ワークフロー専門家 廣田 真一がオススメするワークフローシステム 5選

ワークフロー専門家 廣田 真一がオススメするワークフローシステム 5選

記事更新日: 2021/02/17

執筆: 吉田杏佑

株式会社AnityA IT戦略支援 ワークフロー専門家

廣田 真一

ワークスアプリケーションズで会計/人事システムコンサルタントをしたのち、事業計画コンサルタント/PMOで独立。その後ビズリーチにジョインしコーポレートITを務める。現在はエンタープライズITの変革支援の株式会社AnityAでIT戦略支援を行いながら、株式会社NumberにてSaaS人材サービス:チャンピオンサーチ運営。ワークフロー/会計/CRM/RPA 等、IT活用の浸透とIT人材活躍の場作りがミッション。

株式会社AnityAでのIT戦略支援、コーポレートITの立場でも数々のワークフローシステムを利用、比較検討してきました。
今回はそれぞれのワークフローシステムの特徴や良いところ、選ぶときのポイントを紹介します。

ワークフローシステムの選び方


ワークフローシステム関連の情報は意外と少なく、どう選べば良いかは非常に悩ましいはずです。選定ポイントは大きく3つあります。

1つ目は導入目的です。
ワークフローツールの導入目的は、内部統制の強化、業務効率向上の2点に集約されるのではないでしょうか。

内部統制というと難しいと思われるかもしれませんが、「会社としての意思決定が正しく行われたことを証明するための仕組」のことです。内部統制の要素のひとつが証跡を残すことです。

例えば、証跡管理が求められるのは、VCからの資金調達時や監査役を設置したタイミングが挙げられます。
株主や監査役に対して会社は、ルールに基づいた企業運営が行われたのか、しっかりと記録し伝えること=「証跡」が必要になってきます。

証跡をデジタルで残すことに特化したシステムが、ジョブカンやrakumo、TeamSpiritなどの汎用系ワークフローシステムです。
これらのシステムは申請書フォームを作ることができ、申請に対して承認して欲しい人を指定、または承認経路を自動で設定することで、効率的に承認/証跡の記録を行うことができます。

業務効率向上を狙った具体策としては、ペーパーレス化/情報の一元化等が考えられます。ITリテラシーの高い企業であれば、他システムとのデータ連携も視野に入ってくるかもしれません。

ワークフローシステムは使い方が幅広いため、どんな証跡を管理する必要があるか、どんな業務効率向上施策を実施したいか、自社の導入目的をしっかりと定めることが必要です。

 

2つ目は自社にエンタープライズ対応が必要なのかです。
エンタープライズの基準は様々ですが、「海外展開」「社員数500人超」「複数社対応」の3点を基準に考えられるとよいと思います。
 エンタープライズ企業の場合、承認経路の複雑化、複数システム/会社が関連する承認、組織の兼任兼務、複雑な組織構造などSMB企業にはない課題が顕在化してきます。
 そうするとワークフローシステムに求められる機能が増え、例えば各システムを繋ぐAPI連携が必要になったり、ある程度のカスタマイズ性を有するシステムを選定する必要があります。より機能重視で選定する必要が出てきます。

 

3つ目は自社の運用体制です。

ワークフローシステムは組織変更対応や新しい申請の追加など運用の手間が他のシステムに比べて高くなりがちです。そのため、自社で導入・運用するときに誰が責任もって面倒を見るのかが重要になります。

ワークフローシステムを提供する会社のほとんどが、他にも業務系ITツールを展開しています。例えばジョブカンであれば、ジョブカン勤怠なども提供していますし、rakumoであればrakumoケイヒなどを提供しています。

情報システムの観点でいうと、提供ベンダーが統合されているほうが管理運用が楽になりますし、ID基盤が共通化されているツールも多いので、同じシリーズを導入することで管理運用を一元化し、運用業務を肥大化させない視点も重要です。

1.ジョブカンワークフロー

https://wf.jobcan.ne.jp/

ジョブカンワークフローは申請書の項目によって記載項目を変更できるなど、自由度が高いことが特徴です。
例えば、NDAに必要な項目と経費申請に必要な項目を条件によって出し分けるような申請書フォームを作成できます。
一つのフォームに複数の役割を持たせられる点が特徴になりますね。

とはいえ、管理が煩雑になりがちな面もあります。
ひとつの申請書フォームから入力項目&承認経路の分岐が発生すると考えると、複雑になるイメージが容易につきますよね。

新しい申請書を作成するときに別のフォームにしたら良いのか、同じフォーマットでカスタマイズしたら良いのかなどを、社内でしっかり検討する必要があるでしょう。

費用に関しては非常にリーズナブルで、1ユーザーあたり300円で利用できます。
ワークフローシステムとしてやりたいことはだいたい実現できますし、コストパフォーマンスは高いのではないでしょうか。

