紙の契約書を締結する際には、必ず収入印紙による印紙税の納税が求められています。
しかし、同じ契約でも電子契約の形で締結すれば、収入印紙は不要、つまり納税の必要がなくなります。
この記事では、なぜ電子契約だと印紙税が不要になるのか、法的根拠や国税庁の見解に基づき徹底解説していきます!
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このページの目次
契約書に収入印紙を貼って印紙税を納税する義務は、印紙税法第2条および第3条に定められています。
契約書の印紙税は、取引や契約自体に課税されるのではなく「取引や契約の文書(例:契約書など)」が課税対象です。
つまり、取引や契約を行っても「文書」が作成されなければ印紙税は、0円になります!
では電子契約で、印紙税が0円になる文書とはどんなものでしょうか?
答えは、国税庁「印紙税額一覧表」に掲載されている課税対象となる契約文書の作成・締結を行った場合は印紙税0円になります。
画像出典元:国税庁「印紙税額一覧表」
7号文書に該当する契約書を月10枚発行している場合は、紙の契約書では印紙税「40.000円」ですが、電子契約では印紙税「0円」になります。
電子契約にできる文書を、電子契約化することで収入印紙代がなくなり、コスト削減と節税に繋がります。
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画像出典元:国税庁「印紙税の手引(3契約書)」
電子契約は、一般的に非課税文書として扱われていますが、実は「電子契約は収入印紙不要」とはっきり法律で決まっているわけではありません。
ではなぜ非課税文書として扱われているのかというと、印紙税法・国税庁・政府が「課税対象は紙の契約文書」と説明しているからです。
以下の5つの法的根拠から、「電子契約は紙の契約書ではないので収入印紙不要」と解釈できます。
印紙税法の法令解釈通達で下記のような説明があります。
第7節 作成者等
第44条 (作成等の意義)法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
引用:法令解釈通達第7節 作成者等
「課税文書となるべき用紙」と記載があり、この「用紙」=紙と解釈され、紙を利用しない電子契約は非課税文書で印紙税がかからないと判断されています。
印紙税法第2条と3条では以下のように定められています。
第2条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
第3条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
引用:第2節 文書の意義等
印紙税法の中では、「文書」=紙の書面、電子データ=「電磁的記録」と区別して使用されています。
第2条、第3条にある「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書」の中の「文書」とは、すなわち紙の書面のことを指すため、電子データである電子契約は非課税文書で印紙税を納める必要はないと解釈されています。
国税庁の「No.7100:課税文書に該当するかどうかの判断」で「下記3点が全て当てはまる文書が課税文書」と説明しています。
電子契約は、No.7100:課税文書に該当するかどうかの判断の3点に該当しないため印紙税不要となっています。
(1)印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること
(2)当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
(3)印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと
国税庁は「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」で「電子データで行った契約は作成に該当しないため、印紙税は発生しない」と回答しています。
作成は紙の契約書に対して行う行為であり、電子データで行った契約は「作成に該当しない」という考え方です。
「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」に対する国税庁の回答 注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。
政府は「参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書」の中で、印紙税について「電磁的記録(電子ファイル化された契約書)は印紙税の課税対象ではない」と答えています。
五について 事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである。
以上の5つの根拠から、印紙が必要なのは紙の契約書であり、電子契約は非課税文書で収入印紙は不要として扱われています。
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では、電子契約サービスを導入したことで実際にコスト削減・節税はどのくらい実現したのか、
SaaSログが行った電子契約サービスのユーザーへの取材では、以下のような回答を得ました。
ツールに関する良し悪しはあるものの、電子契約サービスを導入した企業の多くは、印紙代の削減ができるというメリットを感じていることがわかります。
自社に適したサービスを選び、電子契約サービスによる契約業務の効率化とコスト削減が同時に実現できれば良いでしょう。
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では、全ての文書を電子契約に移行でき、印紙税を0円にすることができるのでしょうか?
答えは、全ての電子契約が印紙税0円になるわけではないのです。
では、どんな場合に、印紙税0円にならないのでしょうか?
電子契約データをプリントアウトした書面に押印や署名等が行われた場合は「プリントアウトした書面が契約書原本」とみなされ、紙の契約書が発行されたとして課税対象になります。
電子データ上で契約の作成・締結・原本保存を完結しないと印紙不要にはならなず、課税対象になるので注意しましょう。
電子契約システムを導入すれば、法的に有効な電子データ上で契約の作成・締結・原本保存を完結することが出来ます。
一般的な契約書の多くは電子契約が可能ですが、中には電子契約ではなく「紙の契約書」しか認められていない契約書もあります。
電子契約を導入する時は「自社の契約書の種類」を確認しましょう。
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この記事では、電子契約で印紙税がかからない理由を法的根拠を元に説明してきました。
電子契約で締結された契約文書は、基本的に収入印紙がいらないですが、契約によっては、電子契約ができないものなどもあり、電子契約にしたから絶対に節税できるとは限りません。
また、電子契約を行う際には、取引先の理解と協力も必要です。
自社だけでなく取引先双方にとってメリットの感じられる電子契約サービスはどんなものなのか、トライアルやセミナーなどを積極的に活用し、より良いサービス導入が実現できるように精査することがポイントと言えるでしょう。
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