事業目的を定款に書く時の決まりやポイント、注意点についても解説!

事業目的を定款に書く時の決まりやポイント、注意点についても解説!

記事更新日: 2020/03/17

執筆: 高浪健司

会社を設立する際、必ず作成しなければならない書類のひとつに定款があります。

この定款には絶対的記載事項として記載が義務付けられている事項があり、そこには「事業目的」という項目があります。事業目的には会社が行う事業内容を記載しますが、実際どのように書けば良いのか分からないといったケースが非常に多いです。

そこで今回は、定款に記載する事業目的の書き方や作成ポイント、注意点など、事業目的について詳しく解説していきます。

定款とは何か

会社を運営していくためには、社内における根本的規則(ルール)を定める必要があります。

定款は、その定めた会社の根本的規則を記載しておくための書類であり、会社は定款に従って運営していかなければなりません。そのため、「会社の憲法」とも呼ばれていたりします。

この定款は、会社を設立する際に必ず作成しなければならない書類のひとつで、定款に記載する内容としては、会社の名称をはじめ会社の所在地、事業目的、株式、機関設計など、根本規則を記載します。

なお、法人形態が株式会社の場合、定款を作成しただけでは法的効力はありません。

定款を作成したのち、公証役場にて公証人よる認証を受け、それが認められてはじめて定款としての法的効力を持つものになります。

ただし、公証人よる定款認証は株式会社のみで、持分会社である「合同会社・合資会社・合名会社」については、定款の認証手続きをおこなう必要はありません。

定款に記載すべき事項

会社の根本的規則を定め、それを記載しておくための定款ですが、創業者が自由に作成するものではありません。

定款は、会社法にて定められた内容に従って作成しなければならず、記載する内容としては、「必ず定める必要がある項目(絶対的記載事項)」と「定めるかどうかは自由な項目(相対的記載事項・任意的記載事項)」の2種類です。

なお、記載が義務付けられている「絶対的記載事項」では、下記の内容を記載しなければなりません。

  • 会社の事業目的
  • 会社の商号
  • 会社の本店所在地
  • 会社設立時に出資されるもの(資本金)
  • 発起人となる人の氏名と住所

この絶対的記載事項は、定款を作成するにあたって必ず記載しなくてはならないものですので、項目に抜けや間違いなど不備があった場合、その定款は無効となるので注意が必要です。

こうして、絶対的記載事項には5つの項目を記載することが法律で義務付けられていますが、なかでも重要なのは「事業目的」です。

この事業目的には書き方に注意点がある他、取引相手や金融機関が自社を判断するための判断材料となる場合もあります。

続いて、事業目的について詳しく見ていきましょう。

定款記載の事業目的とは

事業目的とは、会社が「どのような事業をおこなっている会社なのか」といったことを明らかにするためのものです。

また、事業目的は会社の商号や所在地、資本金の額などと同様、登記事項証明書に記載されるため、基本的に手続きさえ行えば誰でも閲覧できる状態となります。

なお、取引相手や金融機関などでは会社の信頼性を確認するため、事業目的を閲覧するケースが多く、万が一記載している内容に疑問が生じるなどの場合、会社の信用低下に繋がり、ビジネスチャンスを大きく損なう可能性があります。

そのため、事業目的は具体的に分かりやすく、適切かつ明確に伝わる内容でなければなりません。

事業目的の適格性を知ろう

定款に記載する事業目的に関して、「適法性」「明確性」「営利性」この3点を備えていなければならないとしています。

では、この「適法性」「明確性」「営利性」について、それぞれどのような意味を表せしているのかを見ていきましょう。

適法性

適法性とは、法律や公序良俗に反することを目的とした事業を行ってはならない。

といったものです。たとえば違法薬物を製造したり販売したり、カジノ経営など、当然ながらこうしたことを事業目的とすることはできません。

明確性

事業目的を見たとき、誰が見てもその内容が理解できるよう、一般的に広く知られている言葉でなければならないというのが明確性です。

たとえばニッチ市場における専門用語や真新しい言葉だと明確性に欠けるため、登記ができない可能性があります。

もし、広く知られている言葉なのかどうか心配な時は、その用語が「広辞苑」や「現代用語の基礎知識」、「イミダス」などに記載されているかを確認すると良いでしょう。

それらに記載されている場合は明確性があるものと言えます。

業界では当たり前のように用いられている用語でも、一般人からすると何のことだか全く意味がわからないものなのだと認識しておくことが重要です。

営利性

営利性は、しっかり利益を追求することを事業目的としているかというところです。株式会社など営利法人においては、その事業をおこなうことで利益を追求していくことが大前提となります。

