新しいビジネスの形態として注目されているのが「サブスクリプション」です。
この記事ではサブスクリプションの意味、サブスクリプションサービスを提供する企業側、サービスを利用する利用者側それぞれのメリット・デメリット、有名なサブスクリプションサービスの例を紹介します。
サブスクリプションサービスの分野も増えています。この記事を新しいビジネスモデルを生み出したり、利用したいサービスを探す参考にしてください。
このページの目次
サブスクリプション(subscription)は雑誌の「予約購読」「年間購読」を意味します。
そこから派生して「有限期間の使用許可」という意味になりました。
私たちが日常で使かうサブスクリプション(略してサブスクとも呼ばれる)とは、モノやサービスを利用する1ヶ月や1年などの利用期間に対して対価を支払うビジネスモデルを指すようになりました。
最近では、ソフトウェアを販売しているAdobeが、箱入りソフトウェアの買い切り方からサブスクリプションサービスに販売方式を方向転換しました。
サブスクリプションサービスは、現在さらに広がりをみせ、ソフトウェア以外でも、映像、音楽、洋服、自動車、ドリンクなど様々な分野で利用できるようになっています。
ソフトウェアを例に買い切り方とサブスクリプションの違いを説明します。
買い切り方 | サブスクリプション | |
支払方法 | ソフトウェアを購入時した時に支払う | ソフトウェアを利用する月ごとや年単位で支払う |
アップグレードへの対応 |
OSがアップグレードした場合、メーカーのサポートが終了する場合がほとんんど |
OSがアップグレードしても、メーカーがアップグレードしたOSに対応したアップグレード版を提供してくれる |
サポート | 古いバージョンのソフトウェアについてはサポートが終了する場合がある | 利用している間はサポートを受けられる |
スーツの買い切り方とサブスクリプションを例にすると次のようになります。
買い切り方 | サブスクリプション | |
支払方法 | スーツを購入時した時に支払う | サービスを利用する月ごとや年単位で支払う |
補修・保管 |
スーツが破損した場合自費で補修する |
サービス利用期間中なら基本無料で補修 |
サービス | 購入時にコーディナーとや日常の手入れの説明はしてくれるが、その後のサービスは基本的になし | コーディネートや日常のお手入れの相談などもできる |
買い切り方は、モノやサービスに対してお金を支払う、サブスクリプションはモノやサービスを一定期間利用できる権利にお金を支払います。
サブスクリプションサービスが受け入れられている背景には、多くの人が「モノをたくさん所有する」スタイルよりも「モノをかしこく利用する」スタイルを受け入れるようになったことと関係があります。
サブスクリプションとは、モノやサービスの利用期間に対してお金を払うサービスです。
サブスクリプションサービスは、導入する企業側・利用者側にどんなメリットをもたらすのか次に説明します。
サブスクリプションサービスを提供する企業は以下の3つのメリットが得られます。
1. 新規利用者を獲得しやすい
2. 継続的な売上が見込める
3. 利用者のデータが取れる
サブスクリプションでは利用者に1ヶ月もしくは1年間どれくらい支払う必要があるのか明示するので、新規の方が試しやすく、企業は新規利用者を獲得しやすいというメリットがあります。
例えば、高級ブランドの腕時計を買うというのは、多くの人にとって敷居の高いものですが、サブスクリプションサービスを利用すれば手軽な値段でブランドの腕時計をレンタルできます。
こうしたサービスで今まで高級腕時計に手が出せなかった層を新規利用者として獲得することができます。
サブスクリプションサービスを提供する企業は、質の良いサービスを提供することで、継続利用者を増やすことができます。
そうすれば、企業は継続的な売上を見込めます。
買い切り方のモノやサービスの場合、毎月や毎年の売上予測は難しい作業になります。
しかしサブスクリプションサービスならば、月の利用者がどれくらいになるかを予想できれば、それに毎月の利用料をかけることで、売上予想も簡単に行えます。
顧客データや利用者の利用傾向などのデータを取ることができます。
そうしたデータは、サービスの向上、顧客満足度の向上、販売促進などに活用できます。
サブスクリプションサービスを利用することで、利用者側は以下の4つのメリットが得られます。
1. お得にモノやサービスを利用開始できる
2. 利用期間中は利用すればするほどお得
3. モノを管理する場所や時間が節約できる
4. いつでも解約できる
