節税対策はしっかりできていますか?
法人の節税対策は個人事業主が行うそれよりも格段に複雑で難しいモノです。「しまった!急いでやらなければ!」と思っても、すぐに実行できる手段は限られていますし、急ごしらえの節税対策はかえって時間的コストをかけすぎたりなどのリスクを生じます。
そこで今回は、法人における節税とはどのようなものなのかを解説しつつ、具体的な節税対策の内容についてもご紹介していきます。
このページの目次
まず法人の節税方法について知るには、少なくとも自分の法人の収支状況を正確に把握する必要があります。
これにより、法人としてどのような種類の税金をどのくらい支払っているのかが分かります。
例えば、後述するとおり法人の減税方法の基本は「お金を過度に手元に残さないこと」です。
これは、法人の手元に残るお金=課税所得金額には「法人税」がかかることに加えて、「法人住民税」や「法人事業税」などといった税金の算出根拠にもなっていることが理由です。
収支状況を正確に把握することで、法人として取り組める節税対策と効果を検証することができるようになります。
節税方法には、決算の直前であってもできる方法と、前もって計画しておく必要がある方法とがあります。
最大限の節税効果を得たいのであれば、年間の節税計画を前もって立てておくことが重要です。
例えば、役員報酬の金額を適切に設定することも立派な節税方法の一つですが、役員報酬を決められる期間は決算終了後3ヶ月間となっています。
ということは、少なくともこの間に適切な役員報酬金額を導き出して、節税計画に組み込む必要があるわけです。
他にも、実行するには時間が必要な節税対策があったりしますから、取りうる手段は何かとそれを実行するにはどのような手続きが必要なのかを十分に把握した上で計画を立てるようにしましょう。
では、具体的に法人の節税方法にはどのようなものがあるのかを理解しましょう。
法人が取り組める節税方法には、「お金を使うかどうか」と「節税効果が永久か(一時的でないか)、繰り延べるためのものか(一時的なものか)」という2つの軸で分かれる4つのタイプがある、ということをまず覚えてください。
これら4タイプについて、それぞれ先述のとおり決算の直前でもできる方法と、前もって計画しておく方法とがあります。
つまり節税方法には大まかに分けても8つものタイプがあるといえます。
それぞれ、詳しく説明していきましょう。
先述のとおり、法人の場合は稼いだお金=課税所得金額をそのまま残しておくと税金がかかってしまうという特徴があります。
つまり税金を節約するには、使うべきものにはお金を使って課税所得金額を少なくすることが重要だといえるのです。これが「お金を使うタイプ」の節税です。
お金を使う節税の中でも、その効果が一時的なものではない方法としては、例えば「備品の購入」が挙げられます。
法人が使用するコンピュータやデスクセットなどの備品は、1つあたり30万円未満のものであれば、事業年度あたり300万円をリミットとして「経費」として計上することができます。
経費として計上すればその分、課税所得金額が減り、最終的に課税所得金額により算出される各種税金の税額が小さくなる、という寸法です。
ただし、不要な備品を大量に購入してしまうようなやり方は、法人の資金力を無駄に消費するだけなので良くありません。
お金を使う永久的節税としては他にも、決算賞与(ボーナス)の支給などが該当します。
備品の購入も決算賞与の支給も前もって計画しておく必要はないために、節税の一環として取り組む事業者が多い方法です。
お金を使う節税のうち効果が一時的な方法としては、必要なコストの「前払い」があります。
例えば法人で借りている事務所等の家賃について、翌年度分を前の事業年度のうちに支払ってしまえば、その事業年度の経費として算入することができます。
ただし、あくまで本来は翌年度分に支払う経費を前払いしているだけなので、翌年度はその分算入できる経費が少なくなります(翌年度もまた同じことをすれば別ですが)。
ですから「節税」の効果としては一時的なものだ、というわけです。また、金額が大きすぎるものであったり、売上と関係があるような支払いは対象外であるなど、すべての前払いコストで使えるわけではない点に注意が必要です。
お金を使う節税は、経費などを増やすことにより課税所得金額を減らして税額も小さくする、という仕組みが基本的なものでした。
それに対してお金を使わない節税には、以下のとおり様々な方法があります。
中でも比較的小規模あるいは設立したての法人でも検討できそうなのは、上2つの方法です。
各種税額控除とは、例えば雇用者の数が増えた場合の税額控除(雇用促進税制)や、あるいは雇用者への給与支払いが増えた場合の税額控除(所得拡大促進税制)などが挙げられます。
また、中小企業を対象とした「中小企業投資等促進税制」という控除も存在します。
役員報酬の金額などについて検討するのも重要な節税方法です。
なぜならば、一定の条件を満たした役員報酬は法人の損金として算入できるために、課税所得金額を小さくできるためです。
ただし、役員報酬の金額などは事業年度終了後の3か月以内となっていますから、このタイミングで適切な役員報酬の金額などを設定しなければいけません。
また、役員報酬として受け取った個人の所得にも税金はかかりますから、そちらとの比較も必要になります。
お金を使わない繰延的節税方法としては、資産の評価損の計上が挙げられます。
例えば株式を資産として所有している場合、株式は売却や廃棄などの手続きをとってからでないと、経費として算入することができません。
しかし、もし株式の価値が著しく下落した場合は、評価損として前倒しで算入することができるようになるのです。
他にも、売上計上日の見直しなどの方法がありますが、いずれにしろこれらの方法も支払うべき税金を繰り延べているだけなので、後ほど支払う必要がある点には注意が必要です。
これまでご説明してきたとおり節税には様々な方法がありますが、詳しく調べないで無闇に節税に手を出すのは控えるべきでしょう。
なぜならば、節税という目的は果たせても、とった方法により別の問題が発生する可能性があるからです。
例えばポピュラーな節税方法である「備品の購入」は、無駄な備品を大量に購入することにより法人の体力ともいえる「資金力」が小さくなってしまうというリスクを抱えます。余計な備品が大量にあってもそれを使えないようでは、単なる無駄遣いともいえます。
冒頭でもお話したとおり、節税を検討する際には自分の法人の収支状況を正確に把握することが重要です。
その上で、実現可能な節税方法を検討するようにしましょう。
節税方法の検討に不安がある場合は、税務のスペシャリストである税理士に相談することを検討しましょう。
今回ご紹介した4タイプの節税方法はあくまで概要であり、実際にはもっと細かく多くの節税方法がありますし、さらにそれらが適用できるか否かも様々な条件があったりします。
個人で考えられる範囲の節税方法もありますが、安全かつより大きな節税効果を期待するのであれば、やはり税理士に相談したほうが確実です。
失敗しない税理士の選び方については以下の記事で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
今回は、法人における節税とはどのようなものなのかを解説しつつ、具体的な節税対策の内容についてもご紹介するとともに、留意点についても解説してきました。
法人の節税対策は個人事業主が行うそれよりも格段に複雑で難しいモノです。有効な節税対策のためには前もって自社の収支状況を把握したうえで、綿密な節税計画を立案することが必要です。
正直いってしまえば、個人でこれらのことをやるにはかなり難易度が高いと言えるでしょう。
もし節税方法に不安があるようであれば、税務のスペシャリストである税理士に相談することをオススメします。
画像出典元:Pexels、Pixabay、Unsplash
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