日本政策金融公庫とは?概要や融資の手続き、メリット・デメリットも

日本政策金融公庫とは?概要や融資の手続き、メリット・デメリットも

記事更新日: 2020/01/29

執筆: 浜田みか

起業したいが資金が足りない。そんなとき、どう資金を調達すればいいのか、銀行からの融資が受けられないかと思案する起業家も多いでしょう。

しかし、創業前や創業したての起業家が銀行からの融資を得るのは、現実的にはかなり難しいもの。その一方で、こうした起業家に向けて融資をしてくれるのが「日本政策金融公庫」です。

あまり聞きなれない機関名で、創業活動に移るまでは聞いたことがないという人も多いかもしれませんが、起業家にとってはとても心強い味方です。

この機に、日本政策金融公庫がどんな機関なのか、融資を受ける際に必要な手続きはどのようなものなのか、日本政策金融公庫を利用するメリットとデメリットがあるのかを知っておきましょう。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、私たちがよく知る銀行とは異なる金融機関です。では、どんな特徴のある機関なのでしょうか。

ここでは、日本政策金融公庫についての概要と、日本政策金融公庫の融資制度、そして日本政策金融公庫の融資を利用できるケースについてご紹介します。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫とは、2008年10月に、次の4つの政府系金融機関が統合して設立された、財務省が管轄している株式会社です。

日本政策金融公庫の正式名称は「株式会社日本政策金融公庫」といい、略称は「日本公庫(にほんこうこ)」といいます。

  • 国民生活金融公庫
  • 農林漁業金融公庫
  • 中小企業金融公庫
  • 国際協力銀行(国際金融等業務)

一般的な株式会社と異なるのは、資本金の全額が政府による出資という点です。

政府出資ということは、資本金は税金によって賄われていることを意味します。そのため、日本政策金融公庫は株式会社でありながら、特殊会社でもあるのです。

特殊会社とは

一般的な法律とは異なり、効力範囲がさらに限定的に定められた特別法に基づき設立された会社のことです。

資本金の半分以上を政府が出資している法人でもあります。

たとえば、事業が公益になるものや、国の政策に重大な関係性を持つもので、国の監督や保護を必要とする会社が該当します。

首都高速道路株式会社や日本たばこ産業株式会社(JT)なども特殊会社です。

日本政策金融公庫が設立された目的は、国民や中小企業の事業者、農林水産業者といった事業規模が比較的小さな事業者の創業や事業支援で、主な事業内容は資金調達支援です。

日本政策金融公庫が起業家への融資に易しいのは、基本理念に民間の金融機関の補完を謳っているからです。

また、日本政策金融公庫は、金融機関ではありますが、預金業務を行っていません。中小企業を支援するための銀行ですから、融資に特化した銀行といってもいいでしょう。

また、経済の活性化を図る一端としての機関でもあるため、融資のほかにも創業や事業にまつわる支援が受けやすいといった特徴もあります。

日本政策金融公庫の主な業務

日本政策金融公庫が行っている主な業務は、次の3つにまとめられます。

  • 国民生活事業……個人向け小口の事業資金融資、創業支援、事業再生支援など
  • 中小企業事業……中小企業向け長期事業資金の融資、新事業支援、経営課題の解決支援など
  • 農林水産事業……農林水産業者向け融資、経営支援など