一方、API連携はまだまだの印象です。フォームのカスタマイズ性が高い分、データの整合性が取りにくく、データ管理のハンドリングが難しいです。
そのためジョブカンワークフローのデータを別のシステム(会計システムやCRM)で使いたいというニーズが出てきた場合には、かなりの工夫が必要です。

以上を踏まえるとSMBなどで、他システムとの連携等は考慮せず、承認&証跡管理をデジタルで始めたい企業におすすめのサービスです。

 

2.rakumoワークフロー

https://rakumo.com/product/gsuite/workflow/

rakumoワークフローはジョブカンに比べてよりシンプルなワークフローシステムです。

申請書フォームが、PDFレイアウト(帳票)に標準対応しているため、デジタル管理/紙管理のどちらにも対応できることが特徴です。また機能的にもシンプルで、誰でも簡単に申請フォームを作成できます。

また特にGoogle SpreadSheetを選択項目マスタとして活用できる機能があったり、SalesforceやGoogle Workspace (旧 G Suite)との強い連携も、rakumoワークフローならではの特徴になります。

価格も1ユーザーあたり300円とリーズナブルで、導入実績も多く、申請書テンプレートも豊富に用意されているため、ITに苦手意識がある企業でも安心して導入できるサービスと言えるでしょう。

APIも一通りそろっていますが、データ形式が申請フォームごとに異なる点はジョブカンと同じです。フォーム上での項目分岐がない分、データ管理の整合性は取りやすいでしょう。
とはいえ、エンタープライズ向けシステムと比べると充実度が低く、他システムでワークフローのデータを使いたい場合には、一工夫が必要です。

そのためSMBなどで、元々の紙運用を違和感なくデジタル化したい企業におすすめのサービスです。

 

3.ServiceNow

https://www.servicenow.co.jp/

ServiceNowは、社員数が千人から数万人ほどのエンタープライズ企業に導入が進んでいるシステムです。

ServiceNow最大の特徴は、ワークフロー機能をコアとしたPaaS(Platform as a Service)であることです。
PaaSならではの高い拡張性と、ワークフローの途中で他システムのAPIをキックできるなどの柔軟なワークフローの構築が可能で、ワークフローとタスク管理を中心に様々なシステムとの連携が可能です。
(Platform of PlatformsとServicenow社は呼んでいたりします)

例えば新規で取引先が増えるときには、与信管理や反社チェックのために「新規取引先申請」といったワークフローが必要です。

ServiceNowでは、(構築さえすれば)帝国データバンクのデータとAPIを介して連携することができるので、申請の途中で正しい情報や前年度の売り上げなどの付加情報を自動で反映する与信管理/反社チェックのワークフローを構築することが可能です。

内部だけではなく、外部の情報とも連携して申請・承認を進められるため、業務が大幅に効率化されます。

また、ServiceNowが持っているITIL(IT インフラストラクチャライブラリー)の概念に基づいたアーキテクチャも特徴のひとつです。
申請と申請から派生するタスクが別概念で管理されており、タスクに対して「どのくらいのリードタイムで対応したか」を管理できます。継続的な生産性の改善ができる仕組と言えるでしょう。

さらにマルチテナントでありながら、物理的にもインスタンスが分かれている点もエンタープライズ仕様と言えます。SaaSでありながら、他ユーザーのインスタンス利用状況の影響を受けないように設計されています。

ただし導入や運用はかなり大変です。
しっかりと構築しなければ運用できませんし、様々なツールとの連携を想定する必要があるため、導入規模が大きくなります。

多くの場合では導入・運用のためにコンサルタントの手を借りる必要があり、ライセンスとは別途で予算を確保する必要があるでしょう。SalesforceエンジニアのようにServiceNowエンジニアという職業があるほどなので、外部のサポートが必須になると思います。
費用についても多機能である分比較的高額で、ジョブカンやrakumoとは数倍変わってきます。
さらに、ITSM/CSM/ITBM/NowPlatform・・・などなどServicenowのプロダクトラインナップとライセンス体系が複雑なので、自社に合った見積を要求するのも一苦労という点が辛いですね(笑)

とはいえ機能的には非常に素晴らしいシステムなので、情報システム部門やコーポレート部門のシェアードサービス化が視野に入っている企業にはおすすめしたいシステムです。

 

