人事評価制度とは?種類や目的・失敗しない運用ポイントを解説

人事評価制度とは?種類や目的・失敗しない運用ポイントを解説

記事更新日: 2024/04/30

執筆: 編集部

人事評価制度は、社員の給与を決めるだけの制度ではありません。

自社に適した人事評価制度の導入は、社員の成長をバックアップし、企業の発展へとつながります。

この記事では人事評価制度の導入や運用に悩む方に向けて、人事評価制度の役割やメリットとデメリット、失敗しない運用のポイントを紹介します。


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人事評価制度とは?

人事評価制度は、社員のパフォーマンスを上げるための仕組みです。

社員の行動や成果、会社への貢献度を納得のいく方法で評価し、等級や報酬に反映します。

最近では、等級制度・評価制度・報酬制度の3つを合わせて人事評価制度と呼びます。

では、3つの制度をそれぞれ見ていきましょう。

  • 等級制度:社員の立場を決める
  • 評価制度:社員の成果や取り組みを評価する
  • 報酬制度:評価を報酬に反映する

等級制度

等級制度は、人事管理を効率化するために、社員の立場を決めるための仕組みです。

等級制度には、おもに職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の3つがあります。

  • 職能資格制度:社員を能力によって評価
  • 職務等級制度:社員を職務によって評価
  • 役割等級制度:社員に与えられた役割によって評価

評価制度

評価制度は、社員の成果や取り組みを客観的に評価するための仕組みです。

一般的に、評価制度は等級制度や報酬制度とリンクし、評価が良ければ役職も給料もアップします。

評価の基準はおもに以下の3つです。

  • 能力:職務を遂行するための能力
  • プロセス:目標達成に向けて取り組む姿勢
  • 成果:目標の達成度などの結果

報酬制度

報酬制度は、等級や評価に応じて、社員の給与や賞与、退職金を決めるための仕組みです。

会社の利益を還元することで、社員のモチベーションやパフォーマンスを向上させるほか、優れた社員を会社に留め、労働力の獲得や維持にも役立ちます。

人事評価制度の役割

人事評価制度は社員を評価するだけの仕組みではありません。

人事評価制度の導入と運用の目的はおもに以下の5つです。

それぞれ、人事評価制度の導入と運用によって期待できる効果とともに紹介します。

企業のビジョンや方針の明示

企業のビジョンや方針をただ伝えるだけでは、社員がどのように貢献すればいいのかがわかりにくい場合があります。

しかし、企業のビジョンや方針を評価基準に落とし込むと、社員はビジョンを実現するために必要な人物像をイメージしやすくなります。

社員に期待する行動や役割の明示

人事評価では、企業が社員に期待する人物像を具体的に示せます。

社員は判断基準や会社からの評価、フィードバックを通して、企業のビジョン・方針を意識した行動を取りやすくなるでしょう。

生産性の向上

年功序列や終身雇用制度では、とくに大きな成果をあげていなくても厚い待遇を受けられるため、生産性は下がってしまう傾向にあります。

しかし、人事評価制度では、成果をあげた人ほど良い評価を得られ、厚い待遇を受けられるため、社員自らスキルや能力を高めようとするきっかけになります。

将来的には、会社全体の生産性の向上が見込まれるでしょう。

人材配置の指標

人事評価では、社員それぞれのスキルや特性を把握できるため、最適な人材の配置に役立ちます。

さらに、前もっていくつかの指標を設けておけば、人材の配置転換の判断もしやすくなるでしょう。

また、はっきりとした根拠をもとにして待遇を決定すれば、社員が「がんばっているのに等級が上がらない」といった会社に対する不信感を抱かなくてすみます。

エンゲージメントの向上

人事評価制度がない会社では、仕事に対する正しい評価がなされないため、モチベーションや生産性が低下する可能性があります。

しかし、人事評価制度を導入して公平かつ納得感のある評価ができれば、社員のエンゲージメントの向上が期待できます。

人事評価の項目

人事評価の項目でいちばんに思い浮かぶのは成果評価ではないでしょうか。

しかし、人事評価には、以下の3つの項目があります。

  • 成果評価
  • 能力評価
  • 情意評価

成果評価

成果評価とは、文字通り、社員の成果に着目し評価します。

客観的かつ公正に評価できるため、社員からの不満が出にくいのが特徴です。

しかし、目標をこなすことだけが社員の目的になってしまいがちで、新たなチャレンジに挑戦する意思が働きにくくなるなどのデメリットもあります。

能力評価

能力評価とは、社員のスキルや経験に対する評価を指します。

評価項目は、おもに実行力や企画力、改善力などの職務遂行能力に関わるものですが、コミュニケーション能力や人間関係の構築能力といった人間力が問われるケースもあります。

社員一人ひとりの業務適正や育成の方向性を把握しやすくなるのがメリットです。

情意評価

仕事へのやる気やがんばっている人を評価したいときに用いられます。

しかし、成果をはっきりとした数字で表せないため、評価者の主観に左右されやすいデメリットがあります。

評価基準を設定するときは、企業のバリューや指針から具体的な行動に落とし込むとよいでしょう。

人事評価制度の種類

ここでは、以下の4つの人事評価制度について解説します。

  • 目標管理制度(MBO)
  • 目標管理制度(OKR)
  • コンピテンシー評価
  • 360度評価

 目標管理制度(MBO)