個人が事業を始めることは、地域経済活性における一つの要素になります。くわえて、事業活動には当然、取引が生じ、事業者と顧客という関係性ができます。

事業者が増えることは、顧客企業成長の機会にも繋がるのです。

また、日本政策金融公庫は、中小企業の海外展開も支援していますので、グローバル化によってさらに経済の循環を図ることができます。

このように日本政策金融公庫では、個人単位から企業単位と幅広く支援することにより、経済発展に繋げていくための活動が行われているのです。

日本政策金融公庫の融資制度

地域経済や中小企業の活動活性を目的に存在する日本政策金融公庫には、さまざまな融資制度が用意されています。

たとえば、普通貸付、新規開業資金の融資、女性・若者・シニア起業家支援のための資金融資、セーフティネット貸付などがあり、実績も豊富です。

セーフティネット貸付は、一時的に経営状態が悪化しているだけで、回復見込みがある場合にのみ受けられる融資制度です。

会社再建を目指す事業者にとって非常に役立つ制度といえます。また、日本政策金融公庫には災害復興支援のための融資制度もあります。

災害の多い日本国内で事業を行うのであれば、防災はもちろんですが被災したときのこともセットで想定しておくべきでしょう。

こうした融資制度の存在を知っておけば、もしものとき助かります。知識としてだけでも覚えておきたいですね。

なお、日本政策金融公庫の融資には、元本返済について一定の据え置き期間が設けられています。

起業家が注目すべき日本政策金融公庫の融資制度「新創業融資制度」

起業家が注目すべきは「新創業融資制度」です。新創業融資制度は、新しく事業を始める人、または事業を始めて税務申告が2期終えていない人が対象です。

融資金額は3,000万円を上限とし、うち運転資金は1,500万円が上限です。

融資を利用できる要件は3つあり、上記に挙げた対象とは、この要件のうちの1つ目に該当します。

1. 創業の要件

2. 雇用創出等の要件

3. 自己資金要件

雇用創出等の要件には、「雇用創出を伴う事業を始める」「現在の勤め先企業と同じ業種の事業を始める」などが含まれます。

自己資金要件には、「創業資金総額の1/10以上の自己資金が確認できること」と定められています。

しかし、現在どこかの企業に終業中で勤め先と同業種の事業を始める予定であれば、要件を満たしているとみなされます。

利用要件の詳細は、株式会社日本政策金融公庫の『新創業融資制度の概要』で確認できます。 

この制度の良いところは、無担保・無保証人の融資制度であるという点です。「代表者個人には責任が及ばない」とされていますから、個人がリスクを負う心配がありません。

また、利率も大変低く設定されており、2019年1月6日時点での年利は最低1.16%~です。銀行で融資を受ける場合、低くても年利2.5%前後。

創業当初は売上予測を立てていても、その通りに事が進むとは限らないものです。金利差がわずか1%であっても、低いほうが助かるのは言うまでもありません。

日本政策金融公庫の融資は、資金の用途に応じて複数の融資制度が利用できるようになっています。

制度によって要件が異なるため、今後のことを考えて使えそうな融資制度を予めピックアップしておくのもいいでしょう。

日本政策金融公庫で融資を受けるメリット・デメリット

日本政策金融公庫は、実績のない起業家が融資を受けるのに易しい融資先です。

とはいえ、メリットがあればデメリットもあります。利用する前には、まずその長短についても理解しておきましょう。

5つのメリット

  • 事業実績がなくても融資が受けられる
  • 低金利で融資を受けられる
  • 返済据え置きで起業家の負担が軽減できる
  • 信用がつく
  • 事業のアドバイスが受けられる

日本政策金融公庫でも融資の際には、他の金融機関同様に審査があります。

しかし、日本政策金融公庫は創業支援によって地域経済、ひいては国内の経済を活性化するために存続している金融機関。

事業実績がなくても他の金融機関と比べて融資を受けやすくなっています。

融資においても、返済に追われるようでは事業継続が難しいこともあるため、金利もかなり低く設定されています。

さらには、返済の据え置き期間が設けられており、その据え置き期間中は返済に追われることなく事業推進に全力投入できるのも嬉しい配慮です。

そして何より起業家が日本政策金融公庫を利用する最も大きなメリットは、他の金融機関に対する信用がつくという点です。

起業家や創業した会社の返済能力については、他の金融機関同様に審査されます。

しかし、事業実績がない場合、他の金融機関では貸し渋りされることも少なくありません。これは、融資に対する返済実績がないからです。

しかし、日本政策金融公庫で融資審査に通ると、返済能力があるという根拠になります。

そのため、他の金融機関への信用力が増して、日本政策金融公庫以外の金融機関からも融資が受けやすくなるのです。

日本政策金融公庫は、事業経営に対するコンサルティングも行っています。これは、事業発展を支えるためでもあり、日本政策金融公庫の経営方針の一つだからです。

相談を受けてくれるのは、税理士や中小企業診断士といった士業。しかも、プロから無料でアドバイスを受けられるのは、起業家にとって心強いでしょう。

2つのデメリット

  • 審査にかかる期間が長い
  • 保証人が必要になる場合もある

日本政策金融公庫の融資審査は、3週間~1ヵ月程度かかります。一般に、メインバンクのような銀行で融資を受ける場合、審査機関はおおむね1週間程度の短期間で返答があります。

これは、銀行の在り方としての違いが反映されているからです。

一般の銀行は、融資のほかに預金業務も併せて行っています。融資を受けようとする人も、預金口座の利用者であることが多いもの。

同じ銀行内であれば、口座の取引状況を把握するのも簡単です。しかし、日本政策金融公庫では預金業務を行っていません。

残高状況、決済状況、毎月の収支などすべての口座のお金の動きを一件一件確認していくため、時間がかかってしまうのです。

日本政策金融公庫を利用する際、融資によっては保証人が必要になる場合もあります。

「新創業融資制度」は保証人不要ですが、他の制度と併せて融資を受けたいと考えるなら、保証人の有無を確認しておきましょう。

もちろん、新創業融資制度だけを利用するなら、この限りではありません。

日本政策金融公庫の融資に必要な手続き

日本政策金融公庫の審査が長いことは、すでにお伝えしたとおりです。審査申し込みをする際は、不備がないように注意しておきたいところです。

万が一、不備不足があれば、改めて申し込みしなければならず、余計な時間を過ごす羽目になります。

融資手続きに必要!準備すべき書類

日本政策金融公庫の融資申し込みに必要な書類については、各制度や種類で異なる部分もありますが、共通するのは以下の書類を準備する点です。

  • 借入申込書
  • 直近2期分の確定申告書
  • 最新の試算表(決済後6ヵ月以上経過、または創業したばかりで決算を終えていない場合)
  • 創業計画書
  • 履歴事項全部証明書、あるいは登記簿謄本
  • 身分証明書(運転免許証、またはパスポート)