初期費用をかなり抑えてモノやサービスを利用できるというメリットがあります。
例えば、車を購入する場合、ローンを組んだとしても頭金で数十万円必要です。さらに自動車取得税や自賠責保険料などの初期費用が必要です。
しかしサブスクリプションサービスの中には、月1万円程度で新車をレンタルできるサービスがあります。
このようにサブスクリプションサービスを利用すれば、初期費用を抑えてモノやサービスが手に入ります。
サービス利用期間中は使い放題ですから利用すればするほどお得です。
サブスクリプションサービスを利用すればモノを管理する時間や場所が節約できます。
例えば、先ほど紹介した車のサブスクリプションサービスでは、保険代・車検代・自動車税などを支払う必要がなく車を維持出来ます。
スーツやブランド腕時計、ブランド家具などのサブスクリプションサービスでは、使わないときはサービス提供者がモノを保管・管理・補修してくれます。
ですから、利用者はモノの管理や維持にかける時間やお金を節約できるというメリットがあります。
モノやサービスを購入しても、気に入らなかった、使い勝手が悪かったということがあります。
買い切り方サービスの場合、ある程度の期間を過ぎれば返品、代金の返却は難しくなり、所持し続けなければなりません。
しかしサブスクリプションサービスならば、もし気に入らなければいつでも解約できます。
気に入らない商品やサービスをいつまでも利用したり持ち続ける必要がありません。これもサブスクリプションの大きなメリットのひとつです。
サブスクリプションサービスの企業側・利用者側のメリットを紹介しました。
しかしサブスクリプションサービスにより生じるデメリットもあります。
導入する企業側・利用者側にどんなデメリットが生じるのか次に説明します。
サブスクリプションサービス導入で企業側に生じる可能性のあるデメリットを4つ取り上げます。
1. サービス開始直後は利益が出にくい
2. 利用者にあきられないようにする必要がある
3. 新しいコンテンツを導入するためのコストがかかる
4. ブランドのイメージダウン
サービス開始直後は、サービスが浸透していないので利用者が少なく、利益が出にくいというデメリットがあります。
利用者に飽きられないようにするために常に新しいコンテンツを用意する必要があります。
映像や音楽は新サービスでは、新しい作品や楽曲を提供しなければなりません。
BtoB(企業向け)のサブスクリプションサービスでは、そのサービスを利用すれば、業務の効率化や経費削減などにつながるサポートサービスを提供するなどを行うことで、あきられて解約されるのを防げます。
利用者にあきられないために新しいコンテンツを提供する必要がありますが、それには導入のためのコストがかかります。
例えば、ブランド時計やスーツのサブスクリプションサービスでは、新しくリリースされた商品、季節に応じた新商品などをラインナップに加えなければなりません。
ITサービスでいえば、新しい機能の開発やバグの修正などが必要です。
そうした新商品・新機能を導入するためのコストがかかるというデメリットがあります。
最近の傾向としてメーカー自らが自社の製品をサブスクリプションサービスで提供するという動きがあります。
自動車メーカーの提供している自社の高級車を定額でレンタル利用できるというようなサービスです。
これにより、高級な製品が安く利用できるということになり、高級品というブランドイメージをダウンさせる可能性があります。
ブランドイメージを維持しながら、サブスクリプションの持つメリットを取り入れられる宣伝戦略を練る必要があるでしょう。
便利なサブスクリプションサービスですが、利用者側にも気を付けなければならないデメリットが3つあります。
1. 使わなくても料金が発生する
2. 使わないサービスや機能が含まれている場合もある
3. 使わなくなっても解約するのを忘れていることがある
申し込んだモノやサービスを使うことがなくても料金が発生します。
申し込んだけど結局使わなかった。という場合はただ料金だけが取られることになってしまうので注意が必要です。
サービスを利用する前に本当に必要なものかどうか見極めるようにしましょう。
音楽や映像配信、ソフトウェアサービスのサブスクリプションの中には、使わないサービスや機能、興味のないコンテンツなども含まれている可能性があります。
例えば、amazonプライムの場合、映画や音楽を無料に閲覧できるサービスのほか、配送料無料などのオプションがついています。
音楽や映画だけが目的の場合は、それに特化したサービスを選ぶ方が安かったり、質が良かったりする場合があります。