MBOは、「Management By Objectives」の略で、アメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが提唱したマネジメントの概念です。

MBOは、社員が自ら目標を立て、上司が支援をしていくことで、個々のモチベーションやパフォーマンスを上げ、業績や生産性を向上させていく手法です。

目標管理制度(OKR)

OKRとは「Objectives and Key Results」の略で、アメリカのインテル社で生まれた手法です。

OKRでは、個人と企業の目標をリンクさせた難易度の高いストレッチな目標に挑み、パフォーマンスの向上をはかります。

OKRでは、目標設定・進捗管理・評価を短期間で見直すため、変化が激しい現代にあった方法といえます。

MBOとの違いは、以下の通りです。

  OKR MBO
目的 パフォーマンスの向上 パフォーマンスの向上
社員の評価に利用
評価の頻度 1ヶ月~3ヶ月ごと 6ヶ月~12ヶ月ごと
目標設定のポイント 何をどうやるか 何をやるか
目標の達成基準 60%〜70% 100%


MBOとOKRについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

 コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、仕事で高いパフォーマンスを発揮する人材に共通する行動特性(コンピテンシー)をもとにした評価基準で社員を評価する手法です。

あいまいな評価になりがちな業務プロセスを公平に評価できたり、評価の納得度が上がるなどのメリットがあります。


コンピテンシー評価について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

360度評価

360度評価とは、上司や部下、同僚などさまざまな評価者で社員を評価する手法です。

360度評価では、異なる立場から複数の意見を集めるため、人事評価に客観性や公平性などを盛り込めます。

社員にも安心感や信頼感が生まれ、業務や会社へのエンゲージメントを高める効果も期待できるでしょう。

360度評価は人事評価のほかに、人材育成の手段として利用されることもあります。

360度評価について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

人事評価制度のメリット

人事評価制度の導入・運用で得られるメリットを紹介します。

人事評価制度を導入・運用してみて、期待していたメリットが得られない場合は、制度の構造または運用の方法に問題が起きているかもしれません。

従業員のモチベーションの向上

モチベーションを高めるには、行動に対しての動機づけが必要です。

人事評価によって、成果や努力が評価という形で周囲のメンバーから承認されると、動機づけの要因が高まります。

さらに、評価が昇給やインセンティブなどの報酬に反映されれば、モチベーションを刺激できます。

企業理念が浸透する

会社のミッション・ビジョン・バリューや求める人物像を評価項目に反映すれば、目標設定や振り返りのたびに企業理念について考える機会が持てます。

人材スキルを管理できる

人事評価は、社員のスキルや特性を把握でき、評価を集めて管理すれば成果を出している優秀な人材の発掘や、社員の適切な配置や採用に活用できます。

データ管理や人材データ分析ができる人事評価システムの導入もおすすめです。

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社内のコミュニケーション活性化

人事評価制度では、評価面談や1on1などのフィードバックをするため、上司と部下のコミュニケーションの機会が増えます。

上司から適切なフィードバックが受けられれば、信頼関係の構築やエンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

人事評価制度のデメリット

人事評価制度には運用にともなうデメリットもあるため、対策と合わせて紹介します。

社員の不満が出ることがある

どんなに客観的かつ公平に社員を評価しても、社員の自己評価が会社からの評価より低いと不満の要因になります。

社員の不満を防ぐには、的確なフィードバックとフォローアップをする必要があります。

次のポイントをおさえてフィードバックをしましょう。

  • 部下の自己評価を聞き、客観的な評価の根拠を説明する
  • 来期に向けて部下が取り組むべき課題を明らかにする
  • 部下のスキル向上と高い評価を得るための具体的なアドバイスをする

フィードバックを行ったうえで、状況によってはスキルアップ研修や適性を見極めた人事異動などのフォローアップを検討します。


社員の不満の原因や対処法について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

 評価側のスキルが必要になる

適切な評価をするためには、評価者側にも適切なスキルや知識が求められます。

なぜなら、評価者のスキルがないと納得度の低い評価をしてしまうことがあるからです。

評価者には、次のようなスキルが必要です。

  • 明確かつ具体的な目標を設定するスキル
  • 社員をサポートし、目標達成に導くマネジメントスキル
  • 客観的かつ公平に社員を評価するスキル
  • 社員と良好な関係を築くコミュニケーションスキル
  • 評価における誤りやバイアスを認識し対処するスキル

