ストックオプションとは?制度の仕組みと効果的な活用法を解説!

ストックオプションとは?制度の仕組みと効果的な活用法を解説!

記事更新日: 2021/04/02

執筆: 編集部

「ストックオプションを付与されたけどどういうことかわからない…」といった従業員の方や、「ストックオプションを付与して採用や資金調達をしたいけどやり方がわからない」といった経営者の方に向けて、ストックオプションのそもそもの意味から制度の仕組み、効果的な活用法を解説します。

この記事を読むことで、最大限にストックオプションを活用することができるようになるでしょう。

ストックオプションとは?仕組みを解説

ストックオプションとは?

ストックオプションとは、企業が従業員や、役員に対して、株式を現在の価格(権利取得時の価格)で取得できる権利を与える制度です。

権利を与えられた従業員は、将来企業の株価が上昇したタイミングで権利を行使し、その後売却することで差額を利益として得ることができます。

権利を与えられた従業員は、企業の株価が上がるほど自身の得られる利益も増えるため、仕事に対してのモチベーションが向上します。

このストックオプションは、アメリカが発祥の制度で、日本では1997年の法改正において認定されました。

ストックオプションの仕組み

ストックオプションは、あらかじめ決められた期間中であればいつでも、決められた価格で株式を買う権利を付与する、という制度です。

具体例をあげると、

ある従業員が「今後10年間一株1000円で購入する権利」を付与されました。

現在の株価は1000円でしたが、10年後には、会社が急成長を遂げ株価が5000円に上昇しました。

ストックオプションをもらった従業員は権利を行使し、5000円で売買されている株を、1000円で購入することができます。

この差額の4000円が従業員の利益となります。

逆に、10年後に株価が500円になってしまった場合には、権利を行使しないという選択を取ることで、500円の株を1000円で買わなければならないといった事態を避けることができます。

権利を与える側は、現金で報酬を支払うことを避けることができ、権利を与えられた側は、ノーリスクなのがストックオプションの特徴です。

ストックオプションのメリット

優秀な人材をコストなく採用することができる

ストックオプションの付与を条件に採用を行えば、現時点での経費に余裕がなくても採用活動を行うことができます。

特に、株式上場前のベンチャー企業では、優秀な人材を確保するためのキャッシュを確保することは難しいといえます。

そのような場合に、ストックオプションを活用し、将来的な価値を提供することで人材を確保することができます。

また、ストックオプションを付与した場合、権利を行使する前に離職しては損だと従業員側は考えるため、人材の流出防止にも繋がります。

仕事に対してのモチベーションが上がる

ストックオプションは一種のインセンティブ制度ともいえます。自身の仕事が会社に利益を与え、会社が成長した場合、株価も上昇するため、会社の成長=従業員自身の利益となります。

このため、自身の頑張りが報酬に反映されない、という事態を防ぐことができ、モチベーションの向上に繋がります。

リスクなしで株式を保有することができる

従来の株式保有であれば、株価が下がってしまった場合には損益が出てしまいますが、

ストックオプションであれば、株価が下がった場合、権利を行使しないという選択を取ることで損益を避けることができます。

これにより、損するリスクなしで、利益を出すことができます。

ストックオプションのデメリット

ストックオプションの発行時期によって価値が大きく変わる

ストックオプションは、現在の株価で今後株を購入する権利を付与する制度です。

企業が成長し、株価が上がってくるにつれて、ストックオプションの価値は目減りしてしまいます。

例えば、株価が10円の頃に発行したストックオプションと、株価が1000円の時に発行したストックオプションでは、その時点で990円分の価値の差が生まれてしまいます。