4.intra-mart ワークフロー

https://www.intra-mart.jp/products/iap/im-workflow/

intra-mart ワークフローは老舗といえるシステムで、大企業での導入が比較的多いです。

またオンプレミス型のシステムでカスタマイズ性が非常に高いため、様々な用途で利用することが可能です。

導入する企業によって、インフラ構成は様々、要件も多種多様であるため、intra-martはシステムというよりも開発基盤といったほうがよいかもしれません。
 特にデータベースが別建てになるため、様々なサブシステムが同居する構成になることが多く、一枚岩のワークフロー/業務基盤を構築することが可能です。

利用想定によって(予算を度外視すれば)システム構成を自在に組むことができるため、あらゆるビジネスニーズにフィットさせることができます。

反対に言えば、導入のためにシステム設計が必要ですし、構築/運用保守は大変です。
SaaSのように契約した日に動かすということはできませんし、開発するための人材・体制の用意も必須です。

とはいえ導入体制が用意でき、実現したいことが明確なエンタープライズ企業は選択肢に入ってくるのではないでしょうか

 

5.kickflow

https://kickflow.com/

kickflowは株式会社kickflowが提供している汎用系ワークフローシステムです。

APIへの力の入れ方が充実している次世代のサービスといったイメージがあります。

まずチケットという概念を軸にワークフローが構成されており、データ管理とワークフローのバランスがとてもよいサービスだと思います。
SMBからエンタープライズまで視野に入れた機能構成が特徴的で、APIの充実も他システムとの連携を見据えていると思いますし、申請者/承認者向けインターフェースで英語対応しているのも日本のワークフローシステムでは珍しいです。

また、組織図のバージョン管理機能はかなり特徴的ですね。
例えば、上期と下期で組織形態が変わることってよくありますよね?このような組織変更のシステム対応が辛いのがワークフローシステムの特徴なのですが、組織図のバージョン管理があることで、組織変更対応を事前に準備しておくことが可能です。

一般的なワークフローシステムだと、新しい組織図をシステムに反映するまでに3営業日のリードタイムが必要となると、月初3日までは申請/承認作業ができない、または先月の組織図ベースで申請/承認しなければならない。といったことが起こってしまいます。(反映に時間がかかるので、使わないでください。という会社もあります。)

これは、従来のワークフローシステムの痒いところに手が届く画期的な機能ですね。

これからが注目のサービスです。

 

ワークフローシステム導入を検討するべきタイミングまとめ

株式会社AnityA IT戦略支援 ワークフロー専門家

廣田 真一

最後に導入するべきタイミングです。
 
ワークフローシステムは、社員数が1~10名ほどの会社には正直必要ありません
この規模だと組織の一人ひとりの顔が見えますし、意思決定や確認事項はFace to Faceに近いコミュニケーションが可能だからです。プロジェクト管理やCRMでの顧客管理を強化するほうが重要ではないでしょうか。
 
社員数が10名を超えてきたタイミングでも、まだ導入には早い印象です。
例えば、承認/確認をしてもらいたいときには、チャットツールなどで直接社長にお願いすることが多いのではないでしょうか。わざわざワークフローシステムを導入するほうが生産性が下がる可能性が高いはずです。
Slackのスタンプで承認/確認を運用しているベンチャー企業は多いですよね。
 
 
対してワークフローシステムが必要になるのは、社員が20名を超えてかつ、経理/総務の方が入社されたタイミングです。
このくらいの規模になってくると、コーポレート組織が立ち上がり、人と人の間で、情報/データのバケツリレーが始まります。となってくると、コミュニケーションツールでは、対応に抜け漏れが発生しがちです。だれがどんな権限を元に意思決定を行ったのかをワークフローシステムを導入してデジタルで記録する有用性が出てくるでしょう。
 
とはいえ、証跡/記録を残すことに主眼がおかれたワークフローは、販売管理/会計システム等の基幹システムと呼ばれる分野から置いてけぼりにされがちで、組織の拡大に伴って非効率なプロセスが塩漬けされがちです。
 
本来、ワークフローシステムは会社の意思決定ルールの元、情報/データのバケツリレーに一定の規則性(これが内部統制の仕組とも言いますが)を持たせることで経営の透明性と効率を上げることが目的です。
 
人と人とのコラボレーションの結果、企業としての意思決定をデジタルで記録するワークフローの分野は、実はデジタルトランスフォーメーションの本丸です。
 
ぜひ自社にあったワークフローツールを導入し、事業成長の基盤にしていただきたいと思います。

 

廣田 真一のおすすめITツールまとめ

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