最近日立や富士通、KDDI等、名だたる大手企業が「ジョブ型雇用」を開始しています。
「ジョブ型雇用」と聞いて
と疑問・不安に感じる人も多いのではないでしょうか?
ジョブ型雇用は、必要スキル・仕事範囲や責任・待遇等が明示されたジョブディスクリプション(職務記述書)を企業が作成し、人材を募集。マッチする求職者が応募し採用される方式を指します。
企業側は求める人材を採用しやすく、求職者側も自分の仕事範囲等が明確となるメリットがありますが、反面柔軟に仕事を任せられない等のデメリットも。
本記事を読むことで、ジョブ型雇用とはなにか、従来の「メンバーシップ型」の採用との違いや、更に詳しいメリット・デメリットについてを理解できます。
企業・個人それぞれに合った雇用方法を検討・選択するためにも、本記事を参考にしてみてくださいね。
このページの目次
ジョブ型雇用は、必要スキル・仕事範囲や責任・待遇等が明示されたジョブディスクリプション(職務記述書)を企業が作成し、人材を募集。マッチする求職者が応募し、採用される方式を指します。
採用された人材は、ジョブディスクリプションの記述通りに仕事をこなします。記載のない仕事は行う必要がなく、自分の仕事に専念できます。
企業側はジョブディスクリプションにより、求める人材を採用しやすくなります。必要スキルや仕事内容・責任範囲等を記載することで、即戦力となる人材を確保することが可能になります。
従来の採用のシステムである「メンバーシップ雇用」との違いをまとめると、以下のような形になります。
ジョブ型雇用 | メンバーシップ雇用 | |
考え方 | 就職(職務) | 就社(会社) |
採用方法・時期 | スキルがあればいつでも。通年。 | 新卒一括。 |
仕事内容 | 限定的。スキルを伸ばせる。 | 多様。各部署で異動あり。 |
報酬 | ジョブディスクリプションに基づく。スキル・成果次第。 | 年功序列。スキルや成果はあまり関係がないことが多い。 |
専門性 | 高い。スペシャリスト。 | 低い。ゼネラリスト。 |
メンバーシップ雇用は会社に「就社」するような考え方です。
これまで新卒の一括採用や年功序列・終身雇用制度と共に、日本の多くの企業で採用されてきました。
会社内を異動し、各部署の仕事を広く把握することで、会社内での人材価値を高めていく方式を指します。
このような人物は「ゼネラリスト」と呼ばれることもあり、各業務について広く知っていますが、専門性には欠ける部分もあります。
職務は限定されておらず勤務地等の変更もあり、原則従わなければいけません。その時の会社の指示や規則に則って仕事を行います。
ジョブ型雇用は会社というよりも「職務」に従事する考え方です。
企業は、仕事の内容・範囲や必要なスキル・待遇(給与や勤務地)等が詳細かつ明確に示されたジョブディスクリプション(職務記述書)を作成し、人材を募集しています。
双方の条件がマッチした場合に採用となり、必要スキルがあれば中途採用でももちろん問題ありません。
主にIT関連や欧米等で使われている採用方式で、ジョブディスクリプションの記述通りに求められる成果を出せれば、休暇や休憩時間・働く場所等、比較的自由な働き方がしやすいスタイルとなっています。
職務をこなすことで更にスキルを磨くことができ、専門性を上げていくことも可能です。
ジョブ型の働き方によって、「スペシャリスト」と呼ばれる各分野の専門性の高い人物を目指す事ができます。
冒頭でも触れましたが、現在日立や富士通、KDDI等の大手企業でジョブ型雇用の導入を開始しました。
それには従来のメンバーシップ雇用のデメリットが大きく関係しています。
例として
1. 利益を出しにくい
2. リモートワークが行いにくい
等が挙げられます。
メンバーシップ型雇用で利益を出しにくい原因として、以下のような理由が挙げられます。
ジョブローテーションは企業を広く把握し業務を行うことができますが、専門性は上がらず、利益を上げるための効果的な施策を打ち出すことが難しい場合もあります。
また、終身雇用・年功序列制度のため、一生懸命に仕事をしなくても自動的に給料が上がることや、簡単に解雇されないために意欲が低い人材も中にはいるので、企業としては人件費が上がる割には生産性が上がらず、頭の痛い問題になることも。
ジョブ型雇用では成果を出す必要があるため、労働者がモチベーションを保って仕事ができますし、結果生産性や利益の向上を目指せます。
ジョブ型雇用が注目される理由のもう1点として、メンバーシップ雇用ではリモートワークの行いにくいということが挙げられます。
生産力の向上のため働き方改革が推進されており、それに伴いリモートワークも普及してきています。
最近では新型コロナウィルスの影響により、更にリモートワークが注目・推進され、多くの企業に広がりました。しかしメンバーシップ型雇用では、雇用方法の特徴上リモートワークが行いにくいという欠点があります。
