地方にいながら起業に成功!小値賀布美華の地方を生かした戦略

地方にいながら起業に成功!小値賀布美華の地方を生かした戦略

記事更新日: 2020/02/01

執筆: 大野琳華

現在、福岡や熊本などの地方自治体が起業支援を行っています。しかしまだまだ起業する方が少ないのが現状です。

そんな中、過疎化が進む長崎県平戸市で小値賀布美華(おぢかふみか)さんはスイーツブランドを起業し、楽天でキャラメルブリュレが洋菓子部門第一位を獲得する、イオン九州夏ギフトカタログに採用されるなど実績を作っています。今回はそんな小値賀さんに、起業した経緯や商品戦略について伺いました。

プロフィール

小値賀布美華

1985年4月22日長崎県平戸市生まれ。2016年に経験・資格・人脈・資金ゼロの専業主婦から心優-cotoyu sweets-で起業。SNS・ITを駆使したマーケティングによる商品開発と情報発信で全国に販路を拡大。ふるさと納税制度活用の地方創生事例でも多くの取材を受ける。

子どもに好きなことで自由に生きてほしい

▲今回はテレビ通話による取材でした

もともと私にはビジネスの経験も、資格も、人脈もありませんでした。そんな私が起業しようと思ったきっかけは母になったことです。子どもが生まれたとき「好きなことで自由に生きてほしい」と思いました。

しかし平戸では人口流出が進んでいます。地元の同級生が7~80人いる中で残っているのは片手で数えられるほどです。高校・大学の数も少なく、都市部ほど教育体制は整っていない。職業の種類も少ない。選択肢が非常に少ないんですね。ふるさとは自然が豊かで日本の原風景がそのまま残っていて、大好きですが、一方でそのような状況で果たして、子どもが好きなことで自由に生きることができるのだろうか、そして専業主婦である私自身は自由に生きているのだろうか、と真剣に考えるようになりました。

子供に自由に生きていってもらうには、私が自由に生きていることを見せる必要がある。平戸という場所でも、好きなことを仕事にするのは可能だと証明すれば、きっと子どもたちがやりたいことを見つけた時に背中を押せる。そのためにたどり着いた方法が起業でした。

それからは自分で情報収集を行うとともに、平戸市がふるさと納税の寄付金を基に創業支援制度を立ち上げていたタイミングでもあり、その起業家のための個別無料相談を利用しました。そこでは中小企業診断士の方が相談に乗ってくださいました。

この個別無料相談でとても役立ったのが、データの収集です。平戸の人口推移をデータで予測することで、平戸市という範囲内だけで新規参入としてビジネスを立ち上げるのは厳しいということがわかりました。ここから現在行っているスイーツの全国販売にたどり着きました。

新たな価値「背景」とは

地方での起業はまだまだ珍しいものですが、地方だからこそ生まれる価値があります。それは「背景」という価値です。

例えば弊社で販売しているスイーツに「MANGETSU」というものがあります。これは平戸の生乳と塩を使った塩生キャラメルです。平戸市で1軒だけ守り継がれている酪農家の、しぼりたての新鮮な生乳とお塩にこだわっています。この塩はとても珍しくて、満月の夜にくみ上げられた海水から、昔ながらの製法で作るんですね。

このように地方の素材は、豊かな自然と、実直な職人の手によって、大切に育まれてます。これによって地方というスペシャリティと、満月にあるスピリチュアル性が商品の付加価値となります。地方で起業しているのなら、そこでしかできないものを作らないと意味がないと思っています。

▲「MANGETSU」

商品は選んでいただくことももちろん大事ですが、選ばれ続けること、すなわちLTV(顧客生涯価値)も重要です。プロダクトは品質がいいことなど当たり前ですし、人口がどんどん減っていくこの状況下だと、プロダクトの価値だけではLTVを高めるにも限界があります。そこで「背景」という価値がカギを握ると考えています。

そして「背景」を伝えるために必須となるものがSNSです。いつでもコンタクトをとれるSNSなら商品に込めた想いを直接、丁寧にお客様に届けることができます。

地方にはビジネスにSNSを活用するという発想がまだありません。少子高齢化によってSNSを利用する若者が少なくなっているからです。でも人間味あふれる地方だからこそ、SNSを通じてプロダクトの背景にある「物語」や「ぬくもり」を伝えることができます。

私が今やっている、全国のお客様と直接つながるビジネスを、再現性が高いところまで持っていくことが、地方で、大好きなふるさとで起業した自分の役割だと考えています。

▲小値賀さんのTwitter

成功体験だけではなく、かなり人間味あふれている

失敗はデータでしかない

起業してからは確かに大変でした。中にはしまった!って局面もたくさんありました。でもそれ自体を楽しんでいますし「失敗したな」とは思っていません。

というのも、私は失敗をデータだと捉えているからです。

こうしたらこういう結果になる、では次はどうしようか?と常に最善の案を全力で講じていくことで、できることが日々増えていきます。失敗した、ダメだった、では改善にはなりません。

お客様や仕事、自分に与えられた役割に向き合って、丁寧に行動することを心がけていると、ピンチといえる局面でも逆に応援していただくことが多いです。

たくさんトライアンドエラーを繰り返していく中で、自分にできることは何か、その中でお客様に求められていることは何か、を見出すことができました。何事もやってみないとわかりません。だからこそ「思いついたらすぐ行動」を当たり前にすることが、起業で結果を出し続ける秘訣だと思います。

今はスイーツブランドであるCOTOYUとは別に、これまでの知識や経験を伝えるRedesign the localを立ち上げて、実際に地方事業者がSNSやITを使えるように、発信を始めています。

自分にできる周りのためになることは何かを考えて、常に挑戦を楽しむ毎日です。

取材を終えて

スイーツの全国販売で地方にいながら成功を収めた小値賀さん。取材を終えてからも「大野さんについて聞かせてください!」と言われ、逆取材を受けました。このように人との出会いを大切にする姿勢も、成功の理由なのだろうと感じられるような方でした。

 

 

 

大野琳華

この記事を書いたライター

大野琳華

山口出身。一橋大学商学部に所属。記者・インタビュアーを目指している。

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