起業時に知っておきたい!融資のメリット・デメリットとは?

起業時に知っておきたい!融資のメリット・デメリットとは?

記事更新日: 2023/08/21

執筆: 狐塚真子

起業や事業拡大を考えるとき、自己資金でカバー出来ない場合には資金調達を行う必要があります。

本記事ではその方法の1つ「融資」のメリット・デメリットを解説していきます。

融資とは?

融資とは、金融機関や他人からお金を貸してもらうことです。

  • 金融機関からの借入(メガバンク、都市銀行、地方銀行、信用金庫、公的金融機関など)
  • 親や身近な人からの借入

の2つのパターンがあります。

創業したばかりだと、大手金融機関の場合は口座開設ができないこともあり、融資での資金調達をすることは困難です。したがって多くの起業家は、日本政策金融公庫や信用金庫からの借入を行います。

融資は必ず返済する必要のあるお金であるため、返済力(信用力)に応じて借りることができるお金の額が決まります。

融資のメリット

1. 経営権(株式)を渡す必要がない

出資の場合、投資家に対して出資した株数に応じて、経済的な利益を受ける権利や会社の運営権を譲渡しなければなりません。最悪の場合ですが、企業側より多い投資額を持つ投資家がいる場合には、経営者に代わって投資家が経営の実権を握るということも…。

しかし、融資を行う銀行は経営には関与しませんのでそのリスクはありません。銀行による経営の制約が無ければ、経営者の意思を存分に反映させた、より自由な経営が実現します。

ただし、返済が滞った場合などは、投資家が経営に口を挟むこともありますので注意しましょう。

2. 信用力を積み上げれば、大きなお金を集めることが可能

融資は「借金」ですので、確実に返済をしていくことが求められます。銀行からの融資を受けた場合、毎月一定の額を返済しなくてはなりませんが、金融機関への返済実績をつけていけば融資の金額を増やしていくことも可能になります。反対に、少しでも滞ることがあれば次回以降の融資に影響が出てしまうので注意が必要です。

公的機関の融資は「数百万円程度の融資」が主体でしたが、1,000万円以上の高額融資も増えてきています。更に 民間の金融機関と金利を比較した場合、利息が低いことが多いです。

また 近年では、民間の金融機関に比べて 起業直後の企業に対しても積極的な融資を行っていますので、融資の受けやすさという点を考慮するなら、公的機関を利用することをお勧めします。

融資のデメリット

1. 資金使途が限定される

融資を受ける際には「いくら必要か」だけではなく「何故・何のために資金が必要か(=資金使途)」が問われます。

資金使途には 主に「運転資金」と「設備資金」のに2種類があり、用途によって更に細かく分類されています。資金使途がわからない場合は、たとえ貸し出す金額に問題がないとしても 銀行がお金を貸してくれない場合もあります。

  • 運転資金・・・日々の事業で日常的に必要な資金(商品仕入、経費支払)
  • 設備資金・・・設備投資に必要な資金(本社・工場・機械・備品などの資金)

では仮に資金使途と違う使い方をしたらどうなってしまうのでしょうか?

銀行融資の場合は「資金使途違反」と呼ばれる違反行為にあたります。違反をしてしまった場合はそれ以降の追加の融資を受け取ることは難しくなるでしょう。更に銀行によっては「即時全額返済」を求められるケースもあります。十分注意しましょう。

2. 利息が生じる

審査と契約状況によって条件は異なりますが、毎年数%の利息が発生します。状況によっては、利息が悪影響を及ぼし、黒字企業が赤字に転落するということも。

収益力を見込むことが出来ない企業・事業は、このことに留意する必要があります。

3. お金が無くなったタイミングでの融資

事業が軌道に乗らず、お金が無くなったタイミングで融資の話をもちかけたとしても、金融機関は話を聞いてくれません。また 一度審査を弾かれてしまうと、大きな事業上の進捗や変更点がない限りは基本的に半年間は申請しても通ることはありません。

融資は起業家の「返済力」や「信用力」に基づいて行われます。 資金が底をつきかけている状態で お金を欲しい!という人に対して、あなたなら安心してお金を貸すことができるでしょうか? この事を考えると、融資は自己資本がある程度多くなったタイミングで行くのがベストです。

ただし創業時の場合、話は別です。

「創業融資」や「制度融資」といって、積極的に資金を提供する制度が存在します。審査は行われますが、担保がなく創業時の不安定な状況であったとしても資金調達を行うことができます。

創業融資

起業・独立などをする際に、自己資金のみで事業資金を調達することができないため他者からお金を借りること

制度融資

企業の資金調達などを支援するために、各地方自治体が信用保証協会・金融機関と連携して設けている仕組みのこと

なお創業時の資金調達は、政府機関である日本政策金融公庫の「新創業融資制度」が特におすすめです。低い利率の融資を、比較的やさしい審査で受けることができることができます。

新創業融資制度については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。

 