そのため、ボランティア活動や寄付など非営利事業を目的とすることは、基本的にできません。

営利法人は、しっかりと利益を追求した事業内容にする必要があります。

事業目的を決めるうえで、こうした「適法性」「明確性」「営利性」の3点が適格であるかどうかが問われるということをしっかりと認識しておくことが重要です。

なお、事業目的の適格性を判断するのが難しいといった場合は、法務局にある「登記相談窓口」の利用をおすすめします。

事業目的を記入する際のポイント

さて、事業目的について大体分かったところで、次に事業目的を記入する際に気をつけておきたいポイントを解説していきます。

なお、事業目的を記入する際のポイントは、大きく分けて3つです。

1. 将来の事業展開を見据えて記載する

事業目的を記入する際に多くの人がやってしまいがちなのが、直近でおこなう事業目的だけを書いてしまうことです。

もちろん、この先もずっと同じ事業だけをやっていくという場合であればそれでも構いませんが、会社は日々成長し変化を伴っていくものです。

ちなみに、原則として定款に記載されている事業目的以外は行うことはできません。

つまり、会社の状況が変わり、新たな事業を展開したいとなった場合でも、定款に記載されていないと事業に関しては基本的に行うことができないというわけです。

そのため、すぐには行う予定がなくても、将来的に取り組む可能性がある事業も含めて記載した方が良いのです。

定款に記載する事業目的に上限数はありませんし、記載しているからといって必ず行わなければならないという決まりもありません。

2. 同業他社の書き方を参考にする

実際に事業目的を記入しようとしても、どのように記入したら良いのか分からないという場合があります。特にはじめて会社を設立する人にとっては尚更です。

もし事業目的の記入に悩んだ場合、同業他社の定款をチェックするのも非常に参考になります。

定款は企業のホームページで公開されているケースが多く、公開されていない場合でも、法務省にて所定の手数料(登記簿謄本:600円、登記事項要約書:450円)を納付すれば誰でも法人登記簿から定款の閲覧が可能です。

同業他社の定款をチェックしてそれらを参考にすることで、間違いなども減らすことができるので、効率よくスムーズに進めていくことができるでしょう。

3. 書きすぎないこと

定款に記載する事業目的の数に関して特に制限はありません。そこでついついやってしまいがちなのが、とりあえず何でもかんでも記載しておくというケースです。

しかし、事業目的を記載し過ぎることは「一体この会社は何を行っているのだろうか?」など、会社の評価を下げる原因にもなり得ます。

前述のとおり、定款に記載されている事業目的は、取引相手や金融機関がチェックする項目でもあるため、過度な記載は避けるべきです。

定款に記載する事業目的は「明確かつ分かりやすくこと」が、もっとも重要なのです。目安としては、5~10個程度にするのが妥当です。

事業目的を記入する際は、このように3つのポイントがありますので、こうしたポイントをしっかり抑えながら、明確かつ分かりやすくなるよう事業目的を記入してください。

事業目的の作成例

定款に事業目的を記入する際、下記の図のように、第1章の第2条に記入するのが一般的です。

では、実際に事業目的を記入する際の例として、起業する率が比較的高い業種とされている「インターネット関連」「飲食店関連」「コンサルタント業」の記載例を見ていきましょう。

インターネット関連

1. インターネットに関する総合コンサルティング業務

2. インターネットのホームページの企画立案、制作及び保守に関する業務

3. インターネットのホームページの企画制作並びに運営管理

4. Webサイトの企画、設計、開発、運営及び販売

5. インターネットのコンテンツの企画・制作・運営

6. インターネットを利用した各種情報提供サービス

7. インターネット及びコンピュータ等の情報処理端末機器を利用した情報処理サービス業務、情報提供サービス業務

8. インターネット等のオンラインを利用した市場調査、宣伝及び広告等の受託

9. インターネットでのサーバ設置およびその管理業務

 

飲食店関連

1. 飲食店業

2. 喫茶、和洋食堂の経営及び仕出し弁当の製造、販売

3. 飲食店の経営、企画及び経営のコンサルティング

4. 飲食店に関する人材育成のための教育事業

5. ケータリングサービス業

6. インターネットを利用できる喫茶室、飲食店の経営

7. ○○○○料理店の経営

 