モチベーションが低下してしまう場合もある

企業には、円高・円安や、不況など、従業員の努力とは関係なく業績が低下してしまう場合があります。

ストックオプションを付与されていると、株価の低下がモチベーションを削ってしまう要因になり得ます。

このようなことを避けるために、ストックオプション以外にも社員のモチベーションをあげられる制度を導入しましょう。

権利行使後に離職されてしまう可能性がある

ストックオプションを受けるメリットは、金銭的利益が中心となっています。権利を行使し、利益を受け取ると、従業員が離職してしまう場合があります。

ストックオプションを与えるだけでなく、その他の福利厚生などを充実させるなど、権利行使後も残ってくれるような会社づくりを心がけましょう。

ストックオプションの効果的な活用法

優秀な人材の確保に利用する

ストックオプションを利用することで、キャッシュを使わずに人材の確保を行うことができます。

上場を目指しているベンチャー企業や、業績が悪化し、株価が暴落してしまった企業の立て直しなどで効果的に利用することができます。

資金調達に利用する

ストックオプションは資金調達に利用することもできます。

将来的に株価が上昇しそうであると金融機関に思ってもらうことで、その時点では価値のないストックオプションを付与することを条件に、資金調達を行うことができます。

融資ではなく、資金調達を行うことができるため、急成長を目指すスタートアップ企業に向いています。

上場後の資金として活用する

信託型ストックオプションと呼ばれる方法を活用することで、上場後も価値が低いままのストックオプションを利用することができます。

一度大量にストックオプションを発行し、信託会社に委託することで、ストックオプションを冷凍保存することができる、という方法です。

これを利用することにより、上場後にすぐ売却できる資産としてストックオプションを得ることができるため、採用の際など、キャッシュではなくストックオプションの権利で人を雇うことが可能になります。

ストックオプションの種類

ストックオプションは、税制優遇措置が取られているか否かで、得られる利益が大きく変わります。二つのストックオプションの違いと、優遇措置のための条件に付いて解説します。

税制非適格ストックオプション

税制非適格ストックオプションは、税制優遇されていないストックオプションのことです。

このストックオプションの場合は、課税タイミングが権利行使時、株式譲渡時の2回あります。

まず初めに、権利を行使した際に、現在の株価が権利行使価格を上回っていた場合、その差額分が所得として扱われ、所得税が課税されます。

次に、権利を行使して得た株を売却する際、キャピタルゲインとして扱われるため、譲渡所得税が課税されます。

税制非適格ストックオプションの場合、権利行使から株式売却までの間に株価が暴落した場合、損失を被ってしまう可能性があります。

具体的に例えると、100円で10000株まで購入できる権利を、株価1000円の時行使した場合、一株につき900円の利益が発生し、900万円分課税されます。

しかし、株式売却までに大暴落が発生し、一株100円になってしまった場合、得られる利益は100万円から譲渡所得税を引いたおよそ80万円ほどです。

この場合、実際に得た金額は80万円にもかかわらず、権利を行使し、株式を購入した際の900万円分の課税は支払わなければなりません。

税制非適格ストックオプションにはこのような危険性があります。

税制適格ストックオプション

税制適格ストックオプションは、優遇措置を受けることができるストックオプションです。このストックオプションの場合は、前述の税制非適格ストックオプションと違い、権利を行使したタイミングでの課税はありません。

株式売却のタイミングで、売却価格と権利行使価格との差額に所得税が課税されます。

先ほどの例で例えると、価格暴落後の100円で売却したタイミングでの課税になるので、税金による損失を防ぐことができます。

税制優遇措置を受けるためには、既定の条件を満たす必要があり、条件は主に以下のようになっています。

・会社法に沿って発行された新株予約権であり、無償で発行されたものに限ります。

・上場株式の場合、発行済み株式総数の10分の1、非上場株式の場合、発行済株式総数の3分の1を超えた株式を保有する株主と、その親族でないこと

・権利行使価額が、年間1,200万円を超えていないこと

・権利行使期間が、権利付与後2年から10年までの間であること

 

まとめ

多くのメリットがあるストックオプションですが、制度をしっかりと理解し、デメリットの部分に目を向けずにいると、かえって逆効果になってしまう場合もあります。

間違えずに活用できれば、大きな効果を生み出すことができるため、ストックオプションの発行は、慎重に行いましょう。

画像出典元:unsplash

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