評価者は、人事評価制度を理解して公平で正しい評価をするための研修の受講をおすすめします。

人事評価制度の運用に失敗する理由とは

企業経営にも影響がある人事評価制度ですが、どのような理由で運用に失敗してしまうのでしょうか。ここでは、よくある4つのケースについて説明します。

導入に関する周知不足

人事評価制度の導入を決定しても、社内で周知しないまま運用を始めると、必ずと言っていいほど失敗します。

社員が人事評価制度の仕組みを理解できないまま勧めても、うまく浸透できず、適切に活用されません

導入前には、社員に運用開始日や運用方法などを周知させておかないと、混乱を招いてしまいます。

評価担当者としても、事前準備や知識がなければ、業務の負担が増えることになってしまいます。

社員の意見を尊重しない

人事評価制度の導入にあたり、社員の意見を取り入れず、上層部のみの意見で運用すると、うまく機能しない可能性が出てきます。

企業の幹部クラスや人事担当者のみで人事評価制度の内容や導入スケジュールなどを決定すると、意見が偏ってしまい、人事評価のエラーを引き起こすことにもなります。

評価基準が不明確

評価基準をしっかり定めていない場合も、失敗してしまう可能性があります。あやふやな評価基準だと、評価担当者がしっかりと理解できないため、公平な評価を行うことができません。

公平な評価をしてもらえないと、社員も不満を持ってしまいます

厳しい成果主義

評価基準を明確にするため、厳しい成果主義に偏ってしまうのも、失敗してしまう要因です。

仕事の成果などを評価基準にすると、評価担当者は評価しやすくなりますが、社員の仕事への意欲や向上心を阻害してしまうことにもなりかねないのです。

社員の中には、目標を達成するために、意図的に低い目標を設定するケースも出てきます。

また、減点方式による評価も、社員の意欲低下を招いてしまいます。結果だけを見るのではなく、前期からの成長や仕事への取り組み姿勢についても評価することが重要です。

失敗しない人事評価制度の作り方

人事評価制度に失敗しないためには、適切な手順を踏んで制度設計する必要があります。ここでは、人事評価制度の基本的な作り方について説明します。

評価目的の設定

人事評価制度を設計する場合は、最初に、人事評価を行うための組織的な目標を設定します。

制度を運用することで、社員をどのような状態に変えていきたいか、どのように組織に活用したいかなど、しっかりと定めておきましょう。

通常は、トップマネジメントの意向を反映させることになります。企業理念やビジョン、行動指針などを参考にしています。

評価目的に沿った評価基準の設定

評価目的を設定したら、達成できるような評価の基準を設定します。社員の職務や役割ごとに、求める組織的役割や期待する行動など、それぞれ細分化して定めます。

社員それぞれが、自分の評価基準をしっかりと理解するためにも、社員からみてわかりやすいように言語化しておくようにしましょう。

評価基準に基づく評価項目の設定

続いて、それぞれの役割に応じた評価基準を見ながら、具体的な評価項目を設定します。

その場合、企業の中期的な計画を念頭において、項目を定めておくことをおすすめします。

社員が評価のために仕事をすることによって、計画の達成にもつながりやすくなるからです。

評価方法の設定

最後に、設定した評価項目について、何段階で評価するか、どのように判断するかなど、全体的なルールを設定します。よくあるのは、「A・B・C・D・E」「1・2・3・4・5」を使用した5段階評価です。

評価方法を設定する時には、評価の公平性が担保されるように注意してください。

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人事評価制度を上手に運用するポイント

では、人事評価制度を上手に運用するには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

ここでは、人事評価制度の効果的な運用方法について説明します。

導入目的を周知させる

まずは、人事評価制度の導入目的について、社内にしっかりと周知させておきましょう。

評価担当者と評価される社員の双方の不満は、人事評価制度の目的が理解されていないことが要因です。

社員全員に導入目的を浸透させることによって、人事評価制度に対する意識が変化することになります。

評価基準の明確化

人事評価制度を失敗させないためには、納得できる評価が行えるかどうかが重要なポイントとなります。

そのためには、人事評価を行う前に、企業として期待する人材像を明確化する必要があります。そして、その人材像を基にして、社員全員が理解可能な評価基準を設定しておきましょう。

人事評価制度を導入する前に、評価担当者は、明確化された評価基準のほか、制度の運用ルールや評価方法についても理解を深めておかなければなりません。

運用開始が決定したのであれば、評価担当者に対して、公正な評価を行うためのトレーニングを行うことも大事です。

評価結果のフィードバックを行う

人事評価制度を効果的に運用するには、評価結果をフィードバックする仕組みを導入しておく必要があります。

評価担当者の評価結果をフィードバックして社員の自己評価をすり合わせすることによって、社員の納得性を高めることが可能になるからです。

人事評価の結果は、社員の処遇や、社内での配置・異動にも反映されるほか、企業が求める社員のスキルのレベルを示すことにもなります

そこから、昇給や昇進のために必要なレベルを明確にして、社員に不足するスキルを示すことができます。

それにより、社員のスキルアップへのモチベーションを刺激することが可能となり、社員の人材育成にもつながるのです。

まとめ

厳密に言うと、人事評価制度には明確な失敗の定義はありません。

ただし、自社の企業理念やビジョンとはかけ離れたものや、社員の働き方や仕事内容に合わない制度となると、失敗したとも言えます。

人事評価制度に失敗しないためには、導入時にはもちろん、運用開始後も定期的に見直しをすることが必要となります。

人事評価制度の正しい運用によって社員の公正な評価を行い、社員を育成して能力アップを図ると同時に、業績アップにつなげていきましょう。


画像出典元:Pixabay、Unsplash

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