月額料金がかかるサブスクリプションサービスに加入する場合は、本当に必要なサービスやコンテンツを提供してくれる他のサービスを探したり、必要なものをだけを買い切りで購入する方がお得なこともあります。
また、いらないサービスや興味のないコンテンツも含めて妥当な価格と感じる場合もあります。
これらの選択肢を比較して、自分で納得できるものを選べるでしょう。
利用しなくなったサブスクリプションサービスの解約を忘れてしまうということがあります。
利用期間の終了前に継続を促すメールが送られてくる場合もありますが、こちらから解約手続きをしない限り自動的に契約が更新されるものもあります。
サービスの利用をしなくなったらすぐに解約の手続きをするようにしましょう。
次に、私たちが利用できる身近なサブスクリプションサービスを紹介します。
代表的な音楽配信サービスです。。
「Spotify」は無料版アプリもありますが、サービスの優れたサブスクリプションサービス版では月額980円で4,000万曲以上の音楽を楽しむことができます
利用料金 | 月額980円 |
おすすめのサービス |
オンデマンド再生 |
「Netflix」は映画・ドラマ・ドキュメンタリー・アニメなどの作品を配信するサービスです。
毎月の定額料金で、いつでもどこでも広告なしでコンテンツを楽しめます。
利用料金 | 月額800円から |
おすすめサービス |
Netflixオリジナルの映画やドラマなどオリジナルコンテンツが豊富 |
Word・Excel・PowerPoint・Outlook・OneNote・OneDriveといったビジネスに必要なツールをひとつにまとめたクラウドベースのサブスクリプションサービスが「Office 365」です。
利用料金(一般法人向け) | 1ユーザー/1ヶ月900円から |
利用料金(家庭向け) | 1ユーザー/1年間12,744円 |
おすすめサービス |
デバイスや場所を選ばずに利用できる |
車を利用する機会が多いが、新車を買うのは難しい、レンタカーでは逆にコストがかかるというかたにおすすめなのが自動車のサブスクリプションサービスです。
代表的な自動車のサブスクリプションサービスに「NOREL」があります。
利用料金(新車の場合) | 月額79,800円(税抜)から |
利用料金(中古車の場合) | 月額59,800円(税抜)から |
おすすめサービス |
利用料金には対人・対物・人身傷害保険込み |
レナウンが提供しているスーツのサブスクリプションサービスが「着るダケ」です。
スーツの提供だけでなく、その手入れ、保管、衣替え時の引き取りまでを一連のサービスとして提供しています。
利用料金(スタートアッププラン) | 月額4,800円(税抜)から |
利用料金(エンタープライズプラン) | 月額5,800円(税抜)から |
おすすめサービス |
6ヶ月毎の衣替えサービス |
「KARITOKE」はブランド腕時計を月額制でレンタルできるサブスクリプションサービスです。
憧れていても今まで手が出せなかった高級腕時計をシーンに合わせて気軽に楽しむことができます。
利用料金(カジュアルプラン) | 月額3,900円(税抜) |
利用料金(エンタープライズプラン) | 月額6,800円(税抜) |
利用料金(プレミアムプラン) | 月額9,800円(税抜) |
利用料金(エグゼクティブプラン) | 月額19,800円(税抜) |
おすすめサービス |
返却期間無し |
「every pass」は自動販売機で買うことができるドリンクのサブスクリプションサービスです。
JR東日本ウォーターサービスが提供するこの新しいサブスクリプションは、JRの駅内におよそ400台ある「イノベーション自販機」に専用アプリ「アキュアパス」をかざすだけで1日1本好きなドリンクがもらえるというサービスです。
利用料金(アキュアメイドプラン) |
月額980円から |
利用料金(プレミアムプラン) | 月額2,480円 |
おすすめサービス |
アキュアメイドプランでは、アキュアのオリジナルブランドの商品がもらえる |
サブスクリプションサービスはモノやサービスを一定期間利用できる権利を買うというシステムでした。
ソフトウェアから始まり、音楽・映像・服飾・自動車・ドリンクなど様々な分野でこのサービスは提供されています。
サブスクリプションサービスは企業側・利用者側に数々のメリットをもたらすので、今後もさらにサービスの拡大が予想されます。
モノやサービスを買うのではなく、賢く利用することができるサブスクリプション。もし素晴らしいビジネスプランがあれば、この分野での新しいビジネスに挑戦するのもいかがでしょうか。
画像出典元:pexels、burst