コンサルティング業

1. 経営コンサルタント業

2. 経営コンサルタント及び各種マーケティングリサーチ業務

3. マーケティングに関するコンサルティング

4. 販売促進活動に関するコンサルティング

5. 教育事業に関する企画、調査、運営、受託、並びに経営コンサルティング

6. 環境保全に関する調査及びコンサルタント業務

7. 国際標準化機構(ISO)認証取得コンサルタント業

このように、事業目的の記載例を紹介しましたが、いずれにしてもメイン事業を最初に記載するようにします。

また、最後の項目には「前各号に付帯関連する一切の業務」と記載するようにしましょう。

この一文を入れておくことで、具体的に書かれていない場合でも、少しでも関連性が持てれば事業としておこなうことが可能となります。

業種によって許認可等の申請が必要となる

事業内容や業種によっては保健所や警察など行政機関からの許認可・届出が必要な場合があります。

なお、おこなう事業に対して許認可が必要な場合、定款の事業目的に適合した内容のものが記載されていなければなりません。

下記は、許認可が必要とされる業種の一例です。

このように、業種によって様々な許可や届出、登録などが必要となっています。

なお、上で挙げた許認可はあくまで一例であり、これ以外にも許認可が必要な業種は沢山ありますので、自分がやろうとしている事業に対して許認可が必要なのかどうかを事前に確認する必要があります。

定款記載の事業目的に違反した場合は?

前述のとおり、定款に記載する事業目的には「明確性」「営利性」「合法性」が備えていなければならないという制約があります。

また、事業目的に記載されていない事業については、原則として行うことはできません。

しかし、たとえ事業目的に記載されていないビジネスを行ったとしても、特に罰則規定があるわけではないため、それに反したとしても刑事罰や行政罰が課されるということはありません。

また、事業目的以外のビジネスを行ったとしても、すでに取引しているものが無効になるこということはなく、事業目的に記載されていないからという理由で取引相手が取引を無効にすることもできません。

さらに、定款に記載されていなくても、本来の事業目的を達成するために必要で有効的な行為であれば、事業目的の範囲内の取引であると解釈されることがほとんどです。

とは言え、事業目的に記載されていないビジネスを行ったことで会社に損害が生じた場合、株主や債権者などとの間でトラブルが発生し損害賠償を求められる可能性はあります。

いずれにせよ、定款に記載されている事業目的以外は、原則として行ってはならないとされているわけですので、たとえ罰則規定が無いとしても、関連性のないビジネスは行うべきではありません。

万が一事業目的に記載していないビジネスの利益が大半を占めているようであれば、しっかりと事業目的の追加手続きを行う必要はあるでしょう。

 

関連性のない事業を新たに行いたい場合

前述のとおり、定款に記載する事業目的は絶対的記載事項として定められているため、必ず記載しなくてはなりません。

また、定款に記載している事業目的以外、原則として行うことはできないとしています。

そのため、事業目的を記載するは、会社設立直後に行う予定がない事業であっても、将来的に行う可能性が多少なりともある場合は、とりあえず記載しておくことが重要です。

とはいえ、ビジネスを展開していくなかで、事業目的に記載されていない事業を新たに始めたいといったケースも無いとは言い切れません。

会社は成長していくものですので、新規事業の進出など方向転換は決して珍しいことではありません。

このように、定款に記載されていない事業を行う場合は、定款の内容を変更する必要があります。

ただし、変更するといっても単に定款を書き直すだけではなく、定款変更は株主総会での「特別決議」を行い、変更日から2週間以内に法務局で変更登記申請が必要です。

なお、事業目的を変更する際の手順としては、下記のとおりです。

【事業目的を変更する際の手続き手順】

このように、原始定款に記載されていない事業を新たに始めたい場合、今すぐに始められるものではなく、まずは上記1~5のステップを段階的に行う必要があります。また、申請時にかかる費用として、登録免許税3万円がかかります。

なお、事業目的の変更に限らず、定款の内容を変更する際には、必ずこうした手順を踏む必要があるということを、しっかりと覚えておくと良いでしょう。

まとめ

定款は会社を設立する際、必ず作成しなければならない書類です。

なかでも「絶対的記載事項」にあたる事業目的は、時に取引相手や金融機関などが会社をチェックするための確認材料として閲覧する重要な項目となります。

また、事業目的は誰が見ても理解ができる「明確性」、目的に違法性がない「適法性」、しっかりと利益を求める「営利性」が必要要素として求められ、原則として記載している事業目的以外、事業を行うことができません。

そのため、設立直後に行う事業だけではなく、将来やる可能性のある事業に関しても盛り込んでおくことがポイントです。

事業目的に入っているからといって、必ずやならければならないという決まりはありません。

さらに、一通り事業目的を記入したら、最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」と一文入れておくようにしましょう。

この一文を入れておくことで、事業目的に記載がなくても、広範囲に事業を行うことができます。

事業目的は当然ですが、何より定款自体ビジネスを行う上で非常に重要な書類となります。

また、定款の作成には会社法など専門的知識が必要となるため、作成で困ってしまったときは、司法書士や弁護士などに相談することをおすすめします。

画像出典元:PhotoAC

最新の記事

ページトップへ