借入申込書は、日本政策金融公庫のホームページからダウンロードできます。

書類の作成方法について疑問や不明点がある場合は、最寄りの日本政策金融公庫の支店や専用の相談ダイヤル、インターネット相談で尋ねることもできます。

日本政策金融公庫

ホームページ>各種書式ダウンロード

事業資金相談ダイヤル 0120-154-505(通話料無料)

書類を準備したら、日本政策金融公庫の各支店窓口で申請を行います。最寄りの支店は、日本政策金融公庫のホームページから確認できます。

融資申込みで注意すべきポイント

担保・保証人不要の「新創業融資制度」を利用する場合、返済能力を信用してもらわなければなりません。融資したものの貸し倒れが起これば、日本政策金融公庫の信用が落ちてしまうからです。

審査に通らない企業には共通点がありますから、自身の事業が該当しないかどうかをチェックしてみてください。

  • 信用情報に問題はないか?
  • 自己資金は十分か?
  • 成功する見込みはあるか?
  • 計画は綿密に練りこまれているか?
  • 成功見込みを感じてもらえるプレゼン準備ができているか?

まず、何よりも重要なのは、返済できると信用してもらわねばなりません。信用の根拠の一つになるのが、個人の信用情報です。

ローンやクレジットカードの支払い遅延、税金の滞納、光熱費や通信料などの支払い遅延……これらは、すべて金融事故として記録に残ります。

返済に遅滞がある場合、「うちへの返済も遅れるかも」「融資金を回収できないかも」といった不信感に繋がりますから、会社単位はもちろん、起業家個人の信用情報にも気を付けましょう。

なお、金融事故の情報は、少なくとも5年。長くて10年間保管されます。

一度でも金融事故を起こせば、その後5~10年間は記録が残ることになりますから、不安な方は個人信用情報機関に確認してみましょう。

自己資金が少なすぎると、融資審査に通りにくくなります。

資金が少ない場合、運転資金のほとんどを融資に頼りすぎることを暗に示しており、経営状況が悪化したときに回復する余力がないと判断されやすいためです。

創業において最も望ましいのは、自己資金が全体の資本比率40%を超えていることです。40%未満であれば、融資申し込みをする前にまずは自己資本比率の割合を上げるように努めましょう。

事業が成功する見込みの薄い企業に融資を行うことがないのは、日本政策金融公庫も同じです。

ですから、事業がどれほどの売上を見込めるかは、とても重要なポイントです。起業家自身に自信があっても、外部から見れば計画に甘さを感じるものもあります。

なかには、計画さえ練りなおせば成功が見込める内容のものもあります。また、融資申し込みをする際、日本政策金融公庫に信頼に足ると納得してもらう必要があります。

プレゼン力が低いと、せっかく成功する見込みが十分あるにもかかわらず、審査で棄却されてしまう可能性があるからです。

こうしたものも、どこが甘いのかアドバイスをもとに見直してみましょう。先輩起業家やすでに事業を成功させている経営者などから意見をもらうのも大切です。

もしも準備万端と申し込みをしても、審査落ちしてしまうこともあります。理由については、他の金融機関同様、日本政策金融公庫も教えてはくれません。ですから、各々で理由を推察しましょう。

上記のいずれかに不備があったはずですから、何が原因になったのか一つ一つ探っていき、次の審査通過に繋げましょう。

一度審査に落ちても、6ヵ月経てば再度審査申し込みを行えます。この6ヵ月間をどう過ごすのかは、とても重要なポイントです。

最初に審査が落ちた原因を改善するのはもちろんのこと、業歴を作って成功の見込みがあることを数字でも提示できるようになると審査時にプラス要素としてみてもらいやすくなります。

審査を通しやすくする方法の一つとして、融資専門の認定支援機関を利用するというのもおすすめです。

こうした機関では、融資申込みで提出する書類の作成、審査通過のために改善すべきポイントを教えてくれるなどの支援を受けられます。

こうした支援機関を利用する際には、資金調達支援の実績、手数料が明らかになっているかを見るようにしましょう。支援実績があまりない機関は、ノウハウが少ないことも考えられます。

まとめ

起業家が初めての創業で融資を受けるときに便利な機関『日本政策金融公庫』。

審査に通れば、その後の資金調達もスムーズに進みます。そのためにも、事業計画をしっかりと練り、不備なく申し込みを行うようにしましょう。

審査期間が長いですから、余裕をもって早めに申込みするようにします。申込前には、審査に通りやすい状況かどうかも併せて確認しておくと安心です。

画像出典元:Burst、Unsplash、Pixabay

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