結果、直近予想に対し、営業利益を100億円減額修正しました。ただし、通期の営業利益2,600億円は過去最高益となる見込みです。
下期では、全ての事業において増収増益を見込んでいます。
画像出典元:「株式会社ファーストリテイリング」決算説明会資料
2019年第1四半期連結累計期間の業績は、前年同期に対し増収減益となりました。増収の主な要因は、海外ユニクロ事業が好調に推移したことによるものです。
減益の主な要因は、国内ユニクロ事業が暖冬の影響で売上が計画を下回ったことによるものです。売上総利益率は前年同期に対し1.0ポイント低下し50.4%に、売上高販管費率は1.3ポイント上昇し34.4%となりました。
国内ユニクロ事業の売上収益は2,461億円(前年同期比4.3%減)、営業利益は379億円(前年同期比29.9%減)と前年同期に対し大幅な減益となりました。
大幅な減益となった要因は、暖冬の影響で売上が計画を下回ったことによります。特に気温の高かった10月や11月は、ヒートテック、ウルトラライトダウン、カシミヤセーター、メリノセーターといった冬のコア商品が全般的に苦戦しました。販売に苦戦し、値引販売を強化したことにより、粗利益率も計画に対して下回りました。
一方、Eコマースの売上は237億円(前年同期比30.9%増)、売上構成比は7.0%から9.7%へと上昇しました。経費に関しては、削減努力により計画の範囲内におさまっています。
海外ユニクロ事業の売上収益は2,913億円(前年同期比12.8%増)、営業利益は525億円(前年同期比12.6%増)と前年同期に対し増収増益となりました。
海外ユニクロ事業は年々拡大し、2018年度では国内ユニクロ事業の売上収益を超え、この第1四半期では売上収益、営業利益ともに国内ユニクロ事業を大きく上回り、最大の事業セグメントとなりました。
地域別では
海外ユニクロ事業では、グレーターチャイナ(中国大陸・香港・台湾)、東南アジアが事業の柱となっています。米国は、今期の黒字化達成に向けて着実に前進しています。
2018年9月にはオランダ初の店舗をアムステルダムに出店、10月には東南アジア最大規模のグローバル旗艦店をフィリピンのマニラに出店しました。
ジーユー事業の売上収益は654億円(前年同期比7.7%増)、営業利益は85億円(前年同期比4.9%減)と前年同期に対し増収減益に。売上は計画通り、前年並みとなりました。
前期は第2四半期に在庫処分を実施しましたが、今期は第1四半期から在庫処分を行ったため、粗利益率が前年同期比で0.3ポイント低下。また、広告宣伝を強化するなど経費が増加した結果、減益となりました。
ジーユー事業は国内市場の出店に加え、グレーターチャイナ及び韓国を中心とした海外市場での事業の拡大も図っていくとのこと。
グローバルブランド事業の売上収益は407億円(前年同期比1.8%増)、営業利益は27億円(前年同期比9.9%減)と前年同期に対し増収減益に。コントワー・デ・コトニエ事業が計画以上の減益となりました。
上期は国内ユニクロが計画以上の減益となる見込みですが、海外ユニクロが計画を上回る増益を維持する見込みであるため、通期の業績予想に変更はありません。
ファーストリテイリングは、衣料品販売を主たる事業として「国内ユニクロ事業」「海外ユニクロ事業」「ジーユー事業」「グローバルブランド事業」を主なセグメントとして区分しています。
なかでも、「情報製造小売業」として世界No.1のアパレル小売企業となることを中期ビジョンに掲げ、海外ユニクロ事業、ジーユー事業の拡大に注力。主力のユニクロは1984年に1号店をオープンし、現在では日本のアパレル市場の6.5%のシェアを占めるほど拡大しました。
さらに、2001年9月に英国への海外進出を皮切りに軸足は海外へと移り、2018年11月末時点の店舗数は国内832店舗に対し海外1,295店舗と海外店舗数は国内店舗数の1.5倍にまで拡大しました。
収益も国内を上回り、特に中華圏(中国大陸・香港・台湾)、韓国、東南アジア・オセアニアでの出店により、高成長が続いています。
日本で展開するユニクロ事業(衣料品)
売上高構成比:約38%(国内は頭打ち)
2018年11月末時点での店舗数:832店舗
海外で展開するユニクロ事業(衣料品)
売上高構成比:約45% (注力事業。今後も海外に続々と出店予定あり)
2018年11月末時点での店舗数:1,295店舗
日本・海外で展開するジーユー事業(衣料品)
売上高構成比:約10%
(注力事業。トレンドと低価格を重視。海外出店を加速させている)
2018年11月末時点での店舗数:409店舗
セオリー事業、プラステ事業、コントワー・デ・コトニエ事業、プリンセス タム・タム事業、J Brand事業(衣料品)
売上高構成比:約6%
2018年11月末時点での店舗数:1,003店舗
画像出典元:「株式会社ファーストリティリング」決算説明会資料
2018年8月の通期決算は過去最高の業績を達成しました。特に国内・海外ユニクロ事業が好調で、営業利益は前年同期比33.9%増を記録。
各セグメント別の業績を見てみましょう。
赤い四角で囲ってある箇所が国内・海外ユニクロ事業です。
国内ユニクロ事業の業績は
海外ユニクロ事業の業績は
となっており、海外ユニクロ事業の営業利益は前年同期比が62.6%増と急成長しています。
各セグメントの収益構造を円グラフで表すと以下のようになります。国内・海外ユニクロ事業で全体の90%以上を占めており、海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業と同じぐらい業績を上げています。
国内ユニクロの業績が好調だった理由としては、1年間の天候が理由にあります。上半期の冬は、例年に比べて寒くなったことによりヒートテックやダウンなどの防寒衣料の売上が好調に。それに伴い増産対応がスムーズに進んだため増益に繋がりました。
5~7月は売上が伸び悩みましたが、8月は猛暑に伴って夏物の衣類販売が順調でした。
海外ユニクロ事業では、中国、香港、台湾、シンガーポールを含めたグレーターチャイナの売上収益が前年同期比26.9%増、営業利益が前年同期比47.1%増と好調となりました。各国にユニクロブランドが浸透していることやeコマース販売が追い風となっています。
アジアを中心にシェアを獲得している
画像出典元:「株式会社ファーストリティリング」決算説明会資料
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