メンバーシップ雇用では新卒の一括採用や、ジョブローテーションにより、経験・スキルがない状態で新しい職場で仕事を始める場合も多く、採用・異動後、主に対面で仕事を指導してもらい、仕事をこなせるようになります。
しかし、新卒の採用直後や異動後、全く経験のない分野でリモートワークとなれば、うまく指導や引き継ぎができません。何をするべきかわからず、困る場合も多いでしょう。
また必要な成果等を明確に決められているわけではなく、良い結果を出すために自宅内で長時間労働となってしまう等の問題点もあります。
その点ジョブ型雇用であれば、働き始めから即戦力となることが期待でき、会社独自のやり方はあっても基本的なスキルを備えています。また必要な成果もジョブディスクリプションにより可視化されているため、リモートワークにも対応しやすいのです。
ジョブ型雇用の特徴について解説しましたが、実際にジョブ型雇用にすることでどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは3つのメリットについて解説します。
企業・個人どちらにも共通するメリットとして、お互いに認識の違いなどのミスマッチが起こりにくいことが挙げられます。
ジョブディスクリプションに条件が明記されているため、企業側は求めている人材を採用しやすく、求職者も仕事内容・待遇等を把握してから応募できます。
入社後に企業側の「スキルが足りなかった」や労働者側の「思っていた仕事ができなかった」「給与等の待遇が思っていたより悪かった」というミスマッチを減らせます。
スキルを満たしているため、企業としては即戦力として働いてもらうことが可能です。また労働者としても得意分野で仕事ができる上に、必要な成果が決まっているのでモチベーションを高くもって仕事を行うことができます。
等、労働者は成果を出すために能動的に勉強したり、時間や方法を自分で選択していくことで効率よく仕事を進めることが可能です。
結果、企業としても期待通りの成果を受け取ることができます。
これは労働者側のメリットとなりますが、自身のスキルアップが目指せます。
特定の分野の仕事をこなしていくことにより、専門性を高めることができ、その分野のスペシャリストを目指すことが可能です。
多くの会社が即戦力となる人材を求めているため、転職時も専門性の高さを武器にして、更に条件の良い会社で採用してもらえる可能性がアップします。
ジョブ型雇用には多くのメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
ジョブ型雇用はジョブディスクリプションに基づいた内容で契約となるため、そこの記述にない内容を行ってもらうことはできません。
企業内で別部署に欠員が出ても異動してもらうことができず、柔軟に別の仕事を行ってもらうこともできなくなっています。
ここがメンバーシップ型雇用との大きな違いやデメリットと言えるでしょう。
多くの求職者が、基本的には一番待遇の良い企業で勤めたいと思っています。
そのためスキルがあり即戦力となるような人材は、高待遇の企業に勤める場合が多く、またいま現在働いている会社よりも良い待遇の会社があれば、転職されてしまう恐れもあります。
良い人材を確保するためには別企業よりも待遇を良くしたり、労働者が気持ちよく働けるような環境を準備することが必要です。
その会社にとって有用なスキルがない場合には就職・転職が難しくなり、いままでメンバーシップ型雇用で勤めていた場合にも転職は不利となることもあります。
必要なスキルが備わっていなかったり、仕事の目標が達成できない場合には解雇されてしまう場合も。
基本的には会社側で研修や勉強会を行うこともメンバーシップ雇用よりも少ないため、自分で勉強したり、スキルを磨いていくことが必要となります。
自分の強みがわからない場合や、様々な業務をしてみて自分に合った仕事を探していきたいという場合にはジョブ型雇用は向かないかもしれません。
ジョブ型雇用には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。雇用形態を変化させるのは企業・個人どちらにとっても大変な部分も多いでしょう。
しかし企業の利益を高めるためには、自社にあった方式を選択することが時には必要です。
また個人としても自分のスキルアップを目指したり、良い条件の会社に転職したいという場合には従来のメンバーシップ雇用の会社ではなくジョブ型雇用を行っている会社を選ぶことが有効でしょう。
これからの時代、企業・個人どちらも、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、自分の目的に合わせた雇用方法を選んでいくことが重要といえます。
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