いよいよ軽減税率導入!飲食店がすべき対策や準備を徹底解説!

いよいよ軽減税率導入!飲食店がすべき対策や準備を徹底解説!

記事更新日: 2024/02/16

執筆: 浜田みか

飲食店にとって軽減税率制度は、理解しておくべきことが多く、対象品目を把握するだけでも大変です。しかし、経営にもかかわる部分ですから、知らないでは済まされません。

そこで今回は、軽減税率の導入に伴い、飲食店が施すべき対策と準備について徹底解説します。本記事末尾では、POSレジの導入や受発注・請求システム改修でかかったコストの補助金についても紹介しています。

ご自身の店舗で対策できているかどうか、確認しながら読み進めてください。

軽減税率とは

2019年10月1日より実施された軽減税率制度。増税された10%との線引きが難しいという声も上がっています。そんな軽減税率制度とはどんなものなのか、解説します。

軽減税率の概要

軽減税率は、税制抜本改革法第7条に基づいて導入された消費税の新制度で、飲食料品にかかるものを対象に、8%の消費税が据え置かれたものです。

理由は、標準税率が8%から10%になったことで増える低所得者層の経済的負担の軽減が目的です。

しかし、あくまでも消費税率を10%に一本化するための当面の措置であり、永続的に続くものではないと考えられています。

現時点で、経過措置の期限は設けられていません。期間中は、全ての事業者に対して軽減税率(8%)と標準税率(10%)の2種類の税率(複数税率)への対応が求められます。

軽減税率には、対象となる品目が定められています。

  • 酒類と外食以外の飲食料品
  • 週2回以上発行され、かつ定期購読契約を交わした"紙"の新聞

飲食店側は、これらの品目に基づいて客へ提供するサービス価額の税率に対応することになっています。

飲食店に関係する「外食」の定義

対象品目として定められている「酒類」「外食」には、それぞれ要件があります。

酒類の要件

アルコール1%以上の全てのアルコール類

外食の要件

場所:テーブル・椅子・カウンターなど、飲食に用いられる設備のある場所がある

サービス:飲食料品を飲食させる役務を提供している

 

軽減税率の対象品目

上記の要件を踏まえたうえで、軽減税率・標準税率に該当する飲食料品を見てみます。

人の飲食用に提供されるものが軽減税率の対象です。よって、飲食以外に利用できるものと酒類のうちアルコール分1%以上のものが標準税率の対象になっています。

さらに外食かどうかの判断は、客が店舗側から提供されているスペースを利用するか否かがポイントです。店舗側が提供している飲食スペースで飲食する場合は、外食に当たりますので標準税率が適用されます。

また、表での記載を省きましたが、飲食店によっては雑誌や新聞の定期購読契約をしているところもあるでしょう。

"紙"の新聞で定期購読契約を交わしている場合は軽減税率の対象になりますが、雑誌はもとから軽減税率の対象ではないため、標準税率が適用されます。

コンビニや売店などでの販売される紙の新聞、および電子版は標準税率の対象です。

軽減税率の基本知識については、こちらの記事で詳細を掲載しています。併せてご確認ください。

 

 

気になる軽減税率の適用範囲と対策

何が軽減税率かどうか分類だけで見ると、ご紹介した一覧を参考にしていただければ、迷うことはさほどないでしょう。

しかし、サービス内容によっては、どちらの税率を適用すればいいのかわかりづらいケースもあります。

軽減税率の適用の基本的な考え方

イートインスペースを設けているパン屋で、商品を購入した女性をモデルに見てみましょう。

飲食設備がある飲食店では、商品の提供あるいは注文を受ける際に、「イートイン」か「テイクアウト」なのか、購入者の意思を確認することが推奨されています。

返答次第で、適用される税率が異なるからです。


テイクアウトの場合は、外食に該当しないため、軽減税率の対象です。イートインでの飲食は外食扱いのため、標準税率が適用されます。

これが基本形だと考えると、それ以外のケースではどのように対応すればいいのでしょうか。ここからは、ケース別に見ていきます。

テイクアウトからイートインに!適用税率は?

購入者の中には、会計時に示していた意思とは異なる行動をする客もいます。

上図の女性も、テイクアウトで商品を購入したものの気が変わり、店内で飲食しようとしています。

どのようなケースでも、商品代金を支払う際に客が示した意思が尊重されます。そのため、適用税率は会計時に計算した軽減税率のままです。

ただし、イートインスペースで飲食できる商品を掲示板等を使って限定している場合は、少し対応が変わります。

まず、客の意思を確認しなければならないのは、指定されている商品に対してのみです。それ以外はイートインスペースで飲食できないものという扱いになるため、意思確認は必要ないのです。

たとえば、イートインで飲食できるのがドリンクとパン類のみと取り決めている場合。

これらの商品を客が購入する際に、イートインかテイクアウトかの意思確認をします。ここでイートインと言われれば外食扱いとなるため、標準税率が適用されます。

反対に、テイクアウトとと言われれば、軽減税率の対象になります。

購入商品のうち一部だけを持ち帰り!適用税率は?

