Web広告のメリットのひとつに、効果の計測が可能ということがあげられます。顧客がWebを通して商品やサービスを購入した際に、どの広告にどれだけの効果があったか計測することで、広告を戦略的に活かすことができるようになります。
広告の種類が1種類だけであれば、効果測定を行うことはさほど難しくはないでしょう。しかし、実際にはバナー広告やディスプレイ広告、リスティング広告などのほかに、YouTubeやTwitter、FacebookなどのSNS広告を活用しているという場合も多いのではないでしょうか。それらすべての広告効果を測定し、分析を行うことは非常に難しいといえます。
こうしたさまざまなWeb広告の効果を測定することで、どの媒体にどれだけの予算をつぎこむことが一番大きな収益につながるのか調べるために使う手段がアトリビューション分析です。
そこでこの記事では基本となる5つのモデルについて詳しく見ていきたいと思います。
インターネットの分野でコンバージョンとは、Webサイトで獲得できる最終的な成果のことを指します。成果の定義を何にするかによって、ことばの意味は変わりますが、ECサイトでは商品購入、企業のサイトや商品の情報サイトでは問い合わせなどがコンバージョンにあたるでしょう。
Webサイト上で商品を購入した場合、コンバージョンに至るまでに複数の接点があります。
たとえば、たまたまSNSで見かけたバナー広告から行き着いたWebサイトで商品の情報を知り、商品の情報をさまざまなサイトで検索したうえで商品を購入したようなケースがあるとします。この場合、コンバージョン直前のラストクリックのみを分析したのでは、正確に広告効果を測定できたとは言えません。
アトリビューション分析は、直接成果に影響のあった接点だけを評価するのではなく、成果につながる複数の接点を一定の割合で評価します。各接点を評価する割合によって5つの基本モデルに分かれていますので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
「終点モデル」では、商品やサービスを購入した際に、顧客が最後に見た広告だけを評価します。
顧客が最後にどのチャネルを利用し、それがどう購入に結びついたかを把握できるため、直接成果につながった接点を正確に評価することが可能になります。
そのため、期間が限定されているキャンペーンや、すでに商品やサービスのことをよく知っている顕在顧客に対する広告を検証する場合にはこのモデルが有効です。
一方、商品やサービスのことをよく知らない潜在的な顧客層に対して、商品のメリットを訴求するような場合には、最後に見た広告以外のさまざまなチャネルに対し価値を見出すことができないため、このモデルは向いていないと言えるでしょう。
「起点モデル」では、商品やサービスを購入する際に、顧客が初めて見た広告のみを評価します。
起点モデルは、潜在的な顧客がどのチャネルから流入し購入に結び付いたかを検証する場合に有効なモデルです。商品やサービスに対する認知度の低い顧客とはじめて接点を持った広告に高い評価を与えられるため、新規顧客を獲得したいときなどに有効なモデルといえます。
自社の商品やサービスに対する顧客の認知度が低い場合は、まずはブランドやサービス名を認知してもらうために広告を出稿する必要があります。顧客が商品やサービスを購入するかどうかは、こうした広告と初めて接触する場面の影響が大きい場合が多いでしょう。
顧客が接点を持ったきっかけを知ることで、潜在的な顧客に対して、自社の商品やサービスを認知してもらうための、有効な広告を出稿できるようになります。
「線形モデル」では、商品やサービスを購入する際に、顧客が接触したすべての広告に均等に貢献度を持たせるという考え方をします。
たとえば、商品を購入した顧客がA,B,C,Dという4つの広告を見てから購入に至った場合、A,B,C,Dの広告にはそれぞれ25%の貢献度があると考えます。
近年、インターネットが一般化し顧客がさまざまなWebサイトやSNSを自由に閲覧できるようになったことから、商品やサービスを購入する前に起こす行動が複雑化しています。そのため、商品やサービスを認知してもらうためには、企業は多くのチャネルに広告を出稿する必要に迫られています。
線型モデルは各チャネルに均等に貢献度が割り振られることから、こうした複雑化した状況において、非常にわかりやすい分析手法と言えるでしょう。
「減衰モデル」は、成果に至った顧客が最後にクリックした広告を高く評価し、それより前の接点を低く評価する分析手法です。
減衰モデルではすべての広告に貢献度を割り当てますが、顧客が最後にクリックした広告に最も高い評価をあたえ、前の接触になるにつれて割合が少なくなるように評価していきます。
例えば、Aから順にB,C,Dという順番に広告をクリックして、商品の購入に至ったとします。貢献度の合計を100%とした場合、Dという広告の貢献度を40%とし、Cという広告には30%、Bには20%、Aには10%といったように貢献度を割り当てます。
購入に至った最後の広告を優先的に評価するため、慎重な分析を行う際に有効な手法といえます。
また、明確に評価の違いが出ることから、比較的短い期間で行うプロモーションなどを検証するのにも向いています。
「接点ベースモデル」では、顧客が接点をもった広告すべてを評価します。評価の割当の際に、最初と最後に接点をもった広告を高く評価するのが接点ベースモデルの特徴です。
例えば、Aから順にB,C,Dという順番に広告をクリックして、商品の購入に至ったとします。貢献度の合計を100%とした場合、AとDには40%ずつ、残りを中間接触のBとCへ10%ずつと均等に割り当てます。
接点ベースモデルではすべての接点を評価しますが、とくに最初の接点と最後の接点について貢献度を高く評価する手法ですので、成果に関する入口と出口をより明確に把握することが可能になります。
顧客が購入直前にクリックした広告だけに注目して広告効果を分析した場合、FacebookやInstagramなどのSNSや、その他のWebサイトでの広告効果は無視されてしまいます。
圧倒的多数のユーザーは、FacebookやInstagramなどのSNSを通して日常的に企業と接点を持っており、たとえばFacebookの投稿を読んで「いいね」したことが、購入のきっかけとなることもあります。
この場合、購入直前の広告の効果だけを評価したのでは、購入のきっかけとなったFacebookの投稿の効果は正しく評価されないことになります。
アトリビューション分析は、FacebookやInstagramといったSNSような、従来の手法では評価ができなかったチャネルの広告効果を正しく評価するための分析手法なのです。
近年は、インターネットやSNSの普及により、広告効果を評価することが難しい時代になっています。むやみに多くのチャネルに広告を出稿しても、思ったような効果を得られないこともあります。
チャネルが複雑化した現代では、より効果的な広告を出稿するためには、顧客が購買行動を起こすまでに関わった接点を5つの基本モデルによって把握し、どのチャネルが顧客の購買行動につながったのかを正しく評価することが必要でしょう。
画像出典元:Burst