4. 個人保証が有る場合がほとんど

基本的には何かしらの担保がなければ融資をしてもらえません。融資をしてもらう際には 経営者個人は会社の連帯保証人になります。

融資の返済をできなくなった場合は経営者個人が金融機関に融資の返済を行わなければなりません。

もし借入を返済できなくなった場合、経営者個人が会社に代わって負担する必要があり、借入金額によっては経営者も自己破産せざるをえなくなります

自己破産のメリット・デメリット

融資のデメリットとして、経営者の自己破産のリスクをあげましたが、ではここで自己破産にはどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説していきます。

自己破産のメリット・デメリットとは

自己破産をした場合のメリットとしては、

  • 全ての債務の支払い義務が免除される
  • 手続開始後に債権者は強制執行(給料差し押さえや取り立て)ができなくなる
  • 最低限生活していけるだけの財産は手元に残すことができる

といった点が挙げられます。

反対にデメリットとしては、

  • 個人信用情報機関のブラックリストに 約5~7年間 名前が登録される(その間クレジットカードの利用や・新たに借金やローンを組むことは不可能)
  • 住所氏名が「官報」という国が発行する機関紙に掲載される
  • 免責決定を受けるまで警備員や士業などの一部職業に就けない(ただし免責決定後は復職可能)

ということが挙げられます。

こうして両者について考察してみると、「自己破産をしたから終わり」というわけではなく、自己破産後であってもある程度の生活は保障されるという事がわかると思います。

着実に事業を伸ばして、返済できるのがベストではありますが、自己破産を過度に恐れず、起業や新たな取り組みにチャレンジしてみても良いのではないでしょうか。

 

個人保証を免除する方法は無いの?

そもそも融資で経営者個人の自己破産のリスクがあるのは、個人保証があるからです。

この個人保証、実は日本政策金融公庫の「経営者保証特例免除制度」という制度によって免除が可能になります。この制度を受けると、これから行う融資だけでなく、現時点で利用しているものに対しても個人保証が免除されることになります。

資金調達をしやすくなるだけでなく、万が一経営が悪化したことで保証人が自己破産に追い込まれるといった事態も防ぐことができます。

この制度を利用するには、

  • 税務申告をすでに2期以上、事業資金融資取引が1年間以上行われている
  • 最近1年間の間に返済の遅延を行っていない
  • 企業として活動を行いつつ健全な資金繰りが行われている という これら3つの条件が重要視されます。

やはり融資においては 企業の「返済力」や「安定」が大切というわけです。

ただしこの制度を利用する場合、利率が0.2パーセント上乗せされるというデメリットがあります

きちんと返済が出来る企業にのみ、この制度が適応されるという前提なので、事業が安定している場合は大丈夫ですが、こちらも踏まえたうえで検討するのが必要でしょう。

融資以外の調達方法

ここまで融資のメリット・デメリットについて解説してきましたが、以降では融資以外の資金調達方法についても解説していきます。

出資

投資家から返済の必要がないお金をもらう方法です。資金は自由に使うことができますが、出資者に経営権(株式)の一部を渡す必要があります。

メリット

借入ではないので金利の負担がなく、資金使途を明示する必要もないので経営者が自由に資金を利用できます。また個人保証がなく、将来大きく成長することが期待されていれば、巨額のお金を集めることも可能になります。

デメリット

経営権(株式)の一部を出資者に渡す必要があり、一定以上の経営権を持たれた場合には経営者の意思のみで自由に運営が行えない可能性があります。

また出資者の属性によっては上場することが出来ない場合もあるので十分に注意が必要です。

 

補助金・助成金

国や地方自治体等から支払われる、返済不要のお金です。申請しても必ずもらえる訳ではなく、お金を使った後からもらえる「後払い」形式という特徴があります。

メリット

融資と同様に経営権(株式)を渡す必要が無く、返済も不要です。創業する前後で申請が可能になります。

デメリット

原則お金は後払いとなるため、それまでの運転資金は自ら確保する必要があります。金額が少額なわりに手続きが煩雑・条件が多いという面も。

中には全額補償でなく、使用した金額の 1/2 や 2/3 というように一部の補助も多いです。


まとめ

ここまで融資のメリット・デメリットを解説してきました。

融資は「借金」であるので、企業の「将来性」や「返済能力」についての検討があったのちに実行されます。スタートアップ直後の企業がいきなり、銀行から多額の融資を受けるのは難しいでしょうが、実績を積んでいけば多額の融資を受けることも将来的には可能になってきます。

継続的に大きな金額の調達を行いやすいのが、融資の最大のポイントです。

さらに、出資とは違って投資家に経営権を譲渡する必要がありませんので、より自由な経営を行うことが出来るというメリットもあります。

他の資金調達や、これらのことを踏まえたうえで最適な方法を検討しましょう。

以下の記事では資金調達の方法と、それぞれのメリット・デメリットを網羅的にまとめています。

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画像出典元:Pixabay, O-dan

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