購入した商品のうち一部は店内で食べ、残りはテイクアウト。このケースでは、提供される商品が一つの商品として扱われるセット商品か否かが判断のポイントです。

わかりやすい例では、ハンバーガーショップのセット商品をイメージしていただくといいでしょう。

セット品

ハンバーガー+ドリンクMサイズ 400円(税別)

単品

ハンバーガー 280円(税別)
ドリンクMサイズ 200円(税別)

このようなメニューがあったとします。セット品を購入して、店内でドリンクだけ飲み、ハンバーガーを持ち帰るといった場合。

セット品なので、商品価格は400円の固定です。消費税がかかるのは、この価格に対してとなりますから、分けて計算することができません。

このケースでは税率の高い方が適用されるため、標準税率で会計します。

この場合、購入者が「ドリンクだけ、8%の消費税がかかる」と誤解していることもあります。

会計でトラブルを避けるためにも、「セット商品をご購入のお客様へ」としたうえで、「お買い上げいただいた商品の一部をイートインで飲食される場合は、消費税10%でのお会計です」と案内文を掲示するなどして、周知に努めましょう。

また、単品購入の場合、複数税率での会計になります。店内で飲食するドリンクは外食扱いとなるため標準税率が、ハンバーガーは外食に当たらないため軽減税率がそれぞれ適用されます。

セット商品での適用税率と異なるため、単品購入とセット商品購入の税率の違いについても、案内をしておくのが望ましいでしょう。

店外に誰でも利用可能なベンチあり!適用税率は?

誰でも座れるけれど、店の客も座れるベンチを店舗側が保有・管理している場合、適用税率を判断するポイントに迷いますよね。この場合についても、線引きがされています。

国税庁が発行している令和元年8月版『消費税 軽減税率制度の手引き』によると、飲食設備についての範囲が明確に記載されているのです。

飲食設備とは、飲食に用いられる設備であれば、その規模や目的を問いません(原文)

加えて、次のようにも記述されています。

飲食目的以外の設備等に設置されたテーブル等であっても、これらの設備が飲食に用いられるのであれば、飲食設備に該当します。(原文)

このことから、店舗側が保有あるいは管理しているベンチは、店外に設置されていたとしても飲食施設とみなすことができるということです。

設置したのが別の事業者でも、客を飲食スペース代わりにベンチへと案内したり、配膳・下膳、清掃まで店舗側で行っているのであれば、自らの飲食設備として管理支配していると考えてよいということになっています。

同様に考えて、イベント会場や公園などにやってくるキッチンカーの場合、店が用意した簡易ベンチやテーブルセットは、飲食スペースとみなすことができます。

公園にあるベンチは、誰でも利用できますが、これは事業者の所有物ではなく公共物です。

そのため、キッチンカーで購入した商品を公園のベンチで食べる場合は、テイクアウト扱いとなり、軽減税率の適用になります。

店内での飲食とは異なり、購入者自身、外食とテイクアウトの違いが判断しづらいところです。そのため、トラブルを避けるためにもベンチやテーブル、看板に案内を掲示しておくのもいいでしょう。

容器・包装箱・梱包材を使って販売!適用税率は?

軽減税率が適用されるのは、飲食料品が基本です。そんな飲食料品を入れる容器や包装箱は、提供される飲食料品と一体になっているかどうかが判断のポイントです。

たとえば、洋菓子のプリン。プラカップやガラスカップに入れた状態で販売しますよね。入れずに販売すれば、形が崩れて商品価値を失ってしまいます。

このように、販売に際して食料品に必要なものであれば、提供時の税率は軽減税率が適用されます。

ところが、容器を食器として再利用できることを目的にしている場合は、この限りではありません。再利用を目的にした容器は飲食料品の提供になりませんから、商品価格を見直す必要があります。

この場合、商品は一体資産という扱いになりますので、次の要件を満たしている場合のみ軽減税率を適用することができます。

商品の販売価格(税抜き)が1万円以下、かつ食品の販売価格(税抜き)の占める割合が2/3以上のもの

一体資産は、容器と商品の価格が一体となり、一つの販売価格で売られているものに限ります。

なお、詰め合わせ商品のようにカップや皿などと飲食料品を組み合わせて提供している場合は、セット価格のみ掲示している商品に対してのみ、軽減税率を適用できます。

セット価格のほかに、付属品と飲食料品の価格をそれぞれ掲示しているケースでは、一体資産とみなされず、複数税率による会計となります。

これをセット価格と合致するように調整する場合は、どちらの品から割引を行ったのか、レシートに印字して明示する必要があります。

このように、カップなどの資材と組み合わせて飲食料品を販売する場合、資材の価格に適用されるのは標準税率です。

これは、中身の入っていないカップは「飲食料品の提供」に該当しないからです。ドリンクのストローやカップ、ケーキを入れる梱包箱にも同様のことが言えます。

販売時と仕入れ時で、適用される税率が異なるため、何がどの税率に当たるのか注意してください。

資材の仕入れコストで負担が大きくなるようであれば、使用する材料を変更したり、メニュー価格に反映したり、メニューそのものを見直すなどしましょう。

飲食店がやっておきたい軽減税率制度への準備

軽減税率制度の実施によって、飲食店は次のような影響を受けます。

複数税率に対応のPOSレジ導入・システム改修

今回の税制改正によって、レシートに複数税率に対応した印字を行うことが求められるようになりました。

請求時に2つの税率が混在する飲食店では、複数税率に対応したPOSレジの導入や、商品管理などのシステム改修といった対策を取る必要があります。

軽減税率制度の実施は以前から通達があったこともあり、すでに契約や導入を済ませている飲食店も多いことでしょう。

新制度対応のPOSレジ導入やシステム改修にかかったコストは、補助金が適用されるケースもあります。対象・要件などについては、本記事末尾で解説しています。詳しくは、そちらをご確認ください。

