出資金とは?株主から返せと言われたらどうするべき?

出資金とは?株主から返せと言われたらどうするべき?

記事更新日: 2023/09/19

執筆: 編集部

会社の資金調達は銀行などの金融機関からの融資が一般的ですが、出資という資金調達方法もあります。

出資された資金は出資金と呼ばれますが、出資者に「出資金を返還してほしい」と言われた場合どうしたら良いでしょうか。

出資者から突然出資金を返還してほしいと言われ、返還をすると資金難に陥ってしまう可能性があります。そんな時のために、今回は出資金の返還請求についてご紹介します。

出資金とは?


出資金とは出資者が会社に提供した資金のことです。株式会社の場合、出資者は株式を取得します。

出資を受けた会社は、出資金を資本金や資本準備金として処理します。

後ほどケースごとに詳しく解説しますが、出資金は原則返還不要です。

出資と融資の違い

受け取った側

出資や融資を受け取った会社は資金提供を受けたという点では同じです。しかし、出資は原則返還の必要がなく、融資は返還の必要があるという点に違いがあります。

せっかくなので、少し具体的に考えてみます。

通常、株式会社を設立する時に会社は出資を受けて設立されます。その際に支払われる資金が出資金です。

会社は出資を受けると出資者に対して、資金のかわりに株式を発行し、受け取った資金は会社のものになります。そのため、会社は出資者に出資金を返還する必要がありません。

一方、融資は運転資金・設備投資など必要に応じて銀行などの金融機関から資金を借りることです。

融資を受けたからといって、債務者に株式を発行することはありません。お金を借りているため、返済期限が到来すると返済義務が発生します。

資金提供した側

出資や融資をした場合、資金提供をしたという点では同じですが、受け取る内容に違いがあります。

出資をした場合は配当金、融資をした場合は利息を受け取ることになります。

なお、出資の場合には株式の値上がりによる売却益を得られる場合もあります。

資金提供した側からすると出資は会社の株式の購入、融資はお金を貸したのと同じことです。

 



出資金を返還する必要がある場合


出資金は原則返還不要ですが、会社が解散や清算などをした場合は出資者に出資金を返還する必要があります。

ただし、厳密には出資金の返還ではなく残余財産の分配になります。

会社が解散後に売掛金などの債権の回収や、買掛金などの債務の支払いをした後に会社に残った財産のことを残余財産をいいます。

残余財産がある場合、その残余財産は株主に分配されます。このことを残余財産の分配といいます。

残余財産は保有している株式比率に応じて、各々の株主に平等に分配されます。残余財産の金額によっては、出資した金額以上の分配がされることもあります。

株主から出資金の返還請求を受けた場合


会社が株主から出資金の返還請求を受けても、出資金を返還する必要はありません。

例えば、共同出資して会社を設立した後に、その会社の役員を辞任したり退職をしたとしても出資金の返還は不要です。

仮に株主から出資金の返還請求を受けたとしても、脅迫などの場合を除き、出資金を返還しなくても法的に問題はないと考えられます。

株式買取請求権

出資金は返還する必要がありませんが、株主から会社に株式の買取請求があった場合は違います。

株主は会社に、一定の場合に自分が保有している株式を公正な価格で買い取るように請求できる権利があり、このことを株式買取請求権といいます。

株式買取請求権は、「単元未満株式の買取請求」と「株主の株式買取請求」の2種類があります。

会社合併などは株主総会の「特別決議」の承認を受けなければなりません。

特別決議の承認が株主全員の承認を得ることができればいいのですが、反対する株主もいます。このような場合に株主は、会社に保有している株式を公正な価格で請求する権利が認められています。

株式譲渡承認請求権

株主は株式を譲渡することができます。上場企業などの公開株式は自由に株式を売買でき、非上場企業の株式も譲渡することができます。

非上場企業の株式は譲渡できますが、定款で株式の譲渡が制限されていることが多いです。

株式の譲渡制限がある場合、株主は会社の承認なく勝手に株式を譲渡・売買することができなくなります。この規定を設けていると、会社の承認なく株式を譲渡されることがないので、会社乗っ取りのリスクを抑えることができます。

譲渡制限株式を譲渡する場合の承認は、取締役設置会社と非設置会社で異なります。

取締役会

取締役会を設置している会社の場合は「取締役会」で株式譲渡の承認をするか決定します。

取締役会の承認は、原則取締役の過半数が出席し、かつ出席者の過半数の賛成が必要です。

株式譲渡承認請求を受けた後、2週間経過しても承認の可否を通知してない場合、承認したものとみなされてしまいます。

そのため、株式譲渡承認請求を受けた場合は、早めに取締役会を開催し、2週間以内に承認についての可否を通知することが望ましいです。

株主総会

会社の中には、取締役会を設置していない会社もあります。取締役会を設置していない会社の場合は「株主総会」で株式譲渡の承認をするか決定します。

株主総会の承認は、議決権の過半数を持つ株主の出席、かつ出席株主の議決権の過半数の賛成が必要です。

取締役会と似ていますが、取締役会は出席者の過半数、株主総会は議決権の過半数なので間違えないようにしましょう。

株式譲渡承認請求を受けた場合は、取締役会の時と同様に2週間経過しても承認の可否を通知していない場合、承認したものとみなされてしまうので早めに株主総会を開催しましょう。

譲渡承認を拒否した場合

株式の譲渡承認は拒否することができます。譲渡承認を拒否した場合、会社や会社が指定した者が株式を買い取ることになるので、拒否する時は誰が株式を買い取るか決定する必要があります。



出資を受ける場合は議決権比率に注意


出資は返還をする必要がありませんが、出資を受ける場合は議決権比率に注意をしましょう。

通常は出資割合と議決権比率が一致するので、出資割合をイメージするとわかりやすいです。

議決権割合 株主の権利
1%以上

書面による事前質問権
定款、謄本などの謄写請求権

3%以上

会計帳簿閲覧請求権
株主総会招集請求権
取締役や監査役の解任請求権

10%以上 解散請求権
1/3超 特別決議の拒否
1/2超

株主総会の普通決議を単独で成立できる
(例)
 取締役や監査役の選任決議
 計算書類の株主総会の承認
 剰余金の配当決議

2/3以上

株主総会の特別決議を単独で成立できる
(例)
 定款変更
 営業譲渡
 株式交換


会社は代表取締役のモノではなく株主のモノです。株式には議決権があり、議決権割合に応じて、株主には様々な権利があります。

上の表は議決権割合に応じた株主の権利の主なものです。出資を受ける場合、株主は議決権割合に応じて株主の権利を実行する可能性があります。

新たに出資を受ける場合、現経営陣は2/3以上の議決権を保有しておくのが無難です。2/3以上の議決権を保有していれば、特別決議を単独で成立することができます。

2/3以上の保有が困難な場合は、最低でも50%超の議決権を保有しておくことをオススメします。代表取締役が議決権割合の50%超を保有していないと、いつでも解任させられるリスクがあります。

まとめ


出資は返還する必要がないため魅力的な資金調達方法ですが、議決権割合によっては会社の経営権を奪われる可能性があります。

株主から株式を買い取る場合、会社の業績が良く取得する時期によっては、出資金額よりも多くの金額を株主に支払うこともあります。

出資と融資のメリット・デメリットをよく考えて資金調達するようにしましょう。

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画像出典元:写真AC 、O–DAN

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