毎年度行われる税制改正。昨年度2018年度の税制改正では個人所得課税の見直しやたばこ税の見直しなどが行われました。
今年度2019年度の税制改正については、2019年10月からの消費税増税に伴う措置や中小企業の生産活動等をサポートするための措置などが行われる予定となっており、特に中小企業や個人にはぜひチェックしておいてほしい内容となっています。
今回は、2019年度の税制改正について、概要から重要ポイントまでを徹底解説していきます。
このページの目次
2019年度の税制改正は、以下のとおり6つの要素から成立しています。
1. 個人所得課税
2. 資産課税
3. 法人課税
4. 消費課税
5. 国際課税
6. 納税環境整備
それぞれ、おおまかに説明していきましょう。
個人所得課税に関する税制改正の取り組みとして「住宅ローン控除の拡充」が行われることになりました。
これは、2019年10月からの消費税率の引き上げに際し、需要変動の平準化の観点から行われるものとされています。
つまりは、消費税増税によって住宅の買い控えが発生するのをなるべく抑えようとする目的で行われるものです。
他にも今後、
の3つの取り組みが行われることになっています。
これらのうち「ふるさと納税制度の見直し」については、現在問題視されている過度な返礼品を送付するような団体をふるさと納税の対象外とするという内容ですから、現在ふるさと納税を活用している方は今後の動向に注目しておくべきでしょう。
資産課税に関する取り組みとしては、おもに以下の4つの取り組みが行われます。
これらの中では特に3つ目の「教育資金の一括贈与非課税措置の見直し」が、個人の生活に深く関与してくる取り組みといえるでしょう。
これは、直属尊属(父母、祖父母など)から教育資金を受け取った際の非課税措置について、いくつか条件が変更になるというものです。
これから教育資金を贈与しようとする場合は、チェックしておいた方がよいでしょう。
法人課税に関する取り組みとしては、おもに以下の2つの取り組みが行われます。
法人課税の税制改正として注目すべきは、「中堅・中小企業による設備投資等の支援」でしょう。
軽減税率の適用期限の延長や中小企業投資促進税制等の延長など、中小企業の優位性を維持する内容が定められていますから、中小企業の経営者や経理担当者はしっかり押さえておきたいところです。
消費課税に関する取り組みとしては、おもに以下の2つの取り組みが行われます。
「車体課税等の見直し」は絶対に押さえておきたいポイントです。
これまた消費税率の引き上げに伴い行われるものです。
国際課税に関する取り組みについては、やや難しい言葉づかいになりますが「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを踏まえた対応」として、おもに以下の2つの取り組みが行われます。
「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」とは、多国籍企業による各国の税制の違いや抜け穴を利用した課税逃れに対応する国際連携プロジェクトのことです。
多国籍企業の中には、例えば事業活動を通じて得られた利益をタックス・ヘイブンなどに移転させることで課税を逃れようとする企業があります。
グーグルやアマゾン、アップル、マイクロソフトなどといった一流企業も、こういった行動をとったことで名指しで批判されたりしています。
そういった行動がとれる状況を無くすべく行われているのがBEPSプロジェクトであり、日本でもこのプロジェクトの行動に連携すべく税制改正が行われているのです。
納税環境整備は毎年の税制改正で行われているものですが、2019年度の改正では以下のような取り組みが行われることになっています。
基本的には、個人や中小企業の納税行動に関してガラリと変わるような内容ではありません。
このほか、仮想通貨取引の普及に伴って、より利便性の高い納税環境の整備も検討されています。
2019年度の税制改正で中小企業が最も注視すべき取り組みは「中堅・中小企業による設備投資等の支援」です。
これはさらに細かく、以下の3つの措置に分けられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まず、2019年現在、租税特別措置法などにより、中小企業の法人税率は15%と定められています。
租税特別措置法は効力にリミットがある「時限立法」なのですが、今回の税制改正により、このリミットが平成33年(令和3年)3月31日まで延長されることになりました。
次に、中小企業投資促進税制とは、中小企業が設備投資や生産性向上などに費やした費用について即時償却及び税額控除を認めることで、中小企業の生産活動を後押しする制度です。
これについても租税特別措置法と同様にリミットがあったものですが、やはり同じように平成33年(令和3年)3月31日まで延長されます。
地域未来投資促進税制とは、
事業について、「地域経済牽引事業」として都道府県からの認可を受けられれば減税措置が受けられる、という制度です。
これについては平成33年(令和3年)3月31日まで延長されることに加えて、減税措置の効果をさらに引き上げる見直しが行われます。
2019年度の税制改正により新たに行われるのが「中小企業における災害に対する事前対策のための設備投資に係る税制上の措置」です。
これは、自家発電機や排水ポンプなどの機械装置、データバックアップシステムなどの器具備品、貯水タンクや浄水装置などの建物附随設備などの防災・減災設備に対する投資について特別償却ができる、という内容です。
ひらたくいうと、防災や減災に関する設備投資については今後、税制上の優遇措置を受けられるようになる、という話です。
これは災害大国である日本において、サプライチェーンや地域の雇用等を守るという観点から取り入れられた措置ですが、企業にとっても災害等発生時の事業継続は重要なテーマといえますから、よく押さえておくべき内容といえるでしょう。
2019年度の税制改正により個人の生活に最も大きく関わってくるのは「住宅ローン控除の拡充」です。
先述のとおりこれは、2019年10月からの消費税率アップに伴い導入された取り組みです。
具体的には、消費税率10%が適用される住宅取得等については、住宅ローン控除の控除期間を10 年間から13 年間へと3年間延長する、という内容です。
なお、11年目以降の3年間については、
のいずれか少ない金額を税額控除する、という内容になっています。
ですから基本的には11年目以降は控除額が小さくなりますが、これは先述のとおり、そもそもは消費税増税による影響を抑えることが目的であるため、「住宅ローン控除の拡充」による節税効果が大きくなりすぎないようにするための内容だと解釈できます。
もう一つ、個人の生活に大きく関わる見直しとして「車体課税等の見直し」が挙げられます。
まず、消費税率がアップした後に購入した新車については、小型自動車を中心に自家用乗用車にかかる自動車税の税率が恒久的に引き下げになります。
一方で、エコカー減税についても見直しが行われますが、こちらは免税対象が絞られたり、軽減割合が小さくなったりなど、消費者にとってはネガティブな影響が出るものですから、これからエコカーを購入しようとする方はよく調べておいた方がいいかもしれません。
今回は、2019年度の税制改正について、概要からチェックしておいてほしい重要ポイントまでを徹底解説してきました。
中小企業においては、中小企業者等の法人税率の特例及び中小企業投資促進税制等の延長等をはじめとした様々な優遇措置が延長・新設されるということ。
そして個人の生活については住宅ローンの控除及び自動車税の恒久的引き下げなどといった措置が行われること。
これらが今回の税制改正の重要ポイントといえるでしょう。
画像出典元:Pixabay、Unsplash、O-DAN
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