現場による軽減税率への対応

複数税率で会計することのある飲食店では、客から説明を求められることもあります。システム導入にあたって操作が変わったりすることもあります。

これらに対してスムーズに対応できるようにスタッフ教育が必要です。

店舗としての準備では、メニュー価格の変更に伴うメニュー表の差し替えや、値札の変更があります。

複数税率によって売上が低下しないように、割引クーポンを用意したり、アイドルタイムに来店する客への特典の用意なども必要かもしれません。

経理面による軽減税率への対応

軽減税率は、仕入れ時の請求にも適用されます。対象品目は同じでも、販売時に適用する税率と、販売商品の仕入れコストにかかる税率が必ずしも一致しないからです。

たとえば、提供する飲食品の材料として使われる「本みりん」や「日本酒」は、アルコール分が1%を超えるため軽減税率の対象外となっています。

以前は税率8%で仕入れられていたものが、10%になったため負担が増えます。コストと売上のバランスを見ながら、必要に応じて仕入れる品物を変更する、仕入れ先を変えるなどして収益確保に努めましょう。

税務面による軽減税率への対応

軽減税率制度や増税の実施に伴い、経理方式も改められています。帳簿の記し方について、軽減税率の対象品目と標準税率が適用される品目を分けて記載することが定められました。

たとえば、『売上』の科目。軽減税率対象分と標準税率対象分に分けて記載し、それぞれで集計します。

これに関連して、2019年度の確定申告から提出すべき申告書類が増えました。今年は早めに申告準備に取り掛かりましょう。

複数税率の対応に向けた補助金制度

複数税率に対応したPOSレジやシステムを導入した飲食店に対して、政府は補助金制度を用意しています。現在、搬入待ちの飲食店にも関係しますので、ぜひ確認しておいてください。

軽減税率対策補助金

軽減税率対策で、POSレジや周辺機器を買い替えたり、システム改修をした場合に受けられる補助金制度です。補助金ですので返済は不要ですから、ぜひ申請するようにしましょう。

なお、こちらの補助金は3種類あり、それぞれで申請が必要です。POSレジや機器をリースも補助の対象になっています。

申請方法は2パターンあり、事業者が自ら直接申請するか、ベンダーによる代理申請が可能です。

A型:複数税率対応レジの導入等支援

こちらは、複数税率に対応したPOSレジの導入に対する補助金です。レジ1台につき、総額費用のうちの2/3、かつ上限20万円までが補助されます。

B型:受発注システムの改修等支援

こちらは、受発注システムを複数税率対応に改修したり、買い替えたりした場合に申請できます。1台につき、設置経費の2/3で、かつ上限20万円までが補助されます。

C型:請求書管理システムの改修等支援

こちらは、請求書管理システムを複数税率に対応できるよう改修したり、買い替えたりした場合に申請できる補助金制度です。

1台につき、設置経費の2/3で、かつ上限20万円までが補助されます。

それぞれに申請要件が定められていますが、おおよそ次の要項を満たしていれば、申請可能です。ご自身の店が該当しているか、チェックしてみてください。

  • 中小企業もしくは小規模事業の事業者
  • 標準税率と軽減税率の両方の商品を販売している、またはイートインコーナーがありテイクアウトもできる店舗設備になっている
  • 複数税率に対応しているPOSレジが該当店舗に導入されていない

申請の受付期間は、2019年12月16日(消印有効)です。交付を受けるには、2019年9月30日までに導入、または契約が締結されていることが必須です。

それぞれのより詳しい内容は、独立行政法人中小企業基盤整備機構の軽減税率対策補助金事務局が運営している『軽減税率対策補助金』のホームページでご確認ください。

まとめ

飲食店にとって軽減税率制度は、対象品目も細かく分かれており、把握するだけでも大変です。

しかし、経営にもかかわる部分ですから、知らないでは済まされません。飲食店の場合、それぞれでモデルも異なりますし、一律に対応することが難しい部分もあるでしょう。

コスト増への対策や店舗運営への対策、やらなければならないことはたくさんありますが、始まったばかりの今、対策を講じておけば、周知が進めば後が楽になります。

まだ始まって間もない本制度では、来店客自身も混乱の中にいます。こんなときだからこそ飲食店側が率先して周知を図っていくように努めたいものです。

画像出典元:Pixabay、Unsplash、PEXELS、O-DAN

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