3月25日、自民党の農林部会が、新型コロナウイルスの感染拡大に対する経済対策の一環として、国産牛肉の購入を促すための商品券発行を政府に提言する検討に入っていることが、複数の報道によって明らかになりました。
この一件は、和牛商品券問題として、大きな話題を呼んでいます。
確かに、自民党のこの行動は少し問題を孕んだものでしたよね。
でも、でもですよ。
ちょっと考えてみて欲しいんですが、そもそも、
和牛の置かれている現状について、みなさん知ってますか?
毎日スーパーに並んでいる和牛たちですが、生産量や消費量、さらには生産者の数など、実は知らないことだらけですよね。
そこでこの記事では、そんな和牛の現状について、簡単にまとめていきたいと思います。
これを機に、和牛の生産者さんたちにも目を向けてみませんか?
このページの目次
まずは、日本の牛肉需要と牛肉供給について見てみましょう。
※農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」より
まず、需要に関してですが、こちらは2015年から上昇傾向にあることがわかります。
これは、ここ何年か、焼肉などの外食を中心に需要が増したためと思われます。
一方、供給もそれに応じて上昇しています。
産地の内訳を見ると、需要の高まりを輸入で補っていることが見て取れますね。
ではこれを踏まえて、次は和牛の生産量に着目してみましょう。
※農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」より
こちらは、前出の図における国内生産量の部分を品種別にして切り出したものです。
これを見ると、長らく減少傾向にあった牛肉の生産量は、2017年から少しずつ持ち直していることがわかります。
その傾向は和牛に関しても同様ですね。
ちなみに、和牛は肉専用の牛、乳用種とは肉用にされたオスの乳牛、交雑種とは生産コスト低下や肉質向上を目指し肉専用種と乳用種を交配させた牛のことを指します。
個人的な感想ですが、和牛は生産量が落ちているイメージだったので、増加傾向にあるというのは少し意外でした。
これに関しては、国の生産基盤強化対策などによって、繁殖基盤が回復していることが主な理由だと考えられています。
実際に、国の対策のおかげで、繁殖雌牛の飼養頭数は2016年から増加に転じているため、今後も生産の増加が見込まれていました。
(コロナの影響がありますし、今年も生産増加できるかどうかは定かではありませんが…)
さて、そうは言っても、価格が高止まりしている和牛は、国内の安価な牛肉を求めるニーズとマッチしているとは言い難いです。
そのため、和牛の供給先として、輸出が重要となってきています。
※日本農業新聞より
こちらを見ると、輸出額が大きく増加していることが明らかにわかりますね。
この背景には、輸出可能国の増加や、関係者らの地道な販促活動の継続があるようです。
また、国による輸出施設認定も、この輸出拡大の一要因であるように思われます。
例えば、「神戸ビーフ」などの輸出に力を入れる食肉処理施設運営会社の和牛マスターは、2019年に欧米向けの輸出施設認定を受け、認定前に比べ、輸出量は4.5倍にも増えたそうです。
ただ一方で、このような暗い現実もあります。
※農林水産省「畜産・酪農をめぐる情勢」より
国などによる効率化を目指した生産基盤強化もあり、1戸あたり頭数の増加によって、飼育頭数自体はそれほど変化していません。
しかし、やはり和牛の生産者数が減り続けていることは明らかですね。
この原因は、生産者の高齢化問題が解決出来ていないことにあるかと思われます。
生産者の減少傾向を食い止めるためにも、和牛業界を盛り上げていきたいところです。
みなさんはこれらの現状を見て、どのように思われたでしょうか?
私は個人的に、今回の和牛商品券の一件を知り、国は継続的な業界支援をやってこなかったのだろうと踏んでいましたが、実態はそうでもないことがわかりました。
ここまでで触れた、輸出施設認定や生産基盤強化対策は、少なからずプラスの作用を生んでいたようです。
和牛商品券が実行に至るかどうかは定かではありませんが、今後の和牛業界、ぜひとも注目していきましょう。